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《スイス》NAGRAが北部レゲレンを地層処分場サイトとして提案

処分場候補エリア「北部レゲレン」と地上施設設置区域
及びキャニスタ封入施設の予定地

スイスの処分実施主体である放射性廃棄物管理共同組合(NAGRA)は、2022年9月10日に、地層処分場の地下施設を設置するサイトとして地質学的候補エリア「北部レゲレン」を選定するとともに、地層処分場の地上施設の設置区域をチューリッヒ州ハーバーシュタールとすることを公表した。NAGRAは、高レベル放射性廃棄物と低中レベル放射性廃棄物を1カ所で処分する複合処分場(コンバインドパターン)の建設を提案している。今回の提案についてNAGRAは、最も重要な判断基準としたのは地質であり、北部レゲレンが最も安全性が高く、遠い将来にわたって放射性廃棄物を最もよく閉じ込めることができると説明している。また、2015年にいったん候補から外していた北部レゲレン を、今回、処分場サイトとして提案したことについて、NAGRAは、2015年以降実施してきた三次元弾性波探査やボーリング調査など地球科学的調査から得られたデータから、より高い安全性が確認できたことを理由として指摘している。

今回のNAGRAによる提案では、ハーバーシュタールに建設予定の地上施設にはキャニスタ封入施設を含めず、ハーバーシュタールから西へ約20kmに位置し、2001年から操業開始しているヴュレンリンゲン放射性廃棄物集中中間貯蔵施設(ZZL)の敷地に増設して運用する計画である。この提案は、2012年以降NAGRAが北部レゲレン地域会議やチューリッヒ州と行ってきた協議において、地元より地上施設の設置区域にキャニスタ封入施設を含めないようにとの要望を受けたことを踏まえたものである。ZZLでは使用済燃料とガラス固化体の輸送貯蔵兼用キャスクの大部分が貯蔵されており、高レベル放射性廃棄物の積み替えセルを備えている。NAGRAは既存のインフラを活用することにより、熟練作業員の活用が見込めるとのメリットを挙げている。

■今回のNAGRAのサイト提案までの経緯

NAGRAは特別計画「地層処分場」に基づき、2008年から3段階のサイト選定プロセスを実施している。公募方式ではなく、地質学的な観点から2011年に高レベル放射性廃棄物用処分場の地質学的候補エリアとして3カ所、低中レベル放射性廃棄物用処分場の地質学的候補エリアとして6カ所が選定され、サイト選定第1段階が終了した。サイト選定第2段階の2015年にNAGRAは、高レベル放射性廃棄物用処分場と低中レベル放射性廃棄物用処分場の地質学的候補エリアとして「ジュラ東部」、「チューリッヒ北東部」を優先候補として提案し、「北部レゲレン」を予備候補とする提案を行った。この提案に対し、規制機関である連邦原子力安全検査局(ENSI)が、北部スイスの地質学的データが十分とは言えない中で、NAGRAが示した想定が現在の科学技術的知見に照らして過度に保守的であると判断し、「北部レゲレン」も引き続き優先候補として検討すべきとの見解を示した。規制機関の見解を踏まえる形で、2018年にサイト選定第2段階の結果として3つの地質学的候補エリア「ジュラ東部」、「チューリッヒ北東部」、「北部レゲレン」が選定された

サイト選定第3段階に入るとNAGRAは、ボーリング調査を実施し、サイトの比較を行い、最終的な処分場サイトの提案に向けた取組を進めてきた。

■北部レゲレン選定の詳細

NAGRAが地層処分場サイトとして提案した「北部レゲレン」は、アールガウ州とチューリッヒ州をまたぐ一帯に位置し、スイス最大の都市チューリッヒから北へ約15kmの距離にある。母岩は他の2つの地質学的候補エリア「チューリッヒ北東部」および「ジュラ東部」同様に、オパリナス粘土である。NAGRAは処分場サイト選定にあたり、これら3エリアの地質学的特性を比較した結果、主に以下の3つの観点において、北部レゲレンが最も安全性が高く、地層処分場に適していると判断した。

  • 地層バリアの閉じ込め性能が高い:
    3つの地質学的候補エリアのうち、北部レゲレンはオパリナス粘土層及びその上下に堆積している難透水性の地層の厚みが最も大きい。
  • 地質バリアの長期安定性に優れている:
    処分場の母岩となるオパリナス粘土層は、北部レゲレンが最も深い位置にあるため、将来、地表が氷河や河川によって侵食されて谷が形成された場合でも廃棄物が保護される。
  • 処分可能エリアが広く、柔軟な処分場設計が可能である:
    北部レゲレンは断層の存在しないエリアが最も広く、処分場の空間を最も多く確保できることから、処分場の設計に最も柔軟性を持たせることができる。

■今後の予定

NAGRAは2024年に、地層処分場プロジェクトに関する最初の許認可手続きとなる「概要承認」の申請書を、手続きを所管する連邦エネルギー庁(BFE)に提出する予定である。申請書はENSIが審査し、2029年に連邦評議会1 が概要承認を発給するかどうかを決定する。連邦評議会による概要承認の発給の決定については、連邦議会の承認が必要である。なお、連邦議会の承認から100日以内に、5万人の署名が集まれば、連邦議会の承認を不服とする国民投票が実施される可能性がある。NAGRAは国民投票が実施されたとしても、2031年頃には地層処分場のサイトが確定すると考えており、処分場サイトと母岩に関する詳細な調査(わが国の精密調査に相当)を行うための地下特性調査施設の建設を遅くとも2034年には開始できると見込んでいる。低中レベル放射性廃棄物処分場は2050年、高レベル放射性廃棄物処分場は2060年の操業開始が見込まれている。

 

【出典】

 

  1. 日本の内閣に相当 []

(post by yamamoto.keita , last modified: 2024-02-13 )