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英国で4例目となるテッドルソープGDFコミュニティパートナーシップが設立

テッドルソープ調査エリア

英国イングランド東部のリンカンシャー州において、同州イーストリンジー市と地層処分事業の実施主体であるニュークリアウェイストサービス(NWS) 1 は、2022年6月30日に、イーストリンジー市で特定されていた調査エリアにおいて、地層処分施設(GDF)の立地を検討する「テッドルソープGDFコミュニティパートナーシップ」を設立した。同コミュニティパートナーシップは、イーストリンジー市にあるテッドルソープ・ガスターミナル跡地における地層処分施設の立地可能性を中長期的なスパンで検討していくグループであり、NWSとコミュニティの対話における中心的な手段となる。今回のコミュニティパートナーシップの設立にあたり、放射性廃棄物を処分する地下部分は、調査エリア沖合の領海内(約22km)の海底下に建設される計画であり、陸地の調査エリア内では放射性廃棄物を処分しない方針を明らかにしている。

なお、2018年12月から開始したサイト選定プロセスにおいて、コミュニティパートナーシップの設立に至ったケースとしては、2022年1月にカンブリア州アラデール市で設立された「アラデールGDFコミュニティパートナーシップ」に続いて今回が4例目となる。

■コミュニティパートナーシップ設立までの経緯

テッドルソープWGエリア

テッドルソープGDFワーキンググループの検討対象エリア
(RWM社の初期評価レポートを元に原環センターにて作成)

イーストリンジー市にあるテッドルソープ・ガスターミナルでは、北海の約100kmを超える沖合にある海上掘削基地と海底パイプラインで結び、日産約400万m3の天然ガスを生産していたが、2018年8月に生産を終了した。ガスターミナル跡地の利用策を検討していたリンカンシャー州議会は、2021年10月にテッドルソープGDFワーキンググループを設置し、地層処分施設のサイト選定プロセスにおける「調査エリア」の特定と提案、並びにコミュニティパートナーシップの設立に向けた検討を開始し、2022年2月には調査エリアを特定していた。調査エリアの範囲は、英国政府の2018年政策文書に基づき、コミュニティや自治体組織等から協議に参加可能な者が特定できるように、選挙区を最小単位として設定される。今回設立されたテッドルソープGDFコミュニティパートナーシップの調査エリアには2つの選挙区が含まれている。

これまで調査エリアの特定を行ってきた「テッドルソープGDFワーキンググループ」は、今回のコミュニティパートナーシップの設立をもって活動を終了し、コミュニティの関与の手段としての役割はコミュニティパートナーシップが引き継ぐことになる。

テッドルソープGDFコミュニティパートナーシップの初期メンバーは、NWS、リンカンシャー州議会、イーストリンジー市議会であるが、地元の議会、ボランティア団体、企業から最大15名のメンバーを募集している。また、より多くの地元住民の参加と議論を促すため、ステークホルダー・フォーラムが設立される予定である。なお、今後より多くのメンバーの参加を得て新たに議長が任命されるまでの間は、ワーキンググループの議長を務めたジョン・コリンズ氏が暫定的に議長を務める。

■コミュニティ投資資金(CIF)の枠組み

英国政府の2018年政策文書に基づき、テッドルソープGDFコミュニティパートナーシップに対して、英国政府から年間最大100万ポンド(1億5,500万円、1ポンド=155円)のコミュニティ投資資金の提供が始まる。地層処分施設プロジェクトは、将来の地層処分施設の建設などに伴って雇用やインフラ、主要投資に関連する恩恵(ベネフィット)を生み出すものの、そのような活動が始まるまでは地元への恩恵は実現しない。そのため英国政府は、自治体が参画する形で地層処分施設の立地可能性を検討する段階から、コミュニティ投資資金(CIF)を提供する。コミュニティパートナーシップは、このコミュニティ投資資金の運用管理の役割を担うことになる。

コミュニティ投資資金の給付は、調査エリア内のモノやサービスを改善して、コミュニティの生活の質を高めようとする民間企業、公共団体及び第三セクターに対して行われる。これらの団体が申請する資金額が1万ポンド未満(155万円)の場合はコミュニティパートナーシップが支給の可否を決定するが、1万ポンドを超える場合は別途NWSの審査を受ける必要がある。

コミュニティ投資資金の利用目的と実例

英国政府の2018年政策文書においては、コミュニティ投資資金(CIF)の利用目的として以下の3分野が想定されており、各コミュニティパートナーシップは、当該調査エリアにおいて、これらの目的を満たすものかどうかを判断したうえで、資金提供を行うことになっている。

  1. コミュニティの施設の改善、生活や衛生面の質的向上、コミュニティの福祉やその改善
  2. 観光等による経済的恩恵が見込まれる文化遺産や自然遺産等の自然環境や人工環境の整備
  3. 雇用機会、雇用創出、技能開発、教育または訓練、地元企業の推進、長期的な経済開発または経済の多様化等、経済的発展の機会の提供

実例として、ミッドコープランド及びサウスコープランドGDFコミュニティパートナーシップでは、以下のような計画に資金提供が行われている。なお、コミュニティ投資資金は、申請者が提出する支出証明書に基づき、実際に掛かった費用のみが支払われる仕組みとなっている。

<ミッドコープランドGDFコミュニティパートナーシップ>

  • 自転車競技の一種であるBMXのトラック改修(47,801ポンド、約741万円)
  • 多目的ルームの改修計画の作成(9,576ポンド、約148万円)
  • クリケットクラブの電子スコアボードの設置(8,122ポンド、約126万円)

<サウスコープランドGDFコミュニティパートナーシップ>

  • クリケットクラブの施設修繕(31,236ポンド、約484万円)
  • コミュニティマガジンの配布(5,000ポンド、約78万円)

【出典】


  1. ニュークリアウェイストサービス(NWS)は、2022年1月末に、放射性廃棄物管理会社(RWM社)と低レベル放射性廃棄物処分場会社(LLWR社)が経営統合して設立した組織である。NWSは法人格を持たず、NDAグループの放射性廃棄物のマネジメント機能を統合した単一の組織である。[]

(post by f-yamada , last modified: 2024-01-04 )