英国のイングランドとウェールズの環境規制機関(EA)は、1993年の放射性物質法に基づいた放射性廃棄物処分の規制を行っている。今回、EAは地層処分場及び浅地中処分場それぞれの許可要件に関するガイダンスの草案を公表し、2008年5月15日付のプレスリリースにおいて、ガイダンスについての公衆協議を開始したことを発表した。公衆協議の期間は2008年9月1日までとされており、公衆協議で得られた意見を考慮し、2008年末に最終版のガイダンスとして公表する予定である。
英国では1997年に『低・中レベル放射性廃棄物の陸地処分施設の許可要件に関するガイダンス』が公表されており、今回、公衆協議が行われる2種類のガイダンスは、これを置き換えるものと位置付けられている。今回公表された地層処分場の許可要件に関するガイダンスの草案(以下「草案」という)によると、ガイダンスは地層処分場の開発・操業のアプローチや、施設の立地、設計、建設、操業及び閉鎖において事業者が満たすべき原則と要件、及びそれらの規制機関による解釈を示すものとされている。ただし、地層処分場の許可要件に関するガイダンスは、地層処分される全ての放射性廃棄物を対象としており、高レベル放射性廃棄物や使用済燃料等も含まれている。
今回の地層処分場の許可要件に関するガイダンスは、2006年10月の高レベル放射性廃棄物等の長期管理に関する計画の策定 を中心に、1997年以降の動きを踏まえて策定され、最終化されたガイダンスには、2008年中に公表が予定されている放射性廃棄物の安全な管理に関する白書 の内容が反映されることとなっている。なお、英国において放射性廃棄物処分の安全規制は、イングランド及びウェールズ、スコットランド、北アイルランドをそれぞれ管轄する3つの環境規制機関が担当しているが、今回の草案はイングランドとウェールズの環境規制機関(EA)が、北アイルランドの環境規制機関と共に公表したものである。
草案では、下記の5つのトピックスについての規制に係る原則・要件等が示されている。
- 放射性固体廃棄物処分の原則:国際的に合意された助言と勧告に沿った6つの原則
- 処分場の許可:開発者(事業者)と共有できることが期待される合意事項。それによって、サイト選定が行われる初期の段階で環境問題について規制当局が助言を行うことができる。
- 管理、放射線学的及び工学的要件:サイトの使用、施設の設計、建設、操業及び閉鎖において遵守されるべき放射線学的及び工学的要件
- 環境に関するセーフティケース:公衆と環境が十分防護されることを証明するために必要とされる環境に関するセーフティケースについてのガイダンス
- 政策及び法的枠組み:放射性廃棄物処分の規制に影響を与えるような、国際条約、国の政策と広範囲の背景の要約
なお草案では、公衆協議において特に意見が求められる点として、次の10の質問が示されている。
- 草案は、技術的背景を持たない者にも十分に明瞭か。
- 今回の草案と、保健保護庁(HPA)による放射性固体廃棄物処分に関する勧告の関係は明瞭か。
- 示された諸原則は、放射性固体廃棄物の陸地処分という観点で明瞭で、道理にかなっており、完全であるか。
- 示された諸原則は、明瞭で、道理にかなっており、また放射性固体廃棄物の陸地処分において対応すべきあらゆる分野を網羅しているか。
- 許可発給後の段階において、10-6年(すなわち年間100万分の一)の参照リスクレベル(risk guidance level)を提案しているが、これは、防護基準という観点で十分で、かつ適切なものか。「参照リスクレベル」という用語は、十分に明瞭であいまいでないか。
- 提案されたリスク評価、及びリスクと参照リスクレベルとの比較についてのアプローチに賛成するか。
- 追加的・補助的なガイダンスは有用か。
- 草案で示された最適化のアプローチに賛成するか。賛成しないならば、どのような代替的アプローチがあるか。
- 環境規制機関が要求する環境上のセーフティケースは、原子力施設検査官室(NII)が要求する原子力安全上のセーフティケースと組み合わされるべきか。
- 提案されている、地層処分場への人間侵入に関するアプローチに賛成するか。
【出典】
- イングランドとウェールズの環境規制機関(EA)、2008年5月15日付のプレスリリース、
http://www.environment-agency.gov.uk/news/2045337 - EA、北アイルランド環境・文化遺産局(EHS)、「放射性固体廃棄物の陸地における地層処分場:許可要件に関するガイダンス 公衆協議のための草案」、2008年5月15日
【2009年3月11日追記】
イングランドとウェールズの環境規制機関(EA)のウェブサイトにおいて、地層処分場及び浅地中処分場それぞれの許可要件に関するガイダンス(2009年2月付)が公表された。公衆協議では44件のコメントが寄せられており、本ガイダンスはそれらを踏まえて策定されている。
- イングランドとウェールズの環境規制機関(EA)ウェブサイト、http://www.environment-agency.gov.uk/business/sectors/99322.aspx
- EA、ガイダンス及び公衆協議の報告書の公表に関する質問と回答、http://www.environment-agency.gov.uk/static/documents/Business/QA_FOR_WEBSITE_FINAL_branded.pdf
(post by 原環センター , last modified: 2023-10-10 )