スウェーデン核燃料・廃棄物管理会社(SKB社)は、2023年4月3日付けのプレスリリースにおいて、短寿命低中レベル放射性廃棄物処分場(SFR)の拡張部分の建設に関して、原子力活動法に基づく申請書を放射線安全機関(SSM)に提出したことを公表した。SKB社が操業するSFRは、ストックホルムの北120kmのエストハンマル自治体フォルスマルクにあり、国内4カ所の原子力発電所から発生した運転廃棄物を1988年から受け入れ、処分している。スウェーデンでは、国内3カ所の原子力発電所で6基の原子炉の廃止措置が進められている。SKB社は、これらの廃止措置に伴う放射性廃棄物の受け入れに対応するために、既存部分との合計で約180,000m3の処分容量を確保する計画である。
SFRはバルト海の浅い海岸部(水深は約5m)の地下60~140mの岩盤内に設置されており、1つのサイロと4つの処分坑道で構成されている(図下側の白色部分)。当初、処分容量63,000m3の処分場として建設され、1988年から原子力発電所の運転に伴って発生する廃樹脂、雑固体などの短寿命運転廃棄物と呼ばれる放射性廃棄物を処分しているほか、医療・研究・産業で発生した放射性廃棄物も受け入れて処分している。2021年末時点での処分量は約40,500m3である。
SFRの拡張部分(図左下の青色部分)は、既設部分よりやや深い地下120~150mの岩盤内に新たに6つの処分坑道を掘削することにより、117,000m3の処分容量を確保する。拡張部分は、主として廃止措置廃棄物の処分用区画であるが、運転廃棄物の一部も処分される計画である。また、SFRの既存部分でも、廃止措置廃棄物の一部が処分されることとなっている。
■SFR拡張計画の経緯と今後の予定
SKB社は2014年12月にSFR拡張計画に関する申請を行っており 、2021年12月にスウェーデン政府による承認を受け 、2022年12月に環境法典に基づく許可を取得していた。今後SKB社がSFR拡張部分の建設を開始するには、2014年12月の拡張許可申請時の安全評価書を更新した予備的安全評価書(PSAR)、建設フェーズにおける安全確保に関する報告書、処分場システムの説明書、及び廃止措置計画書について、放射線安全機関(SSM)の審査を受け、SSMから建設認可を受ける必要がある。
SKB社が2022年9月に公表した「放射性廃棄物の管理及び処分方法に関する研究開発実証プログラム2022」(RD&Dプログラム2022)によると、SFRの拡張部分の建設開始は2020年代半ば、操業開始は2030年頃となる計画である。
なお、SKB社はエストハンマル自治体のフォルスマルクの地下約500mに使用済燃料処分場を設置する計画である。SKB社の使用済燃料処分事業計画は2022年1月にスウェーデン政府の承認を受けており、現在は事業許可の条件を設定するプロセスが継続している 。SKB社は、先に実施することになるSFR拡張部分の建設で得られる経験を使用済燃料処分場の建設に反映する考えである。
【出典】
- スウェーデン核燃料・廃棄物管理会社(SKB社)、2023年4月3日付けプレスリリース(スウェーデン語)
https://skb.se/nyheter/ansokan-for-sfr-ar-nu-inlamnad-till-ssm/ - SKB社、フォルスマルクの短寿命放射性廃棄物処分場の閉鎖後安全性、PSAR版、メインレポート(2023年3月)(英語)
SKB TR-23-01 - SKB社、放射性廃棄物の管理及び処分方法に関する研究開発実証プログラム2022(RD&Dプログラム2022)(2022年9月)〔英語:RD&D Programme 2022. Programme for research, development and demonstration of methods for the management and disposal of nuclear wasste〕
SKB TR-22-11
(post by sahara.satoshi , last modified: 2023-10-11 )