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《フランス》地層処分場の設置許可申請書の技術審査の第2段階の結果が公表

フランスの規制機関である原子力安全・放射線防護機関(ASNR)は、2025年1月16日付のプレスリリースにおいて、放射性廃棄物管理機関(ANDRA)が2023年1月に提出した地層処分場(Cigéo)の設置許可申請書に関して、技術審査の第2段階の結果を公表した。今回の公表は、Cigéoの地上、地下施設の操業時の安全性の評価結果に関するものである。技術審査は、ASNRのほか、2025年1月1日に新設されたASNRの前身の原子力安全機関(ASN)の内部に設置された廃棄物常設専門家グループ(GPD)と、ASNの支援機関であった放射線防護・原子力安全研究所(IRSN、2025年1月1日よりASNRに併合)によって行われた。GPDは、地上施設、地下施設の操業時の安全性に関するANDRAによる立証は、設置許可申請の段階としては概ね満足のいくものであるが、事故状況の管理や火災、爆発に関連するリスクの防止等について、さらなる作業が必要であると勧告を行った。

■評価の課題と経緯

技術審査は、以下の3つの主な課題と横断的課題について行われており、課題1から始められ、その結果が他の課題の審査に用いられる。課題1の審査結果は2024年6月10日に公表されており、課題3の審査は2025年の半ばに実施される予定である。

  • 課題1: Cigéoの安全評価に使用されている基礎データの評価
  • 課題2: 地上、地下施設の操業時の安全評価
  • 課題3: 閉鎖後の安全評価
  • 横断的課題: 課題1~3の検討を通じたパイロット産業フェーズでの安全立証の評価、廃棄物パッケージの回収可能性の操業時・閉鎖後の安全性への影響等

ASNは、課題2「地上、地下施設の操業時の安全評価」における評価項目として、以下の観点を示していた

  • 安全アプローチ
  • 安全評価
  • 健康・環境影響評価

課題2の技術審査の経緯は以下の通りである。

  • IRSNでは2023年6月7日付のASNの書簡での要請により、ANDRAによる処分施設の設計規定、建設・操業規定の妥当性について、特に安全目標、防護面で重要な活動や要素、それらの適格性、インシデント・事故シナリオの特定と分類、作業区域の定義、地下施設のモニタリング戦略などについての専門的評価を行い、2024年11月29日にASNに意見書と評価報告書を提出した。
  • 一方で、ASN内に設置されたGPDは、2024年11月4日付のASNの書簡での要請により、他の常設専門家グループのメンバー並びにIRSNの支援を受けて評価を進め、2024年12月10日と11日に開催された会合を経て、GPDとしての意見書を取りまとめた。
  • IRSN並びにGPDにおける評価では、設置許可申請書の記載事項とともに、技術審査の途中でANDRAから得られたパイロット産業フェーズに関する追加情報や、2024年11月18日にANDRAがASNに提示した、処分施設の操業に関する約束事項が検討対象とされた。
  • GPDの意見書を受け、ASNは、ANDRAに対して課題2の技術審査の結果を伝えるとともに、2025年1月16日付のプレスリリースにて公表した。

■課題2「地上、地下施設の操業時の安全評価」の評価結果

課題2「地上、地下施設の操業時の安全評価」の評価項目及び横断的課題であるパイロット産業フェーズに関するGDPの主な意見、並びにこれらの意見を踏まえた結論は、以下の通りである。

図1 地層処分場(Cigéo)の模式図(ANDRAの設置許可申請書を元に原環センターにて加筆)

安全アプローチ

  • ANDRAが採用した基本的な安全目標は、施設の全期間及び長期にわたって、放射性物質や有害化学物質の放出に伴うリスクから人の健康と環境を守ることである。設置許可申請段階でANDRAが提示した操業安全アプローチは、深層防護の原則に基づいており、多くの点で満足のいくものであったが、さらに補足する必要がある。
  • 深層防護の観点から、操業中あるいは建設中の事故対策及び事故後の管理への対策を強化するため、施設の坑道の汚染につながる事故状況に関する追加研究を実施すべきである。
  • ANDRAによるモニタリング戦略の目的は、操業中、施設が通常の運用範囲内にあることを確認し、建設や操業に関連する擾乱が閉鎖後の安全機能に影響を及ぼさないことを確認することとされている。ANDRAが定義したモニタリング戦略、特に、処分区画内に建設される対照用処分坑道、処分孔1 の使用に基づく戦略は適切である。しかし、このモニタリングに関する規定を明記し、これらの対照用処分坑道・処分孔のモニタリングの代表性を正当化することが必要である。
  • 廃棄物発生者からCigéoに送られてくる廃棄物の一次パッケージの受入基準は、操業安全評価と一致している。しかしながら、受入基準に適合しないパッケージの管理を行う施設の容量の妥当性を正当化しなければならない。
  • 政策の変更等によりCigéoに処分される可能性のある廃棄物を想定した「予備インベントリ」(使用済燃料や長寿命低レベル放射性廃棄物等)に含まれる廃棄物の処分に対する施設の適応性に関して、施設の時間的、空間的な拡張が操業時の安全性に与える影響を考慮した今後の研究が必要である。
  • Cigéoの設計段階から建設段階への移行のためにANDRAが設置した組織は、Cigéoプログラムの「プロジェクト」リスクを管理するために強化される必要がある。

操業安全性の評価

  • 地上、地下施設における放射性廃棄物の取扱いにおける落下や衝突のリスク並びに放射性物質の拡散リスクの管理の実証は、設置許可申請の段階として十分な成熟度に達している。
  • 火災リスクの分析について、防護面で重要な要素に関する規定や、選択された脅威の包含性の面で強化する必要がある。また、地下施設での火災の影響を制限するための区画化、地下施設での火災発生時の介入に関する規定に関して、改善や追加的な正当化を行う必要がある。
  • ビチューメン固化体を、反応性を中和する事前処理を行わずに処分することの安全性は実証されていない。GPDは、ビチューメン固化体の発熱反応が連鎖的に発生する状況の定義と、検知・介入戦略の強化に関する書類を、ANDRAが予備的安全報告書の次回改訂の一環として提出するよう勧告する。
  • 処分坑道、処分孔における爆発リスクを管理する方法について、より詳細な情報を得る必要性がある。長寿命中レベル放射性廃棄物の処分坑道の内部雰囲気の変化に関する研究、及び高レベル放射性廃棄物の処分孔の雰囲気の不活性化装置の実現可能性に関する研究が、より深く実施される必要がある。

健康・環境影響評価

  • 通常の操業時のCigéoによる放射線学的影響は非常に低いと判断され、人の健康と環境を保護するために計画された対策が強固であることが確認された。しかし、有害化学物質の液体排出については、環境中に放出される濃度の推定に基づいて定量的な評価を行うべきである。

パイロット産業フェーズ(横断的課題)

  • ANDRAが設置許可申請書の技術審査の第1段階の後に説明したパイロット産業フェーズのプロセス、初期の目的、成功基準の概要は、未だパイロット産業フェーズに割り当てられた目的と基準の予備的な定義に過ぎない。パイロット産業フェーズの様々な段階の作業計画を作成する必要があり、処分されるパッケージの数量や処分のペースは、実際の放射性廃棄物パッケージで実施される試験プログラムに基づいて決定されるべきである。
  • パイロット産業フェーズから処分施設の本格的な試運転までの間、操業の継続性が確保されなければならない。

GPDによる評価の結論

GPDは意見書の結論において、ANDRAによるCigéoの地上、地下施設の操業上の安全性の立証は、プロジェクトの開発の現段階では概ね満足のいくものであるが、下記の問題について、掘削作業の開始前に再検討を行う必要があるとの考えを示している。

  • 最初に建設される構造物のモニタリングに関する規定は、建設前にさらに特定する必要がある。
  • ビチューメン(アスファルト)固化体の処分、長寿命中レベル放射性廃棄物の処分坑道の閉鎖並びに高レベル放射性廃棄物の処分孔での操業に関する操業安全性の立証には、大幅な追加作業が必要である。

 

【出典】

  1. 対照用処分坑道・処分孔とは、高レベル放射性廃棄物並びに長寿命中レベル放射性廃棄物の処分区画に建設され、放射性廃棄物パッケージを受け入れるようには設計されていないが、その運用と挙動が対照される処分構造物(長寿命中レベル放射性廃棄物の処分坑道、高レベル放射性廃棄物の処分孔)を代表するもの。対照される処分構造物で直接モニタリングを行うことが不可能な場合に使用される。 []

(post by eto.jiro , last modified: 2025-01-23 )