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《カナダ》使用済燃料処分場のサイト選定の状況-サウスブルース自治体における処分場の受け入れに関する住民投票で賛成の住民が多数となる

カナダにおける使用済燃料処分の実施主体である核燃料廃棄物管理機関(NWMO)が進めている地層処分場のサイト選定は、現在、サイト選定プロセス第3段階の予備的評価を終了し、オンタリオ州北部のワビグーン・レイク・オジブウェイ・ネーション(WLON)-イグナスエリアと同州南部のソーギン・オジブウェイ・ネーション(SON)-サウスブルースエリアに絞り込まれている。このうち、SON-サウスブルースエリアの自治体であるサウスブルース自治体で、2024年10月21日から同年10月28日の期間に、「サウスブルース自治体が、NWMOが提案している地層処分場(DGR)の意欲のある受け入れ地域になることを宣言することについて賛成するか」に対する判断を求めた住民投票が実施された。2024年10月29日に、住民投票の結果が正式に公表され、有効票3,130票のうち、賛成が1,604票(51.2%)、反対が1,526票(48.8%)の賛成多数となった。

■カナダにおける地層処分のサイト選定プロセス

NWMOは、2010年に地層処分場のサイトを選定するための9つの段階で構成されるサイト選定プロセスを開始した。これは、NWMOが地層処分プロジェクト関する情報を求める自治体や地域を公募するものであり、2012年までに22の地域が関心を表明した。このうち、11の地域が予備的評価を実施するサイト選定プロセス第3段階第2フェーズに進み、机上調査、フィールド調査を経て、2020年に、オンタリオ州北部のイグナス・タウンシップを含む「ワビグーン・レイク・オジブウェイ・ネーション(WLON)-イグナスエリア」と、同州南部のサウスブルース自治体を含む「ソーギン・オジブウェイ・ネーション(SON)-サウスブルースエリア」の2つに絞り込まれている。NWMOは、2024年内には地層処分場のサイトとして好ましい地域を1カ所選定することとしている  。

■サウスブルース自治体における取り組み

サウスブルース自治体は、2012年3月27日にNWMOの地層処分プロジェクトへの関心表明を行った。その後、同自治体では、以下のスケジュールで調査が進められた。

  • 2012年:初期スクリーニングの実施
  • 2012~2014年:サイト選定プロセス第3段階第1フェーズとして机上調査を実施
  • 2020~2023年:サイト選定プロセス第3段階第2フェーズとしてボーリング調査、三次元弾性波探査、微小振動観測や地表水や地下水の観測を実施

これらの調査の結果として、2022年6月にNWMOは、SON-サウスブルースエリア(図1参照)で処分場を建設できる技術的な見通しがあるとの結論を示した技術報告書「安全性への信頼」を取りまとめている  。

図1  SON-サウスブルースエリアの「サウスブルースサイト」の位置、紫色の四角で囲った部分がNWMOが処分場建設のために取得したエリア(核燃料廃棄物管理機関(NWMO)、「安全性への信頼-サウスブルースサイト NWMO-TR-2023-08」より引用)

図1  SON-サウスブルースエリアの「サウスブルースサイト」の位置、紫色の四角で囲った部分がNWMOが処分場建設のために取得したエリア(核燃料廃棄物管理機関(NWMO)、「安全性への信頼-サウスブルースサイト NWMO-TR-2023-08」より引用)

一方、サウスブルース自治体では2020年に、地域が処分場を受け入れることへの潜在的な影響を評価し、地層処分プロジェクトに対する期待などに基づいた36項目の指針(guiding principles)を策定した。これは、プロジェクトが地域にとって適切かどうかを判断するための重要なステップであると位置付けられている。

このうち、指針9では「自治体は、地域住民と協力して、地域が地層処分プロジェクトを受け入れる意欲のレベルを表明できるようにするためのオープンで透明性のあるプロセスを開発し、構築する」としている  。この指針に基づきサウスブルース自治体は、地層処分場を受け入れる意欲のレベルをどのように測定するか、その方法を決定するために住民と協議する「関与活動」を実施した。この関与活動は、住民へ情報を提供して意見を聞き、地域の価値観や優先順位を反映するプロセスとなるようにするためのものであり、外部組織(GHD社)に委託してワークショップ等を開催している。意識レベルの測定方法として望ましい方法については、オンライン調査が実施され、住民投票、諮問委員会による決定、地域関与活動による決定、地域パネルによる決定、世論調査、自治体議会による表決の中から、望ましいとした住民が最も多かった「住民投票」を行うことが決められた。

■今後について

住民投票の結果は、2024年11月12日に開催される自治体議会に正式に報告されることになっている。オンタリオ州住民投票法の規定により、投票結果は自治体議会に対して拘束力を有するものとなっている。

なお、NWMOは今回の住民投票結果について伝えた自身のプレスにおいて、サウスブルース自治体に加えて、SON1 も、SON-サウスブルースエリアでサイト選定をさらに進めることについて受け入れる意欲を示さなければならないとしており、SONとも協力を継続していくとしている。

【出典】

  1. SONは、「ナワッシュのチッペワス未割譲ファースト・ネーション」及び「ソーギン・ファースト・ネーション」で構成される。 []

(post by nunome.reiko , last modified: 2024-11-01 )