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《フランス》ANDRAが極低レベル放射性廃棄物処分場の容量拡大の許可を申請

フランスの放射性廃棄物管理機関(ANDRA)は、2023年4月11日付けプレスリリースにおいて、フランス東部オーブ県に位置するモルヴィリエ極低レベル放射性廃棄物処分場(Cires、Le Centre industriel de regroupement, d’entreposage et de stockage:分別・貯蔵・処分産業施設)1 の処分容量の拡大のための環境許可(autorisation environnementale)を2023年4月7日にオーブ県に申請したことを公表した。同処分場は2003年に操業を開始し、約30年間の操業が予定されていたが、当初の予定よりも早いペースで極低レベル放射性廃棄物が発生しており、2029年には処分される廃棄物の量が許可された処分容量(65 万m3)に達する見込みとなった。このため、処分容量を30 万m3拡大し、操業期間を2044年まで延長する計画である。

■モルヴィリエ極低レベル放射性廃棄物処分場(Cires)の概要と処分容量の拡大

モルヴィリエ極低レベル放射性廃棄物処分場(Cires)の処分トレンチの模式断面図

図1 モルヴィリエ極低レベル放射性廃棄物処分場(Cires)の処分トレンチの模式断面図

2003年から2016年にかけてのモルヴィリエ極低レベル放射性廃棄物処分場(Cires)の処分トレンチの容量拡大(ANDRA提供)

図2 2003年から2016年にかけてのモルヴィリエ極低レベル放射性廃棄物処分場(Cires)の処分トレンチの容量拡大(ANDRA提供)

モルヴィリエ極低レベル放射性廃棄物処分場(Cires)の3つの処分区画(ANDRA提供)

図3 モルヴィリエ極低レベル放射性廃棄物処分場(Cires)の3つの処分区画(ANDRA提供)

モルヴィリエ極低レベル放射性廃棄物処分場(Cires)は、地表付近の粘土層に掘削したトレンチ(溝)に廃棄物を処分する構造となっている(図1)。廃棄物の多くは、ドラム缶やフレコンバッグの形で埋設処分されるが、除染済みの使用済燃料輸送容器等の大型の廃棄物は、そのままの形で専用のトレンチに処分される。埋設が完了したトレンチは、雨水の浸入を防止するために覆土が施工される。

今回の処分容量の拡大の許可申請では、現在処分場として許可されている区画の面積を変更せずに、新たに掘削するトレンチを深くして、より高く廃棄物を積み上げることにより、処分容量を拡大する計画である。このようなトレンチの大容量化は以前から段階的に行われており、2007年から操業していたトレンチは1本当たり25,000 m3の処分容量であったが、2016年以降に操業しているトレンチは、同じ長さのトレンチで1本当たり34,000 m3の処分容量を備えている(図2)。

このようなトレンチ毎の処分容量の拡大により、現在処分場として許可されている3つの区画のうち2つ(図3のSection1と2)で許可されている処分容量にあたる65 万m3に対応可能とし、残る1つの未使用区画(図3のSection3)に30 万m3の処分容量を確保する計画である。

 

■処分容量拡大に関する許可申請と今後の予定

モルヴィリエ極低レベル放射性廃棄物処分場(Cires)の容量拡大のプロジェクトは、Acaci (Augmentation de la CApacité du CIres)プロジェクトと名付けられており、環境法典の規定による環境アセスメントの対象となる。ANDRAは、Acaciプロジェクトに関する事前協議に関して国家討論委員会(CNDP)に付託を行い、CNDPが情報提供及び公衆参加を監督する2名の保証人(garants)を2020年12月に任命していた。その後、ANDRAは2021年より保証人のもとで住民との事前協議を進めてきた。

今回、ANDRAがAcaciプロジェクトに関する環境許可の申請をオーブ県に行ったことを受け2 、今後、以下のような工程で審査が行われる予定である。

  • 県の関係機関や環境当局(EA)等の国の関係機関による審査と意見の提出。
  • 意見聴取委員会による公衆及び地方の関係機関を対象とした公開ヒアリングの実施と意見の取りまとめ。
  • 意見聴取委員会により取りまとめられた意見、並びに県衛生・技術リスク評価委員会(Coderst)による審議の結果等を踏まえた、県地方長官(県における国の代表、県知事)による環境許可の決定。

ANDRAは環境許可が得られる時期を2025年頃と見込んでいる。

 

〈参考〉フランスでの極低レベル放射性廃棄物

モルヴィリエ極低レベル放射性廃棄物処分場(Cires)に処分される廃棄物は、主に原子力発電所や燃料サイクル施設、研究所の運転・保守・廃止措置によって生じるものであり、放射能レベルは、一般的に100 Bq/g未満である。

フランスでは、包括的なクリアランス制度は導入されていない。原子力発電所等の原子力基本施設(INB)では、放射性物質で汚染または放射化された可能性があるゾーンを定めており、このゾーンから生じる廃棄物は全て放射性廃棄物として取り扱われる。このようなゾーニング方式は、放射性廃棄物の発生現場で取り扱い方法を容易に判別できるという長所を持つが、一方で極低レベル放射性廃棄物の発生量の増加につながるものである。

フランスでは今後、原子力発電所の廃止措置等により極低レベル放射性廃棄物の発生量が増加すると見込まれている。これに対応するため、今回のモルヴィリエ極低レベル放射性廃棄物処分場(Cires)の処分容量拡大の他、新たな集中型の処分場の建設、廃止措置が行われる発電所周辺での分散型の処分場の建設、極低レベルの金属廃棄物の溶融と除染の後でのリサイクル等が検討されている。

 

【出典】

 

【2024年07月30日追記】

フランスの放射性廃棄物管理機関(ANDRA)は、2024年7月16日付けプレスリリースにおいて、フランス東部オーブ県に位置するモルヴィリエ極低レベル放射性廃棄物処分場(Cires)3 の処分容量の拡大のための環境許可(autorisation environnementale)について、2024年7月12日にオーブ県の県地方長官(県における国の代表、県知事)より発行されたことを公表した。

同処分場は2003年に操業を開始し、約30年間の操業期間が予定されていたが、当初の予定よりも早いペースで極低レベル放射性廃棄物が発生しており、2029年には廃棄物の処分量が許可された処分容量(65万m3)に達する見込みとなった。このため、ANDRAは2023年4月に、同処分場の処分容量を30万m3拡大し、操業期間を2044年まで延長する計画をオーブ県に申請していた。

今回発行された環境許可は、ANDRAによる申請に対し、オーブ県の関係機関や環境当局(EA)等の国の関係機関による審査、一般市民や地方の関係機関を対象とした公開ヒアリング並びに県衛生・技術リスク評価委員会(Coderst)による審議が行われ、これらの結果を踏まえて県地方長官が決定したものである。

ANDRAは2003年より、処分場として使用が許可されていた処分用地を3区画に分け、このうちの第1及び第2区画に当初の許可による処分容量(65万m3)を割り当て、今回処分容量の拡大に関する環境許可が発行された30万m3を第3区画に割り当てる計画である。

今回の許可を踏まえ、ANDRAは今後、以下を実施する予定である。

  • 2024年9月より、第3区画等の整地と考古学的診断を実施。
  • 考古学的診断の結果、問題がなければ、2025年4月以降、新しい処分トレンチの準備作業を開始し、第3区画へのアクセス通路を整備。
  • 2028年頃までに利用可能となるように第3区画を処分場として開発。

 

【出典】

  1. モルヴィリエ極低レベル放射性廃棄物処分場(Cires)は、処分場としての役割のほか、原子力発電以外の分野から発生した廃棄物を極低レベル放射性廃棄物や短寿命・低中レベル放射性廃棄物等に分別したり、処分先未定の廃棄物を一時的に貯蔵する役割を持った施設である。 []
  2. 今回の処分場の容量拡大に必要な環境許可の申請は、県に対して行われたが、これはモルヴィリエ極低レベル放射性廃棄物処分場(Cires)が、同施設で管理される放射性廃棄物の総放射能量が小さいことから「環境保護指定施設」(ICPE)に分類されているためである。一方で、オーブ短寿命・低中レベル放射性廃棄物処分場(CSA)や現在設置許可を申請中の地層処分場(Cigéo)は、原子力発電所等と同じ「原子力基本施設」(INB)に分類されており、主に国に対して許認可の申請が行われる。 []
  3. モルヴィリエ極低レベル放射性廃棄物処分場は、正式名をLe Centre industriel de regroupement, d’entreposage et de stockage(Cires)(分別・貯蔵・処分産業施設)と称する。 []

(post by eto.jiro , last modified: 2024-07-30 )