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フランス政府が地層処分場の公益宣言(DUP)を発出

地層処分場の構成要素及びそれらが立地する自治体(ANDRAの資料を元に原環センターにて作成)

地層処分場の構成要素及びそれらが立地する自治体(ANDRAの資料を元に原環センターにて作成)

フランス政府は2022年7月7日に、地層処分場(Cigéo)プロジェクトの公益性と正当性を認める公益宣言(DUP)を発出した。これにより、地層処分の実施主体である放射性廃棄物管理機関(ANDRA)は、地層処分場の建設に必要な工事の許認可取得や、未取得の土地の公的な収用による取得が可能となる。なお、地層処分場の地上施設及び地下施設の建設に必要な土地は約33km2であり、2県11自治体にまたがっている。

フランスにおける地層処分場プロジェクトは、今回のフランス政府による公益宣言(DUP)の発出を受け、計画段階から事業化段階へと進むことになる。ANDRAは地層処分場の建設に向けて、設置許可申請を2022年末に行う予定である。

■公益宣言の発出に至るまでの合意形成プロセス

ANDRAは2020年8月に、地層処分場プロジェクトに関する公益宣言(DUP)の申請をエコロジー移行省に行っており、地層処分事業の進め方に関する4つのオプションでの費用と便益とを比較した社会経済評価の結果を示して、ANDRAが提案する計画に基づいて地層処分場の開発を進めることが、将来世代に最も配慮した有益なオプションであると説明していた。ANDRAは地層処分場の建設を2段階で進める計画であり、2030年頃から開始するパイロット操業フェーズでは、模擬廃棄体及び実廃棄体を用いて処分場の安全性に関わる試験を実施し、その評価を行う。その後、処分場全体の操業許可を取得した上で、2040年頃より2100年頃にかけて長寿命中レベル放射性廃棄物の処分を行い、2080年頃から2145年頃に高レベル放射性廃棄物の処分を行う。

ANDRAによる公益宣言(DUP)の申請に対して、環境当局、環境・持続可能開発審議会(CGEDD)や自治体等の24の地方機関から意見書が提出され、2021年秋に実施された公開ヒアリングでは4,150件の意見が寄せられた。2021年12月には、公開ヒアリングを主催した意見聴取委員会から、5つの提言を含むDUPの発出に好意的な意見が示されていた。フランス政府は、ANDRAの社会経済評価に対する政府の投資総局(SGPI)による評価報告書 や、政府の諮問機関であり、行政最高裁判所でもある国務院(Conseil d’État)の勧告などを考慮し、ANDRAが提案する地層処分場プロジェクトに関する公益宣言(DUP)をデクレ(政令)として制定した。

■公益宣言(DUP)デクレの内容

今回制定されたデクレは7条で構成されており、以下の点が規定されている。

  • 地層処分場の公益性の認定
  • 地層処分場の構成要素が立地し、土地収用の対象となる自治体
  • 土地収用の期限を2037年12月31日とすること(ただし、地層処分場の地下施設のみに関する収用は、パイロット操業フェーズの終了前、かつ2050年12月31日までに収用を実施)
  • ANDRAは、必要に応じて、農業・海洋漁業法典が規定する条件により、農地で生じた損害を賠償しなければならないこと
  • エコロジー移行・国土結束大臣及びエネルギー移行大臣が、本デクレの施行の責任を負うこと

なお、地層処分場の建設に必要な全ての土地のANDRAによる所有権、または使用の権利の取得は、2022年末に予定されている設置許可の申請時には必要とされず、2035年~2040年頃に予定されている操業許可の取得時に必要とされている1

〈参考〉ANDRAによる土地取得状況

公益宣言(DUP)の申請に先立ち、ANDRAは、地層処分場の地上施設の建設に必要な土地を話し合いによる購入や代替地の提供により徐々に取得している。また、地下施設の建設を予定する土地のうち、地上施設が建設されない区画については、ANDRAは地下の一定の深度範囲についてのみ所有権や使用の権利のみを取得すればよいこととなっている1 。この場合、地下部分の所有権をANDRAに移転しても、地表の土地はこれまで通りに使用可能である。

地層処分場の構成要素の建設に必要な土地の面積は以下のとおりである。

  • 地上施設斜坑区域:約296ヘクタール(約2.96km2
  • 地上施設立坑区域:約202ヘクタール(約2.02km2
  • サイト間連絡部:約46ヘクタール(約0.46km2
  • 専用鉄道:約121ヘクタール(約1.21km2
  • 地下施設設置区域:2,900ヘクタール(29km2

地上施設の設置に必要な土地の面積は合計約665ヘクタールであり、地下構造物に必要な2,900ヘクタールのうち、地下部分だけが必要な区画の面積は約2,584ヘクタールである。これらのうち、ANDRAが2020年末時点で取得できていなかった土地の面積は、地上施設については約120ヘクタール、地下部分のみが必要な区画については2,100ヘクタールであった。これらの未取得の土地については、話し合いによる取得が不調に終わった場合にも、今回の公益宣言(DUP)のデクレ(政令)の発出により、ANDRAは公的な収用手続きにより、所有権を確実に取得できるようになる。

【出典】

  1. 環境法典 法律の部 第L. 542-10-1条 [] []

(post by eto.jiro , last modified: 2023-10-11 )