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《英国》地層処分施設のサイト選定における重点エリアを特定

英国の地層処分事業の実施主体であるニュークリアウェイストサービス(NWS)は、2025年1月30日付けのプレスリリースで、3つの調査エリア(カンバーランド市:ミッドコープランド及びサウスコープランド、リンカンシャー州:テッドルソープ)において、今後の地層処分施設(GDF)のサイト評価に向けた取組を重点的に行う「重点エリア」(Areas of Focus)を特定したことを公表した。NWSは重点エリアの特定について、不可逆的なものではなく、調査の進展に伴い改定される可能性があると指摘している。また、重点エリアの特定による調査エリアの範囲変更は行われないと明言している。

■これまでの経緯:「調査エリア」の特定

英国政府の2018年政策文書『地層処分の実施-地域社会との協働:放射性廃棄物の長期管理』(以下「2018年政策文書」という)で設定されたサイト選定プロセスでは、地層処分施設としての適合性を確認する対象地域として、複数の「調査エリア」(Search Area)を特定することとしている。調査エリアの範囲は、選挙区を最小単位として設定し、NWSによる候補サイト検討の対象区域に関係する全ての選挙区が含まれる。

英国では、地層処分施設の設置に関心を示す者、または、設置候補エリアを提案したい者が、地層処分事業の実施主体(現在はNWS)と初期対話を開始することができる。初期対話を経て、当該地域にワーキンググループが設置され、調査エリアの特定・提案を行うと共に、「コミュニティパートナーシップ」設立に向けた準備を行う。コミュニティパートナーシップは、調査エリア特定以降のNWSとの協議主体であるとともに、経済振興、環境・福祉向上を目的とした資金提供の受領者でもある。こうした手順を経て、英国では2025年1月までに、上述のとおり2つの自治体で3つの調査エリアが特定され、コミュニティパートナーシップが設立された。

■「重点エリア」について

広範囲に及ぶ調査エリアの中で、NWSが詳細な調査を優先的に実施するために絞り込んだエリアを「重点エリア」として特定した。NWSは重点エリアを地層処分施設を構成する3つの要素(「地下」「地上」「アクセス坑道」)に分け、構成要素ごとに絞り込み方法を設定し、重点エリアの特定を行った。下表に絞り込みにおけるステップと方法を示す。

重点エリア 絞り込み方法
ステップ1:地下重点エリア
地下施設の設置に適した地質を持つ可能性のあるエリア
既存の地質学的データを用いて絞り込み
ステップ2:地上重点エリア
地上施設を設置する可能性のある調査エリア内のエリア
地層処分施設(GDF)に関する国家政策声明書(NPS)に定められた評価基準等に基づき、コミュニティや自然環境影響等の制約が少ないエリアから絞り込み
ステップ3:アクセス坑道重点エリア
地上施設と地下施設を結ぶアクセス坑道の潜在的なルートの特定
居住地の地下を避けるなどコミュニティへの影響、地質学的特性などを考慮して絞り込み

■特定された重点エリア

今回特定された重点エリアの地図を以下に示す。今回特定された地下重点エリアは全て、沖合の領海内(約22km)の設定となっている。ミッドコープランド調査エリアとサウスコープランド調査エリアの地下重点エリアは共通しており、両調査エリアの地上重点エリアとそれぞれ接続する領域が、アクセス坑道重点エリアに特定されている。また、ミッドコープランド調査エリアの地上重点エリアは2か所、他2つの調査エリアでは1か所が特定されている。

特定された重点エリア
(ミッドコープランド調査エリアとサウスコープランド調査エリア)

特定された重点エリア(テッドルソープ調査エリア)

■今後の予定

重点エリアの特定を受け、NWSは2030年代にサイトを決定することを目標とし直近のスケジュールと、地層処分事業全体のスケジュールをそれぞれ以下のように示している。

2030年までのスケジュール

  • 実施中
    重点エリアの評価を継続。机上・現地調査や土地所有者との協議を行い、地層処分施設のサイト候補地としての可能性を十分に理解する。
  • 2025年12月~2026年春
    ボーリング調査に進むコミュニティを決定し、英国政府の承認を得る。
  • 2028年秋/冬
    コミュニティ内に複数の重点エリア(例えば、2カ所で地上重点エリアを検討している)がある場合、必要に応じ、重点エリアを一つに絞り込む。
  • 2025年春~2028年春
    サイト特性調査に向けた申請書類の準備。サイト特性調査の正確な実施地点は未定であるが、領海内の沿岸域及び陸上の両方で行う予定。
  • 2028年春/夏
    サイト特性調査を実施するため、申請書を規制機関に提出する。
  • 2030年まで
    必要な許認可の取得後、洋上及び陸上でのサイト特性調査を開始予定。

英国の地層処分事業全体のスケジュール

 

【出典】

(post by f-yamada , last modified: 2025-02-05 )