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《米国》処分関連予算を大幅に削減する2010年度予算方針を公表-高レベル放射性廃棄物処分の新たな戦略検討の意向も表明

米国で2009年2月26日に公表された大統領の2010年度の予算方針、及び2009年3月11日の連邦議会上院でのエネルギー長官の証言において、米国の高レベル放射性廃棄物処分のためのユッカマウンテン計画について、2010年度のエネルギー省(DOE)関係の予算を原子力規制委員会(NRC)との許認可手続に必要な費用レベルに削減し、新政権は並行して高レベル放射性廃棄物処分の新たな戦略を検討するとの方針が明らかにされた。

2010年度予算の概要を示した予算方針説明書では、DOEに関する記述の中で、米国の高レベル放射性廃棄物処分のためのユッカマウンテン計画については、原子力規制委員会(NRC)との許認可手続に必要なレベルに予算を削減し、新政権は並行して高レベル放射性廃棄物処分の新たな戦略を検討するとの方針が明らかにされた。大統領府予算管理局(OMB)によれば、DOEの具体的な予算要求は2009年4月に連邦議会に提出される予定とされている。

また、2009年3月11日に上院予算委員会で行われたヒアリングにおいて、エネルギー長官は、「オバマ大統領と私は、ユッカマウンテンは実行可能なオプションではないこと及び高レベル放射性廃棄物の貯蔵(処分)のためのより良い解決策に関する議論を開始することを明確にしてきた」との証言を行っている。』

なお、2010年度予算方針におけるユッカマウンテン関連予算の削減方針に対し、米国の原子力エネルギー協会(NEI)は、ユッカマウンテン処分場開発は継続すべきとの主張と併せて、新政権は放射性廃棄物処分問題を検討する独立の委員会を設置すべきとの見解を表明している。また、ユッカマウンテン処分場開発に反対の立場を取る連邦議会上院多数党院内総務のリード上院議員(ネバダ州選出、民主党)は、予算削減を歓迎する声明を出すとともに、オバマ政権及び産業界とともに放射性廃棄物の最良な解決策の検討を行う意向を表明している。ワシントンポスト紙は、大統領のクリーンエネルギービジョンの実現には原子力が欠かせなく、放射性廃棄物の安全な処分にはもっと真剣に配慮すべきであるなどとする社説を掲載している。

【出典】

【2009年3月24日追記】

上院予算委員会が2010年度大統領予算方針に対する見解と見積りを求めたことについて、上院エネルギー・天然資源委員会は、2009年3月12日付け書簡において、ユッカマウンテン処分場に係る今後の作業を放棄する提案については、DOEの契約義務違反として利息を含めて約300億ドルの支払いが裁判所から命じられることもあり得ることを上院予算委員会は認識すべきとの指摘を行った。

また、本書簡でも示されているが、DOEは1982年放射性廃棄物政策法(NWPA)の規定に基づいて原子力発電事業者と契約を締結しており、原子力発電事業者は放射性廃棄物基金への拠出金支払を行い、DOEは1998年1月31日までに使用済燃料を引き取ることとなっている。処分場開発の遅れにより使用済燃料の引き取りが行われていないため、多くの訴訟が原子力発電事業者等から提起されており、債務不履行による賠償金の支払が既に一部確定している。

・上院エネルギー・天然資源委員会、2009年3月12日付書簡「見解と見積り」〔約750KB〕

(post by 原環センター , last modified: 2023-10-11 )