Learn from foreign experiences in HLW management

《韓国》地下研究所サイトの公募開始

韓国の産業通商資源部(MOTIE)及び韓国原子力環境公団(KORAD)は2024年6月18日に、地下500mに設置する地下研究所サイトを立地する自治体(広域自治体や基礎自治体、または、これらのコンソーシアム)1 の公募を開始した。地下研究所は、高レベル放射性廃棄物(使用済燃料)の処分システムの試験・研究、処分技術の開発を目的として、処分施設とは別に設置されるものであり、放射性廃棄物の持ち込みは行われない。地下研究所を立地するサイトは2024年内に決定される。地下研究所の建設は2026年から2032年にかけて実施され、2030年に施設の一部の供用を開始後、約20年間供用される予定である。

■事業内容

2021年12月に第10回原子力振興委員会において確定した「第2次高レベル放射性廃棄物管理基本計画」 及び2024年2月に第11回原子力振興委員会において確定した「高レベル放射性廃棄物の研究開発ロードマップ」 では、2種類の地下施設をそれぞれ別のサイトに建設することが計画されている。

1つ目は、今回の立地サイトの公募を行う研究専用の地下研究所であり、本施設を用いて2050年頃までに処分技術の開発を進める計画が示されている2

2つ目は、高レベル放射性廃棄物(使用済燃料)の処分施設3 の許認可取得のため、サイト特性調査を実施する地下施設であり、将来的には、この地下施設を処分施設に拡張する計画である。なお、この地下施設のサイトは今回の公募対象ではない。

今回、立地サイトを公募する研究専用の地下研究所の設置にかかる資金調達や関係施設の設置等は、韓国政府と受け入れ自治体が分担して行う。募集公告によれば、研究所の地上・地下施設の設計や建設は韓国政府が(政府事業費:約5,138億ウォン(約575億円、1ウォン=0.11円として計算))、地上の事業施設や研究所へのアクセス道路、電力網などの付帯施設は自治体が資金を負担して設置し、提供する。

■地下研究所サイトの評価基準

地下研究所サイトの公募は競争形式で行われ、立地を希望する自治体の誘致計画書及び現地調査の結果を評価委員会が評価し、点数の高い自治体を選定する。評価委員会は、応募自治体との利害関係を踏まえて人選を行い、2024年7月中旬以降に活動を開始する。

評価委員は全ての応募自治体を訪問して一般的な視察を行うが、現地調査による評価は別途、誘致計画の評価で上位2位内の候補地にのみ実施する4 。評価項目は、母岩の状況や地上施設を含む立地といった地下研究所に関する「主要要件」、設置・施工のしやすさや災害・環境影響といった「一般要件」に加え、地元自治体における受容性や、事業への協力姿勢を含む「受容性」の3つの観点に分けられている。評価項目及び配点は以下のとおりである。

 

配点

評価項目

概要

主要要件
(35点+
加点5点)

岩盤の適合性

  • 単一の結晶質岩の岩盤が6万m2以上(超える場合加点)
  •  母岩の分布・連続性

面積・立地の妥当性

  •  敷地面積3.6万m2以上(超える場合は加点)で、確保・購入が容易
  •  河川の有無
  • 半径2km以内にM.4.0以上の震源がない、予定地内に温泉、火山がない

一般要件
(45点)

設置・施工のしやすさ

  •  アクセス道路、工事計画などの妥当性
  • 通信、電力アクセスの状況、設置計画の妥当性、関係各所との調整状況
  •  開発障壁(墓地、住宅ほか)の有無と解決の可能性
  • 土砂置き場へのアクセス可能性

災害影響

  • ダム、堤防、軍事施設ほかの重要施設との近接性と影響度
  • 自然災害に対する安全性

自然・生活環境影響

  • 周辺環境や生態系への影響(世帯数、自然・文化遺産等からの距離など)

地域経済影響

  • 地域発展への貢献、バランスのとれた国家発展への貢献の可能性

受容性
(20点)

住民受容

  • 自治体住民代表(基礎自治体下の行政区分の長等)の同意割合
  • 住民説明会や協議手続きの実施の有無、及び住民の参加度

自治体の支援意欲

  • 自治体議会等の同意
  • 現地の規制の適切性、苦情対応、行政措置の適切性
  • 自治体とKORAD間の役割分担、連携計画の妥当性
  •  研究施設供用終了後の支援計画、プロジェクト遅延時の補償計画等

 

■今後の予定

地下研究所の立地に関心を持つ自治体は、2024年7月19日までにKORADに対し、意思表明書を、2024年8月2日までに誘致計画書を提出する。2024年8月中に評価委員会が計画書の評価を行い、2024年12月第2週までに上位2自治体における現地調査を実施した後、2024年12月第3週までに最終評価を行って立地サイトを決定する。その後、2024年12月中には、選定された自治体とMOTIE、KORADの間で最終的な条件に関する交渉を行い、事業協力協定を締結する予定となっている。

 

 

【出典】

 

  1. 広域自治体は、広域市、特別市、道など。基礎自治体は、我が国の市町村レベルの自治体。 []
  2. 研究専用の地下研究所については、「第1次高レベル放射性廃棄物管理基本計画」に記載されていた。しかし、「第2次高レベル放射性廃棄物管理基本計画」のMOTIEによる案では削除され、その後、第10回原子力振興委員会で確定した計画で復活している。 []
  3. 「第2次高レベル放射性廃棄物管理基本計画」では、地層処分と並行して深孔処分等を考慮している。 []
  4. ただし、応募が3自治体以下の場合は全サイトで現地調査を行う。 []

(post by eto.jiro , last modified: 2024-06-27 )