Top » 海外情報ニュースフラッシュ(全記事表示モード)

海外情報ニュースフラッシュ

海外情報ニュースフラッシュ

このWebサイトでは、諸外国における高レベル放射性廃棄物の最終処分や地層処分の計画の動きに注目し、 "海外情報ニュースフラッシュ"として 最新の正確な情報を迅速に提供しています。 ニュースフラッシュを発行した後も、記事トピックをフォローしています。必要に応じて、情報の"追記"を行っています。


フランスの放射性廃棄物管理機関(ANDRA)は、2023年1月17日付のプレスリリースにおいて、地層処分場(Cigéo)の設置許可申請書を政府に提出したことを公表した。また、プレスリリースと併せて、申請書として提出した文書もウェブサイト上で公表した(下記コラムを参照)。この後、原子力安全機関(ASN)による安全審査が進められるとともに、法定の公開ヒアリングが開催される予定である。最終的には、政府の諮問機関であり、行政最高裁判所でもある国務院(Conseil d’État)による審議を経て、設置許可がデクレ(政令)により与えられる。本デクレは、地層処分施設の原子力基本施設(INB)としての性質と区域、並びに公衆の安全・健康や自然・環境を保護する上で必須の要素を定めるものである。また、本デクレには、ASNから送付される技術的要求事項も含まれることとなる。

地層処分場(Cigéo)の原子力基本施設(INB)としての区域(ANDRAの設置許可申請書類を元に原環センターにて加筆)

地層処分場(Cigéo)の原子力基本施設(INB)としての区域(ANDRAの設置許可申請書類を元に原環センターにて加筆)

設置許可申請までの主な経緯

フランスでは、1991年に制定された放射性廃棄物管理研究法により、高レベル及び長寿命中レベル放射性廃棄物の管理方針の決定のため、地層処分、長寿命核種の分離・変換、長期地上貯蔵の3つの分野に関する15年にわたる研究を行い、その研究成果を踏まえて最善な管理方策を定める新たな法律を制定することとされていた。その後、2006年に高レベル・長寿命放射性廃棄物を含む放射性廃棄物全般の管理に関する放射性廃棄物等管理計画法が制定され、これらの廃棄物について、「可逆性のある地層処分」を行うことを基本とし、研究成果を考慮した上で、地層処分場の設置許可申請の提出の目標を2015年、操業開始の目標を2025年とすることが規定された 。

Cigéoのサイト選定に関しては、放射性廃棄物管理研究法では、地層処分の研究に当たって地下研究所を設置することが定められていた。これを受け、政府は議会科学技術選択評価委員会のバタイユ議員を調停官に任命し、地下研究所の建設地域を選定することとした。バタイユ議員率いる調停団は、1993年に地下研究所候補地の公募を行い、約30件の応募地域に対する、地質学的特性評価や地元との協議を経て、4県を提案した。その後、ANDRAによる予備的な地質調査を経て、ムーズ、オート=マルヌ両県の県境近傍のビュールにおいて、粘土層を対象とした地下研究所の建設が1999年に決定され、2000年から建設が開始された。ANDRAは建設作業と並行して地下での調査研究を実施した 。ANDRAは、2007年にはビュール地下研究所周辺の250km2の区域における新たな地質調査を開始し 、2009年には地層処分場の地下施設の展開のために詳細な調査を行う30km2の区域を政府に提案し、2010年に政府の了承を得た。

その後ANDRAは、Cigéoの建設のために設置許可とは別に必要となるものとして、プロジェクトの公益性と正当性を認める公益宣言(DUP)について、2020年8月にDUPの発出の申請をエコロジー移行省に行っており、フランス政府は2022年7月7日に、DUPを発出した

放射性廃棄物管理機関(ANDRA)が申請書として提出した文書の一覧

  • 文書00:非技術的なプレゼンテーション
  • 文書01:操業者(ANDRA)の識別情報
  • 文書02:施設の概要
  • 文書03:施設位置を示す縮尺25,000分の1の地図
  • 文書04:建設計画地周辺を示す縮尺10,000分の1の配置図
  • 文書05:施設の詳細図面(縮尺2,500分の1)
  • 文書06:影響調査(近日公表予定)
  • 文書07:予備的安全解析書(近日公表予定)
  • 文書08:リスクマネジメントの検討
  • 文書09:操業者の技術力
  • 文書10:操業者の財務能力
  • 文書11:土地所有権の正当な理由
  • 文書12:地役権及び保護・専用権申請書
  • 文書13:廃止措置・閉鎖・モニタリング計画
  • 文書14:公衆参加の概要
  • 文書15:温室効果ガス排出量
  • 文書16:操業基本計画
  • 文書17:法的情報及び管理的情報/li>
  • 文書18:プロジェクトに対して提出されたコメント
  • 文書19:廃棄物パッケージ受入予備仕様書
  • 文書20:Cigéo処分施設開発計画
  • 文書21:読解ガイド
  • 文書22:用語集及び略語集

【出典】

ドイツでは、「高レベル放射性廃棄物の最終処分場のサイト選定に関する法律」(以下「サイト選定法」という)に基づき、処分実施主体である連邦放射性廃棄物機関(BGE)が2017年9月から3段階からなるサイト選定手続きを進めている。BGEは、2020年9月に取りまとめた『サイト選定手続き第1段階の中間報告書』(以下「中間報告書」という)において、ドイツ全土から最終処分にとって好ましい地質学的条件が存在すると判断される90区域を抽出したが、それらは国土の54%を占めており、さらなる絞り込みに向けて検討を進めているところである。BGEは2022年12月19日付けのプレスリリースにおいて、絞り込んだ限定数のサイト地域を2027年に提案できる見通しを明らかにした。

■3段階のサイト選定手続き全体の所要期間の見積り

ドイツでは最終処分場の母岩候補として、岩塩、粘土岩及び結晶質岩を検討している。サイト選定手続きの第1段階では、これら3種類の母岩において、高レベル放射性廃棄物の安全な処分の実現にとって好ましい地質学的条件が存在すると予想される「サイト地域」を指定することになっている。BGEは、サイト選定手続きのプロジェクト管理組織として、連邦や州の管轄当局にデータ提供を要請することにより、地球科学的な評価基準をドイツ国土に適用する上で必要となるデータを収集した。BGEの中間報告書の取りまとめを受けて設置された「サイト区域専門会議」は、2021年8月に、今後のサイト地域の指定に向けた公衆参加の計画を検討できるようにするために、サイト選定のマイルストーンを早急に明らかにするようBGEに求めていた

今般BGEは、サイト区域専門会議の提言に対応するため、サイト選定手続きを進める上で必要な作業工程を検討(スケジューリング)することにより、サイト決定に至るまでの全体スケジュールの見通しを考察した報告書を取りまとめた。既に着手している母岩の種類別の予備的安全評価や関連する研究開発などの工程計画を踏まえると、BGEによる第1段階における限定数のサイト地域の提案は、約5年後の2027年後半となる見通しである。また、BGEは第2段階において実施する地上からの探査には、対象となるサイト地域数に応じて9~11年を要すると推定している。第3段階で実施する地下探査の所要期間は、その実施内容によって大幅に変わり、ボーリング調査のみの場合には5~6年、地下研究所を設置する調査を行う場合には13~23年と推定している。なお、これらの所要期間の推定には、規制当局による審査や連邦議会での決定プロセスに要する時間は含めていない。

図:ドイツのサイト選定手続きの所要期間見積り

図:ドイツのサイト選定手続きの所要期間見積り

■今後の公衆参加活動に向けたBGEによる提案

ドイツでは2013年に制定されたサイト選定法において、サイト選定手続きは《可逆性のあるプロセス》であると定めており、最終処分場サイトの決定を2031年までに行う目標を掲げている。BGEは、今回提示したサイト選定手続きの所要期間の見積りには多くの未確定・不確定な要素があることに言及した上で、法律上の目標年の達成はもはや現実的ではないとの考えを表明した。また、今後、サイト選定手続き全体を通じた信頼性のあるスケジュールを具体化していくために、継続的でオープンな協議を行っていくことが必要との考えを示した。こうした観点からBGEは、2~3年ごとに公開ワークショップを開催し、一般市民や関係者と対話しつつ、以下に示す課題を検討していくことを提案している。

  • 第2・第3段階での絞り込みに必要十分な探査方法
  • 第2段階の地上からの探査、第3段階での地下探査のプログラムについて、社会的合意が得られ、かつ許認可プロセスが円滑に進むような計画策定方法
  • 第1段階で実施する予備的安全評価を含め、段階的に行われる安全評価が信頼あるものとなるために必要な要素
  • サイト選定手続きに関与する多くの関係者(アクター)間の意思疎通が円滑になるような対話の進め方

BGEは、今回のプレスリリースを通じて、BGEがメンバーとして参加している「サイト選定フォーラム計画チーム」1 の企画運営による公開ワークショップが2023年1月13日に開催されることを告知している。

【出典】


  1. 2021年8月のサイト区域専門会議の提言に基づき設置される、サイト地域の提案までの間に公衆参加を行うサイト選定フォーラムの設置準備などを行う組織であり、BGEのほか、規制機関である連邦放射性廃棄物処分安全庁(BASE)、社会諮問委員会、社会団体、市民、35歳以下の市民、地方自治体、学術界の代表で構成されている。 []

フィンランドにおける高レベル放射性廃棄物(使用済燃料)の処分実施主体であるポシヴァ社は、エウラヨキ自治体オルキルオトにおいて、2016年12月から使用済燃料処分場の建設を開始している。着工から丸6年を迎えた2022年12月5日付けの同社プレスリリースにおいて、処分場建設の進捗状況を公表した。

図1:使用済燃料処分場のイメージ図(出典:Posiva Oy)

図1:使用済燃料処分場のイメージ図(出典:ポシヴァ社(Source: Posiva))

使用済燃料処分場は、フィンランド南西部のバルト海沿岸部にあるオルキルオト島にあり、地上のキャニスタ封入施設と地下400~450mに設置される最終処分場で構成される。

地下の最終処分場では、2021年5月から実際の処分に使用する5本の処分坑道の掘削が行われていたが、本年2022年6月に掘削が完了した。5本の処分坑道の総延長は1,700mであり、これらの坑道の床面から鉛直方向に掘削する180本の処分孔を設置できる長さにあたる。この処分孔の掘削に使用する掘削装置がドイツの企業から2022年6月に納入された。ポシヴァ社は2023年から、一連の処分操業での作業を検証するため、模擬廃棄体を用いた統合機能試験を実施する予定であるが、ドイツ製の処分孔掘削装置により、地下での統合機能試験が行われる坑道において試験用処分孔の掘削も行われていた。

図2:銅-鋳鉄キャニスタ(出典:ポシヴァ社(Source: Posiva))

また、地上のキャニスタ封入施設については、2019年6月より建屋の建設が開始されていたが、2022年5月に予定通りに建屋が完成し、建設会社からポシヴァ社に引き渡された。キャニスタ封入施設は、原子力発電所で貯蔵されている使用済燃料を輸送キャスクに収納された状態で受け入れ、処分用の銅-鋳鉄キャニスタ(外側が銅製、内側が鋳鉄製)に使用済燃料を移し替えて封入する施設である。キャニスタ封入施設では、使用済燃料を乾燥した後に処分用キャニスタに収納し、アルゴンガスが充填される。キャニスタの蓋部分は「摩擦撹拌溶接法」(friction stir welding、FSW)と呼ばれる方法により溶接され、放射性核種が漏洩しないように使用済燃料が処分用キャニスタ内に密封される。

ポシヴァ社は建屋の引き渡しを受けた後、キャニスタ封入施設内の操業で用いられる機械・装置類の設置等を進めている。2022年10月には使用済燃料の乾燥装置がキャニスタ封入施設内に据え付けられ、試運転が完了している。また、2022年11月にはキャニスタ溶接装置の搬入・据え付けが行われた。その他、放射線量が高い使用済燃料を遠隔操作するためのマニピュレータもキャニスタ封入施設内に設置されている。

■今後の予定

ポシヴァ社は、実際の使用済燃料を収納したキャニスタの処分開始を2020年代半ばに開始する意向であり、まずは2023年に予定している総合機能試験を完了させた後、2021年末に提出した使用済燃料処分場の操業許可申請書を更新する予定である。ポシヴァ社は、同社を共同出資によって設立した2つの電力会社であるテオリスーデン・ヴォイマ社(TVO社)とフォルツム・パワー・アンド・ヒート社(FPH社)が現在運転している計4基の原子炉から発生する使用済燃料4,000トン(ウラン換算)を処分するとしており、2022年3月に商業運転を開始したTVO社のオルキルオト原子力発電所3号機から発生する使用済燃料の処分については、2070年以降にポシヴァ社が別途の操業許可申請を行う予定である。

【出典】

ベルギーの連邦政府は、高レベル及び長寿命の放射性廃棄物を自国内で地層処分するとの方針を決定し、これらの放射性廃棄物の安全かつ責任のある長期管理を行っていくための正式な国家政策の確立に向けて法整備を行った。2022年12月2日に発効した新たな王令に基づいて、ベルギーの放射性廃棄物管理の実施主体であるベルギー放射性廃棄物・濃縮核分裂性物質管理機関(ONDRAF/NIRAS)1 は、地層処分の実施に向けて、これまで未確定だった処分場の概念や母岩の種類、サイト選定方法、実施スケジュールなどの国家政策について、段階的に決定していくための可逆性のある意思決定プロセスを検討し、提案する役割を担うことになる。

ベルギーの原子力発電所

図:ベルギーの原子力発電所の位置

ベルギーでは2022年11月末現在、電力会社であるエレクトラベル社(親会社はフランスのEngie社)が所有する2カ所の原子力発電所で合計6基の原子炉が運転中である2 。これらの原子力発電所から発生する使用済燃料を含め、高レベル及び長寿命の放射性廃棄物について、ONDRAF/NIRASは2020年4月に、国家政策として地層処分の方針を規定する王令案とともに、地層処分に関する戦略的環境アセスメントレポート(以下「SEAレポート」という)を取りまとめていた。今回の王令制定の必要性について連邦政府は、①欧州連合(EU)で2011年に採択された「使用済燃料及び放射性廃棄物の管理に関する指令」 を国内法制化するEU加盟国としての義務に対応すること、②放射性廃棄物管理の世代間及び世代内の公平に関する義務を果たすこと、③最終的な財務責任者として連邦政府が負担しなければならない可能性のある原子力債務の発生を回避することが可能となると説明している。

■高レベル及び長寿命の放射性廃棄物の国家政策の正式な確立に必要となる事項

連邦政府は、今回制定された「高レベル及び長寿命の放射性廃棄物の長期管理に関する国家政策の最初の部分を制定し、この国家政策の他の部分を段階的に制定するプロセスを規定する王令」の条文において、国家政策は段階的に確立されるものであり、少なくとも以下の4つの事項によって構成されると規定している。

  • 国家政策の段階的な確立及び運営維持に関する意思決定プロセス
  • あらゆるステークホルダーとの協議を経て決定される、可逆性、回収可能性及びモニタリングの期間に関する取り決め
  • 高レベル及び長寿命の放射性廃棄物の長期管理方法の選定
  • 処分が実施されるサイトの選定

高レベル及び長寿命の放射性廃棄物に関する正式な国家政策は、今後ONDRAF/NIRASが提案する意思決定プロセスの実施を通じて確立されていくため、それまでの間は、予備的な長期管理方法の概念を「ベルギー国内での1カ所以上のサイトでの地層処分」とする旨を王令で規定した。意思決定プロセスに関して、ONDRAF/NIRASは以下の事項を考慮に入れる必要がある。

  • 放射性廃棄物管理の様々な側面とその相互依存性、すなわち安全、核セキュリティ、環境保護の側面だけはでなく、科学、技術、財政、社会、規制の側面も考慮すること
  • 意思決定の準備が、特に審議プロセスや専門家及び市民からなる代表パネルを通じて、参加型で、公正かつ透明な方法で行われ、各段階において、国、地域及び地方レベル、また、適切な場合には国際レベルにおいて、市民社会を含む全ての関係者に情報が与えられ、情報に基づいた関与の機会が与えられること
  • 地層処分技術の開発に必要となる社会基盤、及び地層処分施設と同施設が立地する地域社会との調和が長期間にわたって可能であるようにすること
  • 国家政策を監視する際のあり方が含まれるようにすること

ベルギー放射性廃棄物・濃縮核分裂性物質管理機関(ONDRAF/NIRAS)は、2022年11月24日付けのプレスリリースにおいて、今回の王令制定はONDRAF/NIRASが公共的使命を果たしていくための第一歩であり、地層処分の実施を伴う意思決定プロセスの優先順位を明確にしていくとともに、可逆性の枠組みの元で、ベルギー国内での地層処分の選択を確認・修正していくために、広範な社会的議論が2023年に行われることを表明している。

【出典】


  1. ONDRAF/NIRASは、経済・エネルギー省の監督の下、ベルギー国内に存在するすべての放射性廃棄物を管理する役割を担う公的機関である。 []
  2. ベルギーでは7基の原子炉が導入されたが、2003年に脱原子力法が制定し、2025年までに原子力発電から撤退する方針であった。しかし、ベルギーの総発電電力量の半分を賄う原子力発電に代わるエネルギーを見いだせなかったことから、7基のうち5基の原子炉の延長が決定している。なお、2022年9月に1基閉鎖しており、2023年中にもう1基が閉鎖予定である。 []

写真:立坑の坑口構築工事の模様
(ノオラオ社ウェブサイトより引用)

図1:地下研究所の概念図
(ノオラオ社ウェブサイトより引用)

ロシアにおける放射性廃棄物管理の実施主体である国営企業ノオラオ社(NO RAO)は、2022年11月15日のプレスリリースで、高レベル放射性廃棄物等の処分が計画されているシベリア中央部のクラスノヤルスク地方エニセイスキーにおいて、地下研究所の一部となる立坑の坑口構築工事を開始したことを公表した。坑口構築工事では、地上から約5mの深さまで掘削し、直径約6mの鉄筋コンクリート製の支保リングを設置する。その後、立坑を550mまで掘削する予定である。

地下研究所が設置される地域の地下150m以深には、ニジュネカンスキー地塊(Nizhnekansky rock massif)と呼ばれる岩盤1 が広がっている。ノオラオ社は2018年から、ジェレズノゴルスク市から6kmの距離にあるエニセイスキーサイトの地下研究所建設地において、送電線敷設や電力供給システムなどの地上のインフラ工事を行っていた。ノオラオ社は、2024年までに地下にアクセスする立坑3本と立坑に接続する水平坑道を建設し(図1)、その後、実規模の技術実証試験を行う予定である。

■ロシアにおける地層処分計画

ロシアでは2011年に「放射性廃棄物管理法」が制定され、同法において高レベル放射性固体廃棄物と長寿命中レベル放射性固体廃棄物を地層処分することが定められた2 。また、同法に基づき、安全で経済的な放射性廃棄物管理を実施する国家事業者として、2012年にノオラオ社が設立された。

図2:地層処分場の概念図
(ノオラオ社ウェブサイトより引用)

図3:高レベル放射性廃棄物の処分概念図(Polyakov et al., (2013)より引用)。ガラス固化された発熱性の高レベル放射性廃棄物は、長さ75mの垂直の処分孔への処分が考えられている。

高レベル放射性廃棄物処分場のサイト選定は1990年代に開始されており、
鉱業化学コンビナート(MCC)3 が所在するクラスノヤルスク州ジェレズノゴルスク市に近いニジュネカンスキー地塊を対象として20の潜在的なサイトで調査を実施し、その中から5か所、さらに2か所に絞り込みが行われ、2008年に処分候補地としてエニセイスキーサイトが選定されていた。2012年には、法律に基づく地元での公聴会を経て、処分場全体のうち先行的に建設を行う施設としての地下研究所の建設が承認され、処分の実現可能性の調査を目的として建設が進められている。

ノオラオ社はニジュネカンスキー地塊の深度450mから550mの領域内が地層処分に適していると考えている。地層処分場の概念として、深さ450mと525mの2層の水平坑道を鉛直方向で接続する約75mの処分孔において、ガラス固化された発熱性の高レベル放射性廃棄物を縦方向に多段積みで定置する処分概念を検討している(図2,図3)。

ノオラオ社は、地下研究所での試験結果に基づいて、地下研究所を拡張して最終処分施設とする可能性を2030年以降に判断する。また、ノオラオ社によれば、地下研究所に放射性廃棄物を持ち込むことはないとしている。処分の長期安全性を確認し、公衆協議を経て、処分施設の操業許可を取得した後になって初めて処分場に放射性廃棄物が持ち込まれる。

【出典】


  1. ニジュネカンスキー地塊(Nizhnekansky rock massif)は32~26億年前の始生代に形成された片麻岩や原生代のドレライトの岩脈などから構成されており、シベリア中央部の地下に約3,500km2にわたって分布している。 []
  2. ロシアでは処分方法に関連させて放射性廃棄物を6つのクラスに分類している。クラス1は発熱性高レベル放射性固体廃棄物、クラス2は高レベル放射性固体廃棄物と長寿命中レベル放射性廃棄物に分類され、いずれも地層処分が適切であるとされている。クラス3は100mの深さまでの浅地中処分施設への処分相当の低中レベル放射性固体廃棄物、クラス4は地表レベルの浅地中処分施設への処分相当の低レベル放射性固体廃棄物及び極低レベル放射性固体廃棄物に分類される。クラス5は低中レベル放射性液体廃棄物、クラス6は探鉱や精錬等で発生する廃棄物に分類されている。エニセイスキーで計画されている地層処分場では、クラス1と2の放射性廃棄物の処分が検討されている。 []
  3. MCCではロシア各地の原子力発電所で発生した使用済燃料の貯蔵事業を行っており、今後使用済燃料の再処理工場の稼働も2020年代の開始を予定している。過去には軍事用プルトニウムの生産も行われていた。 []
第7パネルに定置された最後の廃棄物容器

第7パネルに定置された最後の廃棄物容器

米国のエネルギー省(DOE)の環境管理局(EM)及びカールスバッド・フィールド事務所(CBFO)は、2022年10月25日に、軍事起源のTRU廃棄物の地層処分場である廃棄物隔離パイロットプラント(WIPP)について、地下処分施設の第7パネルでの廃棄物定置活動が2022年10月20日に完了したことにより、重要なマイルストーンを達成したことを公表した。第7パネルについては、2013年7月にニューメキシコ州環境省(NMED)からTRU廃棄物処分のための使用の承認を受け、廃棄物定置が開始された。その後、2014年2月に発生した火災事故及び放射線事象によって操業を一時停止し、復旧活動の結果、2017年1月から操業が再開されていた。なお、DOEは、2021年11月時点で、第7パネルは2022年7月に一杯となる見込みを示していた。今後は、第7パネルは閉鎖され、2022年8月にNMEDから使用が承認された第8パネルでの廃棄物定置活動が行われることとなる。

第7パネルでの定置状況(2022年6月16日時点)

第7パネルでの定置状況(2022年6月16日時点)

WIPPの2014年2月の放射線事象は、放射性物質の外部への漏洩を伴って第7パネルで発生した。放射性物質漏洩の原因は、第7パネル第7処分室に定置されたロスアラモス国立研究所(LANL)から搬入された1本の廃棄物ドラムと確認され、2015年5月には第7パネル第7処分室は早期閉鎖された。2014年の放射線事象によってWIPPの地下処分施設の一部は放射性物質で汚染され、除染作業や一部区域の早期閉鎖が行われたものの、第7パネルでは防護服、防護マスク等を使用した定置活動が行われてきた。第7パネルでの定置完了により、放射性物質による汚染のない環境での作業に復帰することになり、今後の第8パネルでの活動では防護服等は不要になる。

第8パネル

第8パネル

WIPPの地下処分施設は8つの処分パネルで構成されており、各処分パネルは、幅が33フィート(約10m)、高さが13フィート(約4m)、長さが300フィート(約91m)の7つの処分室で構成されている。各処分パネルにおける廃棄物の定置は、一番奥の第7処分室から開始され、一番手前の第1処分室での定置が完了すると処分パネルは完全に閉鎖される。なお、WIPPでは、処分区域の一部閉鎖等を受けて、代替処分パネルの建設が計画されている

今回定置が完了し、今後閉鎖される第7パネルでは、第1処分室には2,600を超える廃棄物容器が定置されており、第7パネル全体では20,056本の廃棄物容器が定置された。廃棄物容器の多くは55ガロン(約200リットル)ドラムであるが、第1処分室では11,000ポンド(約5トン)の4つの大型廃棄物容器も定置されている。WIPPでは、1999年3月からTRU廃棄物の受入れ、定置が行われており、第7パネルでの廃棄物定置が完了した時点での廃棄物の総処分量は、ネットベース(LWA総量)で約7.2万m3となっている1 。パネル別の処分量を見ると、一部の処分室が未使用のまま閉鎖された第7パネルでの処分量が最も少なくなっている。

定置廃棄物* 第1パネル 第2パネル 第3パネル 第4パネル 第5パネル 第6パネル 第7パネル 合計
閉鎖 閉鎖 閉鎖 閉鎖 閉鎖 閉鎖 定置完了
55ガロンD/M 38,139 23,865 8,394 12,858 21,255 12,317 15,544 132,372
標準廃棄物容器 1,239 3,176 1,730 1,405 2,200 3,033 904 13,687
10-D/M O/P 35 1,451 2,227 1,048 788 459 993 7,001
85ガロンD/M 2 0 0 3 0 0 0 5
100ガロンD/M 0 1,278 5,409 11,050 9,951 6,546 2,531 36,765
標準大型容器2S 0 0 0 0 0 220 19 239
蓋取外し可能72-B容器 0 0 0 198 246 239 18 701
蓋固定72-B容器 0 0 0 0 18 0 0 18
遮蔽容器 0 0 0 0 0 9 47 56
 
TMW CH容器(m3 10,497 17,998 17,092 14,258 15,927 14,467 10,534 100,773
TMW RH容器(m3 0 0 0 176 235 215 26 652
TMW 総量 (m3) 10,497 17,998 17,092 14,434 16,162 14,682 10,560 101,424
 
LWA CH容器(m3 7,563 13,103 9,863 10,420 12,113 11,428 7,210 71,699
LWA RH容器(m3 0 0 0 84 153 113 11 362
LWA総量 (m3) 7,563 13,103 9,863 10,504 12,266 11,541 7,221 72,060
*容器タイプ別に示された数字は、容器数 D/M:ドラム、O/P:オーバーパック、CH:直接ハンドリングが可能(Contact Handled)、RH:遠隔ハンドリングが必要(Remote Handled)、TMW:TRU混合廃棄物(TRU Mixed Waste)、LWA:1992年WIPP土地収用法に規定の処分量に対応する廃棄物量

【出典】


  1. WIPPにおけるTRU廃棄物の処分量は、1992年WIPP土地収用法で620万立方フィート(約17.6万m3)と規定されている。WIPPにおける処分量については、従来は最も外側の廃棄物コンテナの容量(表中のTMW総量)で計算されていたが、2018年12月にニューメキシコ州環境省(NMED)によって承認された許可変更により、1992年WIPP土地収用法上の処分量は、廃棄物コンテナに収納されている最も内側の廃棄物容器(例えば、55ガロンドラム)の容量(表中のLWA総量)で計算されることとなった。 []

処分場候補エリア「北部レゲレン」と地上施設設置区域
及びキャニスタ封入施設の予定地

スイスの処分実施主体である放射性廃棄物管理共同組合(NAGRA)は、2022年9月10日に、地層処分場の地下施設を設置するサイトとして地質学的候補エリア「北部レゲレン」を選定するとともに、地層処分場の地上施設の設置区域をチューリッヒ州ハーバーシュタールとすることを公表した。NAGRAは、高レベル放射性廃棄物と低中レベル放射性廃棄物を1カ所で処分する複合処分場(コンバインドパターン)の建設を提案している。今回の提案についてNAGRAは、最も重要な判断基準としたのは地質であり、北部レゲレンが最も安全性が高く、遠い将来にわたって放射性廃棄物を最もよく閉じ込めることができると説明している。また、2015年にいったん候補から外していた北部レゲレン を、今回、処分場サイトとして提案したことについて、NAGRAは、2015年以降実施してきた三次元弾性波探査やボーリング調査など地球科学的調査から得られたデータから、より高い安全性が確認できたことを理由として指摘している。

今回のNAGRAによる提案では、ハーバーシュタールに建設予定の地上施設にはキャニスタ封入施設を含めず、ハーバーシュタールから西へ約20kmに位置し、2001年から操業開始しているヴュレンリンゲン放射性廃棄物集中中間貯蔵施設(ZZL)の敷地に増設して運用する計画である。この提案は、2012年以降NAGRAが北部レゲレン地域会議やチューリッヒ州と行ってきた協議において、地元より地上施設の設置区域にキャニスタ封入施設を含めないようにとの要望を受けたことを踏まえたものである。ZZLでは使用済燃料とガラス固化体の輸送貯蔵兼用キャスクの大部分が貯蔵されており、高レベル放射性廃棄物の積み替えセルを備えている。NAGRAは既存のインフラを活用することにより、熟練作業員の活用が見込めるとのメリットを挙げている。

■今回のNAGRAのサイト提案までの経緯

NAGRAは「特別計画「地層処分場」」に基づき、2008年から3段階のサイト選定プロセスを実施している。公募方式ではなく、地質学的な観点から2011年に高レベル放射性廃棄物用処分場の地質学的候補エリアとして3カ所、低中レベル放射性廃棄物用処分場の地質学的候補エリアとして6カ所が選定され、サイト選定第1段階が終了した。サイト選定第2段階の2015年にNAGRAは、高レベル放射性廃棄物用処分場と低中レベル放射性廃棄物用処分場の地質学的候補エリアとして「ジュラ東部」、「チューリッヒ北東部」を優先候補として提案し、「北部レゲレン」を予備候補とする提案を行った。この提案に対し、規制機関である連邦原子力安全検査局(ENSI)が、北部スイスの地質学的データが十分とは言えない中で、NAGRAが示した想定が現在の科学技術的知見に照らして過度に保守的であると判断し、「北部レゲレン」も引き続き優先候補として検討すべきとの見解を示した。規制機関の見解を踏まえる形で、2018年にサイト選定第2段階の結果として3つの地質学的候補エリア「ジュラ東部」、「チューリッヒ北東部」、「北部レゲレン」が選定された

サイト選定第3段階に入るとNAGRAは、ボーリング調査を実施し、サイトの比較を行い、最終的な処分場サイトの提案に向けた取組を進めてきた。

■北部レゲレン選定の詳細

NAGRAが地層処分場サイトとして提案した「北部レゲレン」は、アールガウ州とチューリッヒ州をまたぐ一帯に位置し、スイス最大の都市チューリッヒから北へ約15kmの距離にある。母岩は他の2つの地質学的候補エリア「チューリッヒ北東部」および「ジュラ東部」同様に、オパリナス粘土である。NAGRAは処分場サイト選定にあたり、これら3エリアの地質学的特性を比較した結果、主に以下の3つの観点において、北部レゲレンが最も安全性が高く、地層処分場に適していると判断した。

  • 地層バリアの閉じ込め性能が高い:
    3つの地質学的候補エリアのうち、北部レゲレンはオパリナス粘土層及びその上下に堆積している難透水性の地層の厚みが最も大きい。
  • 地質バリアの長期安定性に優れている:
    処分場の母岩となるオパリナス粘土層は、北部レゲレンが最も深い位置にあるため、将来、地表が氷河や河川によって侵食されて谷が形成された場合でも廃棄物が保護される。
  • 処分可能エリアが広く、柔軟な処分場設計が可能である:
    北部レゲレンは断層の存在しないエリアが最も広く、処分場の空間を最も多く確保できることから、処分場の設計に最も柔軟性を持たせることができる。

■今後の予定

NAGRAは2024年に、地層処分場プロジェクトに関する最初の許認可手続きとなる「概要承認」の申請書を、手続きを所管する連邦エネルギー庁(BFE)に提出する予定である。申請書はENSIが審査し、2029年に連邦評議会1 が概要承認を発給する。ただし、連邦議会の承認後の一定期間内に、概要承認を不服とする国民投票が実施された場合は、2031年頃に結果が出る見込みである。国民投票で概要承認を不服とすることが否決された場合、地層処分場のサイトが確定し、処分場サイトと母岩に関する詳細な調査(わが国の精密調査に相当)を行うための地下特性調査施設の建設を2034年に開始する予定である。低中レベル放射性廃棄物処分場は2050年、高レベル放射性廃棄物処分場は2060年の操業開始が見込まれている。

 

【出典】

 


  1. 日本の内閣に相当 []

カナダの使用済燃料処分の実施主体である核燃料廃棄物管理機関(NWMO)は、使用済燃料処分場のサイト選定の取組に対する新型コロナウイルス感染症(COVID-19)対策に伴う行動制限等による影響を考慮し、1カ所の好ましいサイトの選定を約1年遅らせ、2024年秋に改めたことを公表した。NWMOのサイト選定担当副社長は、「サイト候補自治体における活動に関して、対面での関与や交流がほとんどできない状況であったことから、サイト選定の時期を延期することにより、サイト候補自治体が事業の受入れに関して検討するための時間を得ることができる」と述べている。

NWMOは2022年6月には、オンタリオ州北部のイグナス・タウンシップ、同州南部のサウスブルース自治体の候補2サイトの技術的な有望性を示した報告書を取りまとめており、これら2自治体との間で、処分場受入れに関する合意につながる正式な協定文書の策定に向けた協議を進めていた 。NWMOの計画では、1カ所の好ましいサイトの選定の後、当該サイトにおける詳細なサイト特性調査のほか、環境アセスメント等の許認可手続きも開始される予定である。

NWMOは、今回のサイト選定時期の変更は、使用済燃料処分の全体スケジュールには影響を与えないとしており、2033年の処分場建設開始、2040年代当初の操業開始に変更はないとしている。

【出典】

韓国の産業通商資源部(MOTIE)は2022年7月20日に、「高レベル放射性廃棄物の研究開発ロードマップ(案)」を公表した。本ロードマップ案は、2021年12月7日にMOTIEが案を公表し、同年12月27日に第10回原子力振興委員会において確定した「第2次高レベル放射性廃棄物管理基本計画」(以下「基本計画」という)の後続措置である。基本計画では、「高レベル放射性廃棄物の輸送・貯蔵・処分の能力向上と効率的な管理のために必要な技術を持続的に開発すること」を示していた。 MOTIEはロードマップ案の副題として「高レベル放射性廃棄物の安全な管理のための技術的な青写真(ブループリント)」を付しており、必要な技術を段階的に確保していく上で、スケジュールの明確化と体系的な研究開発を推進する必要性を強調している。

図 韓国産業通商資源部が公表した高レベル放射性廃棄物研究開発ロードマップ(案)

図 韓国産業通商資源部が公表した高レベル放射性廃棄物研究開発ロードマップ(案)

ロードマップ案では、輸送、貯蔵、サイト、処分の4分野の104の要素技術を抽出しており、専門家へのアンケート調査やレビューグループでの議論等を踏まえ、高レベル放射性廃棄物の管理に関する先進国での開発状況と比較した達成度を分析し、①既に国内で技術が開発済のもの、②開発中のもの、③今後開発が必要なものに分類している。これらの分析をもとに、それぞれの要素技術が必要となる時期に対応する技術開発スケジュールとして、輸送と貯蔵に関する技術は2037年、サイトに関する技術は2029年、処分に関する技術は2055年までに技術開発を完了させるとした目標が示されている。また、研究開発には1997年から2022年の間に合計4,000億ウォン(約382億円、1ウォン=0.0956円として換算)を投資しており、今後2023年から2060年の間に合計9,002億ウォン(約861億円)を投資する予定としている。これに加え、地下研究施設の建設には、4,936億ウォン(約472億円)の投資が必要になるとの見通しが示されている。

また、MOTIEは本ロードマップ案の意義について、尹錫悦(ユン・ソンニョル)大統領就任後の2022年7月5日に韓国政府が決定した「新政府のエネルギー政策の方向性」において、気候変動対策やエネルギー安全保障の強化のため、原子力発電をフルに活用する必要があるとの方針が示されており、原子力政策の大前提が安全第一であることを踏まえて、高レベル放射性廃棄物の技術的研究開発に関するロードマップを策定して実施し、国民の安全確保に万全を期すものと述べている。

ロードマップ案については今後、国内でディスカッションが実施されるほか、フィンランドやフランスといった主要国や、国際原子力機関(IAEA)や経済協力開発機構/原子力機関(OECD/NEA)といった国際機関のレビューを受けて、2022年下半期には最終決定される予定となっている。MOTIEは、ロードマップの作成と並行して、サイト選定の手順・方法・スケジュール、誘致地域への支援、高レベル放射性廃棄物の安全な処分のための専門機関の設立を含む特別法の制定に向けた取組を進める計画である。

【出典】

フランスの国家評価委員会(CNE)は、第16回評価報告書を議会科学技術選択評価委員会(OPECST)に提出し、2022年7月にCNEウェブサイトで公表した。CNEは、2006年の放射性廃棄物等管理計画法  の規定に基づいて、放射性廃棄物等の管理に関する取組や調査研究等の進捗状況について毎年評価を行い、評価結果を報告書に取りまとめて議会に提出している。なお、前回の第15回報告書は2021年7月8日に公表されている 。

これまでCNEは、「放射性物質及び放射性廃棄物の管理に関する国家計画」(PNGMDR)及びこれに基づいて実施される調査・研究等を主な評価対象としてきた。しかし、PNGMDRは第4版(2016年~2018年)以降、新たな版の発行が遅延しており、第5版(2022-2026年)は現在も発行に至っていない。このような状況の下、今回のCNEの第16回報告書では、近年の小型モジュール炉(SMR)等の新型炉の導入に関する検討の進展等を受け、将来に導入される原子炉の選択によって、核燃料サイクルや放射性廃棄物の管理に関する研究開発や原子力産業が数十年間にわたり影響を受けると考えられること、並びに原子力発電所の開発に関する決定を行う前に、放射性廃棄物管理に関する明確な方針を確立することが不可欠であることを示し、従来からの放射性廃棄物管理に関する評価に加え、新型炉と核燃料サイクルに関する国際動向等についても評価を行っている。

■放射性廃棄物の処分等について

フランスにおける放射性廃棄物の処分等については、以下の見解や勧告が示されている。

<高レベル及び中レベルの長寿命放射性廃棄物>

  • 地層処分場(Cigéo)の設置認可申請書を遅滞なく提出するための科学的・技術的条件はすべて満たされている。
  • 長期貯蔵は受動的安全ではなく、継続的な監視と定期的な廃棄物の再コンディショニングが必要である。これは、将来の世代が廃棄物を管理する技術的・財政的な能力を保持していると仮定して、人々と環境を保護する負担を転嫁しようとするものであり、地層処分の代替とはならない。
  • 現在までのところ、高レベル及び中レベルの長寿命放射性廃棄物の地層処分に代わる信頼できる方法はない。比較的早い時期に開発された特定のマイナーアクチノイドを核種変換するという戦略があるが、核種変換を行っても地層処分から解放されるわけではない。しかし、高レベル放射性廃棄物の処分パッケージの発熱量を小さくすることで、地層処分場の設置面積を減らす機会を提供することができる。そのためには、多くの技術開発課題を克服し、適切な原子炉を数世紀にわたって維持することが必要である。

<使用済燃料の中間貯蔵>

  • 使用済燃料の中間貯蔵は、核燃料管理における過渡的なステップである。
  • CNEは、使用済燃料の経年劣化と貯蔵インフラに関する研究を強化し、再処理、貯蔵に拘わらず、燃料の引き取りと取り扱いが確実にできるようにすることを勧告する。

<長寿命低レベル放射性廃棄物>

  • 長寿命低レベル放射性廃棄物は、その性質が多様であり、量が多い発熱性廃棄物である。放射性毒性が低いことから、放射性廃棄物管理機関(ANDRA)は地下数十メートルの深さに処分することを検討している。
  • 数万年以上の安全機能の立証は、これまでと同様にシナリオを用いることになるが、これは安全当局と協議の上、定義する必要がある。

<極低レベル放射性廃棄物>

  • 極低レベル放射性廃棄物の多くは、原子力施設の解体・廃止措置作業で発生する。
  • CNEは、原子力事業者に対し、効率性を高めるために、解体・廃止措置業務に関する協力を強化することを奨励する。
  • 既存の原子炉の運転終了後に発生する極低レベル放射性廃棄物の量は、処分場の利用可能な容量を超えていると考えられる。廃止措置の停滞を避けるために、既存の処分場の拡張や新規処分場の建設を十分な時間的余裕をもって行う必要がある。

■新型炉と核燃料サイクルに関する国際動向について

CNEは、第16回報告書において、新型炉と核燃料サイクルに関する国際動向を広く概観して、国・地域別の動向について、以下のように分析している。

<英国、米国>

  • 気候変動を背景とした、特に石炭火力発電の代替という経済的な要因と、新たに原子力発電設備の導入を希望する国々に対する中国やロシアとの競争という地政学的な要因により、小型モジュール炉(SMR)の導入を図り、使用済燃料の再処理を行わない「オープンサイクル」の原子力開発が進んでいる。

<ロシア、アジア主要国>

  • 主にエネルギー主権の追求のために、使用済燃料のリサイクル(エネルギー回収)を目的とした核燃料サイクルのクローズド化を目標としている。
  • 小型モジュール炉(SMR)に関しては、ロシアではすでに35MWeの船上設置型原子炉を2基建設し、稼働中である。

<フランスを除く欧州諸国>

  • 核分裂よりも核融合に対する取り組みへの支援が優先されている。
  • 高レベル放射性廃棄物の処分に向けた取り組みが進捗している。
  • 小型モジュール炉(SMR)等の革新的な核分裂型の原子炉の研究は、ごく初期の調査・研究からほとんど進んでいない。

CNEはこれらの概観から、主な所見として以下の事項を示している。

  • 小型モジュール炉(SMR)の設計をめぐる大きな動きが進んでいる。
  • 使用済燃料を再処理しない「オープンサイクル」政策に伴い、核燃料サイクルに関する議論が希薄となっている。
  • 原子力発電の需要増は、ウラン消費量全体の大幅な増加をもたらす可能性がある。

【出典】