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2024年05月15日

《カナダ》使用済燃料処分場のサイト選定の状況－候補2自治体で処分場受け入れに向けた協定を締結

カナダの使用済燃料の地層処分場のサイト選定について、現在、候補として残っているオンタリオ州のイグナス・タウンシップ及びサウスブルース自治体は、使用済燃料処分の実施主体である核燃料廃棄物管理機関（NWMO）との間で、それぞれ2024年3月及び2024年5月に、処分場受け入れに向けた協定（potential hosting agreement）を締結した。これらの協定は、自治体が地層処分場を受け入れることを意味するものではなく、当該自治体が処分場を受け入れた場合の地域への影響などについて住民の理解を促進するため、将来の処分場の受け入れ、または、サイト選定からの離脱に関する具体的な条件やスケジュールについて予め合意した内容を示すものである。

■カナダにおける地層処分サイト選定プロセス

NWMOによるサイト選定プロセスは、表に示すように、9つの段階で構成されている。このサイト選定プロセスは、処分事業やサイト選定に関する情報を求める自治体や地域を公募し、地層処分プロジェクトに対して関心表明を行った自治体や地域の中から処分場候補地を選定していくものである。NWMOは、プロセスに参加する自治体や地域は、第6段階において処分場の受け入れに関して最終的に同意するまで、プロセスから撤退できるとしている。

カナダにおける核燃料廃棄物処分場のサイト選定プロセス

図　サイト選定プロセス参加自治体の位置

図　サイト選定プロセス参加自治体の位置

NWMOは、2010年5月からサイト選定プロセスを開始しており、自発的に関心表明を行った自治体を対象に地質学的条件などによる初期スクリーニング等を経て、サイト選定を進めており、2024年内には地層処分場のサイトとして好ましい地域を選定することとしている 。サイト選定プロセス開始後の2012年9月末までに、22の自治体が関心表明を行い、現在、第3段階を終了したオンタリオ州のイグナス・タウンシップ及びサウスブルース自治体が候補として残っている。

NWMOは、サイト選定プロセスの第4段階において行う詳細なサイト評価は、正式に関心表明した自治体を対象とすることとしており、候補自治体は、NWMOのサイト選定プロセスへ正式に関心表明する必要がある。そのため、両自治体では、住民の意向を十分に反映した方法で、自治体としてNWMOのサイト選定プロセスへ継続して関与するか否かの決定を行うため、自治体独自の活動に取り組んできた。その一環として、住民にプロジェクトの潜在的な利点を理解してもらうため、当該地域での地層処分場受け入れについての地域の考えを反映した協定をNWMOと共同で作成してきた。

今般、2024年3月にイグナス・タウンシップとＮＷＭＯとの間で、また2024年5月にサウスブルース自治体とＮＷＭＯとの間で、それぞれサイト受け入れに関する協定を締結することが自治体の議会で承認され、署名された協定文書が公表された。それぞれの協定には、処分場の受け入れに関する具体的な内容が記載されているが、自治体が地層処分場を受け入れることを意味するものではないとしており、今後の最終決定に向けたスケジュールも記載されている。

■イグナス・タウンシップにおける取り組み

オンタリオ州北部のイグナス・タウンシップは、州都トロントから北西に約1,600km、カナダ大陸横断高速道路（トランス・カナダ・ハイウェイ）上にあり、主な産業は林業と観光業である。イグナス・タウンシップは面積約93km2、人口約1,200人の小さな自治体であり、その周囲に隣接する自治体はない。オンタリオ州北部の人口分布がまばらであるため、特定の自治体に属さず州が直轄する地域が広がっている。

イグナス・タウンシップでは、2024年2月に、地層処分場の受け入れの可否についての地域住民の意向を議会に提案することを目的とした特別委員会が設置された。また、本自治体は、この提案のための情報を得るために、住民の意識調査や理解促進のためのイベントを行うことについて、その実施を外部組織（民間会社）に委託した。2024年3月には、サイト受け入れに向けた協定を締結することが議会で承認され、署名された協定文書が公表された。自治体が公表した協定の概要によると、イグナス・タウンシップとNWMOは協定の目的に以下を含むとしている。

  1. 自治体が受け入れ地域として選定された場合の進むべき道、自治体が受け入れ地域として選定されなかった場合の進むべき道を示す。
  2. 両当事者は、定期的かつ継続的に関連情報を共有することにより、当事者間の効果的なコミュニケーションを促進する。
  3. 両当事者は、当事者間の強固な協力関係を築き、維持する。
  4. 両当事者は、地層処分場を設置するというプロジェクトに関して利害を一致させる。
  5. 自治体は、NWMOがサイト選定通知を行う前に、自治体としてプロジェクトを進めることに積極的であることやプロジェクトを支援する意思があることを証明するプロセスと方法を定める。
  6. 自治体は、当該自治体がプロジェクト実施地域として選定された場合、プロジェクトを積極的に進める地域となることに同意したことを証明する。
  7. 適用法及び規制当局の承認に従ってプロジェクトの設計を進めるためのNWMOのプロセスを含むプロジェクトを説明する。
  8. 自治体がサイトとして選定された場合を想定し、プロジェクトの規制承認プロセスにおける自治体の参加の枠組みを確立する。

協定には、サイトとして選定された場合の処分場を建設するエリアや予想されるスケジュールも記載されており、協定はプロジェクトが終了するまでの約172年継続するとしている。今後、イグナス・タウンシップは、特別委員会による住民意識調査等を取りまとめた報告書と提言の提出を受けた議会における承認を経て、2024年7月30日までに自治体としての処分場の受け入れ判断のプロセスを完了するとしている。

■サウスブルース自治体における取り組み

オンタリオ州南部にあるサウスブルース自治体は、ヒューロン湖の東側約40kmの内陸に位置しており、面積約490km2、人口は約5,600人である。土地は西側にゆるやかに傾斜して平坦に広がっており、農業が主要産業となっている。

サウスブルース自治体では、2020年に、地域が処分場を受け入れることへの潜在的な影響を評価し、処分プロジェクトに対する期待や懸念などに基づいた36項目の指針（guiding principles）を策定した。この指針は、人と環境の安全の確保、自治体の意見の反映、地域への影響の軽減と便益の提供という基本的な考え方に基づく、処分場受け入れにおける36項目の優先事項を示しており、自治体の取り組みを導くものとなっている。2024年5月には、サイト受け入れに向けた協定を締結することが議会で承認され、署名された協定文書が公表された。サウスブルース自治体は、この協定は、すでに策定している36の指針に対処しており、地域が処分場の受け入れについて十分情報を得た上での意思決定を行うのに役立つとしている。また、イグナス・タウンシップの協定と同様に、サイトとして選定された場合の処分場を建設するエリアや予想されるスケジュールも記載されており、自治体としての受け入れ判断のプロセスとして、2024年10月28日に住民投票を実施し、11月には最終決定するとしている。

 

【出典】

(post by nunome.reiko , last modified: 2024-06-09 )