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《米国》エネルギー省(DOE)が使用済燃料の中間貯蔵施設の同意に基づくサイト選定計画を再始動

米国のエネルギー省(DOE)は、2021年11月30日付けのニュース記事において、連邦政府による使用済燃料の中間貯蔵サイトの選定のための「同意に基づくサイト選定計画(Consent-Based Siting Program)」を再始動するとし、最初の手続きとして情報要求(RFI、Request For Information)を発行したことを公表した。また、DOEの「同意に基づくサイト選定」のページでは、RFIにおいて、2017年1月の「使用済燃料及び高レベル放射性廃棄物の集中貯蔵・処分施設のための同意に基づくサイト選定プロセス案」(以下「サイト選定プロセス案」という。)に対するコメントを求めるほか、「意味のある参加への障害の排除」、「廃棄物管理システムの一部としての中間貯蔵」の分野に対する意見等を求めることが示されている。

DOEのRFIは、2022年3月4日までの期限で、連邦政府による中間貯蔵施設(以下「連邦中間貯蔵施設」という。)について意見を求めるものであり、2021年12月1日付けの連邦官報で告示された(以下「RFI告示」という。)。DOEは、RFIで得られた情報は、DOEによる連邦中間貯蔵施設の同意に基づくサイト選定プロセス及び統合的放射性廃棄物管理システム、資金確保の可能性のための戦略構築の構築において、公平な形で使用する意向である。

DOEはニュース記事において、2021会計年度包括歳出法(Public Law No.116-260)で中間貯蔵のための歳出予算が計上されたこと、及び中間貯蔵を進展させるよう指示を受けたことを示した。同意に基づくサイト選定プロセスについては、オバマ民主党政権で設置された「米国の原子力の将来に関するブルーリボン委員会」の最終報告書・勧告 などを反映して検討が進められ、2017年1月には「サイト選定プロセス案」も公表されていたが、トランプ共和党政権で中止された

DOEは、RFI告示において、特に意見を求める分野及び意見項目を以下のように示している。

分野1:同意に基づくサイト選定プロセス

  1. DOEは、同意に基づくサイト選定プロセスにおいて、社会的公平と環境正義をどのように考慮すべきか。
  2. 連邦中間貯蔵施設の立地受入れの同意を判断する際に、先住民族、州及び地方政府等はどのような役割を果たすべきか。
  3. 連邦中間貯蔵施設のサイトを選定しようとして取り組むDOEとの関与を考慮する際、どのような便益や機会が地方・州・先住民族政府を後押しするものとなるか。
  4. 同意に基づくサイト選定プロセスによる連邦中間貯蔵施設の立地が成功するために障害となるものは何か、また、それはどのように対応できるか。
  5. 連邦中間貯蔵施設における貯蔵期間に持続するような合理的な期待及び計画を確立するため、DOEは地域コミュニティとどのように協働すべきか。
  6. サイト選定での同意に基づくアプローチの構築のため、どのような組織やコミュニティとの連携を考慮すべきか。
  7. サイト選定プロセス案で提起された課題を含め、DOEが同意に基づくサイト選定プロセスを実施する上で、他にどのような課題を考慮すべきか。

分野2:意味のある参加への障害の排除

  1. 同意に基づくサイト選定プロセスにおいて、意味のある参加を妨げる障害は何か、また、それはどう緩和、排除できるか。
  2. 潜在的に関心を持つコミュニティが、同意に基づくサイト選定に係る情報共有、専門家の支援及び意味のある参加の適切な機会を確保するために、必要とする資源は何か。
  3. 潜在的に関心を持つコミュニティとの相互学習及び協働の機会は、どのようにDOEは最大化することができるか。
  4. 連邦中間貯蔵施設の同意に基づくサイト選定において、どのようにDOEは地方・州・先住民族政府と効果的に関わることができるか。
  5. 連邦中間貯蔵施設の同意に基づくサイト選定において、コミュニティや諸政府、他のステークホルダーがDOEと関わるために必要とする情報は何か。

分野3:廃棄物管理システムの一部としての中間貯蔵

  1. 米国の廃棄物管理システムを構築する上で、どのようにDOEは社会的公平や環境正義の考慮を確実に行えるか。
  2. 廃棄物管理システムにおける複数施設の併設、あるいは製造施設や研究開発基盤、またはクリーンエネルギー施設と廃棄物管理施設の併設は、どのような便益や欠点があり得るか。
  3. 中間貯蔵施設の開発は、処分場開発の進展とどの程度関連すべきか。
  4. 廃棄物管理システムを構築する際、DOEは、他にどのような問題を考慮すべきか。

RFI告示の中でDOEは、使用済燃料が最終処分場に移送できるようになるまで中間貯蔵施設の操業が必要と想定していること、また、中間貯蔵の期間は、施設の立地、許認可及び建設などの重要なステップの完了時期に懸かっているとの見解を示している。なお、DOEが2017年に策定したサイト選定プロセス案は、集中貯蔵と処分場の立地を対象としたものであり、具体的なサイト選定の段階も示されていたが、今回のRFI告示では、同意に基づくサイト選定プロセスの対象は連邦中間貯蔵施設とされ、処分場のサイト選定についての具体的な言及はない。

なお、DOEが同意に基づくサイト選定プログラムの再始動を公表したことに対して、ネバダ州選出の上院議員2名は、DOEの取組を賞賛する声明を発出している。マスト上院議員のプレスリリースでは、現政権はネバダ州選出の上院議員2名の要求に応える形で、ユッカマウンテンにおける廃棄物処分は行わないことを確約しており、今回のDOEの公表はそれを再確認するものであるなどと述べている。また、エネルギー自治体連合(ECA)は、RFIの詳細は吟味中とした上で、DOEの国防関連廃棄物に関する言及がないこと、処分場に係る計画が無いまま中間貯蔵を進めようとしていること、民間での中間貯蔵施設の開発が進む中で連邦中間貯蔵施設のみを考慮しているように見えることなどについての懸念を示している。

【出典】

 

【2022年9月20日追記】

米国のエネルギー省(DOE)は、2022年9月15日に、連邦政府による使用済燃料の中間貯蔵サイト選定のための同意に基づくサイト選定計画に関して、2021年12月1日に連邦官報で発行された情報要求(RFI、Request For Information)に対して寄せられたコメントなどをまとめた報告書「同意に基づくサイト選定―情報要求(RFI)コメントの要約・分析」(以下「要約・分析報告書」という。)を公表した。同意に基づくサイト選定計画に係るRFIに対しては、先住民族や州・地方政府、NGOや学界、産業界、その他のステークホルダーなどから、225件のコメントが提出されていた。今回公表された要約・分析報告書では、今回寄せられたコメントとともに、2017年1月発行の「使用済燃料及び高レベル放射性廃棄物の集中貯蔵・処分施設のための同意に基づくサイト選定プロセス案」(以下「サイト選定プロセス案」という。)に対するコメントについても、併せて要約・分析を行っている。

要約・分析報告書の公表について伝えるDOE原子力局(NE)の2022年9月15日付のホームページでは、「関係の構築」として、DOEがコミュニティやステークホルダーと信頼関係を構築するための意味ある取組をしてこなかったとのコメント、使用済燃料管理を主導する新たな独立組織の創設が必要とするコメントがあったことなどが紹介されている。その他、同意に基づくサイト選定プロセスの成功を応援する意見と懐疑的な意見が示されたこと、集中中間貯蔵施設の開発に反対するコメントも見られたこと、原子力発電に反対する見解を示すコメントもあったことなどが紹介されている。

以上のようなコメントの分析を踏まえてDOEは、信頼関係を構築し、維持する上で、同意に基づくサイト選定プロセスの成功に向けた指針となる優先項目として以下の6点を挙げ、これらの優先項目に対するDOEの今後の取組を示した。

  1. DOEが開発している統合的廃棄物管理システムの潜在的な便益を最大化できる方法で、集中中間貯蔵施設の実現に向けた連邦議会による指示を実施する。
  2. 内部的にも外部的にも変化することにより、DOEへの信頼欠如に対応する。内部的には約束事項のフォローを改善し、過去の過ちを正直に認めること、また、外部的には包括的でコミュニティ主導、段階的で柔軟な同意に基づくサイト選定プロセスを開始する。
  3. 同意に基づくサイト選定プロセスは、公正であることを確保する。手続的公正さは、プロセスの全段階で、コミュニティや関連地方政府等と積極的、公平に関わることであり、コミュニティ等が全面的に参加して十分な情報を得た上で決定できるようにするために必要な資金やデータの提供を含む。
  4. サイト選定のプロセスだけでなく、選定結果の公正性にも焦点を当てる。公平及び環境正義(environmental justice)上の考慮を重視し、同意の定義をコミュニティと協働で進め、コミュニティのニーズ等を常に認識する。自発的、公平で同意に基づくサイト選定プロセスへの参加という利点は、立地を選択しないとの結論に至った場合にも継続するものとする。
  5. 先住民族や州等との緊密な協力の下に、輸送問題や関連地域の懸念に対応する、使用済燃料の安全な輸送のための計画策定を継続する
  6. 使用済燃料管理の様々な施設のサイト候補地の適合性評価においては、安全性、セキュリティ、その他関連の基準を厳格に適用する。サイト選定プロセスは、一連の評価段階を含む段階的なものであるべきであり、独自の独立的な評価の実施を希望するコミュニティの支援も確約する。

今後についてDOEは、RFIに寄せられたコメントを評価していくが、すべての関連コミュニティやステークホルダーの考えは反映できないとして、特に先住民族や原子力発電所近傍のコミュニティ、低所得層やマイノリティなどの反映が不十分なグループの声も、同意に基づくサイト選定プロセスに係る今後のDOEの政策や意思決定の中で考慮するように、支援活動及び関与(outreach and engagement)の取組などを継続する計画を示している。DOEは、そこで得られた意見も織り込んだ上で「サイト選定プロセス案」を更新すること、学びの支援及び同意に基づくサイト選定を実践するコミュニティの構築を支援する資金提供公募(FOA)を行う計画も示している。

なお、要約・分析報告書では、ユッカマウンテン計画に関するコメントも一部紹介されており、ユッカマウンテンサイトなど以前のサイト選定の取組に関連した不信、ユッカマウンテン処分場の建設に係る許認可審査を完結すべきとの提言、ユッカマウンテンは今でも唯一の処分場オプションなのかとの連邦議会への問いかけなどのコメントがあったことが示されている。

 

【出典】

 

【2022年9月22日追記】

米国のエネルギー省(DOE)は、2022年9月20日付のニュース記事において、連邦政府による使用済燃料の中間貯蔵施設のための同意に基づくサイト選定に関して、同意に基づくサイト選定、使用済燃料管理、及び中間貯蔵施設のサイト選定時の考慮事項について、さらなる学びに関心があるコミュニティに対する資金提供公募(FOA)を行うことを公表した。DOEは、2022年9月15日に同意に基づくサイト選定計画に対するコメントの要約・分析報告書を公表した際に、先住民族など意見反映が不十分なグループの声を聞く取組を継続すること、学びの支援及び同意に基づくサイト選定を実践するコミュニティの構築を支援する資金提供公募(FOA)を行うことを表明していた。

今回発行された資金提供公募(FOA)では、6~8の団体が選定され、1団体当り1,000~2,000千ドル(約1億1,500~2億3,000万円、1ドル=115円で換算)、総額で最大16,000千ドル(約18億4,000万円)が、2023年3月から18~24カ月の期間にわたって提供される予定である。選定された団体は、コミュニティ内での相互学習を進め、情報への容易なアクセス環境を提供し、開かれた議論を促進する。本資金提供公募(FOA)の資金で支援される活動としては、以下の3領域が示されている。

  • 使用済燃料管理に関する、包括的で有意義なコミュニティ・ステークホルダーの関与プロセスを組織化し、主導し、維持する。
  • 集中中間貯蔵施設のための同意に基づくサイト選定プロセスに対して、コミュニティ主導のフィードバックや効果的な協働(collaboration)を促進し、実現可能とするような公共価値(public value)、関心事項及び目標を同定する。
  • 使用済燃料に関連するトピックについて、ステークホルダーやコミュニティ、専門家の間の相互学習を支援するような成果及び戦略を開発し、実践し、報告する。

今回のDOEの資金提供公募(FOA)では、使用済燃料管理やサイト選定に関心がある地域コミュニティ等に呼びかけが行われているが、実際のサイト選定が開始される前段階での取組であり、ステークホルダー関与の取組などの成功例や課題、使用済燃料管理の諸手法の障壁・利点に係るステークホルダーの認識、コミュニティ・ステークホルダーと効果的に協働するための必要要件、その他DOEがステークホルダーに貢献できることなど、サイト選定活動の取組手法などについて報告を求めるものとなっている。また、選定された団体は、DOEが主催する四半期レビューへの参加が求められている。

なお、DOEは、本資金提供公募(FOA)は集中中間貯蔵施設を立地するサイトを募集するものではないことを明示している。その上でDOEは、同意に基づくサイト選定プロセスについて、関心あるステークホルダーとコミュニティの間における関与や開かれた対話、理解力の構築を奨励したいとの考えを示している。DOEは、本資金提供公募(FOA)について、ウェブを活用したセミナーも開催する予定であり、関心ある組織、個人に参加を呼びかけている。

【出典】

(post by inagaki.yusuke , last modified: 2023-11-22 )