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フランスの国家評価委員会(CNE)は、第16回評価報告書を議会科学技術選択評価委員会(OPECST)に提出し、2022年7月にCNEウェブサイトで公表した。CNEは、2006年の放射性廃棄物等管理計画法  の規定に基づいて、放射性廃棄物等の管理に関する取組や調査研究等の進捗状況について毎年評価を行い、評価結果を報告書に取りまとめて議会に提出している。なお、前回の第15回報告書は2021年7月8日に公表されている 。

これまでCNEは、「放射性物質及び放射性廃棄物の管理に関する国家計画」(PNGMDR)及びこれに基づいて実施される調査・研究等を主な評価対象としてきた。しかし、PNGMDRは第4版(2016年~2018年)以降、新たな版の発行が遅延しており、第5版(2022-2026年)は現在も発行に至っていない。このような状況の下、今回のCNEの第16回報告書では、近年の小型モジュール炉(SMR)等の新型炉の導入に関する検討の進展等を受け、将来に導入される原子炉の選択によって、核燃料サイクルや放射性廃棄物の管理に関する研究開発や原子力産業が数十年間にわたり影響を受けると考えられること、並びに原子力発電所の開発に関する決定を行う前に、放射性廃棄物管理に関する明確な方針を確立することが不可欠であることを示し、従来からの放射性廃棄物管理に関する評価に加え、新型炉と核燃料サイクルに関する国際動向等についても評価を行っている。

■放射性廃棄物の処分等について

フランスにおける放射性廃棄物の処分等については、以下の見解や勧告が示されている。

<高レベル及び中レベルの長寿命放射性廃棄物>

  • 地層処分場(Cigéo)の設置認可申請書を遅滞なく提出するための科学的・技術的条件はすべて満たされている。
  • 長期貯蔵は受動的安全ではなく、継続的な監視と定期的な廃棄物の再コンディショニングが必要である。これは、将来の世代が廃棄物を管理する技術的・財政的な能力を保持していると仮定して、人々と環境を保護する負担を転嫁しようとするものであり、地層処分の代替とはならない。
  • 現在までのところ、高レベル及び中レベルの長寿命放射性廃棄物の地層処分に代わる信頼できる方法はない。比較的早い時期に開発された特定のマイナーアクチノイドを核種変換するという戦略があるが、核種変換を行っても地層処分から解放されるわけではない。しかし、高レベル放射性廃棄物の処分パッケージの発熱量を小さくすることで、地層処分場の設置面積を減らす機会を提供することができる。そのためには、多くの技術開発課題を克服し、適切な原子炉を数世紀にわたって維持することが必要である。

<使用済燃料の中間貯蔵>

  • 使用済燃料の中間貯蔵は、核燃料管理における過渡的なステップである。
  • CNEは、使用済燃料の経年劣化と貯蔵インフラに関する研究を強化し、再処理、貯蔵に拘わらず、燃料の引き取りと取り扱いが確実にできるようにすることを勧告する。

<長寿命低レベル放射性廃棄物>

  • 長寿命低レベル放射性廃棄物は、その性質が多様であり、量が多い発熱性廃棄物である。放射性毒性が低いことから、放射性廃棄物管理機関(ANDRA)は地下数十メートルの深さに処分することを検討している。
  • 数万年以上の安全機能の立証は、これまでと同様にシナリオを用いることになるが、これは安全当局と協議の上、定義する必要がある。

<極低レベル放射性廃棄物>

  • 極低レベル放射性廃棄物の多くは、原子力施設の解体・廃止措置作業で発生する。
  • CNEは、原子力事業者に対し、効率性を高めるために、解体・廃止措置業務に関する協力を強化することを奨励する。
  • 既存の原子炉の運転終了後に発生する極低レベル放射性廃棄物の量は、処分場の利用可能な容量を超えていると考えられる。廃止措置の停滞を避けるために、既存の処分場の拡張や新規処分場の建設を十分な時間的余裕をもって行う必要がある。

■新型炉と核燃料サイクルに関する国際動向について

CNEは、第16回報告書において、新型炉と核燃料サイクルに関する国際動向を広く概観して、国・地域別の動向について、以下のように分析している。

<英国、米国>

  • 気候変動を背景とした、特に石炭火力発電の代替という経済的な要因と、新たに原子力発電設備の導入を希望する国々に対する中国やロシアとの競争という地政学的な要因により、小型モジュール炉(SMR)の導入を図り、使用済燃料の再処理を行わない「オープンサイクル」の原子力開発が進んでいる。

<ロシア、アジア主要国>

  • 主にエネルギー主権の追求のために、使用済燃料のリサイクル(エネルギー回収)を目的とした核燃料サイクルのクローズド化を目標としている。
  • 小型モジュール炉(SMR)に関しては、ロシアではすでに35MWeの船上設置型原子炉を2基建設し、稼働中である。

<フランスを除く欧州諸国>

  • 核分裂よりも核融合に対する取り組みへの支援が優先されている。
  • 高レベル放射性廃棄物の処分に向けた取り組みが進捗している。
  • 小型モジュール炉(SMR)等の革新的な核分裂型の原子炉の研究は、ごく初期の調査・研究からほとんど進んでいない。

CNEはこれらの概観から、主な所見として以下の事項を示している。

  • 小型モジュール炉(SMR)の設計をめぐる大きな動きが進んでいる。
  • 使用済燃料を再処理しない「オープンサイクル」政策に伴い、核燃料サイクルに関する議論が希薄となっている。
  • 原子力発電の需要増は、ウラン消費量全体の大幅な増加をもたらす可能性がある。

【出典】

地層処分場の構成要素及びそれらが立地する自治体(ANDRAの資料を元に原環センターにて作成)

地層処分場の構成要素及びそれらが立地する自治体(ANDRAの資料を元に原環センターにて作成)

フランス政府は2022年7月7日に、地層処分場(Cigéo)プロジェクトの公益性と正当性を認める公益宣言(DUP)を発出した。これにより、地層処分の実施主体である放射性廃棄物管理機関(ANDRA)は、地層処分場の建設に必要な工事の許認可取得や、未取得の土地の公的な収用による取得が可能となる。なお、地層処分場の地上施設及び地下施設の建設に必要な土地は約33km2であり、2県11自治体にまたがっている。

フランスにおける地層処分場プロジェクトは、今回のフランス政府による公益宣言(DUP)の発出を受け、計画段階から事業化段階へと進むことになる。ANDRAは地層処分場の建設に向けて、設置許可申請を2022年末に行う予定である。

■公益宣言の発出に至るまでの合意形成プロセス

ANDRAは2020年8月に、地層処分場プロジェクトに関する公益宣言(DUP)の申請をエコロジー移行省に行っており、地層処分事業の進め方に関する4つのオプションでの費用と便益とを比較した社会経済評価の結果を示して、ANDRAが提案する計画に基づいて地層処分場の開発を進めることが、将来世代に最も配慮した有益なオプションであると説明していた。ANDRAは地層処分場の建設を2段階で進める計画であり、2030年頃から開始するパイロット操業フェーズでは、模擬廃棄体及び実廃棄体を用いて処分場の安全性に関わる試験を実施し、その評価を行う。その後、処分場全体の操業許可を取得した上で、2040年頃より2100年頃にかけて長寿命中レベル放射性廃棄物の処分を行い、2080年頃から2145年頃に高レベル放射性廃棄物の処分を行う。

ANDRAによる公益宣言(DUP)の申請に対して、環境当局、環境・持続可能開発審議会(CGEDD)や自治体等の24の地方機関から意見書が提出され、2021年秋に実施された公開ヒアリングでは4,150件の意見が寄せられた。2021年12月には、公開ヒアリングを主催した意見聴取委員会から、5つの提言を含むDUPの発出に好意的な意見が示されていた。フランス政府は、ANDRAの社会経済評価に対する政府の投資総局(SGPI)による評価報告書 や、政府の諮問機関であり、行政最高裁判所でもある国務院(Conseil d’État)の勧告などを考慮し、ANDRAが提案する地層処分場プロジェクトに関する公益宣言(DUP)をデクレ(政令)として制定した。

■公益宣言(DUP)デクレの内容

今回制定されたデクレは7条で構成されており、以下の点が規定されている。

  • 地層処分場の公益性の認定
  • 地層処分場の構成要素が立地し、土地収用の対象となる自治体
  • 土地収用の期限を2037年12月31日とすること(ただし、地層処分場の地下施設のみに関する収用は、パイロット操業フェーズの終了前、かつ2050年12月31日までに収用を実施)
  • ANDRAは、必要に応じて、農業・海洋漁業法典が規定する条件により、農地で生じた損害を賠償しなければならないこと
  • エコロジー移行・国土結束大臣及びエネルギー移行大臣が、本デクレの施行の責任を負うこと

なお、地層処分場の建設に必要な全ての土地のANDRAによる所有権、または使用の権利の取得は、2022年末に予定されている設置許可の申請時には必要とされず、2035年~2040年頃に予定されている操業許可の取得時に必要とされている1

〈参考〉ANDRAによる土地取得状況

公益宣言(DUP)の申請に先立ち、ANDRAは、地層処分場の地上施設の建設に必要な土地を話し合いによる購入や代替地の提供により徐々に取得している。また、地下施設の建設を予定する土地のうち、地上施設が建設されない区画については、ANDRAは地下の一定の深度範囲についてのみ所有権や使用の権利のみを取得すればよいこととなっている2 。この場合、地下部分の所有権をANDRAに移転しても、地表の土地はこれまで通りに使用可能である。

地層処分場の構成要素の建設に必要な土地の面積は以下のとおりである。

  • 地上施設斜坑区域:約296ヘクタール(約2.96km2
  • 地上施設立坑区域:約202ヘクタール(約2.02km2
  • サイト間連絡部:約46ヘクタール(約0.46km2
  • 専用鉄道:約121ヘクタール(約1.21km2
  • 地下施設設置区域:2,900ヘクタール(29km2

地上施設の設置に必要な土地の面積は合計約665ヘクタールであり、地下構造物に必要な2,900ヘクタールのうち、地下部分だけが必要な区画の面積は約2,584ヘクタールである。これらのうち、ANDRAが2020年末時点で取得できていなかった土地の面積は、地上施設については約120ヘクタール、地下部分のみが必要な区画については2,100ヘクタールであった。これらの未取得の土地については、話し合いによる取得が不調に終わった場合にも、今回の公益宣言(DUP)のデクレ(政令)の発出により、ANDRAは公的な収用手続きにより、所有権を確実に取得できるようになる。

 

【出典】


  1. 環境法典 法律の部 第L. 542-10-1条 []
  2. 環境法典 法律の部 第L. 542-10-1条 []

フランスの国家評価委員会(CNE)は、第15回評価報告書を議会科学技術選択評価委員会(OPECST)に提出し、2021年7月にCNEウェブサイトで公表した。CNEは、2006年の放射性廃棄物等管理計画法 の規定に基づいて、放射性廃棄物等の管理に関する取組や調査研究等の進捗状況について毎年評価を行い、評価結果を報告書に取りまとめて議会に提出している。なお、前回の第14回報告書は、2020年7月16日に公表されている 。

フランス政府は2020年4月に、2019年から2028年を対象として、温室効果ガス排出量の削減やエネルギー効率向上、再生可能エネルギーの開発促進等を目標とした基本政策となる「多年度エネルギー計画」(PPE)を発行している。原子力発電に関しては、総発電電力量に占める比率を2018年時点の71.7%から2035年までに50%とすること等を示しており、これを実現するため、現在MOX燃料が装荷されている90万kW級原子炉の閉鎖等を計画する等、核燃料サイクルや放射性廃棄物等の管理のあり方にも影響を与えるものとなっている。CNEは、第15回評価報告書において、PPEが核燃料サイクルに及ぼす課題を中心として評価を行っており、以下のような章構成にて報告書を作成している。

第Ⅰ章:多年度エネルギー計画(PPE)の課題
第Ⅱ章:地層処分の代替策
第Ⅲ章:核種分離に関する研究と開発
第Ⅳ章:地層処分場(CIGÉO)
第Ⅴ章:国際展望:ガバナンスプロセスに向けて

各章における課題に関し、CNEは主に以下のような点を指摘している。

<多年度エネルギー計画(PPE)の課題>

  • 加圧水型軽水炉(PWR)におけるプルトニウムのマルチリサイクルは、現時点で未解決の重要課題である。除染・廃止措置、極低レベル放射性廃棄物の処分容量の拡張、設計が進んでいない長寿命低レベル放射性廃棄物処分場の設置に関する計画立案は、研究を要する課題である。
  • 脱炭素化したエネルギーミックスに統合された、安定的かつ競争力のある原子力産業を確立するための取組が実施されなければ、新たな人材を研究開発に引きつけるのは難しい。

<地層処分の代替策>

  • 地層処分の代替策は、①放射性廃棄物の最終的な管理を可能にする、②少なくとも地層処分場と同等の長期にわたる安全性を達成する、③近い将来あるいは遠い将来の世代に負担をかけないという3つの条件を満たさなければならない。将来世代に負担をかけないためには、施設の長期安全性を維持するために人的な介入を必要とせず、そのための資金が現世代の整えた手段によって確保されていることが前提条件となる。
  • 長期貯蔵は地層処分の代替策になりえない。核種変換1 をベースとした様々な概念のみが代替策として考えられる。
  • 核種変換について、現在検討されている技術は、これから進歩が必要になるとしても、相応のリソースを傾注した場合、21世紀末までには商業規模の施設の実現が可能と考えられる。その実現のためにも、使用済燃料の再処理を継続しなければならない。
  • 一方で、すでにガラス固化された長寿命高レベル放射性廃棄物、核種変換が現実的ではない長寿命中レベル放射性廃棄物、核種分離・変換に由来する最終廃棄物を管理するために、地層処分を行う施設は必要である。

<核種分離に関する研究と開発>

  • 多年度エネルギー計画(PPE)に示されたPWRでのプルトニウムのマルチリサイクルの実現には、MOX使用済燃料の再処理が必要であるが、2030年までの商業化の実現可能性を判断できるようにするために、研究開発計画を速やかに明確化すべきである。
  • 使用済燃料に含まれるアメリシウムは地層処分に最も不向きな元素である2 。したがって、PWRでのプルトニウムのマルチリサイクルにおいては、MOX使用済燃料の再処理プロセスにおいてアメリシウムを抽出・分離し、核種変換することが望ましい。フランスでは特殊なプロセスが実験室規模で開発されたが、今後は商業化が課題となる。
  • PPEにより決定された戦略の信頼性は、核種分離に関する研究にかかっているため、この研究に高い優先度を与えるべきである。

<地層処分場(CIGÉO)>

  • 予定されている地層処分場の設置許可申請において、処分対象の放射性廃棄物のリファレンス・インベントリに変更がない限り、CIGÉOプロジェクトに係わる研究開発や設置許可デクレ(政令)の準備に対して、多年度エネルギー計画(PPE)が影響を及ぼすことはない。
  • 国家評価委員会(CNE)は最近、放射性廃棄物管理機関(ANDRA)は地層処分場の設置許可を申請するのに十分な科学的知識と技術的要素を有していると結論した。ただし、次の2つのテーマについては、設置許可申請の前に、あるいはその審査が終わるまでに、さらに知識を補強する必要がある。
    • 放射線分解と腐食により水素が発生し、その結果、処分場内で長期間のうちに一時的な圧力上昇が生じると見込まれている。ANDRAは、この現象を想定した処分場の設計基準を遵守しているが、問題となる物理的プロセス及び実施される技術的方策に関わる裕度を明確にすべきである。
    • ビチューメン(アスファルト)固化された長寿命中レベル放射性廃棄物の処分は、火災リスクの点で留保が付いている。このテーマに関する国際レビュー の結論は、廃棄物発生者による適切な作業プログラムの明示を促すものであったが、まだ結果が出ていない。

<国際展望:ガバナンスプロセスに向けて>

  • 多くの国における放射性物質及び放射性廃棄物の管理に関するガバナンスのプロセスを評価することにより、優れた取組の要素を抽出することができる。
  • 明瞭かつ透明な戦略的ガバナンスプロセスは必要条件であり、このプロセスの第一の目的は、現時点で直接関わりのある地元住民の正当な利益に配慮しつつ、将来世代を尊重できるような方策に関する積極的な研究への国民コミュニティの関与を確立することである。

【出典】


  1. 核種変換とは、長寿命放射性元素を分裂させることにより短寿命元素に変える技術である。 []
  2. 2020年発行のCNEの第14回評価報告書では、次のように説明している。「高レベル放射性廃棄物に関しては、EPR2におけるマルチリサイクルによってPuインベントリが安定して推移するようになる一方で、その同位体の劣化に伴ってマイナーアクチノイド(MA)の発生量が大幅に増加することになると考えられる。したがって、UOX燃料を使用して、また、50GWd/t程度の燃焼度で運転されるEPR2の場合、1.5kg/tのMAが生成され、その中には0.7kgのアメリシウム(Am)が含まれることになる。これに対して、MOX燃料が装荷されたEPR2の場合、同様の燃焼度において7.7kg/tのMAが生成され、その中には6.4kgのAmが含まれる。主な核分裂生成物が崩壊した後のガラスの発熱の主要因はAmであるため、この増加は地層処分場においてパッケージの処分に必要な面積の拡大につながることになる。」 []

フランスの放射性廃棄物管理機関(ANDRA)は2021年3月24日に、地層処分場(CIGÉO)の設置に関する社会経済評価(Évaluation socioéconomique)の報告書及びANDRAの同報告書に対する政府の投資総局(SGPI)1 による評価・見解を示した報告書を公表した。ANDRAは、公益宣言(DUP)2 の申請の一環として、3年間以上にわたり社会経済評価を実施しており、その結果を2020年8月に報告書として取りまとめていたが、これまで公表を保留していた。フランスでは、公的機関による投資額が1億ユーロ(124億円、1ユーロ=124円として換算)を超えるプロジェクトに関する社会経済評価の際には、政府の投資総局(SGPI)による評価・見解の取得が義務付けられている3 。そのため、ANDRAは、SGPIによる報告書が2021年2月に完成するのを待って、今回、ANDRAによる社会経済評価の報告書をSGPIによる報告書と併せて公表した。

ANDRAは、今後の地層処分場の開発の進め方を変えた4つのオプションを比較検討することにより、現行の計画に基づいて地層処分場の開発を進めることが、将来世代に最も配慮した有益なオプションであると結論づけている。

■ANDRAによる社会経済評価の概要

ANDRAは社会経済評価について、費用と便益とを分析することにより、事業への投資が十分な価値を生み出すかどうかを判断するために使用されるものと説明している。地層処分事業のような商業目的ではない公益事業は、経済的収益を生み出すことはまれであるものの、社会経済評価においては、経済的収益に加えて、健康、社会、環境などに関わる価値が検討される。様々な種類の価値を比較するために、金銭の時間的価値、CO2排出量の価値などを通貨単位に置き換えるとともに、仮想的な事故の発生を想定して、その影響に対する保険料の支払い行動や長期的な経済影響等を推定している。

社会経済評価の目的のためにANDRAは、今後約600年4にわたる将来のフランス社会が①安定であり、経済成長が継続するシナリオ、②持続的かつ深刻な制度的、社会的危機(国土での戦争等)が発生することで、経済成長が停滞し、安全水準が低下することで事故リスクが増大する不安定化シナリオの2つのシナリオを想定した上で、地層処分事業の進め方に関する4つのオプションでの費用と便益を比較している。ANDRAは、社会が不安定化するシナリオで仮定する混沌とした状況を予測することはできないものの、合理的に排除することもできないと述べている。

  • オプション1:ANDRAが現在計画している地層処分場の2段階の進め方:2030年頃から開始するパイロット操業フェーズでは、模擬廃棄体及び実廃棄体を用いて処分場の安全性に関わる試験を実施し、その評価を行う。その後、処分場全体の操業許可を取得した後に、2040年頃より2100年頃にかけて長寿命中レベル放射性廃棄物の処分を行い、2080年頃から2145年頃に高レベル放射性廃棄物の処分を行う。
  • オプション2:長寿命中レベル放射性廃棄物のみに限って処分する条件の下、パイロット操業フェーズを開始し、2040年より長寿命中レベル放射性廃棄物の地層処分を行う。高レベル放射性廃棄物については、管理方法の研究を継続し、2070年に地層処分または超深孔処分のいずれかの実施が決定される。
  • オプション3:パイロット操業フェーズを開始するが、放射性廃棄物の地層処分の可否判断に至らず、2070年まで地層処分以外のソリューションも含めた研究開発投資を継続する。2070年に地層処分または超深孔処分の実施が決定される。長寿命中レベル放射性廃棄物と高レベル放射性廃棄物の処分方法には様々な組み合わせがありうる。
  • オプション4:地層処分場の初期投資を先送りし、2070年頃まで放射性廃棄物を長期貯蔵しつつ、研究開発を継続する。2070年時点での将来に向けた決定では、地層処分の実施や長期貯蔵の継続等、様々な選択がありうる。

ANDRAは、今回の地層処分場(CIGÉO)の設置に関する社会経済評価に関し、以下のような結果を示している。

  • 現行の計画に基づいて地層処分場の開発を進めるのが、将来世代に最も配慮した有益なオプションである
  • 長期貯蔵(オプション4)は、社会が不安定化するリスクを完全に排除しない限りは地層処分場の開発(オプション1)に対する優位性はなく、将来世代に配慮したオプションであるとは言えない
  • 今後150年間で社会が不安定化するシナリオの発生確率を10%程度とみた場合、地層処分は、放射性廃棄物を安全に、また、将来世代が負担するコストを抑制しつつ管理することを保証するものであると言える

■政府の投資総局(SGPI)の評価・見解

ANDRAによる社会経済評価報告書を受けて、SGPIは2020年9月に、カウンター・エキスパートに位置付けられる専門家チームを任命した。専門家チームは2020年12月から2021年1月にかけて、ANDRAやフランス電力株式会社(EDF)等の廃棄物発生者・責任者、政府関係機関等からのヒアリングや地層処分場の建設候補地の訪問調査に加え、2名の哲学者からの意見聴取を実施し、2021年2月5日に独自の評価を取りまとめた報告書をSGPIに提出した。

SGPIは、ANDRAが取りまとめた社会経済評価報告書に関して、「地層処分プロジェクトは、不安定な社会において放射性廃棄物が十分な監視がなされないままの状態で貯蔵される場合の環境リスクや公衆衛生リスクに対して、有益な価値を提供するものである」とした肯定的な見解を示している。なお、今回のSGPIの見解は、2021年第2四半期に予定された公益宣言(DUP)に関する公開ヒアリングに供されることになっている。

 

【出典】


  1. 投資総局(SGPI)は、首相の権限の下で、未来への投資計画の実施に責任を負うとともに、主要な公共投資プロジェクトの社会経済評価や、ヨーロッパの投資計画の調整を行う機関である。 []
  2. 公益宣言(DUP)は、公用収用法典に基づいて、公共目的で行う開発のために私有地を収用する際の行政手続きである。当該開発プロジェクトを実施する事業者からの申請を受けて、公開ヒアリングを実施したうえで、政府が公益宣言を発出する。 []
  3. フランスでは「公的投資の評価手続きに関する2013年12月23日のデクレ」に基づき、公的機関による投資額が2,000万ユーロ(約25億円、1ユーロ124円として換算)を超えるプロジェクトに関する社会経済評価の実施が義務付けられている。ANDRAは「商工業的性格を有する公社」(EPIC)として、公的機関に該当する。さらに、投資額が1億ユーロを超えるプロジェクトの場合、政府の投資総局(SGPI)による評価の取得が必要となる。 []
  4. ANDRAは、600年間という評価期間は他のオプションと比較した場合の地層処分の長所を示すのに十分な長さではないこと、また「これを超えると評価結果の変動がわずかになる」という閾値となる期間は600年間よりも短いことを説明している。さらに、規制機関による地層処分に関する安全指針において記録保存期間が500年間とされていることを参考として示している。 []

フランスの放射性廃棄物管理機関(ANDRA)は2020年11月6日に、地層処分場(CIGÉO)の設置に関する公益宣言(DUP)について、2020年8月3日にエコロジー移行省へ申請したことを明らかにするとともに、2021年第2四半期に予定されている公開ヒアリングに向けた資料一式(下記コラム参照)を公表した。ANDRAは、地層処分場プロジェクトが環境に与える影響の防止策、地域におけるメリットを示した上で、同プロジェクトがDUPを受けるに値する公益性を持つことを主張している。

公益宣言(DUP)は、開発プロジェクトの公益性や正当性を政府が認定するものである。政府は、開発プロジェクトを実施する事業者からの申請を受けて、公開ヒアリングを実施し、申請内容の審査を行う。その後、政府の諮問機関であり、行政最高裁判所でもある国務院(Conseil d’État)の勧告を経て、政府がDUPをデクレ(政令)として発出する。DUPは、開発プロジェクトに必要な手続きの上位要素とみなされ、開発プロジェクトの都市計画への編入や、事前の工事の許認可取得に必要とされる。また、公用収用法典に基づいて、公共目的で行う開発のために私有地を収用する際の行政手続きとしても、政府によるDUPの発出が必要とされる。なお、地層処分場(CIGÉO)の建設には、DUPとは別に、設置許可を申請し、設置許可の発給を受けることが必要となる。

ANDRAは、DUP申請に関する公開ヒアリング向けて公開した資料において、地層処分場(CIGÉO)プロジェクトが環境に与えるマイナス影響の評価と影響を抑制するために講じる措置、地層処分プロジェクトによる地域へのメリット等について説明している。ANDRAは、環境へのマイナス影響について、人間の健康への影響はないとしているが、環境影響を抑制するため、以下のような措置を講じるとしている。

  • 一部森林の維持等、景観を損なわないための措置
  • 排水の汚染防止処理等、地上及び地下水源への影響を抑制する措置
  • 主に建設期間中の騒音・粉じん対策、道路の渋滞防止措置
  • 地層処分場(CIGÉO)の操業開始後の放射性排気や廃液の放射性物質の濃度を規制限度以下に抑えるための措置
  • 地域における生物多様性や生態系を維持するための措置

一方、ANDRAは、地層処分場(CIGÉO)プロジェクトによって地域におけるメリットとして以下を挙げている。

  • 経済発展と雇用創出
    ANDRAやその他関連設備やインフラ等の工事を実施する事業者により、建設期間中には最大2,000人、操業期間中には600人程度の新規雇用が創出される。
  • 地域の人口構成の変化
    2030年までに、ムーズ県南部で1,000人程度の住民増(大半は15歳~64歳の現役世代)となる見通しがある。
  • 税収
    地域における税収は、地層処分場の建設から操業までの期間中に総額59億ユーロ(約7,000億円。2017年3月時点での試算値)に上る。
  • 生活枠組みの改善と地域の魅力の増大
    2019年10月に政府と地域の関係者、ANDRA、事業者等が締結した地域開発計画(PDT)では、以下の方向性が提示されている。

    • 地層処分場(CIGÉO)の建設と操業に必要なインフラ整備の実施
    • 地層処分場近傍地域における社会・経済的ポテンシャルの強化
    • 整備措置を適切に組み合わせることによるムーズ県及びオート=マルヌ県の地域の魅力の向上
    • これら2県が備える経済・環境の魅力を維持する取り組み

今回ANDRAが公開したDUPに関する公開ヒアリング向け資料は、以下の8テーマ・19の文書から構成されている。なお、ANDRAによるDUP申請については、2021年第2四半期中にも公開ヒアリングが開始される計画である。

公益宣言(DUP)に関する公開ヒアリング向け資料一覧(8テーマ・19文書)

<①地層処分プロジェクトの紹介>

  • 資料0:地層処分場(CIGÉO)に関する非技術的な紹介
  • 資料1:プロジェクトの目的や必要性に関する説明
  • 資料2:地層処分場(CIGÉO)配置図
  • 資料3:工事全体図面
  • 資料4:最も重要な構造物の主な特徴
  • 資料11:工事による道路の通行止めの防止策

<②環境:影響と影響緩和策>

  • 資料6-1:地層処分場(CIGÉO)プロジェクトの環境影響評価
  • 資料6-2:地層処分場(CIGÉO)プロジェクトの環境影響評価の非技術的な要約

<③法的枠組み>

  • 資料7:法律、行政関連情報
  • 資料8:地層処分場(CIGÉO)プロジェクトについて提起された政府諮問機関等の見解
  • 資料10:公益宣言(DUP)申請に関するANDRA理事会の2019年12月12日の決定

<④公衆との協議>

  • 資料9:地層処分場(CIGÉO)プロジェクト検討への公衆参加に関する総括

<⑤経済>

  • 資料5:概算費用見積書
  • 資料13:地層処分場(CIGÉO)プロジェクトで開発する輸送インフラの社会経済的評価

<⑥都市化>

  • 資料12:都市計画文書との整合性確認

<⑦国土>

  • 資料14:国土開発整備の見通しに関する総括

<⑧読者の理解を助ける補足資料>

  • 資料15:用語集及び略語集
  • 資料16:読解ガイド
  • 資料17:附属書

【出典】

フランスのエネルギー政策を所管するエコロジー移行省(Ministère de la Transition écologique)は2020年9月28日に、第5版となる「放射性物質及び放射性廃棄物の管理に関する国家計画」(PNGMDR)の改定方針に関する公開協議(concertation)を実施することを公表した。公開協議は、2019年4月17日~9月25日に国家討論委員会(CNDP)が実施したPNGMDRに関する公開討論会の結果を踏まえ、エコロジー移行省及び原子力安全機関(ASN)による改定方針について、公衆に情報提供するとともに、意見を募集することが目的である。

国家討論委員会(CNDP)が公開協議の実施を指摘

PNGMDRに関する公開討論会のためにCNDPが設置した特別委員会(CPDP)は、2019年11月に公表された実施報告書の結論において、PNGMDRの継続的な改定への公衆やステークホルダーの参加を確かなものとするため、公開討論会のフォローアップとして公開協議を実施することが望ましいと指摘していた。その後、環境連帯移行省及び原子力安全機関(ASN)による改定方針の公表を受け、国家討論委員会(CNDP)は2020年4月の会合において、PNGMDRの改定方針を具体化する手順を熟考(elaborate)していくため、CPDPが指摘していた公開協議を行うことが望ましいとするCNDPとしての判断を決定した。CNDPは、PNGMDRの策定を担当するエコロジー移行省(当時は環境連帯移行省)に対して、改訂方針に含まれる項目のうち、特に下記について熟考の必要性を強調している。

  • PNGMDRのガバナンスの変更を提案すること。
  • 特にPNGMDRの策定頻度を検討することにより、エネルギー政策の方向性とPNGMDRの関係性を強化すること。
  • 地層処分プロジェクトにおける意思決定のマイルストーンと、行われた選択を再検討できるようにするためのガバナンスを定めること。
  • 高レベル放射性廃棄物について、地層処分に代わる対策方法(alternatives)の研究を支援すること。

また、CNDPは、下記の項目をPNGMDRに含めるべきことに注意を喚起している。

  • 分野横断的な問題(環境、衛生、経済的影響、輸送の管理、地域への影響の考慮)の統合
  • 放射性物質と放射性廃棄物の間の区分の変更
  • 歴史的廃棄物の管理
  • 長寿命低レベル放射性廃棄物に関するシステムの確立

エコロジー移行省による公開協議の予定

今回の公開協議は、国家討論委員会(CNDP)によって任命された保証人の監督の下で、エコロジー移行省により実施される。公開協議は、放射性廃棄物及び放射性物質管理のガバナンス、PNGMDRとエネルギー政策との関係等のテーマごとに設定された専用ウェブサイトを通じた情報提供や意見募集、パリや地方で開催するパブリックミーティング等により構成されている。

パブリックミーティングは以下のような日程・テーマで実施予定であるが、新型コロナウイルス感染症の拡大状況によっては、インターネット上での開催に変更される可能性もある。

日程 場所 テーマ
2020年10月27日 パリ 極低レベル放射性廃棄物管理
未定 未定 地層処分プロジェクトのガバナンスとANDRAによる情報提供・公衆参加の取組みとの関係
2020年11月16日 パリ 地域や環境面での課題についてのPNGMDRにおける考慮
2020年12月2日 グランテスト地域圏(詳細未定) 高レベル放射性廃棄物及び長寿命中レベル放射性廃棄物管理
2021年2月3日 パリ 公開協議から得られた最初の教訓

また、専用ウェブサイトを通じた情報提供や意見募集が行われるテーマは以下の通りである。

テーマ
放射性物質及び放射性廃棄物のガバナンス
PNGMDRとエネルギー政策の関係
放射性物質の管理
極低レベル放射性廃棄物の管理
使用済燃料の貯蔵
長寿命低レベル放射性廃棄物の管理
高レベル放射性廃棄物及び長寿命中レベル放射性廃棄物の管理及び地層処分プロジェクトにおける論点
特別なカテゴリーに属する放射性廃棄物
放射性物質及び放射性廃棄物に関する分野横断的な問題(環境、健康、地域、経済等)

公開協議後の予定

今回のPNGMDRの改定方針に関する公開協議の結果は、2021年2月3日のパブリックミーティング後に、CNDPが任命した保証人により報告書として取りまとめられて公開される予定である。また、エコロジー移行省も、公開協議を通じて得られた教訓のPNGMDRの案への反映について報告書を作成する。その後、エコロジー移行省は、これらの結果を踏まえて、PNGMDR全体の案を作成し、環境当局(Autorité environnementale)の見解を聴取したうえで最終化することになる。その後、従来のPNGMDR策定プロセスと同様に、公的な意見聴取(consultation du public)に付した後、最終決定のため議会に提出する予定である。

【出典】

フランスの国家評価委員会(CNE)は、第14回評価報告書を2020年7月16日に議会科学技術選択評価委員会(OPECST)に提出し、CNEウェブサイトで公表した。CNEは、2006年の放射性廃棄物等管理計画法の規定に基づいて、放射性廃棄物等の管理に関する取組や調査研究等の進捗状況について毎年評価を行い、評価結果を報告書に取りまとめて議会に提出することになっている。なお、前回の第13回報告書は、2019年6月27日に公表されている

フランス政府は2020年4月に、2019年から2028年を対象として、温室効果ガス排出量の削減やエネルギー効率向上、再生可能エネルギーの開発促進等を目標とした基本政策となる「多年度エネルギー計画」(PPE)を発行している。原子力発電に関しては、2035年までに発電量に占める比率を50%とすること等を示しており、これを実現するため、現在MOX燃料が装荷されている90万kW級原子炉の閉鎖等を計画する等、燃料サイクルや放射性廃棄物等の管理のあり方にも影響を与えるものとなっている。CNEは、第14回評価報告書において、多年度エネルギー計画(PPE)による燃料サイクルへの影響を分析し、以下のような章構成にて報告書を作成している。

第Ⅰ章:多年度エネルギー計画(PPE)の影響と燃料サイクル
第Ⅱ章:廃止措置及び極低レベル放射性廃棄物
第Ⅲ章:長寿命低レベル放射性廃棄物の管理
第Ⅳ章:地層処分場(CIGÉO)
第Ⅴ章:貯蔵と長寿命低レベル放射性廃棄物の処分に関する国際的展望

各章におけるCNEの主な勧告と見解は以下の通りである。

<多年度エネルギー計画(PPE)の影響と燃料サイクル>

  • 原子力発電比率の縮減を達成するには、早い時期に導入された原子炉を閉鎖することになる。閉鎖される原子炉には、現在MOX燃料の装荷許可を受けている24基の90万kW級原子炉のうち、12基が含まれる。EDF社は、MOX燃料需要を維持するため、130万kW級原子炉にMOX燃料を装荷する計画である。CNEは、130万kW級原子炉へのMOX燃料装荷に必要となる許認可の取得に要する作業を過小評価しないよう勧告する1
  • 政府は、多年度エネルギー計画(PPE)において、天然ウラン資源が豊富に存在し、ウラン価格が低い水準で安定していること等から、第4世代のナトリウム冷却高速炉(SFR)の原型炉ASTRID開発計画を中止し、高速炉研究プロジェクトを長期的に再検討していく方針を示した。しかしながら、このことは、将来的に天然ウラン燃料を必要とせず、再処理で回収されたプルトニウムを主体として発電を行うクローズド燃料サイクルの実現を可能とするとともに、高レベル放射性廃棄物(ガラス固化体)において主要な発熱源となっているマイナーアクチノイド核種の変換を実施する上で必要な高速炉開発に関して、プロジェクトが延期されることに結び付いている2 3。CNEは、これまでの蓄積されてきた科学技術的知見の喪失を避けるには、野心的な研究計画を立案する必要があると指摘する。CNEは、原子力・代替エネルギー庁(CEA)が提案している研究計画は不十分であり、国際協力の可能性も限定的であることから、少なくとも欧州レベルで、中性子照射施設を設置することに意義があることを強調する。
  • 多年度エネルギー計画(PPE)において政府は、使用済燃料の再処理による分離プルトニウム及び使用済燃料のストックを一定水準以下に抑制するため、軽水炉を利用したプルトニウムのマルチリサイクルに関する研究を継続する方針を示している。軽水炉でのマルチリサイクルの実施計画はまだ具体化していない。CNEは、事業者等に対して、2020~2021年に予定しているヒアリングにおいて、より具体的な計画を提示するよう要請する。

<廃止措置及び極低レベル放射性廃棄物>

  • フランス国内で発生し、処分が必要な極低レベル放射性廃棄物の大半は廃止措置作業により発生するものである。CNEは、多年度エネルギー計画(PPE)に示された既存炉の閉鎖計画に照らして、極低レベル放射性廃棄物の発生量予測をアップデートするよう勧告する。また、極低レベル放射性廃棄物の発生量の縮減や、リサイクルを想定した除染等の研究を継続するよう、強く勧告する。

<長寿命低レベル放射性廃棄物の管理>

  • 長寿命低レベル放射性廃棄物は、原子炉のみでなく様々な活動から発生しており、総量も比較的多いことから、各廃棄物の放射能レベルや化学組成に応じた処分方法を検討しなければならない。長寿命低レベル放射性廃棄物のうち、黒鉛及びラジウム含有廃棄物の処分場に関しては、2008年にANDRAが開始したサイト選定が途上であるが、1カ所あるいは複数個所のサイトを特定するため、ANDRAは取組を継続すべきである。

<地層処分場(CIGÉO)>

  • ANDRAは2020年春に、政府による公益宣言(DUP)4 申請に必要な文書を提出し、2020年末に設置許可申請を行う予定である。過去数年、設置許可申請は何度も先送りされている。CNEは、ANDRAに対して、より適切にスケジュール管理を行うよう勧告する。
  • ANDRAは設置許可申請の提出に向けて、十分に成熟した科学技術的知見を獲得している。CNEは、ANDRAに対して、処分予定の放射性廃棄物の基準インベントリと整合する形で、地層処分場のレファレンスとなる形状や配置を特定するよう勧告する。
  • CNEは、地層処分場の150年にわたる操業期間を通じた長期的な作業の枠組みを明確にするために、デジタル模型等を活用し、地層処分場の形状や配置の管理プロセスを確立するよう勧告する。
  • CNEは、ANDRAに対して、ビチューメン(アスファルト)固化体の管理に関する国際レビューで提示された、急激な発熱反応のリスクを排除するための地層処分場の設計変更等の勧告内容に早急に着手し、その結果を地層処分場の設置許可申請において提示するよう勧告する。
  • 地層処分場設置に関してANDRAが実施中の社会経済的影響評価については、評価結果が出次第、CNEに報告するよう要請する。

<貯蔵と長寿命低レベル放射性廃棄物の処分に関する国際的展望>

  • 多くの国では、使用済燃料並びに高レベル及び長寿命中レベル放射性廃棄物の貯蔵が長期にわたっている。CNEは、長期貯蔵は成り行きを見守る方針であるため、これと同時に永続的な処分によるソリューションを開発するための積極的な方針が必要であることを指摘する。
  • 世界における長寿命低レベル放射性廃棄物(黒鉛含有廃棄物、ラジウム含有廃棄物等)の管理計画は初期的な段階にある。地表付近での処分よりも地下深部で処分する方が、より高度な廃棄物の閉じ込めと隔離を提供するため、推奨される。

【出典】


  1. 本文章は、CNE報告書の翻訳を精査した結果、2020年9月14日に修正致しました。 []
  2. 高レベル放射性廃棄物の発熱量は、地層処分場の面積を大きくする要因の一つとなっている。 []
  3. 本文章は、CNE報告書の翻訳を精査した結果、2020年9月9日に修正致しました。 []
  4. 公益宣言(DUP)は、公用収用法典に基づいて、公共目的で行う開発のために私有地を収用する際の行政手続きである。当該開発プロジェクトを実施する事業者からの申請を受けて、公開ヒアリングを実施したうえで、政府が公益宣言を発出する。 []

フランスの国家討論委員会(CNDP)1は、2019年11月25日に自身のウェブサイトにおいて、政府が策定中の2019~2021年を対象とした「放射性物質及び放射性廃棄物の管理に関する国家計画」(PNGMDR)に関して、2019年4月17日~9月25日にかけて実施した公開討論会の実施報告書を公表した。フランス国内約20都市で開催された討論会には、延べ3,400人以上が参加し、443件の意見表明、86件の質問、3,043件のメッセージが寄せられた。

国家計画であるPNGMDRは、2006年の放射性廃棄物等管理計画法に基づいて、政府による3年ごとの策定・改定が義務付けられており、フランスにおける全ての放射性物質と放射性廃棄物の管理の現状分析と管理方策の実現に向けた取組(研究開発を含む)を取りまとめたものである。2017年の環境法典の改正により、PNGMDRの策定に際して公開討論会の実施が法制化されているが、これを受けて開催されるPNGMDRに関する公開討論会は今回が初めてとなる。環境連帯移行省は2018年2月に、CNDPに対して今回のPNGMDRに関する討論会の実施を付託していた。

■PNGMDRの策定プロセスに関する議論

今回の公開討論会を実施するに際してCNDPが設置した特別委員会(CPDP)は、実施報告書の結論において、公開討論会を通じて公衆から提起された関心や疑問に対応し、PNGMDRの策定プロセスにおける公衆参加を確保するために、国レベルあるいは地域レベルでの公衆対話の場を構築することが望ましいとの見方を示している。また、次回のPNGMDRに関する公開討論会の開催や公衆対話の継続にあたり、PNGMDRの策定主体である原子力安全機関(ASN)と環境連帯移行省のエネルギー・気候総局(DGEC)が配慮すべき事項を以下のように指摘している。

  • PNGMDRの策定プロセスにおける、独立した規制機関であるASNの役割を明確化すること
  • 現行のPNGMDRの進捗を事前に評価し、計画と成果の乖離とその原因を明らかにしておくこと
  • 公衆がPNGMDRの戦略的方向性を十分に理解できるように、PNGMDRの策定主体は、公開討論会の議論のために取りまとめる文書を改善すること
  • 公開討論会において、各カテゴリーの放射性廃棄物の管理オプションについて議論できるように、上記の文書において、対照的かつ信頼性のある少なくとも2つの管理シナリオを提示して説明すべきである
  • PNGMDRの策定プロセスにおいては、環境法典に基づいて少なくとも10年ごとに政府が実施するものとして、放射性物質及び放射性廃棄物の管理に関する法的・組織的措置とその実施に対する評価との関係性を意識すべきである

■PNGMDRの内容に関する議論

PNGMDRの策定主体である原子力安全機関(ASN)と環境連帯移行省のエネルギー・気候総局(DGEC)は、今回の公開討論会に向けた説明資料において、公衆から意見を引き出したい5つのテーマを挙げていた。公開討論会を運営した特別委員会(CPDP)は、その報告書において、公開討論会で得られた意見を以下のように取りまとめている。

  • 放射性物質と放射性廃棄物の分類
    一部の放射性物質(以降の用途が見込まれないもの)について、それを放射性廃棄物として分類し直すか否かについて検討が必要である。特に、燃料サイクルにおける使用済燃料の取り扱いについては、再処理技術の変化や実際の燃料需要も踏まえて検討すべきである。
  • 使用済燃料の貯蔵容量
    2030年までに使用済燃料の貯蔵容量の拡大が必要である。また、2030年以降の長期的な期間を視野に入れ、再処理政策による貯蔵容量への影響や、乾式貯蔵や湿式貯蔵等の様々な貯蔵方法の適切性について、フランスの状況に照らして検討することが必要となる。
  • 増大する極低レベル放射性廃棄物量の管理
    極低レベル放射性廃棄物の原子力施設内での発生場所によるゾーニングを用いた管理方法を変更して、クリアランス制度を導入するか否かを検討すべきである。
  • 長寿命低レベル放射性廃棄物管理
    長寿命低レベル放射性廃棄物の管理が難航しているのは、本カテゴリーに含まれる放射性廃棄物の特性が一様ではないにも関わらず、一つの考え方で管理しようとしてきたことが原因である。異なる特性を持つ放射性廃棄物に合わせた複数の管理方法を決定するためには、追加的な技術的研究を実施し、公衆との協議や地域への影響を考慮する必要がある。
  • 高レベル放射性廃棄物及び長寿命中レベル放射性廃棄物の地層処分場のパイロット操業フェーズ
    地層処分プロジェクトは非常に長期にわたるため、パイロット操業フェーズ中に、その後の地層処分プロジェクトの進捗のステップを決定することが必要である。

■今後の予定

今後、PNGMDRの策定主体である原子力安全機関(ASN)と環境連帯移行省のエネルギー・気候総局(DGEC)は、環境法典に基づき、公開討論会の報告書の公表後3か月以内の2020年2月25日までに、公開討論の中で提起された疑問等に対する回答を含め、PNGMDRに加えた変更等についての説明を示すことになっている。なお、環境連帯移行省は2019年11月26日付のプレスリリースにおいて、ASNと共に回答を取りまとめるため、環境保護団体や国会議員等の関係者の意見を聴取する方針であること、また、聴取した意見は2020年に策定されるPNGMDRに盛り込む方針であることを示している。

 

【出典】

 

【2020年2月25日追記】

フランスで政府が策定中の2019~2021年を対象とした「放射性物質及び放射性廃棄物の管理に関する国家計画」(PNGMDR)に関して、PNGMDRの策定主体である原子力安全機関(ASN)及び環境連帯移行省(Ministère de la Transition écologique et solidaire)は2020年2月21日に、2019年4月17日~9月25日に実施された公開討論会の結果を踏まえ、以下のような改定の方針を公表した。

  • エネルギー政策と放射性廃棄物管理政策の一貫性向上:PNGMDRの更新は、多年度エネルギー計画(PPE)と整合させ、原子力事業者の施設等の恒久停止・廃止措置戦略とも連動させる。今回、PNGMDRの対象期間を現行の3年間からPPEの対象期間と同じ5年間に変更することも、併せて提案されている2
  • 放射性廃棄物管理のガバナンス強化:PNGMDRの策定及びフォローアップへの参加については、環境保護団体だけでなく、各種市民団体、国会議員及び地方自治体の代表にまで拡大する。
  • 放射性物質の有効利用可能な特性に関する管理の強化:原子力事業者が定期的に見直す行動計画に基づき、使用済燃料の再処理後の回収ウランなどの現時点では利用されていない放射性物質3 について、利用の進め方やその量に関する管理を強化する。
  • 使用済燃料の追加的な貯蔵容量需要の確保:PNGMDRにおいて、新たな湿式集中貯蔵施設の建設に要する期間を考慮し、設置見通しを明らかにする。また、乾式貯蔵施設が有用と考えられる条件及び状況についても検討する。
  • 一部の極低レベル放射性廃棄物に関して、その再利用が妥当であると考えられる場合、特例措置によって適用対象を限定して利用を認めていく。なお、現在のフランスでは、クリアランス制度は導入されておらず、原子力施設内での発生場所によるゾーニングを用いた管理方法が用いられている。
  • 長寿命低レベル放射性廃棄物管理に関しては、これらの廃棄物の特性が非常に多様であることを念頭に、現行のPNGMDRに示された方向性に沿って研究を継続する。その際、安全の観点からだけでなく、環境や地域の観点から見た課題についても考慮する。
  • 地層処分場プロジェクトの実施条件、特にプロジェクトの節目となる段階への公衆参加の方式、ならびに高レベル及び長寿命中レベル放射性廃棄物の代替的管理手段に関する研究開発の条件を決定するための検討は、今後も継続する。
  • PNGMDRに規定される放射性廃棄物の管理手段が、環境、衛生、経済にどのような影響を及ぼすのかについての評価を強化する。公開討論会では、輸送、環境、衛生、放射性廃棄物の毒性、地域への影響等の分野横断的な問題に対する高い関心が示されたことから、改定版PNGMDRでは、これらの問題についての現状の説明と課題への対応方法を提示する。

原子力安全機関(ASN)と環境連帯移行省は、上記の方針に従ってPNGMDRの改定作業を進め、2020年末までに、改定版PNGMDR案に関する公的な意見聴取(consultation du public)を実施する予定である。

 

【出典】


  1. 国家討論委員会(CNDP)は、環境に多大な影響を及ぼす大規模公共事業や政策決定を行うにあたり、事業実施主体の付託を受けて公開討論会を開催する独立した行政委員会である。 []
  2. PNGMDRの対象期間を変更する場合は、環境法典第L542-1-2条の改正が必要となる。 []
  3. 2016~2018年を対象としたPNGMDRでは、主な放射性物質として濃縮ウランと劣化ウラン、使用済燃料、使用済燃料の再処理後の回収ウラン、プルトニウム、トリウムが挙げられている。 []

フランスの会計検査院(CDC)は2019年7月4日に、放射性廃棄物管理のコスト、エネルギー政策の変更によるバックエンドへの影響等に関する問題について、評価報告書を公表した。これは、これらの問題が長く公開討論会で扱われていなかったことから、2019年4月から2019年9月までの予定で開催されている2019~2021年を対象とした「放射性物質及び放射性廃棄物の管理に関する国家計画」(PNGMDR)に関する公開討論会に向け、情報資料として提示されたものである。

会計検査院は、以前から原子力産業のコスト評価報告書を取りまとめて公表しており、主な報告書として、2005年の「原子力施設の廃止措置と放射性廃棄物管理に関する報告書」、2012年の「放射性廃棄物管理を含む原子力発電コストに関する報告書」があり、2014年には2012年の報告書を更新している

会計検査院は今回の評価報告書において、原子力政策を所管する環境連帯移行省や同省のエネルギー・気候総局(DGEC)、放射性廃棄物処分の実施主体である放射性廃棄物管理機関(ANDRA)等に対して、以下の10の提言を示している。

  1. DGEC及びANDRAは、2021年までに、貯蔵施設、処分場の容量と、放射性物質や放射性廃棄物の発生量とをより緊密に関連づけて廃棄物インベントリを補完すべきである。
  2. DGEC及びANDRAは、2020年までに、廃棄物インベントリでANDRAが想定している原子力・燃料サイクル政策に関する複数のシナリオについて、それぞれ地層処分場の建設コストを試算すべきである。
  3. DGEC及びANDRAは、2020年までに、2016年に試算された地層処分プロジェクトのコスト について、考えうるリスクや有利な状況の進展を現実的に考慮し、更新すべきである。
  4. 環境連帯移行省は、2019年中に、環境法典に基づき、再利用が想定されている放射性物質と処分が想定される放射性廃棄物との分類について、同省が変更する場合の方針を明確化すべきである。
  5. DGEC及び経済・財務省の国庫・経済政策総局は、2019年中に、放射性廃棄物管理に係る引当金及び見合資産の計上に関して、産業面での実際に即した観点を反映すべきである。
  6. ANDRAは、2020年までに、地層処分プロジェクトの実現に際して、特に使用済みのMOX燃料や使用済みのURE燃料1 を地層処分場に処分することになった場合など、エネルギー政策の変更による影響について、地層処分場の建設に向け、ANDRAが策定する放射性廃棄物の基準インベントリの更新が必要となるマイルストーンを明確化すべきである。
  7. DGECは、2019年に開催中のPNGMDRに関する公開討論会や、今後の多年度エネルギー計画(PPE)2 に関する公開討論会に際して、フロントエンドとバックエンドの関係性を明らかにして議論を行うべきである。
  8. DGECは、2019年に、廃棄物インベントリにおけるシナリオと、事業者が策定する燃料サイクルの影響に関する文書3 、多年度エネルギー計画(PPE)、PNGMDRにおけるシナリオとを整合させ、特に、これらの文書におけるレファレンスシナリオを1つに統一すべきである。
  9. 環境連帯移行省は、DGECと原子力安全機関(ASN)が多様な検討結果等を踏まえ、総合的な視点で計画を策定するために十分な期間を確保できるよう、初回の公開討論会の成果も踏まえ、PNGMDRの策定期間を2020年まで延長すべきである。
  10. 環境連帯移行省は、2019年中に、事業者が提出したデータや研究結果に関して、DGECが独自の分析や、原子力発電事業のコスト便益分析を実施する能力を強化すべきである。

今回の会計検査院のバックエンドコストに関する評価報告書の公表を受けて、ANDRAは2019年7月5日付けプレスリリースにおいて、地層処分プロジェクトの次回のコスト見直しに向けた取組を開始していることを表明するとともに、会計検査院に対して2019年6月17日付けで先行して提出していた意見書を公表した。ANDRAは、会計検査院が示した提言に関して、以下のような見解を示している。

  • 地層処分プロジェクトが段階的に進められていることの妥当性が会計検査院の評価報告書の中でも認められている。ANDRAは、この段階的な取組によって、同プロジェクトが今後の技術進展やエネルギー政策の変更にも適応可能であると考える。
  • 地層処分対象となる放射性廃棄物のインベントリに関して、ANDRAは、地層処分場の設置許可申請に向けて策定した基準インベントリの他に、放射性廃棄物管理方法の変更やエネルギー政策の進展に付随する不確実性を考慮に入れた予備インベントリも策定している4
  • 地層処分プロジェクトのコストに関しては、ANDRA及び電力会社等による試算が2014年以降実施されたが、当時は地層処分場の設計の初期段階にあり、不確実性が高かったため、試算結果には大きな幅があった。このため、最終的には2016年に、政府が今後の必要性に応じた見直しをすることを前提に、コストの目標額を定めた。地層処分プロジェクトは非常に長期にわたるものであり、前述したコスト試算の経緯も踏まえると、会計検査院が地層処分場のコストを正確に試算することは不可能であると指摘しているのは妥当である。
  • 地層処分プロジェクトのコストに関してANDRAは、すでに次回のコスト見直しに向けた取組を開始している。2014年からのコスト試算時と比較して、地層処分場の設計等が詳細化されており、また、地層処分場が予備インベントリに適応するためのコストも試算する予定である5
  • 会計検査院の提言10にあるとおり、放射性廃棄物の貯蔵、処理の状況や、燃料サイクルに関する総合的な視点を持つために、環境連帯移行省のエネルギー・気候総局(DGEC)が分析や専門的能力を強化することは重要である。

【出典】


  1. Uranium de retraitement ré-enrichi, PWR使用済燃料からの回収ウランの再濃縮による燃料 []
  2. 2015年8月に制定されたエネルギー転換法に基づき、フランス政府は、エネルギー供給保証、エネルギー効率、再生可能エネルギー利用促進、エネルギー価格の競争力維持等の観点から、連続する2期間(各5年)を対象としてPPEを策定する。 []
  3. 原子力安全機関(ASN)は2000年以降、フランス電力株式会社(EDF社)に対し、燃料サイクルに係わるOrano社等の事業者と共同で、燃料サイクルの実施状況とその原子力安全等への影響について検討した結果をまとめた “Impact cycle”文書を定期的に提出するよう要請している []
  4. 環境法典第D542-90条では、地層処分場の建設に向けた基準インベントリと、不確実性を考慮に入れた予備インベントリを策定することが規定されている。 []
  5. 環境法典第D542-94条では、長寿命中・高レベル放射性廃棄物の長期的な管理の実施に係るコストの評価は、定期的に更新され、特に、地層処分場の設置許可時、操業開始時、パイロット操業フェーズの終了時、定期安全レビュー時には必ず更新することが規定されている []

フランスにおいて国家評価委員会(CNE)は2019年6月27日に、第13回評価報告書を議会科学技術選択評価委員会(OPECST)に提出し、CNEのウェブサイトで公表した。CNEは、2006年の放射性廃棄物等管理計画法の規定に基づいて、放射性廃棄物等の管理に関する取組や調査研究等の進捗状況について毎年評価を行い、評価結果を取りまとめた報告書を議会に提出することになっている。なお、前回の第12回報告書は、2018年6月21日に公表されている

CNEは、放射性廃棄物管理機関(ANDRA)による高レベル放射性廃棄物及び長寿命中レベル放射性廃棄物の地層処分プロジェクトの他、長寿命低レベル放射性廃棄物や極低レベル放射性廃棄物の管理研究について、以下のような見解を示している。

  • 地層処分場の設置許可申請は2020年に提出可能な見込みであるが、許認可手続きが非常に複雑であり、審査を統合する等の手続きの簡略化を検討すべきである。
  • ANDRAが地層処分場の「操業基本計画」を政府に提出した後、同計画の実行や改定のために、誰がどのようにANDRAに見解を示すのかを早急に詳細化する必要がある。2017年の第11回評価報告書において指摘したように、CNEは見解を示す専門機関が必要であると考えており、CNE自身が操業基本計画に関するANDRAへの聴聞を毎年実施する。
  • 地層処分場の建設が開始されれば、立地地域の経済産業状況を一変させると同時に、ANDRAの内部組織も大きく変わると予想される。CNEは、これらの変化に全ての関係者が最適な形で関与すべきと考えている。また、ANDRAは地層処分事業の責任者として、外部発注先の管理等の責任を果たすとともに、全ての決定事項のトレーサビリティを確保しなければならない。
  • 短寿命低中レベル放射性廃棄物の管理については、これまでに策定されてきた「放射性物質及び放射性廃棄物の管理に関する国家計画」(PNGMDR)1 に基づく多数の研究の枠組みにおいて、適切に進められていると考える。これらの研究の結果から、極低レベル放射性廃棄物及び長寿命低レベル放射性廃棄物の管理方法の検討に必要な成果が得られると期待される。ただし、長寿命低レベル放射性廃棄物については、現時点では有効な管理方法が特定されていないと考えている。
  • 極低レベル放射性廃棄物の有害性に応じた管理に関しては、放射線防護・原子力安全研究所(IRSN)が開発した指標2 を用いることにより、実行可能性の高い方法論を確立するよう勧告する。
  • これまでに実施されている極低レベル放射性廃棄物や長寿命低レベル放射性廃棄物等に関する研究の質を高く評価する。しかし、ほぼすべての研究報告書において、経済的要素の重要性について言及されており、検討作業に支障をきたすおそれがある。このため、これらの廃棄物の管理に関する概念研究の実施を可能とするような合理的な計画を立案し、技術的検討を通じて、可能性のある管理オプションを明らかにするよう勧告する。
  • 極低レベル放射性廃棄物や長寿命低レベル放射性廃棄物に関する研究成果についても、毎年CNEに報告するよう希望する。

 

【出典】

CNEウェブサイト、Le rapport d’évaluation No. 13
https://www.cne2.fr/telechargements/RAPPORT_CNE2_13_2019.pdf


  1. 2019年から2021年を対象とするPNGMDRに関しては、2019年4月から9月にかけて、全国公開討論会の開催中である。 []
  2. IRSNは個人の被ばくに関する4つのシナリオを想定し、被ばく線量と化学毒性の指標に基づき、廃棄物の有害性を分類する方法を提案している。 []