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《カナダ》使用済燃料処分場のサイト選定の状況-候補2自治体で地上からの調査が進行中

カナダの使用済燃料処分の実施主体である核燃料廃棄物管理機関(NWMO)は、2023年までに1カ所の好ましいサイトを特定するという目標をかかげている 。NWMOは、サイト選定プロセスの第3段階第2フェーズに残っているオンタリオ州のイグナス・タウンシップ及びサウスブルース自治体の2自治体において、地上からの調査による使用済燃料処分場の潜在的な適合性の予備的評価を進めているところである 。

■イグナス・タウンシップにおける調査の現状

イグナス・エリアでのボーリング調査の模様(NWMO提供)

イグナス・エリアでのボーリング調査の模様(NWMO提供)

オンタリオ州北部のイグナス・タウンシップは、州都トロントから北西に約1,600km、カナダ大陸横断高速道路(トランス・カナダ・ハイウェイ)上にあり、主な産業は林業と観光業である。イグナス・タウンシップは面積約93km2、人口約1,200人の小さな自治体であり、その周囲に隣接する自治体はない。オンタリオ州北部の人口分布はまばらであるため、特定の自治体に属さず州が直轄する地域が広がっている。

イグナス・タウンシップでは、市街中心部から西方約35kmの原野に調査エリアが特定されている(州が直轄する土地であり、特定の地名がないためイグナス・エリアと呼称されている)。このエリアはカナダ楯状地に位置しており、NWMOは地下施設を地表から約500mの深さにある結晶質岩に建設することを検討している。NWMOは、イグナス・エリアにて2017年11月6日にボーリング調査を開始している。

NWMOはイグナス・エリアでの活動に関する2021年11月のプレスリリースにおいて、予定していたボーリングコアの採取作業を完了したことを公表した。2021年11月までの約4年間で長さ1kmのボーリングを合計6本掘削しており、今後、ボーリング調査で取得されたデータの分析が行われる。

ボーリング調査と並行してNWMOは、使用済燃料処分場プロジェクトによる環境影響の評価に必要となる情報を獲得するために環境ベースラインモニタリングプログラムの策定を進めている。このプログラムに地元の関心や懸念を反映するために、NWMOは2021年の夏期から「コミュニティ・サンプリングプログラム」を立ち上げ、イグナス及び周辺地域の動植物、地表水などのサンプリングを地域住民と協力して進めている。野生のヘラジカや淡水魚の狩猟、キノコやベリーの採取を目的に立ち入る人々にサンプルを提供してもらうほか、協力者に対してサンプリング技術のトレーニングを提供する取り組みが行われている。NWMOは、地域の人々と協力すること自体が、環境ベースラインモニタリングプログラムの目的や成果情報を相互に学ぶ機会となっており、教育的な効果を生み出していると述べている。

■サウスブルース自治体における調査の現状

サウスブルース自治体でのボーリング調査の模様(NWMO提供)

サウスブルース自治体でのボーリング調査の模様(NWMO提供)

オンタリオ州南部にあるサウスブルース自治体は、ヒューロン湖の東側約40キロメートルの内陸に位置しており、面積約490km2、人口は約5,600人である。土地は西側にゆるやかに傾斜して平坦に広がっており、農業が主要産業となっている。

サウスブルースでは、使用済燃料処分場の母岩として地下約600メートルに分布するオルドビス紀の堆積岩(約4億5,000万年~5億年前に形成)が考えられている。NWMOは、サウスブルース自治体での活動に関する2021年11月のプレスリリースにおいて、専用の車両を用いた三次元弾性波探査を開始したことを公表した。また、地質構造の理解に役立てるために、NWMOは2本の試験用ボーリング孔の掘削を2022年の夏までに完了させたい意向である。

また、NWMOはサウスブルースにおいても環境ベースモニタリングプログラムの策定と実施を、土地所有者や河川管理当局と共同で進めている。この地域の住民は農業と関わる水資源に関心が高い。そのため、NWMOはフィールド調査エリア周辺の土地所有者の農業用井戸水をサンプリングに利用させてもらう一方、井戸水の分析データを双方で共有するといった協力関係を築いている。分析データの公平性を期すために、NWMOは、それらの井戸水のほか、調査エリアを含むソーギーン川水系の表層水のサンプリングと分析を、サウスブルース自治体を含む15自治体が共同で設立しているソーギーンバレー保護局(SVCA)に委託している。

NWMOによるサイト選定プロセスの進捗動向(2021年12月時点)

NWMOによるサイト選定プロセスの進捗動向(2021年12月時点)

【出典】

(post by nishimura.yoshihito , last modified: 2023-12-27 )