米国のエネルギー省(DOE)の環境管理局(EM)及びカールスバッド・フィールド事務所(CBFO)は、2022年10月25日に、軍事起源のTRU廃棄物の地層処分場である廃棄物隔離パイロットプラント(WIPP)について、地下処分施設の第7パネルでの廃棄物定置活動が2022年10月20日に完了したことにより、重要なマイルストーンを達成したことを公表した。第7パネルについては、2013年7月にニューメキシコ州環境省(NMED)からTRU廃棄物処分のための使用の承認を受け 、廃棄物定置が開始された。その後、2014年2月に発生した火災事故及び放射線事象 によって操業を一時停止し、復旧活動の結果、2017年1月から操業が再開されていた 。なお、DOEは、2021年11月時点で、第7パネルは2022年7月に一杯となる見込みを示していた 。今後は、第7パネルは閉鎖され、2022年8月にNMEDから使用が承認された第8パネルでの廃棄物定置活動が行われることとなる。
WIPPの2014年2月の放射線事象は、放射性物質の外部への漏洩を伴って第7パネルで発生した。放射性物質漏洩の原因は、第7パネル第7処分室に定置されたロスアラモス国立研究所(LANL)から搬入された1本の廃棄物ドラムと確認され、2015年5月には第7パネル第7処分室は早期閉鎖された 。2014年の放射線事象によってWIPPの地下処分施設の一部は放射性物質で汚染され、除染作業や一部区域の早期閉鎖が行われたものの 、第7パネルでは防護服、防護マスク等を使用した定置活動が行われてきた。第7パネルでの定置完了により、放射性物質による汚染のない環境での作業に復帰することになり、今後の第8パネルでの活動では防護服等は不要になる。
WIPPの地下処分施設は8つの処分パネルで構成されており、各処分パネルは、幅が33フィート(約10m)、高さが13フィート(約4m)、長さが300フィート(約91m)の7つの処分室で構成されている。各処分パネルにおける廃棄物の定置は、一番奥の第7処分室から開始され、一番手前の第1処分室での定置が完了すると処分パネルは完全に閉鎖される。なお、WIPPでは、処分区域の一部閉鎖等を受けて、代替処分パネルの建設が計画されている 。
今回定置が完了し、今後閉鎖される第7パネルでは、第1処分室には2,600を超える廃棄物容器が定置されており、第7パネル全体では20,056本の廃棄物容器が定置された。廃棄物容器の多くは55ガロン(約200リットル)ドラムであるが、第1処分室では11,000ポンド(約5トン)の4つの大型廃棄物容器も定置されている。WIPPでは、1999年3月からTRU廃棄物の受入れ、定置が行われており、第7パネルでの廃棄物定置が完了した時点での廃棄物の総処分量は、ネットベース(LWA総量)で約7.2万m3となっている1 。パネル別の処分量を見ると、一部の処分室が未使用のまま閉鎖された第7パネルでの処分量が最も少なくなっている。
定置廃棄物* | 第1パネル | 第2パネル | 第3パネル | 第4パネル | 第5パネル | 第6パネル | 第7パネル | 合計 |
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閉鎖 | 閉鎖 | 閉鎖 | 閉鎖 | 閉鎖 | 閉鎖 | 定置完了 | ||
55ガロンD/M | 38,139 | 23,865 | 8,394 | 12,858 | 21,255 | 12,317 | 15,544 | 132,372 |
標準廃棄物容器 | 1,239 | 3,176 | 1,730 | 1,405 | 2,200 | 3,033 | 904 | 13,687 |
10-D/M O/P | 35 | 1,451 | 2,227 | 1,048 | 788 | 459 | 993 | 7,001 |
85ガロンD/M | 2 | 0 | 0 | 3 | 0 | 0 | 0 | 5 |
100ガロンD/M | 0 | 1,278 | 5,409 | 11,050 | 9,951 | 6,546 | 2,531 | 36,765 |
標準大型容器2S | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 220 | 19 | 239 |
蓋取外し可能72-B容器 | 0 | 0 | 0 | 198 | 246 | 239 | 18 | 701 |
蓋固定72-B容器 | 0 | 0 | 0 | 0 | 18 | 0 | 0 | 18 |
遮蔽容器 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 9 | 47 | 56 |
TMW CH容器(m3) | 10,497 | 17,998 | 17,092 | 14,258 | 15,927 | 14,467 | 10,534 | 100,773 |
TMW RH容器(m3) | 0 | 0 | 0 | 176 | 235 | 215 | 26 | 652 |
TMW 総量 (m3) | 10,497 | 17,998 | 17,092 | 14,434 | 16,162 | 14,682 | 10,560 | 101,424 |
LWA CH容器(m3) | 7,563 | 13,103 | 9,863 | 10,420 | 12,113 | 11,428 | 7,210 | 71,699 |
LWA RH容器(m3) | 0 | 0 | 0 | 84 | 153 | 113 | 11 | 362 |
LWA総量 (m3) | 7,563 | 13,103 | 9,863 | 10,504 | 12,266 | 11,541 | 7,221 | 72,060 |
*容器タイプ別に示された数字は、容器数 D/M:ドラム、O/P:オーバーパック、CH:直接ハンドリングが可能(Contact Handled)、RH:遠隔ハンドリングが必要(Remote Handled)、TMW:TRU混合廃棄物(TRU Mixed Waste)、LWA:1992年WIPP土地収用法に規定の処分量に対応する廃棄物量 |
【出典】
- エネルギー省(DOE)環境管理局(EM)ニュースリリース、「WIPPはパネル最後となる廃棄物容器を定置し、マイルストーンを達成」(2022年10月25日)
https://www.energy.gov/em/articles/wipp-emplaces-last-waste-container-panel-marking-milestone - エネルギー省(DOE)カールスバッド現地事務所(CBFO)、「第7パネルに最後の廃棄物容器が定置され、WIPPの重要なマイルストーンを達成」(2022年10月25日)
https://www.wipp.energy.gov/wipp_news_20221025.asp - エネルギー省(DOE)カールスバッド現地事務所(CBFO)、コミュニティ・フォーラム説明資料(2022年7月7日)
https://wipp.energy.gov/Library/documents/2022/WIPP_Community_Forum_Santa_Fe.pdf - エネルギー省(DOE)カールスバッド現地事務所(CBFO)、WIPP状況レポート(2022年10月26日作成、2022年10月22日時点)
https://www.wipp.energy.gov/general/GenerateWippStatusReport.pdf
- WIPPにおけるTRU廃棄物の処分量は、1992年WIPP土地収用法で620万立方フィート(約17.6万m3)と規定されている。WIPPにおける処分量については、従来は最も外側の廃棄物コンテナの容量(表中のTMW総量)で計算されていたが、2018年12月にニューメキシコ州環境省(NMED)によって承認された許可変更により、1992年WIPP土地収用法上の処分量は、廃棄物コンテナに収納されている最も内側の廃棄物容器(例えば、55ガロンドラム)の容量(表中のLWA総量)で計算されることとなった。 [↩]
(post by inagaki.yusuke , last modified: 2023-10-11 )