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《カナダ》核燃料廃棄物管理機関(NWMO)が候補2サイトの技術的な有望性を示した報告書を公表

カナダの使用済燃料処分の実施主体である核燃料廃棄物管理機関(NWMO)は、2022年6月に、使用済燃料処分場のサイト選定プロセスの第3段階第2フェーズにおいて候補として残っている2自治体について、いずれの自治体においても処分場を建設できる技術的な見通しがあるとの結論を示した技術報告書を取りまとめた。NWMOは、2017年からオンタリオ州北部のイグナス・タウンシップにおいて、また、2020年から同州南部のサウスブルース自治体において、地下深部のボーリング・コアの取得を含む地質調査を行っていた。NWMOは、今回公表した技術報告書において、これまでの調査結果に基づいたNWMOとしての評価とその根拠を次の6つの観点から取りまとめており、「安全性への信頼(Confidence in Safety)」報告書と呼んでいる。

  • ①地質学的な閉じ込め特性と隔離特性
  • ②サイトの長期安定性
  • ③将来における人間侵入
  • ④サイト特性調査
  • ⑤処分場の建設・操業・閉鎖
  • ⑥輸送
レヴェル・サイト(左)とサウスブルース・サイト(右)の地図

レヴェル・サイト(左)とサウスブルース・サイト(右)の地図

NWMOは「安全性への信頼」報告書において、2自治体での処分場地上施設の候補地点を提示している。イグナス・タウンシップでは、市街地中心部から西方約35kmの原野(州が直轄する土地)に調査エリアを特定していたが、この調査エリアがある「レヴェル底盤」(Revell Batholith)として知られる27億年前に形成された結晶質の岩体に着目して、候補地名として「レヴェル・サイト」という呼称が採用された。また、サウスブルース自治体では、地下約650mにある石灰岩を主体とする地層が注目されており、候補地名は「サウスブルース・サイト」と呼称される。NWMOは、処分場の受け入れを検討している2自治体の公衆や先住民への情報提供と対話に役立てる目的で、レヴェル・サイト版とサウスブルース・サイト版の2種類の「安全性への信頼」報告書を作成している。

NWMOは、いずれのサイトにおいても長期にわたり安全性を確保できる処分場を建設可能であるとした結論を示しているが、この結論は2022年初めの時点で得られている地質情報に基づくものであり、今後、処分場の設計を進め、規制当局への許認可申請の準備を整えるためには、複数年にわたる詳細なサイト特性調査を実施する必要があることを強調している。

■自治体との正式な協力関係の構築に向けて

サイト選定プロセスの次段階となる第4段階においては、NWMOは関心を表明した自治体と協力して、地層処分プロジェクトの影響を受ける可能性がある周辺自治体、先住民、州政府の参加を得て、広域を対象とした環境影響評価を行うことになっている。第4段階に進むに当たっては、当該自治体が今後約十年にわたって行われるサイト評価、広域調査への関心を正式に表明することが前提条件となっている。

NWMOは、2023年に1カ所の好ましいサイトを選定する目標に向けて、イグナス・タウンシップ及びサウスブルース自治体との間で、処分場受け入れに関する合意につながる正式な協定文書の策定に向けた協議を進めている。この協定文書の策定に先がけて、大まかな方向性を相互に確認するため、NWMOは、合意覚書(MOU)を取り交わすステップを踏んでいる。

NWMOとサウスブルース自治体は、2022年6月14日にMOUの締結を公表した。公表されたMOUの内容には、同自治体で好ましいサイトが特定された場合、NWMOは①同自治体に専門技術センター(Centre of Expertise)を建設する、②不動産価値の維持に協力する、③他国の使用済燃料を輸入しない、④自治体の必要経費に対する協力を継続する、⑤NWMO本部を立地地域に移転する、等が記載されている。なお、調査が先行していたイグナス・タウンシップでは、2021年11月の自治体広報誌において、地層処分プロジェクトが地元コミュニティと足並みが揃うように協働する計画の重要性に焦点を当てた内容のMOUをNWMOと締結していることを明らかにしている。

【出典】

(post by nunome.reiko , last modified: 2023-12-27 )