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テッドルソープ調査エリア

英国イングランド東部のリンカンシャー州において、同州イーストリンジー市と地層処分事業の実施主体であるニュークリアウェイストサービス(NWS)1 は、2022年6月30日に、イーストリンジー市で特定されていた調査エリアにおいて、地層処分施設(GDF)の立地を検討する「テッドルソープGDFコミュニティパートナーシップ」を設立した。同コミュニティパートナーシップは、イーストリンジー市にあるテッドルソープ・ガスターミナル跡地における地層処分施設の立地可能性を中長期的なスパンで検討していくグループであり、NWSとコミュニティの対話における中心的な手段となる。今回のコミュニティパートナーシップの設立にあたり、放射性廃棄物を処分する地下部分は、調査エリア沖合の領海内(約22km)の海底下に建設される計画であり、陸地の調査エリア内では放射性廃棄物を処分しない方針を明らかにしている。

なお、2018年12月から開始したサイト選定プロセスにおいて、コミュニティパートナーシップの設立に至ったケースとしては、2022年1月にカンブリア州アラデール市で設立された「アラデールGDFコミュニティパートナーシップ」に続いて今回が4例目となる。

■コミュニティパートナーシップ設立までの経緯

テッドルソープWGエリア

テッドルソープGDFワーキンググループの検討対象エリア
(RWM社の初期評価レポートを元に原環センターにて作成)

イーストリンジー市にあるテッドルソープ・ガスターミナルでは、北海の約100kmを超える沖合にある海上掘削基地と海底パイプラインで結び、日産約400万m3の天然ガスを生産していたが、2018年8月に生産を終了した。ガスターミナル跡地の利用策を検討していたリンカンシャー州議会は、2021年10月にテッドルソープGDFワーキンググループを設置し、地層処分施設のサイト選定プロセスにおける「調査エリア」の特定と提案、並びにコミュニティパートナーシップの設立に向けた検討を開始し、2022年2月には調査エリアを特定していた。調査エリアの範囲は、英国政府の2018年政策文書に基づき、コミュニティや自治体組織等から協議に参加可能な者が特定できるように、選挙区を最小単位として設定される。今回設立されたテッドルソープGDFコミュニティパートナーシップの調査エリアには2つの選挙区が含まれている。

これまで調査エリアの特定を行ってきた「テッドルソープGDFワーキンググループ」は、今回のコミュニティパートナーシップの設立をもって活動を終了し、コミュニティの関与の手段としての役割はコミュニティパートナーシップが引き継ぐことになる。

テッドルソープGDFコミュニティパートナーシップの初期メンバーは、NWS、リンカンシャー州議会、イーストリンジー市議会であるが、地元の議会、ボランティア団体、企業から最大15名のメンバーを募集している。また、より多くの地元住民の参加と議論を促すため、ステークホルダー・フォーラムが設立される予定である。なお、今後より多くのメンバーの参加を得て新たに議長が任命されるまでの間は、ワーキンググループの議長を務めたジョン・コリンズ氏が暫定的に議長を務める。

■コミュニティ投資資金(CIF)の枠組み

英国政府の2018年政策文書に基づき、テッドルソープGDFコミュニティパートナーシップに対して、英国政府から年間最大100万ポンド(1億5,500万円、1ポンド=155円)のコミュニティ投資資金の提供が始まる。地層処分施設プロジェクトは、将来の地層処分施設の建設などに伴って雇用やインフラ、主要投資に関連する恩恵(ベネフィット)を生み出すものの、そのような活動が始まるまでは地元への恩恵は実現しない。そのため英国政府は、自治体が参画する形で地層処分施設の立地可能性を検討する段階から、コミュニティ投資資金(CIF)を提供する。コミュニティパートナーシップは、このコミュニティ投資資金の運用管理の役割を担うことになる。

コミュニティ投資資金の給付は、調査エリア内のモノやサービスを改善して、コミュニティの生活の質を高めようとする民間企業、公共団体及び第三セクターに対して行われる。これらの団体が申請する資金額が1万ポンド未満(155万円)の場合はコミュニティパートナーシップが支給の可否を決定するが、1万ポンドを超える場合は別途NWSの審査を受ける必要がある。

コミュニティ投資資金の利用目的と実例

英国政府の2018年政策文書においては、コミュニティ投資資金(CIF)の利用目的として以下の3分野が想定されており、各コミュニティパートナーシップは、当該調査エリアにおいて、これらの目的を満たすものかどうかを判断したうえで、資金提供を行うことになっている。

  1. コミュティの施設の改善、生活や衛生面の質的向上、コミュニティの福祉やその改善
  2. 観光等による経済的恩恵が見込まれる文化遺産や自然遺産等の自然環境や人工環境の整備
  3. 雇用機会、雇用創出、技能開発、教育または訓練、地元企業の推進、長期的な経済開発または経済の多様化等、経済的発展の機会の提供

実例として、ミッドコープランド及びサウスコープランドGDFコミュニティパートナーシップでは、以下のような計画に資金提供が行われている。なお、コミュニティ投資資金は、申請者が提出する支出証明書に基づき、実際に掛かった費用のみが支払われる仕組みとなっている。

<ミッドコープランドGDFコミュニティパートナーシップ>

  • 自転車競技の一種であるBMXのトラック改修(47,801ポンド、約741万円)
  • 多目的ルームの改修計画の作成(9,576ポンド、約148万円)
  • クリケットクラブの電子スコアボードの設置(8,122ポンド、約126万円)

<サウスコープランドGDFコミュニティパートナーシップ>

  • クリケットクラブの施設修繕(31,236ポンド、約484万円)
  • コミュニティマガジンの配布(5,000ポンド、約78万円)

 

【出典】


  1. ニュークリアウェイストサービス(NWS)は、2022年1月末に、放射性廃棄物管理会社(RWM社)と低レベル放射性廃棄物処分場会社(LLWR社)が経営統合して設立した組織である。NWSは法人格を持たず、NDAグループの放射性廃棄物のマネジメント機能を統合した単一の組織である。 []

カナダの使用済燃料処分の実施主体である核燃料廃棄物管理機関(NWMO)は、2022年6月に、使用済燃料処分場のサイト選定プロセスの第3段階第2フェーズにおいて候補として残っている2自治体について、いずれの自治体においても処分場を建設できる技術的な見通しがあるとの結論を示した技術報告書を取りまとめた。NWMOは、2017年からオンタリオ州北部のイグナス・タウンシップにおいて、また、2020年から同州南部のサウスブルース自治体において、地下深部のボーリング・コアの取得を含む地質調査を行っていた。NWMOは、今回公表した技術報告書において、これまでの調査結果に基づいたNWMOとしての評価とその根拠を次の6つの観点から取りまとめており、「安全性への信頼(Confidence in Safety)」報告書と呼んでいる。

  • ①地質学的な閉じ込め特性と隔離特性
  • ②サイトの長期安定性
  • ③将来における人間侵入
  • ④サイト特性調査
  • ⑤処分場の建設・操業・閉鎖
  • ⑥輸送
レヴェル・サイト(左)とサウスブルース・サイト(右)の地図

レヴェル・サイト(左)とサウスブルース・サイト(右)の地図

NWMOは「安全性への信頼」報告書において、2自治体での処分場地上施設の候補地点を提示している。イグナス・タウンシップでは、市街地中心部から西方約35kmの原野(州が直轄する土地)に調査エリアを特定していたが、この調査エリアがある「レヴェル底盤」(Revell Batholith)として知られる27億年前に形成された結晶質の岩体に着目して、候補地名として「レヴェル・サイト」という呼称が採用された。また、サウスブルース自治体では、地下約650mにある石灰岩を主体とする地層が注目されており、候補地名は「サウスブルース・サイト」と呼称される。NWMOは、処分場の受け入れを検討している2自治体の公衆や先住民への情報提供と対話に役立てる目的で、レヴェル・サイト版とサウスブルース・サイト版の2種類の「安全性への信頼」報告書を作成している。

NWMOは、いずれのサイトにおいても長期にわたり安全性を確保できる処分場を建設可能であるとした結論を示しているが、この結論は2022年初めの時点で得られている地質情報に基づくものであり、今後、処分場の設計を進め、規制当局への許認可申請の準備を整えるためには、複数年にわたる詳細なサイト特性調査を実施する必要があることを強調している。

■自治体との正式な協力関係の構築に向けて

サイト選定プロセスの次段階となる第4段階においては、NWMOは関心を表明した自治体と協力して、地層処分プロジェクトの影響を受ける可能性がある周辺自治体、先住民、州政府の参加を得て、広域を対象とした環境影響評価を行うことになっている。第4段階に進むに当たっては、当該自治体が今後約十年にわたって行われるサイト評価、広域調査への関心を正式に表明することが前提条件となっている。

NWMOは、2023年に1カ所の好ましいサイトを選定する目標に向けて、イグナス・タウンシップ及びサウスブルース自治体との間で、処分場受け入れに関する合意につながる正式な協定文書の策定に向けた協議を進めている。この協定文書の策定に先がけて、大まかな方向性を相互に確認するため、NWMOは、合意覚書(MOU)を取り交わすステップを踏んでいる。

NWMOとサウスブルース自治体は、2022年6月14日にMOUの締結を公表した。公表されたMOUの内容には、同自治体で好ましいサイトが特定された場合、NWMOは①同自治体に専門技術センター(Centre of Expertise)を建設する、②不動産価値の維持に協力する、③他国の使用済燃料を輸入しない、④自治体の必要経費に対する協力を継続する、⑤NWMO本部を立地地域に移転する、等が記載されている。なお、調査が先行していたイグナス・タウンシップでは、2021年11月の自治体広報誌において、地層処分プロジェクトが地元コミュニティと足並みが揃うように協働する計画の重要性に焦点を当てた内容のMOUをNWMOと締結していることを明らかにしている。

【出典】

米国の環境保護庁(EPA)は2022年5月3日に、超ウラン核種を含む放射性廃棄物(TRU廃棄物)の地層処分場である廃棄物隔離パイロットプラント(WIPP)について、適合性再認定の決定を行ったことを連邦官報で告示した。WIPPでは、1999年3月26日から軍事起源のTRU廃棄物の地層処分をエネルギー省(DOE)が実施しているが、1992年WIPP土地収用法において、処分開始以降の5年毎に、廃止措置段階が終了するまで、連邦規則(CFR)の要件に適合していることの再認定を受けることが要求されている。前回の3度目は、2014年3月26日に適合性再認定申請書をDOEがEPAに提出し、2017年7月13日に適合性再認定の決定をEPAが公表し、2017年7月19日付の連邦官報で告示された。今回は4度目の適合性再認定になり、DOEは2019年3月26日に適合性再認定申請書をEPAに提出していた

連邦官報に掲載された適合性再認定の決定文書では、EPAによる適合性再認定の決定は、DOEが提出した情報の詳細な審査、独自の技術的な解析、パブリックコメントに基づいて行われたことが示されている。本決定は、EPAのTRU廃棄物等処分の環境放射線防護基準に係る連邦規則(40 CFR Part 191)及びWIPPの適合性認定の基準に係る連邦規則(40 CFR Part 194)の要件について、引き続き満足されていることをEPAが確認したものと説明している。また、EPAは、次回の適合性再認定の申請に向けて、DOEの技術的解析や説明根拠には改善の余地がある領域が確認されたことも付記している。WIPPの適合性再認定の決定は、EPAがDOEの申請書の完全性を確認して決定してから6カ月以内に行うものと規定されている。EPAは、2021年11月17日付の書簡で、申請書の完全性を確認したことをDOEに通知していた

なお、WIPPについては、2014年2月に発生した火災事故及び放射線事象を受けて一時操業が停止されていたが、2017年1月には操業が再開された 。WIPPでは、2014年2月の事故・事象を受けた設備更新も進められており、DOEは、2023会計年度1 について、以下のとおり予算要求を行っており、総額で462,822千ドル(約532億円、1ドル=115円で換算)の予算要求額となっている。

項目 予算要求額 (千ドル) 活動内容
廃棄物処分施設:WIPPの操業 363,283 廃棄物の定置や坑道の維持・整備等を含むWIPPの操業
(以上の内、建設関連) (84,073) 「安全上重要な閉じ込め換気システム(SSCVS)」の建設(59,073)、換気立坑の建設(25,000)
特性評価プロジェクト(中央) 26,245 DOE各サイトからWIPPへのTRU廃棄物搬出に向けた特性評価プロジェクト(Central Characterization Project)
重要インフラの維持・補修 21,250 空調設備交換などインフラ再整備プロジェクト、鉱山近代化等
輸送:WIPP 45,238 輸送ペースの増加(~週17回)、新型輸送容器調達等
    WIPP小計 456,016  
保障措置・セキュリティ 6,806 WIPP施設のセキュリティ及びサイバーセキュリティ確保等
     合 計 462,822  

WIPPでの操業状況については、2022年4月19日付のDOE環境管理局(EM)のニュース記事において、地下処分施設の第7パネルのうちの第1処分室での廃棄物定置が開始され、第7パネルでの処分完了というマイルストーンに一歩近づいたことが伝えられている。第7パネルでの処分完了は、晩夏から初秋に掛けてと見込まれており、その後は第7パネルが密封され、第8パネルでの廃棄物定置が開始されることになる。第8パネルの掘削は2021年に完了しており、供用開始に向けて電気設備等の整備が行われている。

なお、WIPPにおける余剰プルトニウム2 の処分に関して、廃棄物の輸送や、1992年WIPP土地収用法で規定された処分容量の超過などを懸念して、WIPPの拡張を止めるための行動を起こすことをニューメキシコ州知事に求めるニューメキシコ州民による請願書が2022年3月に提出されている。ニューメキシコ州知事がエネルギー長官に宛てた2022年4月8日付の書簡において、ニューメキシコ州民による請願書は、WIPPにおける廃棄物処分・輸送や長期計画について、DOEが透明性を確保した有意義な公衆との関与を行っていないことへの不満を反映したものであると指摘している。ニューメキシコ州知事は、請願書で示された懸念を重大に受け止めているとして、ニューメキシコ州民が提起した問題に対応する行動をDOEが取ることを要求している。余剰プルトニウムの処分についてDOEは、2020年12月に、余剰プルトニウムを希釈してWIPPにおいて処分する案についての環境影響評価の実施を連邦官報で告示しているが、環境影響評価書(EIS)の案等は公表されていない。DOEは、WIPPについて、2014年2月の放射線事象で汚染された処分エリアの代替処分パネル(第11パネル及び第12パネル)の建設を提案している他、さらに処分パネルを増設する構想も示している

【出典】


  1. 米国における会計年度は、前年の10月1日から当年9月30日までの1年間となっており、今回対象となっている2023会計年度の予算は2022年10月1日からの1年間に対するものである。 []
  2. 冷戦の終結によって発生した兵器級余剰プルトニウムのうち、MOX燃料として利用する予定であった34トンの余剰プルトニウムについて、MOX燃料利用計画が中止されたことから、余剰プルトニウムを希釈した上で、廃棄物として処分することが検討されている。 []

スイスの処分実施主体である放射性廃棄物管理共同組合(NAGRA)は、地層処分場の地質学的候補エリアである「ジュラ東部」、「チューリッヒ北東部」、「北部レゲレン」において、2019年からボーリング調査キャンペーンを開始し 、複数地点において地下深くの岩石サンプル(ボーリングコア)の採取などを行っている。NAGRA2022311日に、現在進めている9地点目の調査の完了をもってボーリング調査キャンペーンを終了し、地層処分場の立地に最も適した処分場サイトの選定作業に着手する意向を明らかにした。

NAGRAは、処分場サイトの提案を2022年秋に行う計画であり、高レベル放射性廃棄物と低中レベル放射性廃棄物のそれぞれの処分場を別々の地質学的候補エリアに合計2カ所建設する「セパレートパターン」、または、両処分場を1カ所の地質学的候補エリアに建設する「コンバインドパターン」のいずれかを選択する予定である

■ボーリング調査の概要

「サイト選定第2段階で確定した地質学的候補エリア」(NAGRAウェブサイト」(2018年11月22日)及びNAGRAファクトシート「ボーリング地点の説明及びボーリング調査の目的」を元に原環センターが加工・作成)

ボーリング調査では、最大2,000mの深度までボーリング孔を掘削し、処分場の母岩となるオパリナス粘土層の厚さや透水性、オパリナス粘土層の上に分布する石灰岩層の拡がりなどの調査が実施されている。スイスの原子力法に基づき、地下に影響を及ぼす地球科学的調査には、環境・運輸・エネルギー・通信省(UVEK)の許可を取得する必要がある。右図(マップ)に示すように、NAGRAは処分場サイトの提案を行う上で必要となる地質データを取得するため、実際に調査している9地点を大幅に超える数の候補地点を対象としたボーリング調査の許可を取得していた 1  。今回NAGRAは、9地点目のボーリング調査のデータを得ることにより、3つの地質学的候補エリア全てが地層処分場に適していることを確認するとともに、今後の作業である「サイト間の比較」を行うために使用するデータを取得できるとの考えを示している。

2019年から2022年にかけて掘削されたボーリング孔の総延長は10,000mを超え、約6,000m分のボーリングコアが採取された。NAGRA2019年から開始した地下調査に2.4億スイスフラン(約293億円、1スイスフラン=122円換算)を投じており、このうち9地点のボーリング調査の費用は1.7億スイスフラン(約207億円)である。

ボーリング孔の掘削作業の期間は1地点当たり69ヶ月であり、この期間に市民・ステークホルダーに対する情報提供のため、各掘削現場に情報公開コーナーが設置され、現地見学会も開催された。9地点の合計で約3,500名が掘削現場を訪れている。

■スイスにおけるサイト選定プロセスの進捗

NAGRAは「特別計画「地層処分場」」に基づき、2008年から3段階のサイト選定プロセスを実施している。公募方式ではなく、地質学的な条件から6つの地質学的候補エリアが選定され、2018年にサイト選定第2段階の結果として3つの地質学的候補エリア「ジュラ東部」、「チューリッヒ北東部」、「北部レゲレン」に絞り込まれた 。現在進行中のサイト選定第3段階でNAGRAは、関係する地域との間で、地上施設の設置場所、交付金・補償金などの地域開発関連、安全性の問題等に関する具体的な交渉を進めつつ、ボーリング調査を実施してサイトの比較を行い、最終的な処分場サイトを提案することになっている。

NAGRAの従来の活動は「調査フェーズ」であったが、今後、地層処分場の許認可申請と処分実施に向けたフェーズに変化していく。NAGRAは2024年には、地層処分場プロジェクトに関する最初の許認可手続きとなる「概要承認」の申請を行う予定である。連邦評議会(わが国の内閣に相当)から概要承認の発給を受けた後、処分場サイトと母岩に関する詳細な調査(わが国の精密調査に相当)を行うための地下特性調査施設の建設を2035年に開始する計画である

 

【出典】


  1. NAGRAは、許可を取得した全ての地点でボーリング調査を実施するのではなく、先行したボーリング調査で得られた結果に基づいて、残りの地点でのボーリング調査の実施必要性を個別に判断していく予定であった。 []
フォルスマルクに建設予定の使用済燃料処分場イメージ(上)とKBS-3処分概念(下)(SKB社提供)

フォルスマルクに建設予定の使用済燃料処分場イメージ(上)とKBS-3処分概念(下)(SKB社提供)

スウェーデン政府は2022年1月27日に、スウェーデン核燃料・廃棄物管理会社(SKB社)が2011年3月に申請していた使用済燃料の最終処分事業計画を承認する決定を行った。SKB社は、国内の原子力発電所から発生する約12,000トン(ウラン換算)の使用済燃料をキャニスタと呼ばれる銅製の容器に封入し、地下約500mに建設する処分場において処分する計画である。スウェーデン政府は、SKB社が提案している処分概念は、環境法典で求められている「予防原則」(Precautionary principle)に関わる要件と「利用可能な最善技術を使用する」という要件を遵守しており、処分場近傍に生じる影響を可能な限り低減するために計画されている慎重な防護措置が講じられることを条件として、最終処分事業による環境影響は許容可能であると判断した。

■使用済燃料処分場の建設計画

スウェーデンの使用済燃料処分場は、首都ストックホルムから約170km北方、バルト海に面したエストハンマル自治体のフォルスマルクに建設される。使用済燃料を銅製キャニスタに封入し、地下約500mの結晶質岩に掘削した処分孔内に、ベントナイト製の緩衝材でキャニスタを取り囲むようにして定置する。この処分概念はKBS-3概念と呼ばれており、最終処分事業が先行するフィンランドでも採用されている1 。処分場は段階的に建設・操業される計画である。処分場の建設に約10年、使用済燃料を収納したキャニスタ約6,000体の処分に約60年を要する見込みである。最終的な処分場の面積は3~4km2、地下坑道の総延長は60km以上になる 。

使用済燃料のキャニスタ封入施設は、ストックホルムから約220km南方、オスカーシャム自治体に立地している使用済燃料の集中中間貯蔵施設(CLAB)を拡張する形で建設される。SKB社は、使用済燃料を封入したキャニスタを自社の輸送船でフォルスマルクの処分場まで輸送する計画である。

■事業の許可にあたってスウェーデン政府が指定した条件

使用済燃料のキャニスタ封入施設と処分場とは異なる場所に立地されるが、最終処分事業を構成する一つのシステムとした安全審査が進められてきた。2018年1月23日には、環境法典に基づく審理を実施していたナッカ土地・環境裁判所及び原子力活動法に基づく審査を行っていた放射線安全機関(SSM)は、それぞれが担当する申請に関する意見書を政府に提出していた 。その後、2019年4月にSKB社は、土地・環境裁判所の指摘に対応したキャニスタの長期閉じ込め能力に関する補足説明書を取りまとめ、SSMの審査を受けていた

※:使用済燃料処分場の実現に向けてSKB社が提出した申請書

①オスカーシャムにおけるキャニスタ封入施設の建設許可申請書
(2006年11月にSSMに提出、2011年3月16日更新、2015年3月31日補足)…原子力活動法に基づく申請
②フォルスマルクにおける使用済燃料処分場の立地・建設許可申請書
(2011年3月16日にSSMに提出)…原子力活動法に基づく申請
③使用済燃料の処分方法及び関連施設の立地選定に係る許可申請書
(2011年3月16日に土地・環境裁判所に提出)…環境法典に基づく申請

スウェーデン政府は今回の決定において、フォルスマルクは使用済燃料処分場の建設に適していると判断したことを述べている。また、KBS-3概念に基づく最終処分には技術的な細部の詰めや課題が残されており、それらは処分場の建設を妨げるものではないが、今後も進められる技術開発や研究の成果が一連のプロセスを構成するように、SSMが段階的な審査を行うよう指示している。SKB社は処分場建設を開始する前に、2011年の申請以降の進展を反映した安全報告書の更新版を作成し、SSMの審査を受ける必要がある。

さらに、スウェーデン政府は、環境法典に基づく最終処分事業の許可条件として、SKB社が最終処分システムを構成する施設が立地するオスカーシャム自治体及びエストハンマル自治体、SSMを含む関係規制当局、環境団体とで年次会合を開催し、情報を提供して継続的な参加の機会を提供することを設定した。

今回の政府決定により、使用済燃料のキャニスタ封入施設及び処分場の実現に関して、SSMによる建設前・操業前の段階的な審査と承認を受けることを前提として、SKB社は原子力活動法に基づく許可を取得したことになる。スウェーデン政府は、フォルスマルクの使用済燃料処分場の閉鎖に関しては、最終処分の完了が70年以上先であることから、その時の政府が判断する事項とした。

■今後の許認可プロセス

環境法典の規定に基づき、政府がSKB社の最終処分事業計画に対する判断を行う前に、原子力施設が新設される地元自治体がその受け入れを承認していることが条件となっている。キャニスタ封入施設に関しては2018年6月にオスカーシャム自治体議会において、使用済燃料処分場に関しては2020年10月にエストハンマル自治体議会において、各施設の受け入れを議決していた 。

スウェーデン政府は今回の政府決定において、環境法典及び原子力活動法に基づく許可発給の条件を指定しており、今後は、環境法典に基づく審理を担当したナッカ土地・環境裁判所、並びに原子力活動法に基づく審査を実施した放射線安全機関(SSM)により、使用済燃料のキャニスタ封入施設及び処分場の建設に向けた条件が決定されることになる。

今回の政府決定を受けてSKB社は、オスカーシャム自治体とエストハンマル自治体は最終処分の実現に関する国家的責任を引き受けていると述べ、我々の世代が生み出した使用済燃料の最終処分を可能とする歴史的な決定を歓迎する旨のプレスリリースを発出している。

【出典】


  1. KBS-3概念は1970年代にスウェーデンで開発された使用済燃料の処分概念であり、その名称は当時の検討報告書の略称に由来している []

英国のカンブリア州アラデール市と地層処分事業の実施主体である放射性廃棄物管理会社(RWM社)は、2022年1月18日に、アラデール市で特定されていた1つの「調査エリア」において、地層処分施設(GDF)の立地を検討する「アラデールGDFコミュニティパートナーシップ」を設立した。これを受けて当該調査エリアでは、GDF設置の可能性について、より詳細な検討(わが国の概要調査に相当)が行われることになる。なお、2018年12月から開始したサイト選定プロセスにおいて、コミュニティパートナーシップの設立に至ったケースとしては、2021年11月及び12月にカンブリア州コープランド市で設立された2つのコミュニティパートナーシップに続いて今回が3例目となる。

■コミュニティパートナーシップ設立までの経緯

アラデールGDFCP_SearchArea3

アラデール市は2021年1月に、地層処分施設のサイト選定プロセスにおける「調査エリア」の特定と提案、並びにコミュニティパートナーシップの設立に向け、アラデールGDFワーキンググループを設置し、同市南東部に広がる湖水地方(イングランド北西部に位置する英国最大の国立公園)を除いたエリアを対象として検討を進めていた。その後、ワーキンググループは、同市西部に調査エリア(図の茶色の範囲)を絞り込んでいた

アラデール市議会は2021年11月24日に、ソルウェイ海岸部の特別自然美観地域を調査エリアから除外することを条件としてコミュニティパートナーシップへの参加を決定し、その設立に向けた準備を進めていた。調査エリアの範囲は、英国政府の2018年政策文書に基づき、コミュニティや自治体組織等から協議に参加可能な者が特定できるように、選挙区を最小単位として設定される。今回設置されたアラデールGDFパートナーシップの調査エリアには13の選挙区が含まれており、総面積は約320km2となっている。

これまで調査エリアの特定を行ってきた「アラデールGDFワーキンググループ」は、今回のパートナーシップの設立を受けて活動を終了し、コミュニティの関与の手段としての役割はコミュニティパートナーシップが引き継ぐことになる。なお、アラデールGDFワーキンググループは2021日12月20日付のニュースレターにおいて、地域住民との対話を通じて得られた課題として、アラデール市の地質が地層処分施設の設置・建設に適しているのかを理解できるようにすることが重要だと指摘している。

アラデールGDFコミュニティパートナーシップの初期メンバーは、RWM社とアラデール市議会のほか、カンブリア州地方議会連合(CALC)、カンブリア商工会議所、カンブリア州で人材開発や就労支援をしているInspira社1 であるが、コミュニティパートナーシップが調査エリア内にある様々なコミュニティの意見を反映できるよう、他の参加組織の募集を継続している。なお、今後より多くのメンバーの参加を得て新たに議長が任命されるまでの間は、カンブリア州地方議会連合の代表としてワーキンググループに参加していたメアリー・ブラッドリー氏が暫定的に議長を務めることとなっている。

■コミュニティパートナーシップの役割

コミュニティパートナーシップは、当該調査エリアでの地層処分施設の立地可能性を中長期的なスパンで検討していくグループである。また、コミュニティパートナーシップの活動と並行し、RWM社が地質や社会インフラの適合性に関する調査を進めることとなる。RWM社は、地層処分施設の地下施設の設置可能性の検討のため、コープランド市とアラデール市の沖合での物理探査の準備を進めており、2022年夏には船舶を用いた調査を開始する予定である。

アラデールGDFコミュニティパートナーシップに対して、英国政府から年間最大100万ポンド(1億4,600万円、1ポンド=146円)のコミュニティ投資資金の提供が始まる。この投資資金は、地層処分施設プロジェクトが長期的な性質を持つため、それが実働するまでの数年間にわたり、雇用やインフラ、主要投資に関連する恩恵(ベネフィット)が実現しない可能性があることを念頭において提供されるものである。同パートナーシップは、このコミュニティ投資資金の運用管理の役割を担うことになり、パートナーシップのウェブサイト(allerdale.workinginpartnership.org.uk)でコミュニティ投資資金の仕組みや申請方法の案内を開始している。

【出典】


  1. Inspira社は、アラデールGDFワーキンググループのメンバーではなかったが、ワーキンググループの対話活動の支援等を行っていた。 []

米国の放射性廃棄物技術審査委員会(NWTRB)は、2022年1月6日に、2020年12月に開催されたNWTRB秋期会合(以下「2020年秋期会合」という。)における議論等を踏まえて、エネルギー省(DOE)に対する勧告・所見を示した書簡を公表した。2020年秋季会合は、DOE原子力局(NE)の「サイト固有ではない処分研究プログラム(non-site-specific disposal research program)」についての情報を審査するため、2020年12月2日~3日に開催されたものである。NWTRBは、1987年放射性廃棄物政策修正法に基づいて、エネルギー長官が行った高レベル放射性廃棄物処分に係る活動の技術的及び科学的有効性を評価するため、行政府に設置された独立の評価機関である。

DOEのサイト固有ではない処分研究開発プログラムは、以下を目標として行われており、結晶質岩、岩塩及び粘土質岩における処分概念及び処分オプションが検討されている。

  • 米国における複数の実現可能な処分オプションに確かな技術的基盤を提供する
  • 一般的な処分概念のロバスト性について信頼性を高める
  • 処分概念の実現を支援するために必要な科学的・技術的ツールを開発する

2020年秋季会合は、岩塩での処分に関する2014年の会合でのレビュー及び勧告、地下研究所に関する2019年の会合、多目的キャニスタに関する2020年夏季会合などの情報を踏まえて開催された。また、2020年秋季会合では、DOE原子力局(NE)、サンディア国立研究所等の研究者からの報告のほか、欧州諸国が放射性廃棄物管理計画を支援するために取り組んでいる「放射性廃棄物の地層処分の実施に関する技術プラットフォーム」(IGD-TP)と英国の放射性廃棄物管理会社(RWM社)から処分研究戦略についての報告も行われた。

今回公表されたNWTRBの書簡では、NWTRBによる2020年秋期会合での気付き事項(findings)及びDOEへの勧告が以下のように示されている。

2020年秋期会合での気付き事項

  • 放射性廃棄物管理・処分プログラムの早期ステージにある国では、受容可能な早期ステージでの研究開発プログラムの確実な実施において課題が認識されている。処分場を成功裏に実現するためには、実施主体・規制者・社会の三者の役割を明確に規定した法的枠組みが必要である。サイト選定及び処分場プログラムの実施の手続きは、これら三者から容認されなければならない。成功には長期的で政治的な責任が必要である。
  • 一般的に、処分場実現の主要な課題は、技術的な問題が一番ということではなく、技術的研究の実施に際しては技術的目的のみでなく社会的な観点も考慮に入れる必要があるなど、社会的な懸念や課題に完全に対応しなければならないことが他国では確信されている。
  • 他国では、結晶質岩、岩塩、粘土質岩における母岩固有の処分場設計による処分場開発を検討している。DOEは、これら諸国と協力し、研究開発プログラムを進展させるため、これらのプログラムの情報・経験を考慮に入れている。
  • DOEは、処分オプションがなぜ安全と考えられるものかを明確に伝える必要性など、他国やIGD-TPグループのような組織で得られた教訓を活かすことにより、成功の機会を増やす可能性がある。
  • 総合的に見て、DOEは、技術的基盤及び複数の処分オプションの評価の支援ツールの開発において、良好な進展を見せている。定期的なプログラムの策定、研究開発活動の優先順位付け、自身のプログラム要素と他国との統合が行われている。DOEは、HotBENT(スイスのグリムゼルテストサイト(GTS)でのベントナイト熱変質試験)での経験を通して、知識マネジメントプログラムの開発を主導してきており、結晶質岩及び粘土質岩における高温の人工バリアシステム(EBS)での熱-水-応力-化学連成挙動の理解を深めてきた。DOEは、性能評価での計算において、計算時間を低減して、性能や不確実性についてよりロバストで詳細な解析を可能にした先進的な数学的手法を採用している。
  • DOEは、以下の取組によってプログラムを前進させることが可能である;
    • ステークホルダーとの関与を促進し、ステークホルダーに対して一貫して明確に様々な処分オプションの説明を行い、それぞれの処分オプションの人工バリアと地質環境の安全機能をより適切に定義
    • 優先度の設定方法、及びGDSA(地層処分安全評価)枠組みのさらなる構築による改善
    • DOE使用済燃料(金属ウラン)1 の瞬時溶解で生じるプロセスへの対応
    • 岩塩層で想定される粘土の層の影響への対応
    • 長期にわたる高温下でのベントナイト及び粘土質岩の挙動の理解に資するナチュラルアナログ情報の活用

NWTRBによるDOEへの勧告

  • 勧告1
    NWTRBは、DOEが研究開発の優先度設定時のファクターの一つとして、十分に開発された技術成熟度評価手法(technology maturity scoring method)を採用することを勧告する。
  • 勧告2
    NWTRBは、DOEが可能性がある処分概念(例えば、粘土質岩における処分)ごとに、処分場の新たな技術的なサイト選定指針の必要性及び範囲を評価することを勧告する。
  • 勧告3
    NWTRBは、DOEが処分オプション対するモデルを構築する際には、モデルのパラメータを設定するために必要な実験データがどのように取得されるかについて、より焦点を当てることを勧告する。
  • 勧告4
    DOE/NEは処分場で廃棄物パッケージが破損した場合に、直ちにすべてのDOE使用済燃料(金属ウラン)が瞬時溶解するとしてモデル化しているため、NWTRBは、金属ウランの溶解による水素ガス発生など、DOE使用済燃料の瞬時溶解により処分場内で生じるすべてのプロセスをGDSA(地層処分安全評価)枠組みに含めるか、もしくは、そうしたプロセスが人工バリア及び全体的なシステム性能にマイナスの影響を及ぼさないことを実証する技術的基盤を提供することを勧告する。
  • 勧告5
    DOEは、岩塩ドーム及び脆性の粘土質岩について、レファレンスケースを開発したり、処分オプションを支援するための研究開発を同定したりする必要があるかを評価しなくてはならず、仮に不要と判断した場合は、その判断の根拠を提供すること。
  • 勧告6
    NWTRBは、DOEの試験・モデルは、岩塩構造における粘土の層の影響、及びその岩塩処分場の性能への影響に対応できるようにすることを勧告する。
  • 勧告7
    NWTRBは、DOEが、戦略的計画の立案においてナチュラルアナログを考慮するとともに、実験室や地下研究所で試験可能な期間よりも長く高温下に置かれたベントナイト及び粘土質岩について、その経年劣化の影響評価に活用し得るナチュラルアナログが存在するのか判断することを勧告する。
  • 勧告8
    NWTRBは、DOEが「放射性廃棄物の地層処分の実施に関する技術プラットフォーム」(IGD-TP)のメンバーとなり、主に社会的情報の共有、コミュニケーション及び国民の信頼・信認の獲得方法などについて、処分場プログラムが概念評価より先の段階にある諸外国から教訓を得ることに重点を置くことを勧告する。
  • 勧告9
    NWTRBは、DOEが処分オプション、及びその処分オプションにおけるバリア、バリアの機能及びそれを支える技術的基盤、処分研究開発プログラムの統合的において、明確で効果的なコミュニケーションを行うことを勧告する。DOEは、ステークホルダーからの意見を踏まえ、処分オプションを支持する主張や議論、証拠を口頭や図形で一貫性を持って伝えるコミュニケーションアプローチを用いなければならない。これには、処分の前に必要となる再パッケージや貯蔵等の管理活動も含めなくてはならない。

【出典】


  1. 金属ウランの使用済燃料は、溶存酸素が欠乏している地下水中で急速に反応して水素が発生し、バリアに影響を与えることが想定される。溶存酸素が欠乏している地下水は、処分場の深さの結晶質岩に存在するため、DOEは、廃棄物パッケージが破損して水が浸入すると、廃棄物が瞬時溶解(instantaneous dissolution)することを想定してモデル化している。 []
使用済燃料処分場のイメージ図(ポシヴァ社操業許可申請書より引用(Source:Posiva))。黄色矢印は地上のキャニスタ封入施設の位置を示す(現在建設中)

使用済燃料処分場のイメージ図(ポシヴァ社操業許可申請書より引用(Source: Posiva))。黄色矢印は地上のキャニスタ封入施設の位置を示す(現在建設中)

フィンランドにおける高レベル放射性廃棄物(使用済燃料)の処分実施主体であるポシヴァ社は、2021年12月30日付けプレスリリースにおいて、フィンランド南西部エウラヨキ自治体のオルキルオトにおいて建設中の使用済燃料処分場に関して、操業許可申請書をフィンランド政府に提出したことを公表した。使用済燃料処分場は、地上部に設置されるキャニスタ封入施設と、地下400~450mに設置される最終処分場(地下施設)で構成される。高レベル放射性廃棄物処分場の操業許可申請が行われるのはフィンランドが世界初となる。

ポシヴァ社は、2015年に政府から使用済燃料処分場の建設許可発給を受けた後、2016年12月から地下施設の建設を開始しており、キャニスタ封入施設も2019年6月から建設が進められている。2021年5月からは、地下約450メートルにおいて、実際の使用済燃料を収納したキャニスタを定置する最初の処分坑道5本の掘削工事が開始されていた

ポシヴァ社は、今回の操業許可申請書において、同社を共同出資によって設立した2つの電力会社であるテオリスーデン・ヴォイマ社(TVO社)とフォルツム・パワー・アンド・ヒート社(FPH社)が現在運転している計4基の原子炉から発生する使用済燃料4,000トン(ウラン換算)を処分するとしている。2022年に商業運転が開始される予定のTVO社のオルキルオト3号機から発生する使用済燃料の処分については、2070年以降にポシヴァ社が別途の操業許可申請を行う予定であり、最終的に2120年代までに合計で6,500トンの使用済燃料(キャニスタ数は3,304体)を処分する計画である 1

使用済燃料の処分概念(出典:Posiva Oy)

使用済燃料の処分概念(出典:ポシヴァ社[Source:Posiva])

使用済燃料は地上のキャニスタ封入施設において、外側が銅製で、内側が鋳鉄製の2重構造の容器(キャニスタ)に封入した上で、深度400~450mの地下の最終処分場にてキャニスタ周囲を緩衝材(ベントナイト)と岩盤からなる多重バリアによって安全性を確保した上で処分される。ポシヴァ社は今回の申請書で対象としている4,000トンの使用済燃料(キャニスタ数は2,129体)を2024年3月から2070年末までの約45年間にわたって処分する計画である。

 

■今後の予定

フィンランドの原子力に関する管理・監督を所管する雇用経済省は、2021年12月30日付けのプレスリリースにおいて、処分場の操業許可発給に関する政府の意思決定の準備のために、原子力法令に規定されている意見聴取手続きに従って、原子力安全に係る規制機関である放射線・原子力安全センター(STUK)、環境省、内務省、原子力施設の立地自治体または近隣自治体を管轄する県行政庁、経済開発・交通・環境整備センター2 等の国の行政機関、並びにエウラヨキ自治体とその周辺自治体に意見書の提出を求めるほか、一般市民や地域社会にも処分事業に対する意見を求める予定を明らかにした。

今回のポシヴァ社による操業許可申請を受けてSTUKは、使用済燃料処分場の操業許可の発給条件に係る安全性に関する審査を実施するほか、ポシヴァ社が操業許可申請書とともに提出が求められた、実際の地下施設の建設で得られた情報に基づいて更新したセーフティケースを評価する。これらの評価結果は審査意見書として雇用経済省に提出される予定である。

ポシヴァ社は、建設中の地下施設において、2023年から試運転(コミッショニング)の一部として、使用済燃料を収納していないキャニスタを用いて、処分環境下で実際に使用される機器・装置を用いて小規模スケールで模擬的な処分を実施する統合機能試験を実施する予定である。使用済燃料を収納したキャニスタの処分開始は、政府から操業許可発給を受けた後の2020年代半ば以降になる見込みである。

(参考)フィンランドにおける使用済燃料処分の経緯

フィンランドでは原子力発電から生じる使用済燃料を再処理せず、高レベル放射性廃棄物として地層処分する方針としている。使用済燃料の処分場のサイト選定は1983年に開始され、ポシヴァ社は1999年にオルキルオトを処分地として選定し、同年、原子力施設の建設がフィンランド社会全体の利益に合致することを政府が判断する「原則決定」と呼ばれる原子力法の手続きに基づいて(詳しくはこちら)、オルキルオトに使用済燃料の処分場を建設することについて、政府へ原則決定の申請を行った。政府はポシヴァ社の申請に対して2000年に原則決定を行い、翌2001年に国会が政府の原則決定を承認したことにより、オルキルオトが処分地として決定していた。

ポシヴァ社が使用済燃料の処分を開始するためには、原則決定の後に政府から処分場の建設許可、及び操業許可の発給をそれぞれ受ける必要がある。ポシヴァ社は建設許可の申請に向けて2004年には地下特性調査施設(ONKALO)の建設を開始し、並行して建設許可申請に必要な岩盤や地下水等のデータ取得や、坑道の掘削による地質環境への影響等について調査をしてきた。

ポシヴァ社は2012年に使用済燃料処分場の建設許可申請書を政府へ提出した。雇用経済省は原子力法・原子力令に規定されている意見聴取手続きに従って、関係省庁、エウラヨキ自治体及び周辺自治体などに対して意見書の提出を求め、その一環としてSTUKは2015年2月に処分場を安全に建設することができるとする審査意見書を雇用経済省に提出した。これらの意見を踏まえて政府は2015年11月に処分場の建設許可を発給した。ポシヴァ社は2016年から使用済燃料処分場の建設を進めてきた。

 

【出典】


  1. オルキルオト3号機から発生する2,500トン分の使用済燃料をオルキルオトに建設される使用済燃料処分場において処分する計画は、2002年の政府の原則決定により、すでに認められている。 []
  2. 経済開発・交通・環境整備センター(ELYセンター)は、広域レベルの経済開発・交通・環境整備を促進するために、フィンランドに15箇所設置されている。 []

スイスの処分実施主体である放射性廃棄物管理共同組合(NAGRA)は、2021年12月15日に、スイスの原子力施設から発生する放射性廃棄物の発生量予測、並びにそれらの処分に必要となる今後の取組を取りまとめた「放射性廃棄物管理プログラム2021」(以下「WMP21」という)を連邦エネルギー庁(BFE)に提出した。放射性廃棄物管理プログラムは、2005年施行の原子力法及び原子力令により、5年毎の更新が義務付けられている。

NAGRAは特別計画「地層処分場」に基づき、2008年から3段階のサイト選定プロセスを開始しており、2018年11月以降、3つの地質学的候補エリアがサイト選定プロセスの第3段階にある。今回公表されたWMP21においてNAGRAは、処分場サイトの提案を2022年に行い、地層処分場プロジェクトに関する最初の許認可手続きとなる「概要承認」の申請を2024年に行うとするスケジュールを設定しており、前回の「放射性廃棄物管理プログラム2016」 で設定していたスケジュールを堅持している。

■スイスにおける放射性廃棄物の地層処分概念

スイスでは、原子力法に基づき、放射性廃棄物を「監視付き長期地層処分」と呼ばれる概念に基づく処分場で処分する方針であり、高レベル放射性廃棄物だけでなく、低中レベル放射性廃棄物も地層処分することになっている。処分場の地下には、それら2種類の放射性廃棄物の処分区画に加えて、少量の廃棄物を処分することにより、処分後に生じる変化や挙動をモニタリングし、予測モデルの正しさを確認したり、想定外の影響を早期に検出できるようにする目的で「パイロット施設」が設けられる(図1を参照)。

NAGRAは、これら2種類の地層処分場を別々に建設するセパレートパターンと、両方を1カ所に建設する複合処分場(コンバインドパターン)を検討している。複合処分場の場合、地上施設と地下施設を部分的に共用することになるため、建設段階のリスク、費用、人員、温室効果ガスの排出を低く抑えられる利点がある。

図1_WMP21における処分場概念(複合処分場)

図1_WMP21における処分場概念(複合処分場)(WMP21を基に原環センターにて作図)

放射性廃棄物の処分区画は、深さ400~900mに分布するオパリナス粘土と呼ばれる堆積岩に設置される。高レベル放射性廃棄物用処分区画に処分する廃棄物は廃棄体の体積で約9,300m3、低中レベル放射性廃棄物用処分区画に処分する廃棄物は約73,300m3と推定されている。NAGRAは、サイト選定プロセス第3段階で検討している3つの地質学的候補エリアのいずれも複合処分場の建設に十分なスペースがあり、セパレートパターンと同等の安全性を確保できるとの見解を示している。

■地層処分事業のスケジュール

上述したように、NAGRAは2024年に地層処分プロジェクトに関する概要承認の申請を行う予定であり、連邦評議会(わが国の内閣に相当)による概要承認の発給は2031年になると想定している(図2の赤色バー)。概要承認の発給を受けた後、NAGRAは、処分場サイトと母岩に関する詳細な調査(わが国の精密調査に相当)を行うための地下特性調査施設を2035年に建設する計画である。

図2_スイスにおける地層処分スケジュール

図2_スイスにおける地層処分スケジュール(複合処分場を導入する場合)

放射性廃棄物を処分する処分区画の建設と操業には、別途、原子力法に基づく許可が必要である。WMP21で設定されている処分スケジュールでは、低中レベル放射性廃棄物の処分区画の建設許可申請は2040年に、高レベル放射性廃棄物の処分区画については2050年に行う予定である。実際に高レベル放射性廃棄物の定置が行われる期間は2060年から2075年までの15年間となる見込みである。

NAGRAは、低中レベル放射性廃棄物の処分区画での操業が終了する2065年から60年間をモニタリング段階として設定している。2種類の処分区画を含む主処分施設の閉鎖作業は2085年から開始するが、その後も地下のパイロット施設を利用したモニタリングは継続できるように計画している。地層処分場全体の閉鎖は2125年頃になる想定である。

■処分費用見積り

NAGRAはWMP21において、原子力発電事業者の団体であるスイスニュークリアが2021年10月に取りまとめた原子力発電所の放射性廃棄物の処分費用見積りを示している。この処分費用見積りは、今後5年間、原子力発電事業者が放射性廃棄物管理基金へ拠出する金額の算定の根拠となる。処分場を建設・操業する場合における廃棄物処分費用は、以下の表のとおりである。

表:WMP21において示された放射性廃棄物の処分費用見積り
項目 費用(1スイスフラン=122円で換算)
セパレートパターン

低中レベル放射性廃棄物処分場

4,692百万スイスフラン
(約5,724億円)

高レベル放射性廃棄物処分場

7,659百万スイスフラン
(約9,344億円)

①と②の合計

12,350百万スイスフラン
(約1兆5,067億円)

コンバインドパターン

複合処分場

1,0715百万スイスフラン
(約1兆3,072億円)

【出典】

スウェーデン政府は2021年12月22日付けプレスリリースにおいて、スウェーデン核燃料・廃棄物管理会社(SKB社)が2014年12月に提出した短寿命低中レベル放射性廃棄物処分場(SFR)の拡張許可申請に関して 、拡張を承認する決定を行ったことを公表した。今回の政府決定を受けて本案件は、スウェーデンにおける原子力安全・放射線防護の規制機関である放射線安全機関(SSM)と、環境法典に基づく審理を実施したナッカ土地・環境裁判所に戻され、各組織によってSFR拡張に伴う地下施設の建設工事等の計画の実施に関する許可条件が決定されることとなっている。

今回の政府決定の前に安全審査を実施したSSMは、SKB社が放射線安全の要件を遵守して原子力活動を遂行できることを立証しているとした意見書を2019年10月に政府に提出していた。また2019年11月には、ナッカ土地・環境裁判所がSFRの拡張を許可できるとした意見書をスウェーデン政府に提出していた。SFRが立地するエストハンマル自治体は、2021年4月にSKB社のSFR拡張計画の受け入れを議決していた。スウェーデン政府は今回、SSM及びナッカ土地・環境裁判所の意見書、並びにエストハンマル自治体の判断を踏まえ、SKB社の申請が原子力活動法及び環境法典の要件を満足していると判断し、SFR拡張計画を承認する決定に至っている。

SFRの拡張計画

SFRの拡張計画(SKB社提供)

SFRの拡張計画(SKB社提供)

SKB社が操業している短寿命低中レベル放射性廃棄物処分場(SFR)は、バルト海の浅い沿岸部(水深は約5m)の海底から約60m以深の岩盤内に設置されており、1つのサイロと4つの処分坑道で構成されている(図の右側の灰色部分)。現行のSFRは、約63,000m3の短寿命低中レベル放射性廃棄物を処分できるように建設され、1988年から原子力発電所の運転に伴って発生する廃樹脂、雑固体などの短寿命運転廃棄物と呼ばれる放射性廃棄物を処分しているほか、医療、研究、産業で発生した放射性廃棄物も受け入れて処分している。

SFRの拡張計画では、地下約120mに6つの処分坑道を増設(図の左側の青色部分)し、既存部分との合計で約180,000m3の処分容量とする。SKB社が2014年12月に申請書を提出した当初は、沸騰水型原子炉(BWR)の炉心を収める圧力容器(RPV)9基をそのままの形で専用の処分区画に搬入する計画であったが、現在の計画ではRPVを切断して容器に収納して処分する方式に変更されている。拡張部分は、主として廃止措置廃棄物の処分用区画であるが、運転廃棄物の一部も処分される。また、既存部分でも廃止措置廃棄物の一部を処分する計画である。

なお、SFRがあるエストハンマル自治体のフォルスマルクにおいて、SKB社が使用済燃料の最終処分場の立地を予定している。SKB社は、2011年3月に使用済燃料最終処分場の立地・建設許可申請書等を提出しており、環境法典及び原子力活動法の2つの法律に基づく審査が最終局面にある。エストハンマル自治体は2020年10月に、使用済燃料処分場の立地を受け入れる意向を示している。スウェーデン政府は、使用済燃料処分場に関する決定を2022年1月27日に行う予定である。

【出典】