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《フランス》原子力安全規制機関の再編に関する法律が公布

フランスで2024年5月21日に、原子力安全に関する新たな規制機関として、原子力安全・放射線防護機関(ASNR: Autorité de sûreté nucléaire et de radioprotection)を2025年1月1日に設立する法律が公布された。本機関は、現在の規制機関である原子力安全機関(ASN: Autorité de Sûreté Nucléaire)と、ASNに対して技術的支援を行っている放射線防護・原子力安全研究所(IRSN: Institut de Radioprotection et de Sûreté Nucléaire)とを統合し、両機関の任務を引き継ぐものである。

今回公布された法律は、原子力施設の建設・運転等を、高度な安全性を維持しつつ実施するため、原子力安全と放射線防護に関する手続きの効率化を目的としている。フランスでは2050年までに、新型の加圧水型軽水炉であるEPR2型炉を6基建設するなど、原子力発電の拡大に向けた方針が示され、これに向けた法整備が進められており、今回公布された法律は、2023年6月22日に公布された原子力施設建設に関する手続きの迅速化に関する法律に続くものである。

■原子力安全・放射線防護機関(ASNR)の任務と地位

原子力安全・放射線防護機関(ASNR)は、現在の原子力安全機関(ASN)と同様に、フランス政府の他の省庁や原子力事業者から独立した、独立行政機関としての地位を持つ。

ASNRは、ASNから原子力安全と放射線防護の確保、国民と議会(国会)への情報提供等の任務を引き継ぐとともに、原子力発電所や放射性廃棄物処分場などの原子力基本施設(INB)に対する技術的な規制に関する決定を行い、関係大臣の承認を経ることで、法的拘束力のある規制を行う。また、INBの設置許可申請に関する安全審査を行い、建設許可の発給を行うフランス政府に見解を示すことや、INBの操業許可を発給する権限を引き継ぐ。

一方、ASNRは、現在の放射線防護・原子力安全研究所(IRSN)と同様に、原子力安全と放射線防護の分野の研究ミッションを遂行する研究所として認められ、研究者、博士課程の学生などの受け入れを行うことができる。また、ASNRや他の公的機関での原子力安全と放射線防護に関する研究開発に反映するため、国内及び国際レベルでの研究活動をウォッチングし、研究ニーズを提案や勧告として関係大臣や公的機関に通知する。さらに、IRSNからフランス全土での放射線モニタリングに関する任務も引き継ぐ。

■原子力安全・放射線防護機関(ASNR)の組織

ASNRの組織は、ASNRとしての意思決定を行う5名の委員(コミッショナー)で構成される合議体(ASNR本体としての委員会)と、合議体の活動を支えるスタッフにより構成される。委員のうち委員長を含む3名は大統領が任命し、残りの委員2名は下院と上院の議長がそれぞれ任命し、6年間の任期を持つ。

ASNRでは、評価・研究(現在は主にIRSNのスタッフが実施)のプロセスと、合議体による意思決定とその補佐(現在は主にASNのスタッフが実施)のプロセスを確実に分離するため、内規により、専門的な評価・研究活動を担当するスタッフと、合議体による意思決定の補佐を担当するスタッフとの間の役割分担が定められる。

また、ASNRには、以下のような役割を持つ常設専門家グループ及び委員会が設置される。

  • ASNRとしての決定のため、独立した助言を提供する責任を負う常設専門家グループ(GPE)
  • ASNRによる研究プログラムの評価を行うため、各分野の専門家で構成される科学諮問委員会
  • 潜在的な利益相反を防止する責任を負う、有資格の外部の専門家で構成される倫理・職務遂行委員会

このような組織を実現させるためフランス政府は、2024年7月1日までに、ASNRの設立準備作業の進捗状況に関する報告書を取りまとめ、議会科学技術選択評価委員会(OPECST)に提出することとしている。

【出典】

(post by eto.jiro , last modified: 2024-06-03 )