米国で2024年11月に、「クリーンエネルギーのための多用途先進原子力導入促進(ADVANCE、Accelerating Deployment of Versatile, Advanced Nuclear for Clean Energy)法」(以下「ADVANCE法」という。)を含む公法(Public Law No.118-67)のファイルが連邦議会資料室ウェブサイトで公表された。ADVANCE法については、ADVANCE法案を含む法案(S.870)1 が2024年6月に連邦議会で可決され、同7月9日に大統領署名を得て公法(Public Law No.118-67)として成立し、法文自体は公表されていた。ADVANCE法では、使用済燃料及び高レベル放射性廃棄物に係る連邦政府の債務やエネルギー省(DOE)の活動について、報告書を提出することが規定されている。
ADVANCE法は、原子力における米国のリーダーシップの強化、先進技術へのインセンティブの提供や許認可手続の改善、海外からの投資制限見直し、核燃料サイクルやサプライチェーン強化、原子力規制委員会(NRC)の効率化などを規定し、先進原子力技術の開発・展開を促進するための法律となっている。
核燃料サイクルに関する規定として、使用済燃料等に関する報告書の提出は、ADVANCE法の第403条(b)に規定されている。同条では、エネルギー長官に対して、以下の8項目について2026年1月1日までに、その後は2年毎に、連邦議会に報告することを指示している。
- 1982年放射性廃棄物政策法に基づく標準契約の部分的違反2 に起因する、標準契約保有者に対する損害賠償額の年間及び累積的な支払額。
- 1982年放射性廃棄物政策法に基づく標準契約の部分的違反により標準契約保有者に対して想定される将来の支払を削減するため、DOEが2008会計年度3 以降に支出した累積額。
- 報告日時点で、DOEが米国における使用済燃料及び高レベル放射性廃棄物の貯蔵、管理、処分に支出した累積額。
- 2050年までに既存の原子炉から発生すると予想される使用済燃料及び高レベル放射性廃棄物を含む、米国における使用済燃料及び高レベル放射性廃棄物の予測インベントリの貯蔵、管理、輸送、処分に想定されるライフサイクルコスト。
- 米国における使用済燃料及び高レベル放射性廃棄物インベントリのライフサイクルコストに係る債務について、適切に計算するためのメカニズム。
- DOEが使用済燃料及び高レベル放射性廃棄物の費用と債務の計算に使用する方法を改善するための提案。
- DOEが前会計年度に中間貯蔵に関して講じた措置。
- 地震、洪水、その他の異常気象から保護する技術を含め、使用済燃料及び高レベル放射性廃棄物の安全な輸送・貯蔵を強化する原子力技術及び核燃料の開発と導入のためにDOEが前会計年度に講じた活動。
【出典】
• 連邦議会資料室、「連邦消防庁及び消防士支援補助金プログラムの歳出承認、及び原子力の便益の推進等の法案」(S.870)のページ(Division BにADVANCE法を所収)
https://www.congress.gov/bill/118th-congress/senate-bill/870
• 連邦議会資料室、「クリーンエネルギーのための多用途先進原子力導入促進(ADVANCE法)」(Public Law No.118-67、Division BにADVANCE法を所収)
https://www.congress.gov/118/plaws/publ67/PLAW-118publ67.pdf
- ADVANCE法は、元々は連邦議会上院で単独法案(S.1111)として可決されていたが、後に連邦消防庁等の支援予算を承認する法案(S.870)の一部(Division B)として織り込まれる形で、2024年6月18日に連邦議会で可決された。 [↩]
- DOEは、1982年放射性廃棄物政策法第302条により、使用済燃料処分のための「標準契約」を原子力発電事業者と締結することが必要とされている。標準契約では、原子力発電事業者による拠出金の支払の見返りとして、1998年1月31日以降のDOEによる処分のための使用済燃料引取りが定められている。DOEは未だに、処分のために使用済燃料の引取りを開始できておらず、この点が違反となっている。 [↩]
- 米国における会計年度は、前年の10月1日から当年9月30日までの1年間となっている。例えば、2008会計年度は2007年10月1日から2008年9月30日までの1年間となる。 [↩]
(post by hiro.furubayashi , last modified: 2024-11-20 )