Learn from foreign experiences in HLW management

《米国》NRCが低レベル放射性廃棄物の処分に係る連邦規則の改定案を公表

米国の原子力規制委員会(NRC)は、2024年6月12日に、低レベル放射性廃棄物の処分に係る連邦規則(10 CFR Part 61等)の改定案(以下「規則改定案」という。)を公表した。規則改定案は、10年以上検討されてきた10 CFR Part 61「放射性廃棄物の陸地処分のための許認可要件」の改定とともに、従来は具体的な規定が置かれていなかったクラスCを超える(GTCC)低レベル放射性廃棄物(以下「GTCC廃棄物1 」という。)の処分に関する規定も含む統合的なものとなっている。

規則改定の背景・経緯

10 CFR Part 61は、1982年に発行された連邦規則であり、例えば、劣化ウランなどの当時の想定とは大幅に異なる量や濃度の廃棄物の発生が見られるようになったことなどが規則改定の背景として挙げられている。今回の規則改定の取組における最初の規則改定案のドラフトは、2013年7月に出されており、以後10年以上にわたって検討が行われてきた。

一方、GTCC廃棄物の処分に関する規制案の検討は、GTCC廃棄物の低レベル放射性廃棄物処分場での受入れを検討しているウェイスト・コントロール・スペシャリスト(WCS)社 を管轄するテキサス州から、法的権限の明確化が求められたことを契機として開始された 。GTCC廃棄物処分の規制案は、10 CFR Part 61の改定作業とは別の枠組みとして検討が行われ、2019年7月にはGTCC廃棄物の処分に係る規制基盤(regulatory basis)案が公表されていた

その後、2020年10月に、GTCC廃棄物処分の規制案の検討も10 CFR Part 61の規則改定作業の中で統合的に行うことをNRCスタッフが提案し、2022年4月5日にNRC委員が承認した以降、統合的な規則改定の検討が行われてきた。

規則改定案の概要

規則改定案は、処分場サイト固有の廃棄物受入基準の策定を認めるなど、従来の10 CFR Part 61の枠組みを変えるものとなっている。また、低レベル放射性廃棄物の定義が変更されてTRU廃棄物も含まれることとなり、GTCC廃棄物の浅地中処分も明記されている。規則改定案を示した文書には、主要な規定として以下が示されている。

【主要な規定】

  • 偶発的な侵入者を保護するための評価
  • 相当量の長寿命放射性核種を含まないサイトについては1,000年、相当量の長寿命放射性核種の受入予定サイトについては10,000年を遵守期間として指定
  • 相当量の長寿命放射性核種が処分された場合、閉鎖から10,000年以降に対する性能期間(performance period)解析
  • 処分場で廃棄物を隔離し、環境への放出を制限することが可能という安全性の根拠をまとめたセーフティケースの開発
  • サイト閉鎖のために必要な技術的解析の改定
  • 技術的解析の結果に基づいたサイト固有の廃棄物受入基準(WAC)の策定、または、既存の低レベル放射性廃棄物の分類要件に基づく一般的なWACの使用
  • 戦略的重要性の低い特殊核物質(SNM)、または、カテゴリーIII2 の量のSNMを含む低レベル放射性廃棄物に適用される物的防護要件の明確化
  • GTCC廃棄物に関する技術的解析(操業の安全評価及び追加的な廃棄物特性要件の実証のための解析を含む)
  • GTCC廃棄物、または、相当量の長寿命放射性核種の受入予定のない既存許認可保有者のため、規則改定案の一部要件の代替として既存要件への適合を認めるオプション
  • 遵守期間内の一般公衆の年間線量限度を0.25mSvと規定
  • 偶発的な侵入者の年間線量限度を遵守期間内は5mSvとし、性能期間(performance period)中は合理的に達成可能な範囲で低減されること
  • 半減期が5年を超えるα核種濃度が10,000nCi(37mBq)/gを超えるGTCC廃棄物は、一般的に浅地中処分は許容されない
  • 処分前の貯蔵中及び処分のための定置中におけるSNMの臨界事故を回避するための要件は、10 CFR 71.15(c)3 での非核分裂性物質として免除要件を満たす放射性廃棄物には適用されない
  • 10 CFR 70.244 の対象となる量のSNMを含むGTCC廃棄物の浅地中処分には、処分後の核分裂性物質の再濃縮を制限する設計特性(design feature)を含める
  • 浅地中処分の規制要件を満たし、原子力法(AEA)第274c条5 に基づく規制権限をNRCが保持すべきな程度の危険性が認められないGTCC廃棄物については、NRCから許認可権限が委譲されている協定州(Agreement State)による規制を許容

今後の流れ

規則改定案の承認を求めるNRCスタッフからNRC委員宛の2024年5月29日付文書(SECY-24-0045)には、規則改定案がNRCの委員会で承認されれば連邦官報での告示を行うとして、連邦官報告示文書案が添付されている。連邦官報での告示後は、90日間のパブリックコメントの募集及びパブリックミーティングの開催が計画されている。規則改定案の連邦官報告示の際には、ドラフト版の実施ガイダンス「10 CFR Part 61の技術的解析の実施ガイダンス」(NUREG-2175、Rev.1)も公表する予定が示されている。

なお、SECY-24-0045文書には、GTCC廃棄物処分の規制基盤(regulatory basis)案へのコメントを集約した文書も添付されている。2019年7月に公表された規制基盤案に対しては、環境団体の多数の同一書式コメントのほか、公衆、環境団体、産業界、先住民族、州機関やエネルギー省(DOE)から70件を超えるコメントが寄せられており、NRCの回答が示されている。

 

米国におけるGTCC廃棄物処分の規制枠組みと検討

米国では、GTCC廃棄物及びDOEが管理するGTCC類似廃棄物(GTCC廃棄物とGTCC類似廃棄物とを合わせて以下「GTCC廃棄物等」という。)は、連邦政府が処分責任を有し、DOEがNRCの許可を受けた施設で処分すべきことが「1985年低レベル放射性廃棄物政策修正法」で規定されている。現行のNRCの連邦規則10 CFR Part 61では、NRCが個別に承認した場合を除き、GTCC廃棄物等は地層処分しなければならないことが規定されている。

GTCC廃棄物等の実施主体となるDOEは、2016年2月に公表した最終環境影響評価書(FEIS)において、廃棄物隔離パイロットプラント(WIPP)での地層処分、あるいは商業低レベル放射性廃棄物処分施設における陸地処分を推奨する処分方策とした。その後、2017年11月に連邦議会に提出した報告書では、WIPPのフル操業が2021年まで見込まれないことから、商業低レベル放射性廃棄物処分施設における陸地処分を主として考慮しているとのDOEの見解が示されていた。なお、GTCC廃棄物の処分方策については、2005年エネルギー政策法において、DOEは連邦議会の措置を待つことが義務づけられている。

 

【出典】

 

 

  1. 米国では、1985年低レベル放射性廃棄物政策修正法、原子力規制委員会(NRC)の連邦規則(10 CFR Part 61「放射性廃棄物の陸地処分のための許認可要件」)において、地下30mより浅い浅地中処分が可能な低レベル放射性廃棄物としてクラスA、B、Cの分類が定められている。GTCC廃棄物は、放射能濃度などがクラスCの制限値を超える低レベル放射性廃棄物であり、連邦規則に基づいて操業されている浅地中処分場での処分をNRCが承認しない場合、地層処分しなければならないことが現行規則では規定されている。 []
  2. 最も少ない量のSNMを含む分類
    ・20%以上濃縮ウラン235 1,000g以上
    ・ウラン233 500g以上
    ・プルトニウム 500g以上
    ・ウラン235の含有量及びウラン233を2倍した重量、プルトニウムを2倍した重量の合計 1,000g以上
    ・ウラン235(10%以上20%未満にウラン濃縮を行ったもの) 10,000g以上 []
  3. 「放射性物質の梱包及び輸送」
    https://www.nrc.gov/reading-rm/doc-collections/cfr/part071/full-text.html []
  4. 「特殊核物質の国内許認可」
    https://www.nrc.gov/reading-rm/doc-collections/cfr/part070/full-text.html []
  5. https://www.govinfo.gov/content/pkg/COMPS-1630/pdf/COMPS-1630.pdf []

(post by inagaki.yusuke , last modified: 2024-06-18 )