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《英国》放射性廃棄物処分施設に関する規制ガイダンス草案の意見募集開始

英国の放射性廃棄物処分の安全規制を所管する環境規制当局1 は2024年11月12日に、放射性廃棄物処分施設の環境許可に関する規制ガイダンスである「放射性固体廃棄物処分場:許可要件に関するガイダンス」及び「地層処分場:段階的規制ガイダンス」の2件の草案を公表し、意見募集を開始した。これらのガイダンスは、2009年に策定された既存のガイダンスを置き換えるものである。意見募集は2025年2月28日まで行われる。提出された意見を踏まえ、環境規制当局は2025年夏に意見に対する回答を公表し、2026年までにガイダンスの最終版を策定する予定である。

■ガイダンス草案の策定までの経緯

今回公表されたガイダンスの草案は、放射性廃棄物処分施設の環境許可取得に際して事業者が示すべき内容を説明する文書であり、処分施設の立地は対象としていない。既存のガイダンスとしては、2009年に策定された「浅地中処分施設の許可要件に関するガイダンス」及び「地層処分施設の許可要件に関するガイダンス」があるが、策定からすでに15年が経過している。このため、国際原子力機関(IAEA)の国際レビューなどでも最新化の必要性が指摘されていた。また、英国政府が2024年5月に公表した「英国における放射性物質の管理と原子力施設の廃止措置に関する政策枠組み」において、廃止措置で発生する一部の中レベル放射性廃棄物について、地層処分だけでなく浅地中処分も可能とする方針変更 を行うなど、政策面でも変化があった。これらの状況を踏まえて、「放射性固体廃棄物処分場:許可要件に関するガイダンス」の草案では、国内外の最新の安全基準や規制、政策方針との整合を図るとともに、地層処分と浅地中処分で2つに分かれていた文書を統合し、一貫性を持たせることが意図されている。さらに、地層処分場の段階的規制について独立したガイダンスの草案を策定し、各段階での規制アプローチを明確化することとしている。

■「放射性固体廃棄物処分施設:許可要件に関するガイダンス(GRA)」草案の概要

本文書は、以下のとおり6部構成となっている。第2部では許可要件として18項目が示されており、そのうち15項目は地層処分施設と浅地中処分施設で共通するものである。残る3項目(処分施設閉鎖後の意図的でない人間侵入の防止、処分施設閉鎖後の天然の破壊的プロセスの影響防止、臨界リスク)に関しては、地層処分施設と浅地中処分施設のそれぞれについての要件が示されている。また、第4部の地下水の保護は同文書で新たに導入されたものであり、現在はイングランドのみを適用対象としている。ウェールズ、北アイルランドに関しては、ガイダンスの最終版までに、イングランド向けのガイダンスを採用するか、独自のパートを設けるかを検討する予定である2

第1部 イントロダクション

第2部 規制基準と要件

第3部 環境セーフティケース

第4部 地下水の保護(イングランド)

第5部 用語集

第6部 参考文献

■「地層処分施設:段階的規制ガイダンス」草案の概要

本文書は、上掲の許可要件ガイダンスを補完するものである。2009年策定の地層処分施設における許可要件に関するガイダンスにも段階的規制の概念は含まれていたが、地下での処分が英国全土で適用されるものではないことから、新たにイングランドのみで適用される独立したガイダンスとして策定されることとなった。本文書は、地層処分施設における段階的規制アプローチを明確に示すことを目的として作成され、以下のとおり、処分施設の開発段階に応じた7部構成となっており、各段階で必要な許可やセーフティケースについて説明している。

第1部 地層処分施設における段階的規制の概要、目的と目標

第2部 地上からの調査

第3部 地下での調査

第4部 地層処分施設の建設

第5部 処分施設の操業

第6部 閉鎖

第7部 規制解除

付録1 地層処分施設のための地上からの調査及び地下での調査に関する環境許可申請のサポートに必要な情報に関するガイダンス

【出典】

  1. 英国の放射性廃棄物の処分規制は各自治政府が設置している環境規制当局が担当している。イングランドは環境規制機関(EA)、ウェールズは天然資源ウェールズ(NRW)、北アイルランドは北アイルランド環境庁(NIEA)、スコットランドはスコットランド環境保護局(SEPA)が管轄している。 []
  2. スコットランドに関しては、浅地中処分施設のみを対象としたGRA文書を別途策定し、協議中である。 []

(post by f-yamada , last modified: 2024-11-28 )