韓国政府の産業通商資源部(MOTIE)及び放射性廃棄物処分の実施主体である韓国原子力環境公団(KORAD)は2024年12月18日に、地下500mに設置する地下研究所を、韓国東部の江原道太白市(カンウォン道テベク市)に立地することを決定した。地下研究所は、高レベル放射性廃棄物(使用済燃料)の処分システムの試験・研究、処分技術の研究開発を目的としており、処分施設とは別に設置されるものであり、放射性廃棄物の持ち込みは行われない。地下研究所の建設は2026年から2032年にかけて実施され、2030年に施設の一部の供用を開始した後、約20年間供用される予定である。
地下研究所の立地決定の経緯
地下研究所の立地が決定した江原道太白市は、韓国東部に位置する。2021年12月の第10回原子力振興委員会において確定した「第2次高レベル放射性廃棄物管理基本計画」 及び2024年2月の第11回原子力振興委員会において確定した「高レベル放射性廃棄物の研究開発ロードマップ」では、研究専用と処分施設のサイト特性調査のための2種類の地下施設をそれぞれ別のサイトに建設することが計画されている。今回公募が行われ、サイトが決定したのは、そのうちの研究専用の地下施設である。
MOTIEとKORADは、2024年6月に地下研究所の公募を開始した。公募は競争形式で行われ、立地を希望する自治体の誘致計画書及び現地調査の結果を評価委員会が評価し、点数の高い自治体を選定する方式が採られた 。2024年8月2日の締切までにKORADに誘致計画書を提出した自治体は、太白市のみであった。その後、応募自治体との利害関係を踏まえて人選が行われ、民間人20名によるサイト評価委員会が設置された。評価委員会は、2024年11月7日から8日に現地を視察した。2024年11月20日までに、太白市による誘致計画のプレゼンテーションが行われ、評価委員会は「岩盤の適合性」「面積・立地の妥当性」「設置・施工のしやすさ」「災害影響」「自然・生活環境影響」「地域経済影響」「住民受容」の8つの評価基準 に基づいて太白市の計画を審査した。この間、2024年9月から12月にかけて、太白市内での候補地の物理探査、ボーリング調査が実施されており、評価委員会はその結果を踏まえて2024年12月11日に最終評価を実施し、太白市が地下研究所サイトの立地に適しているとの評価結果を示した。この最終評価の結果を受けて評価委員会は2024年12月18日に、地下研究所を太白市に立地することを決定した。
今後の予定と費用分担
公募時の募集公告によれば、2024年12月中には、今回選定された自治体(太白市)とMOTIE、KORADとの間で最終的な条件に関する交渉を行い、事業協力協定を締結する予定となっている。地下研究所の地上・地下施設の設計や建設は韓国政府が(政府事業費:約5,138億ウォン(約575億円、1ウォン=0.11円として計算))、地上の事業施設や地下研究所へのアクセス道路、電力網などの付帯施設は太白市が費用を負担して設置し、提供する 。なお、KORADが示した地下研究所の概念図は以下のとおりである。
【出典】
- 産業通商資源部(MOTIE)、2024年12月18日付けプレスリリース「地下研究所の建設地が太白市内に決定」
https://www.motie.go.kr/kor/article/ATCL3f49a5a8c/169955/view - 韓国原子力環境公団(KORAD)、2024年12月18日付けプレスリリース、「地下研究所の建設候補地が江原道太白市に決定」
https://www.korad.or.kr/korad/board/view.do?menu_idx=56&manage_idx=24&board_idx=1328339
(post by eto.jiro , last modified: 2024-12-24 )