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《スイス》NAGRAが地層処分場プロジェクトの概要承認申請書を提出

スイスの処分実施主体である放射性廃棄物管理共同組合(NAGRA)は、2024年11月19日に、地層処分場プロジェクトに関する最初の許認可手続きとなる「概要承認」の申請書を連邦エネルギー庁(BFE)へ提出した。今回、NAGRAは、以下の2件の概要承認を申請している。

  1. 地質学的候補エリア「北部レゲレン」において、高レベル放射性廃棄物と低中レベル放射性廃棄物を1カ所で処分する地層処分場を建設するとともに、地層処分場の地上施設をチューリッヒ州ハーバーシュタールに建設するための申請
  2. ハーバーシュタールから西へ約20kmに位置する現在操業中のヴュレンリンゲン放射性廃棄物集中中間貯蔵施設(ZZL)の敷地において、キャニスタ封入施設を増設して運用するための申請

スイスでは、原子力発電所や地層処分場などの原子力施設を建設、運転(または操業)しようとする者は、連邦評議会1 から概要承認という許可を得る必要がある。概要承認申請は、建設許可申請の前に実施されるスイスで特徴的な許認可手続きであり、立地場所、施設の目的及びプロジェクトの基本事項などを定めるものである。

概要承認申請では、原子力令の規定により、概要承認申請書に加え、以下の付属文書が提出される。

  • 以下の情報を含む、安全性に関する報告書及びセキュリティに関する報告書
    サイトの特性調査
    プロジェクトの目的と主な特徴
    施設周辺の推定放射線被ばく
    作業員と組織に関する重要情報
    長期安全性(地層処分場の場合)
  • 環境影響評価報告書(環境保護法による環境影響評価の第1ステージ
  • 地域開発計画への適合性に関する報告書
  • モニタリング段階と閉鎖に関する計画書
  • 処分の実現可能性の実証報告書

さらに、地層処分場については、以下の文書の提出も要求される。

  • 地層処分場の安全性に関して、選択可能なオプションの比較
  • サイト選定に決定的な影響を与える諸特性の評価
  • 費用
処分場図

NAGRAが提示している処分場及び暫定防護区域

今回、概要承認申請にあたってNAGRAは、原子力法の規定に従って、右図に示すように、処分場の地下施設が建設される可能性のある約26km2の範囲を暫定防護区域として示している。暫定防護区域の範囲の中で、処分場及びアクセス坑道を建設する計画としており、最終的に建設する地下施設は2km2程度の規模になると見込んでいる。暫定防護区域については、原子力法や原子力令での土地利用の制限はなく、地下部分での砕石や地熱の探査も可能となっており、一定深度以深のボーリング探査のみ連邦政府の許可が必要とされている。

 

■概要承認申請までの主な経緯

スイスでは、NAGRAが特別計画「地層処分場」に基づき、3段階から成るサイト選定を2008年から行ってきた。2011年には、地質学的な観点から、スイス全土より高レベル放射性廃棄物用処分場の地質学的候補エリアとして3カ所、低中レベル放射性廃棄物用処分場の地質学的候補エリアとして6カ所まで絞り込まれ、サイト選定第1段階が終了した。サイト選定第2段階では、規制機関の見解を踏まえる形で、2018年に、高レベル放射性廃棄物用処分場と低中レベル放射性廃棄物用処分場の地質学的候補エリアとして「ジュラ東部」、「チューリッヒ北東部」、「北部レゲレン」の3カ所まで絞り込まれた

2018年に開始されたサイト選定第3段階でNAGRAは、ボーリング調査を実施し、サイトの比較を行った。2022年にNAGRAは、地層処分場の地下施設を設置するサイトとして地質学的候補エリア「北部レゲレン」を選定するとともに、地上施設をハーバーシュタールに建設し、キャニスタ封入施設をヴュレンリンゲン放射性廃棄物集中中間貯蔵施設(ZZL)の敷地に増設する提案を行った

 

■今後の予定

今回、NAGRAは、概要承認申請書の文書を公表していない。今後、連邦政府は概要承認申請書が法令に従って提出されたかどうかを確認し、NAGRAは概要承認申請書の付属文書を提出する。こうした作業が終了する2025年春にNAGRAは全ての概要承認申請書を公表するとしている。概要承認申請書は連邦原子力安全検査局(ENSI)と原子力安全委員会(KNS)2 が審査し、2027年までには終了する見込みである。

2029年には連邦評議会が概要承認を発給するかどうかを決定する見込みである。この連邦評議会による概要承認の発給の決定については、連邦議会3 の承認も必要とされている。なお、連邦議会の承認から100日以内に、5万人の署名が集まれば、連邦議会の承認の是非を問う国民投票が実施される可能性がある。NAGRAは、国民投票が実施されたとしても、2031年頃には地層処分場のサイトが確定すると考えている。低中レベル放射性廃棄物処分場は2050年、高レベル放射性廃棄物処分場は2060年の操業開始が見込まれている。

【出典】

 

  1. 日本の内閣に相当 []
  2. KNSは、ENSI、環境・運輸・エネルギー・通信省(UVEK)、連邦評議会に対して安全性に関する重要な問題に関して助言する。 []
  3. 日本の国会に相当 []

(post by yamamoto.keita , last modified: 2024-11-26 )