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《フランス》地層処分場の設置許可申請書の技術審査の第1段階の結果が公表

フランスの原子力安全機関(ASN)は、2024年6月10日付のプレスリリースにおいて、放射性廃棄物管理機関(ANDRA)が2023年1月に提出した地層処分場(Cigéo)の設置許可申請書に関して、技術審査の第1段階の結果を公表した。今回の公表は、Cigéoの安全評価に使用されている基礎データの評価結果に関するものである。技術審査は、ASN内に設置された廃棄物常設専門家グループ(GPD)と、ASNを支援する放射線防護・原子力安全研究所(IRSN)によって行われている。GPDは、ANDRAが示した処分場サイトや処分システムの構成要素、処分パッケージのインベントリに関する知見について、地層処分場の安全評価を行うのに十分な水準にあるとしつつ、今後の評価のため、いくつかの追加的な取組をANDRAに勧告した。

■評価の課題と手順

技術審査は、以下の3つの主な課題と横断的課題について行われており、課題1から始められ、その結果が他の課題の審査に用いられる。課題2及び3の審査結果は今後公表される予定である。

  • 課題1: Cigéoの安全評価に使用されている基礎データの評価
  • 課題2: 地上、地下施設の操業時の安全評価
  • 課題3: 閉鎖後の安全評価
  • 横断的課題: 課題1~3の検討を通じたパイロット産業フェーズでの安全実証の評価、廃棄物パッケージの回収可能性の操業時・閉鎖後の安全性への影響等

パイロット産業フェーズ

パイロット産業フェーズは、2013年のCigéoプロジェクトに関する公開討論を経て、2016年に法的に導入された。その目的は、地層処分の本格的な操業に先立ち、実際の条件下で技術的・運用的機能を段階的にテストし、施設の可逆性を確認し、特に、原位置試験プログラムを通じてCigéoの安全性を実証することである。ANDRAは、処分場の立坑や斜坑の建設並びに高レベル放射性廃棄物のうち比較的発熱量の小さなものと、長寿命中レベル放射性廃棄物の試験的処分を実施する予定である。パイロット産業フェーズの結果を踏まえて、地層処分の継続条件に関する法律が制定され、その後、地層処分場の本格的な操業許可が発給可能となる。

ASNは、課題1「Cigéoの安全評価に使用されている基礎データの評価」における評価項目として、以下を示していた

  • 安全評価に関するサイトの知識
  • 処分場の構成要素とその変遷
  • 廃棄物パッケージの基準インベントリ及び予備インベントリとその特性

課題1の技術審査は以下のような手順で行われた。

  • IRSNでは2023年6月7日付のASNの書簡での要請により、自身が所有するトゥルヌミール地下研究所での実験的研究やモデル化研究に基づいた専門的評価を進め、2024年4月12日にASNに意見書と評価報告書を提出した。
  • 一方で、ASN内に設置された廃棄物常設専門家グループ(GPD)は、2024年3月8日付のASNの書簡での要請により、他の常設専門家グループのメンバー並びにIRSNの支援を受けて評価を進め、2024年4月24日と25日に開催された会合を経て、GPDとしての勧告を含む意見書を取りまとめた。
  • IRSN並びにGPDにおける評価では、設置許可申請書の記載事項とともに、技術審査の途中でANDRAから得られた追加情報や、2024年3月7日にANDRAがASNに提示した、Cigéoの安全確保のための今後の活動に関する約束事項が検討対象とされた。
  • GPDの意見書を受け、ASNは2024年5月30日に、ANDRAに対し、追加情報に関する要望を書簡にて提示した。

■課題1「Cigéoの安全評価に使用されている基礎データの評価」の評価結果

GPDは意見書において、ANDRAが処分場サイト、処分システムの構成要素、廃棄物パッケージの予備インベントリに関する確かな知識ベースを獲得したと考えたこと、これらのデータは、設置許可申請書の段階で地層処分場の安全性を評価するのに十分であると評価している。また、処分場の本格的な操業に先立つ、パイロット産業フェーズは、地層処分場の安全性を実証するために不可欠な段階であるとの意見を述べている。

一方、GPDは意見書において、以下の3つを勧告している。このうち勧告1と勧告2については、IRSNが意見書にて示した2つの勧告の内容と同様である。

勧告1:

図1 地層処分場(Cigéo)の模式図(ANDRAの設置許可申請書を元に原環センターにて加筆)

高レベル放射性廃棄物処分区画(図1参照)の下方の、母岩の粘土層より約200m以深の地層において、三次元弾性波探査で確認された南北構造に沿った調査プログラムを実施し、これらの構造が母岩の粘土層の特性に及ぼし得る影響を評価すること。
この調査プログラムは、遅くとも、高レベル放射性廃棄物処分区画につながる連絡坑道の掘削の決定前に実施されるべきである。ANDRAは、高レベル放射性廃棄物処分区画の開発前に実施されるパイロット産業フェーズへの評価を踏まえ、これらの構造が母岩の粘土層の特性に影響を及ぼす場合の措置を正当化しなければならない。

勧告2:

立坑(図1参照)の掘削前に、岩盤への損傷を最小限に抑えるために選択された掘削方法、少なくとも、将来的にプラグが設置される部分における局所的な掘削方法を提示すること。

勧告3:

図2 高レベル放射性廃棄物処分孔の模式図(ANDRAの設置許可申請書を元に原環センターにて加筆)

高レベル放射性廃棄物の処分孔(図2参照)で岩盤と鋼製スリーブの間の環状空間を充填するセメント系材料の存在下で、処分孔内の腐食に関するプログラムを実施し、得られた初期結果を閉鎖後安全評価(課題3)に関する技術審査に間に合う期間内に提出すること。

GPDの勧告3に関連し、IRSNは、ANDRAが設置許可申請書の作成段階で試験を行ったセメント系材料の配合が、処分孔内の鋼製スリーブと処分容器の非常に高い腐食率につながり、鋼製スリーブや処分容器の力学的な機能や放射性物質の閉じ込め機能が保証されないことを指摘した。また、このセメント系材料について他の配合での開発計画が進行中であり、腐食率が低いという初期結果が得られていることを指摘した。

【出典】

(post by eto.jiro , last modified: 2024-06-19 )