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《米国》2010会計年度の予算要求-ユッカマウンテン処分場プログラム廃止に向け大幅減額

2009年5月7日、米国で大統領の2010会計年度1 の予算教書の詳細版が連邦議会に提出され、大統領府管理・予算局(OMB)のウェブサイトで公表されるとともに、エネルギー省(DOE)のウェブサイトでDOEの予算要求資料が公表された。予算教書の詳細版では、オバマ政権はユッカマウンテン処分場プログラムの廃止を提案することが示されており、処分場関連の予算要求額は1億9,640万ドルと、既に大幅に削減された2009年度の予算額からさらに約1億ドル少ないレベルとなっている。この予算は、原子力規制委員会(NRC)による処分場の許認可手続を続けるために必要な費用、及び放射性廃棄物処分に向けた新しい戦略を立案する努力にのみ資金を提供するものとされている。この予算削減及び新戦略検討の方針は、2009年2月に公表された予算教書の概要版でも示されていた。(米国の予算制度については、こちらを参照)

2010年度の予算教書の詳細版では、廃止・削減及び節約を行うプログラムを特別に示した資料も公表されており、ユッカマウンテン処分場プログラムも中止プログラムの一つとして示されている。そこでは、オバマ政権がユッカマウンテンプログラムの廃止を提案するのは、同プログラムを中止し処分の代替案を開発するという同政権の決定を実施に移すものであり、土地収用、輸送関連を含め処分場開発に係る全ての資金を削減するものとしている。また、健全な科学に基づいて立地地域の住民を含めた広い支持が得られるような、ユッカマウンテン処分場よりも良い解決策が必要であり、新しいオプションを検討して大統領に勧告する専門家の特別委員会(ブルーリボン委員会)をエネルギー長官が立ち上げるものとしている。

下の表はこの2010年度の予算要求におけるユッカマウンテン関連の要求額について、2009年度の要求額と歳出予算決定額とを比較する形で示したものである。

(単位:USドル)
  民間分 国防分 合計
2009年度要求額(a)  2億4,737.1万  2億4,737.1万  4億9,474.2万
2009年度歳出予算決定額(b)  1億4,539万  1億4,300万  2億8,839万
2010年度要求額(c)  9,840万 9,840万 1億9,680万
 前年度要求比(c-a)  △1億4,897.1万  △1億4,897.1万  △2億9,794.2万
 同歳出予算比(c-b)   △4,699万   △4,460万   △9,159万

なお、連邦議会上院の実質トップであるリード議員(民主党、ネバダ州選出)は「ユッカマウンテンは終わり」とのプレスリリースを出しているが、原子力エネルギー協会(NEI)のニュースリリースでは、ユッカマウンテン関連予算削減及びプログラム中止表明が行われるのであれば電気料金支払者による基金への拠出も不要となるはずであるなどとして批判している。

【出典】


【2009年5月13日追記】

ニューヨークタイムズ紙は、2009年5月11日付の記事において、オバマ政権にとって最も経済的で政治的に好ましい解決策は、ユッカマウンテン処分場について原子力規制委員会(NRC)の判断に委ねることであるとのエネルギー省(DOE)の民間放射性廃棄物管理局(OCRWM)前長官の指摘を紹介した。また、今後設置が考えられている特別委員会においてユッカマウンテンの代替案を検討することは、パンドラの箱を再度開けるようなものであり、1978年当時のカーター政権は、処分場サイトを検討するために省庁間レビューグループを設置し、これによりDOEはユッカマウンテンを含む9カ所の候補地を選定したという経緯を示している。さらに、あらゆる処分オプションの検討は既に行われており、最も良い解決策は、新しい技術が開発されるまで、ユッカマウンテンを監視付き回収可能貯蔵(MRS)のためのサイトとすることだとする元上院議員の意見を紹介している。

  • ニューヨークタイムズ紙2009年5月11日付記事、(http://www.nytimes.com/cwire/2009/05/11/11climatewire-the-screw-nevada-bill-and-how-it-stymied-us-12208.html?pagewanted=1)

【2009年5月22日追記】

ニューヨークタイムズ紙は、2009年5月21日付の社説において、2010年度の予算教書に示されたユッカマウンテン処分場プログラムの予算が、原子力規制委員会(NRC)の許認可プロセスを完了するためにエネルギー省(DOE)が必要とする額を下回っている可能性があるとしている。また、NRCの安全審査において、DOEが技術的な質問に解答するための外部専門家を確保することができない可能性が大きいことを指摘している。さらに、オバマ政権などが立ち上げる予定の特別委員会(ブルーリボン委員会)について、ユッカマウンテンプロジェクトが、科学的に健全なものであるかどうか判断する上で有効であるとしている。

同社説では最後に、この削減された予算を承認する前に連邦議会は許認可プロセスを維持するために十分な予算を確保する努力が必要であるとしている。加えて、ユッカマウンテンが高レベル放射性廃棄物の処分場として適しているかはわからないとしたうえで、政府が20年以上の歳月と100億ドル近い費用をかけて許認可手続きの段階に至った状況を鑑み、「許認可手続きの誠実な評価を行わないことは賢明ではない(it would be foolish not to complete the process with a good-faith evaluation)」、「オバマ大統領及びリード議員は、科学が示す可能性のあることを恐れているのであろうか(Are Mr. Obama and Mr. Reid afraid of what the science might tell them?)」との表現で結んでいる。

  • ニューヨークタイムズ紙2009年5月21日付社説、(http://www.nytimes.com/2009/05/21/opinion/21thu2.html)
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  1. 米国における会計年度は前年の10月1日から当年9月30日までの1年間となっており、今回対象となっている2010会計年度の予算は2009年10月からの1年間に対するものである。 []

(post by inagaki.yusuke , last modified: 2023-10-11 )