米国のエネルギー省(DOE)は、2026年1月28日に、使用済燃料処分を含むすべての核燃料ライフサイクルに関する施設を含む「原子力ライフサイクル・イノベーション・キャンパス(以下「イノベーションキャンパス」という。)の立地について、州の関心表明を促す情報提供依頼(RFI)を発出した。このRFIは、2025年5月23日に発行された大統領令 等に沿ったもので、燃料製造から廃棄物処分までのすべての原子力施設を立地するとともに、使用済燃料等を安全かつ責任ある形で管理する道を開く取組であるとしている。DOEは、初期施設を2027年に操業開始するなど迅速な取組を目指しており、州に対して2026年4月1日までに関心表明を提出するように求めている。
イノベーションキャンパスは、燃料製造、濃縮、使用済燃料再処理、及び放射性廃棄物処分の施設が必須とされるほか、先進炉を用いた発電施設、先進的な製造工場やデータセンターなどを併設することも可能とされている。DOEの情報提供依頼(RFI)では、イノベーションキャンパスを構成する機能・能力の例として、以下が挙げられている。
| 1. 核燃料再処理/リサイクル | 2. 放射性廃棄物処分 |
| 3. 燃料製造 | 4. 転換 |
| 5. ウラン濃縮 | 6. 再転換 |
| 7. データセンター建設・操業 | 8. 先進炉 |
| 9. ウラン採鉱・製錬 | 10. 医療・産業用同位体生産 |
| 11. 先進的な製造及びその他支援 | 12. 核拡散抵抗性 |
| 13. 雇用創出 | 14. 安全性 |
| 15. 環境の管理(Stewardship) | 16. 安全な輸送ネットワーク |
| 17. 廃止措置及びサイト修復 |
州は、雇用創出やインフラ投資といった戦略的に優先したい事項とともに、イノベーションキャンパスに含む施設や資金負担、連邦政府との関係などを明確に示すことが求められている。DOEは、1)民間・州の資本の優先化の方法、2)法律・予算内で限定的な連邦政府支援の活用方法、3)納税者を保護するための財務的保証方法について情報を求めるとして、州に対する質問事項を以下のとおり示している。
| 1. 関心度 | 2. 州内の候補サイト |
| 3. 民間パートナーの候補 | 4. 候補サイトのインフラ |
| 5. 規制枠組み及び許認可支援 | 6. 法的・政治的要件 |
| 7. 州の求める支援のタイムライン | 8. 予期される公衆・ステークホルダーの懸念 |
| 9. ステークホルダー関与戦略及び協力メカニズム | 10. 高レベル放射性廃棄物管理・処理・処分 |
| 11. 州固有の制約事項 | 12. 環境・安全管理(Stewardship) |
| 13. 輸送経路 | 14. 契約枠組みの提案 |
| 15. 技術及び産業パートナーシップ | 16. 二次的廃棄物の管理 |
| 17. 連邦政府から提供が必要なデータ/技術/装備 | 18. 対外輸出能力 |
| 19. 制約・禁止要因 | 20. その他の考慮事項 |
| 21. 追加的な州の情報 | 22. 財務的責任、コストシェア、保証 |
| 23. 収入源及びコスト回収アプローチ |
このうち放射性廃棄物管理については、長期管理が必要な廃棄物をいかに管理するか、具体的には中間貯蔵施設、再処理オプション、超深孔処分を含む地層処分場など州が設置を提案する施設、及び州・連邦の環境規制の遵守方法について示すとともに、既に存在する施設(許認可発給済の貯蔵サイト等)も具体的に示すことが求められている。また、予期される公衆等の懸念については、特に再処理やプルトニウムの取扱い、放射性廃棄物処分など機微な活動について、州内で予期される課題があるか、情報が求められている。
DOEの情報提供依頼(RFI)では、燃料サイクルや廃棄物、核拡散リスク及び公衆の懸念など原子力開発に付随する課題は、先進技術、頑健な規則、積極的な関与により対処可能であり、経済成長等のメリットがこうした課題からくるデメリットを上回るとの見解を示している。また、財務的リスクや長期的な責務の明確化のため州とDOEの間で法的拘束力のある協定締結が必要とされており、廃棄物管理については使用済燃料等の管理に係る責任を協定において定義することが求められている。なおRFIでは、この協定締結を可能とする法的枠組み・権限についても示されているが、1982年放射性廃棄物政策法(1987年修正)については、資金確保枠組みや廃棄物管理責任などについて改正が必要と見込まれている(下記枠囲み記事参照)。
また、イノベーションキャンパス実現のための資金調達モデルは、産業界の知見と資本を活用するため民間投資を優先し、DOEが費用分担や債務保証など既存の法的権限を通して補完的に支援する形が考えられている。民間投資の主な候補としては、原子力産業、ハイテク・AI企業などが筆頭に挙げられている。
なお、DOEは、イノベーションキャンパスの情報提供依頼(RFI)は、あくまで情報収集、計画策定のためのものであり、立地のための公募ではないことを強調している。
1982年放射性廃棄物政策法(1987年修正)
米国では高レベル放射性廃棄物処分の基本法として、1982年放射性廃棄物政策法(1987年修正)が制定されている。同法では、使用済燃料等の処分責任は連邦政府(DOE)にあるとした上で、処分のための費用として原子力事業者が放射性廃棄物基金に拠出を行うこと、DOEが地層処分場を開発・操業して民間の使用済燃料を引き取ることなどが規定されている。さらに1987年修正では、ネバダ州ユッカマウンテンがサイト候補地として指定されている。2002年には連邦議会でユッカマウンテンが処分場サイトに正式に決定され 、DOEが2008年6月に許認可申請書を原子力規制委員会(NRC)に提出 して許認可審査が開始されている。2009年にオバマ政権がユッカマウンテン計画の中止を表明し 、許認可審査は停止状態にあるが、1982年放射性廃棄物政策法は改正されておらず、法律上はユッカマウンテンが処分場サイトとして指定された状態となっている。
【出典】
- エネルギー省(DOE)プレスリリース、「DOEは原子力ライフサイクル・イノベーション・キャンパスの立地州を求める」(2026年1月28日)
https://www.energy.gov/articles/department-energy-seeks-hosts-nuclear-lifecycle-innovation-campuses - エネルギー省(DOE)、「原子力ライフサイクル・イノベーション・キャンパスの設置に関する情報提供依頼(RFI)」(2026年1月28日)
https://sam.gov/workspace/contract/opp/4e30976204964df3b556ff7149dae444/view
(post by tokushima.hideyuki , last modified: 2026-02-02 )
