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米国エネルギー省(DOE)は、2023年4月25日に、2017年1月発行の「使用済燃料及び高レベル放射性廃棄物の集中貯蔵・処分施設のための同意に基づくサイト選定プロセス案」(以下「サイト選定プロセス案」という。) を更新した。新たなサイト選定プロセス文書は「連邦使用済燃料集中中間貯蔵施設のための同意に基づくサイト選定プロセス」と改題された。米国では、1950年代から始まった商業原子力発電にともなって90,000トンを超える使用済燃料が発生しており、原子力発電所のプールや乾式貯蔵キャスクによって貯蔵されている。この他に、海軍の原子力艦船や研究開発から約2,400トンの使用済燃料がある。DOEは、これら70カ所以上に分散して貯蔵されている使用済燃料の対策に注力する方針を鮮明にした。

今回の新たなサイト選定プロセス文書では、公衆の安全、環境の保護に向けた取組などの方向性の説明に重点が置かれている。DOEは、サイト選定プロセス文書の更新を紹介するニュース記事において、「同意に基づくサイト選定」は、コミュニティを中心に置いたアプローチであり、バイデン大統領による環境正義(environmental justice)の目標に沿って1 、不利な立場にあり重圧の押しかかるコミュニティへの健康と安全への影響を軽減するのに役立つとの考え方を示している。

■サイト選定プロセス文書更新の背景

今回のサイト選定のプロセス文書の更新に先立ってDOEは、連邦政府による使用済燃料の中間貯蔵に係るサイト選定のための同意に基づくサイト選定計画に関して、2021年12月1日に情報依頼書(RFI、Request For Information)を官連邦報において告示し、コメントや意見を広く募集していた。その後、DOEは2022年9月に、RFIに対して寄せられた225件のコメントの他、2017年1月のサイト選定プロセス案に対するコメントも集約して報告書「同意に基づくサイト選定―情報依頼(RFI)コメントの要約・分析」を取りまとめていた

更新されたサイト選定プロセス文書を掲載したページでは、①使用済燃料のための1つ、または、複数の連邦集中中間貯蔵施設を立地すること、②DOEの2017年1月のサイト選定プロセス案に基づいて新たなサイト選定プロセス文書が作成されていること、③サイト選定プロセスは、地域社会、先住民族、州、地方自治体、ステークホルダーからの情報により、引き続き更新されることが記されている。

DOEは、サイト選定プロセス文書に対する4つの重要な更新ポイントを次のように説明している。

  1. 現在は、連邦の集中中間貯蔵施設に焦点がある。
    新しいサイト選定のプロセス:DOEは、近い将来の行動として、商業用使用済燃料のための1つ、または、複数の連邦集中中間貯蔵施設の立地に焦点を当てる。
    従来のサイト選定のプロセス:高レベル放射性廃棄物の中間貯蔵施設に加えて、地層処分施設に対して、同意に基づくサイト選定プロセスを同時に適用することを想定していた。
    説明:中間貯蔵に焦点を当てることは、全米の原子炉サイトからの使用済燃料の取り出しを可能にし、地元での新しい雇用機会を促進するという連邦議会の指示に従っている。
    DOEは、この同意に基づくサイト選定アプローチから学んだ教訓を、集中中間貯蔵容量、処分場、並びに、使用済燃料・高レベル放射性廃棄物の輸送に必要なインフラ整備のための将来のサイト選定に適用する。
    また、DOEは、処分オプションのための研究開発を引き続きサポートする。
  2. 公平と環境正義の一層の重視
    新しいサイト選定のプロセス:十分な行政サービスを受けていない脆弱なコミュニティが標的になることを防止するため、すべてのコミュニティの公平な取扱と有意義な関与(involvement)を確保するため、追加的な手順が取られた。
    従来のサイト選定のプロセス:プロセスの各段階において、公平と環境正義に関する考慮事項がほとんど組み込まれていなかった。
    説明:2017年1月のサイト選定プロセス案には、公平と環境正義に関連する基準が含まれてはいたが、DOEは最近の一般からのコメントに対応して、これらの側面を強化した。
    また、使用済燃料の管理など、長期間にわたって発生する活動について、世代間の公平を考慮することの重要性を強調した。
  3. サイト固有の評価基準の策定において、ホストとなるコミュニティの役割を高めた
    新しいサイト選定のプロセス:関心のあるコミュニティは、施設の立地がコミュニティの目標と関心に合致することを確実にするため、プロセスの早い段階で追加のサイト固有の基準の作成に関与する機会を持つことを可能にした。
    従来のサイト選定のプロセス:DOEは最初に、サイト選定に関する考慮事項とスクリーニング基準を作成することとしていた。
    説明:ここでの考え方は、より優れたコミュニティ主導のプロセスへの包括的なアプローチに基づいている。個々のコミュニティは、施設の立地を決定する前に、地域の経済発展、労働市場、輸送、公共の安全インフラなどへの影響を評価できるようにした。
  4. コミュニティ参加をサポートするための資金提供の機会の拡大検討
    新しいサイト選定のプロセス:サイト選定プロセス文書では、重要な活動におけるコミュニティの関与と協力をサポートするため、実施段階を含め、サイト選定プロセスの各段階における資金提供の機会とその他の資源の使用について概説している。
    従来のサイト選定のプロセス:資源は、プロセスの1つのフェーズで可能な資金提供の機会に限定されていた。
    説明:追加の資金提供の機会は、プロセス全体を通じてコミュニティの関与とコラボレーションをサポートすることを目的としており、連邦政府の年間予算と歳出(Annual Budget and appropriations)の対象となる。
    本資金提供は、使用済燃料の受け入れを約束(commitment)するものではない。

また、DOEは、同意に基づくサイト選定プロセスは、コミュニティの要求などに対応できるよう、柔軟で適応性があることに触れた上で、次のステップとして、現在の資金提供の機会(上記ポイント4)、今後も継続していく情報提供やその他の活動を通じて、公衆との対話/関与のための機会を引き続き提供していくことを明らかにしている。

【出典】

 

【2023年5月10日追記】

米国では、エネルギー省(DOE)により、使用済燃料の集中中間貯蔵施設のための同意に基づくサイト選定プロセスが進められている一方で、テキサス州及びニューメキシコ州で民間による集中中間貯蔵施設の計画が進められている。ただし、両州での計画については、貯蔵等を禁止する州法が成立しており、実際の建設等は難しい状況となっている。

テキサス州アンドリュース郡で中間貯蔵パートナーズ(ISP)社が計画している使用済燃料等の集中中間貯蔵施設の建設・操業2 については、すでに、原子力規制委員会(NRC)が建設・操業に係る許認可を2021年9月13日に発給している。これを受けてテキサス州は、NRCが発給した許認可の取り消しを求める訴訟を2021年9月23日に起こしている

今般、NRCは、ニューメキシコ州リー郡のサイトでホルテック・インターナショナル社(以下「ホルテック社」という。)が計画している使用済燃料等の集中中間貯蔵施設について、建設・操業に係る許認可を2023年5月9日に発給した3 。NRCは、ホルテック社の許認可申請書の審査に基づいて、許認可で承認される活動は公衆の健康と安全を脅かすことなく実施できること、これらの活動はNRC規則(10 CFR Part 72)を遵守して実施されることについて、2023年5月9日付けのホルテック社宛の許認可書送付書簡において、合理的な保証があるなどと判断したことが示されている。

ただし、テキサス州の場合と同様に、ニューメキシコ州でも貯蔵等に関する州法(SB53)が成立していることにより、集中中間貯蔵施設の建設・操業については、実際には行えないことが見込まれる。

【出典】


  1. バイデン大統領は、2023年4月21日に、全ての国民のための環境正義の実現へ向けて各政府機関に取り組むよう指示する大統領令に署名した。 []
  2. ISP社は、テキサス州アンドリュースにおいて、プロジェクトの第1段階として5,000トン、最終的には全8段階で最大40,000トンの使用済燃料等の貯蔵を行う計画である。 []
  3. ホルテック社は、ニューメキシコ州リー郡において、プロジェクトの第1段階として約8,680トン、最終的には全20段階で約10万トンの使用済燃料等の貯蔵を行う計画である。 []

フランスの放射性廃棄物管理機関(ANDRA)は、2023年4月11日付けプレスリリースにおいて、フランス東部オーブ県に位置するモルヴィリエ極低レベル放射性廃棄物処分場(Cires、Le Centre industriel de regroupement, d’entreposage et de stockage:分別・貯蔵・処分産業施設)1 の処分容量の拡大のための環境許可(autorisation environnementale)を2023年4月7日にオーブ県に申請したことを公表した。同処分場は2003年に操業を開始し、約30年間の操業が予定されていたが、当初の予定よりも早いペースで極低レベル放射性廃棄物が発生しており、2029年には処分される廃棄物の量が許可された処分容量(65 万m3)に達する見込みとなった。このため、処分容量を30 万m3拡大し、操業期間を2044年まで延長する計画である。

■モルヴィリエ極低レベル放射性廃棄物処分場(Cires)の概要と処分容量の拡大

モルヴィリエ極低レベル放射性廃棄物処分場(Cires)の処分トレンチの模式断面図

図1 モルヴィリエ極低レベル放射性廃棄物処分場(Cires)の処分トレンチの模式断面図

2003年から2016年にかけてのモルヴィリエ極低レベル放射性廃棄物処分場(Cires)の処分トレンチの容量拡大(ANDRA提供)

図2 2003年から2016年にかけてのモルヴィリエ極低レベル放射性廃棄物処分場(Cires)の処分トレンチの容量拡大(ANDRA提供)

モルヴィリエ極低レベル放射性廃棄物処分場(Cires)の3つの処分区画(ANDRA提供)

図3 モルヴィリエ極低レベル放射性廃棄物処分場(Cires)の3つの処分区画(ANDRA提供)

モルヴィリエ極低レベル放射性廃棄物処分場(Cires)は、地表付近の粘土層に掘削したトレンチ(溝)に廃棄物を処分する構造となっている(図1)。廃棄物の多くは、ドラム缶やフレコンバッグの形で埋設処分されるが、除染済みの使用済燃料輸送容器等の大型の廃棄物は、そのままの形で専用のトレンチに処分される。埋設が完了したトレンチは、雨水の浸入を防止するために覆土が施工される。

今回の処分容量の拡大の許可申請では、現在処分場として許可されている区画の面積を変更せずに、新たに掘削するトレンチを深くして、より高く廃棄物を積み上げることにより、処分容量を拡大する計画である。このようなトレンチの大容量化は以前から段階的に行われており、2007年から操業していたトレンチは1本当たり25,000 m3の処分容量であったが、2016年以降に操業しているトレンチは、同じ長さのトレンチで1本当たり34,000 m3の処分容量を備えている(図2)。

このようなトレンチ毎の処分容量の拡大により、現在処分場として許可されている3つの区画のうち2つ(図3のSection1と2)で許可されている処分容量にあたる65 万m3に対応可能とし、残る1つの未使用区画(図3のSection3)に30 万m3の処分容量を確保する計画である。

 

■処分容量拡大に関する許可申請と今後の予定

モルヴィリエ極低レベル放射性廃棄物処分場(Cires)の容量拡大のプロジェクトは、Acaci (Augmentation de la CApacité du CIres)プロジェクトと名付けられており、環境法典の規定による環境アセスメントの対象となる。ANDRAは、Acaciプロジェクトに関する事前協議に関して国家討論委員会(CNDP)に付託を行い、CNDPが情報提供及び公衆参加を監督する2名の保証人(garants)を2020年12月に任命していた。その後、ANDRAは2021年より保証人のもとで住民との事前協議を進めてきた。

今回、ANDRAがAcaciプロジェクトに関する環境許可の申請をオーブ県に行ったことを受け2 、今後、以下のような工程で審査が行われる予定である。

  • 県の関係機関や環境当局(EA)等の国の関係機関による審査と意見の提出。
  • 意見聴取委員会による公衆及び地方の関係機関を対象とした公開ヒアリングの実施と意見の取りまとめ。
  • 意見聴取委員会により取りまとめられた意見、並びに県衛生・技術リスク評価委員会(Coderst)による審議の結果等を踏まえた、県地方長官(県における国の代表、県知事)による環境許可の決定。

ANDRAは環境許可が得られる時期を2025年頃と見込んでいる。

 

〈参考〉フランスでの極低レベル放射性廃棄物

モルヴィリエ極低レベル放射性廃棄物処分場(Cires)に処分される廃棄物は、主に原子力発電所や燃料サイクル施設、研究所の運転・保守・廃止措置によって生じるものであり、放射能レベルは、一般的に100 Bq/g未満である。

フランスでは、包括的なクリアランス制度は導入されていない。原子力発電所等の原子力基本施設(INB)では、放射性物質で汚染または放射化された可能性があるゾーンを定めており、このゾーンから生じる廃棄物は全て放射性廃棄物として取り扱われる。このようなゾーニング方式は、放射性廃棄物の発生現場で取り扱い方法を容易に判別できるという長所を持つが、一方で極低レベル放射性廃棄物の発生量の増加につながるものである。

フランスでは今後、原子力発電所の廃止措置等により極低レベル放射性廃棄物の発生量が増加すると見込まれている。これに対応するため、今回のモルヴィリエ極低レベル放射性廃棄物処分場(Cires)の処分容量拡大の他、新たな集中型の処分場の建設、廃止措置が行われる発電所周辺での分散型の処分場の建設、極低レベルの金属廃棄物の溶融と除染の後でのリサイクル等が検討されている。

 

【出典】

 


  1. モルヴィリエ極低レベル放射性廃棄物処分場(Cires)は、処分場としての役割のほか、原子力発電以外の分野から発生した廃棄物を極低レベル放射性廃棄物や短寿命・低中レベル放射性廃棄物等に分別したり、処分先未定の廃棄物を一時的に貯蔵する役割を持った施設である。 []
  2. 今回の処分場の容量拡大に必要な環境許可の申請は、県に対して行われたが、これはモルヴィリエ極低レベル放射性廃棄物処分場(Cires)が、同施設で管理される放射性廃棄物の総放射能量が小さいことから「環境保護指定施設」(ICPE)に分類されているためである。一方で、オーブ短寿命・低中レベル放射性廃棄物処分場(CSA)や現在設置許可を申請中の地層処分場(Cigéo)は、原子力発電所等と同じ「原子力基本施設」(INB)に分類されており、主に国に対して許認可の申請が行われる。 []

スウェーデン核燃料・廃棄物管理会社(SKB社)は、2023年4月3日付けのプレスリリースにおいて、短寿命低中レベル放射性廃棄物処分場(SFR)の拡張部分の建設に関して、原子力活動法に基づく申請書を放射線安全機関(SSM)に提出したことを公表した。SKB社が操業するSFRは、ストックホルムの北120kmのエストハンマル自治体フォルスマルクにあり、国内4カ所の原子力発電所から発生した運転廃棄物を1988年から受け入れ、処分している。スウェーデンでは、国内3カ所の原子力発電所で6基の原子炉の廃止措置が進められている。SKB社は、これらの廃止措置に伴う放射性廃棄物の受け入れに対応するために、既存部分との合計で約180,000m3の処分容量を確保する計画である。

短寿命低中レベル放射性廃棄物処分場(SFR)の拡張計画(SKB社提供)

短寿命低中レベル放射性廃棄物処分場(SFR)の拡張計画(SKB社提供)

SFRはバルト海の浅い海岸部(水深は約5m)の地下60~140mの岩盤内に設置されており、1つのサイロと4つの処分坑道で構成されている(図下側の白色部分)。当初、処分容量63,000m3の処分場として建設され、1988年から原子力発電所の運転に伴って発生する廃樹脂、雑固体などの短寿命運転廃棄物と呼ばれる放射性廃棄物を処分しているほか、医療・研究・産業で発生した放射性廃棄物も受け入れて処分している。2021年末時点での処分量は約40,500m3である。

SFRの拡張部分(図左下の青色部分)は、既設部分よりやや深い地下120~150mの岩盤内に新たに6つの処分坑道を掘削することにより、117,000m3の処分容量を確保する。拡張部分は、主として廃止措置廃棄物の処分用区画であるが、運転廃棄物の一部も処分される計画である。また、SFRの既存部分でも、廃止措置廃棄物の一部が処分されることとなっている。

■SFR拡張計画の経緯と今後の予定

SKB社は2014年12月にSFR拡張計画に関する申請を行っており、2021年12月にスウェーデン政府による承認を受け、2022年12月に環境法典に基づく許可を取得していた。今後SKB社がSFR拡張部分の建設を開始するには、2014年12月の拡張許可申請時の安全評価書を更新した予備的安全評価書(PSAR)、建設フェーズにおける安全確保に関する報告書、処分場システムの説明書、及び廃止措置計画書について、放射線安全機関(SSM)の審査を受け、SSMから建設認可を受ける必要がある。

SKB社が2022年9月に公表した「放射性廃棄物の管理及び処分方法に関する研究開発実証プログラム2022」(RD&Dプログラム2022)によると、SFRの拡張部分の建設開始は2020年代半ば、操業開始は2030年頃となる計画である。

なお、SKB社はエストハンマル自治体のフォルスマルクの地下約500mに使用済燃料処分場を設置する計画である。SKB社の使用済燃料処分事業計画については、2022年1月にスウェーデン政府の承認を受けており、現在は事業許可の条件を設定するプロセスが継続している。SKB社は、先に実施することになるSFR拡張部分の建設で得られる経験を、使用済燃料処分場の建設に反映する考えである。

【出典】

  • スウェーデン核燃料・廃棄物管理会社(SKB社)、2023年4月3日付けプレスリリース(スウェーデン語)
    https://skb.se/nyheter/ansokan-for-sfr-ar-nu-inlamnad-till-ssm/
  • SKB社、フォルスマルクの短寿命放射性廃棄物処分場の閉鎖後安全性、PSAR版、メインレポート(2023年3月)(英語)
    SKB TR-23-01
  • SKB社、放射性廃棄物の管理及び処分方法に関する研究開発実証プログラム2022(RD&Dプログラム2022)(2022年9月)〔英語:RD&D Programme 2022. Programme for research, development and demonstration of methods for the management and disposal of nuclear wasste〕
    SKB TR-22-11

フィンランド政府は2023年3月30日に、ロヴィーサ原子力発電所の敷地内に設置している低中レベル放射性廃棄物処分場について、操業期間延長と施設拡張計画を含む操業許可条件の変更を承認した。同発電所及び処分場を操業するフォルツム・パワー・アンド・ヒート社(以下「FPH社」という)は、1号機と2号機の運転期間を2050年まで延長するとともに1、低中レベル放射性廃棄物処分場の操業期間を従来の2055年から35年間延長して2090年とする申請を2022年3月に行っていた。FPH社の親会社であるフォルツム社によれば、今回の操業許可条件の変更は、フィンランドと欧州のカーボンニュートラルの目標達成を支援し、信頼性が高く、競争力があり、持続可能なエネルギーシステムの構築を目的としている。原子炉の運転期間延長についてはすでに、フィンランド政府が2023年2月16日に承認していた。

 

■ロヴィーサ低中レベル放射性廃棄物処分場の施設拡張計画

図:ロヴィーサ原子力発電所・低中レベル放射性廃棄物処分場イメージ図(出典:フォルツム社(Source: Fortum)灰色部分は既設、緑色の部分は今後拡張される処分空洞を示す。)

ロヴィーサ原子力発電所の低中レベル放射性廃棄物処分場は、発電所敷地内の地下110mの岩盤中に設けられており、1998年に操業が開始された。地下施設は、中レベル放射性廃棄物用の処分空洞が1つ、低レベル放射性廃棄物用の処分空洞が3つで構成されており、既設の4つの処分空洞の容量は約2万9千立方メートルである(右図参照)。低中レベル放射性廃棄物処分場では、これまで同発電所1号機と2号機(いずれもロシア型加圧式原子炉(VVER)であり、それぞれ1977年と1981年に営業運転を開始)の運転で発生した低中レベル放射性廃棄物が処分されてきた。

FPH社は、低中レベル放射性廃棄物処分場の操業期間延長とともに、運転期間を延長した原子炉と将来の廃止措置で発生する廃棄物のほか、国内の他施設で発生する放射性廃棄物も受け入れる計画を申請していた。今回の操業許可条件の変更の承認により、同発電所の運転及び廃止措置で生じる低中レベル放射性廃棄物については5万立方メートルまで、廃止措置で生じる極低レベル放射性廃棄物については5万立方メートルまで、同発電所外から受け入れる放射性廃棄物については2千立法メートルまでの処分計画が認められた2。廃止措置廃棄物を処分する処分空洞の拡張は2040年代後半頃となる計画であるが、処分場の拡張作業は安全規制機関の放射線・原子力安全センター(STUK)による安全確認を受けるまで実施できない。

フォルツム社は、研究炉の廃止措置を実施するフィンランド技術研究センター(VTT)との間で、放射性廃棄物の処理・貯蔵・処分に関する協力協定を締結している。今回の操業許可条件の変更によって、研究炉の廃止措置で発生した放射性廃棄物についても、ロヴィーサ原子力発電所の低中レベル放射性廃棄物処分場で処分される見込みである。

【出典】


  1. ロヴィーサ原子力発電所の運転が2050年まで継続する場合、1号機と2号機の運転期間はそれぞれ73年間と69年間となる。 []
  2. フォルツム社が許可で求めている処分量は、発電所プラントの改造などの特殊な状況に対応するために裕度を持たせており、また、廃止措置廃棄物の正確な特性や量は6年毎に提出することが規定されている廃止措置計画で更新されるとしている []

フランスの放射性廃棄物管理機関(ANDRA)は、2023年1月17日付のプレスリリースにおいて、地層処分場(Cigéo)の設置許可申請書を政府に提出したことを公表した。また、プレスリリースと併せて、申請書として提出した文書もウェブサイト上で公表した(下記コラムを参照)。この後、原子力安全機関(ASN)による安全審査が進められるとともに、法定の公開ヒアリングが開催される予定である。最終的には、政府の諮問機関であり、行政最高裁判所でもある国務院(Conseil d’État)による審議を経て、設置許可がデクレ(政令)により与えられる。本デクレは、地層処分施設の原子力基本施設(INB)としての性質と区域、並びに公衆の安全・健康や自然・環境を保護する上で必須の要素を定めるものである。また、本デクレには、ASNから送付される技術的要求事項も含まれることとなる。

地層処分場(Cigéo)の原子力基本施設(INB)としての区域(ANDRAの設置許可申請書類を元に原環センターにて加筆)

地層処分場(Cigéo)の原子力基本施設(INB)としての区域(ANDRAの設置許可申請書類を元に原環センターにて加筆)

設置許可申請までの主な経緯

フランスでは、1991年に制定された放射性廃棄物管理研究法により、高レベル及び長寿命中レベル放射性廃棄物の管理方針の決定のため、地層処分、長寿命核種の分離・変換、長期地上貯蔵の3つの分野に関する15年にわたる研究を行い、その研究成果を踏まえて最善な管理方策を定める新たな法律を制定することとされていた。その後、2006年に高レベル・長寿命放射性廃棄物を含む放射性廃棄物全般の管理に関する放射性廃棄物等管理計画法が制定され、これらの廃棄物について、「可逆性のある地層処分」を行うことを基本とし、研究成果を考慮した上で、地層処分場の設置許可申請の提出の目標を2015年、操業開始の目標を2025年とすることが規定された 。

Cigéoのサイト選定に関しては、放射性廃棄物管理研究法では、地層処分の研究に当たって地下研究所を設置することが定められていた。これを受け、政府は議会科学技術選択評価委員会のバタイユ議員を調停官に任命し、地下研究所の建設地域を選定することとした。バタイユ議員率いる調停団は、1993年に地下研究所候補地の公募を行い、約30件の応募地域に対する、地質学的特性評価や地元との協議を経て、4県を提案した。その後、ANDRAによる予備的な地質調査を経て、ムーズ、オート=マルヌ両県の県境近傍のビュールにおいて、粘土層を対象とした地下研究所の建設が1999年に決定され、2000年から建設が開始された。ANDRAは建設作業と並行して地下での調査研究を実施した 。ANDRAは、2007年にはビュール地下研究所周辺の250km2の区域における新たな地質調査を開始し 、2009年には地層処分場の地下施設の展開のために詳細な調査を行う30km2の区域を政府に提案し、2010年に政府の了承を得た。

その後ANDRAは、Cigéoの建設のために設置許可とは別に必要となるものとして、プロジェクトの公益性と正当性を認める公益宣言(DUP)について、2020年8月にDUPの発出の申請をエコロジー移行省に行っており、フランス政府は2022年7月7日に、DUPを発出した

放射性廃棄物管理機関(ANDRA)が申請書として提出した文書の一覧

  • 文書00:非技術的なプレゼンテーション
  • 文書01:操業者(ANDRA)の識別情報
  • 文書02:施設の概要
  • 文書03:施設位置を示す縮尺25,000分の1の地図
  • 文書04:建設計画地周辺を示す縮尺10,000分の1の配置図
  • 文書05:施設の詳細図面(縮尺2,500分の1)
  • 文書06:影響調査(近日公表予定)
  • 文書07:安全報告書暫定版(近日公表予定)
  • 文書08:リスクマネジメントの検討
  • 文書09:操業者の技術力
  • 文書10:操業者の財務能力
  • 文書11:土地所有権の正当な理由
  • 文書12:地役権及び保護・専用権申請書
  • 文書13:廃止措置・閉鎖・モニタリング計画
  • 文書14:公衆参加の概要
  • 文書15:温室効果ガス排出量
  • 文書16:操業基本計画
  • 文書17:法的情報及び管理的情報
  • 文書18:プロジェクトに対して提出されたコメント
  • 文書19:廃棄物パッケージ受入仕様書暫定版
  • 文書20:Cigéo処分施設開発計画
  • 文書21:読解ガイド
  • 文書22:用語集及び略語集

【出典】

ドイツでは、「高レベル放射性廃棄物の最終処分場のサイト選定に関する法律」(以下「サイト選定法」という)に基づき、処分実施主体である連邦放射性廃棄物機関(BGE)が2017年9月から3段階からなるサイト選定手続きを進めている。BGEは、2020年9月に取りまとめた『サイト選定手続き第1段階の中間報告書』(以下「中間報告書」という)において、ドイツ全土から最終処分にとって好ましい地質学的条件が存在すると判断される90区域を抽出したが、それらは国土の54%を占めており、さらなる絞り込みに向けて検討を進めているところである。BGEは2022年12月19日付けのプレスリリースにおいて、絞り込んだ限定数のサイト地域を2027年に提案できる見通しを明らかにした。

■3段階のサイト選定手続き全体の所要期間の見積り

ドイツでは最終処分場の母岩候補として、岩塩、粘土岩及び結晶質岩を検討している。サイト選定手続きの第1段階では、これら3種類の母岩において、高レベル放射性廃棄物の安全な処分の実現にとって好ましい地質学的条件が存在すると予想される「サイト地域」を指定することになっている。BGEは、サイト選定手続きのプロジェクト管理組織として、連邦や州の管轄当局にデータ提供を要請することにより、地球科学的な評価基準をドイツ国土に適用する上で必要となるデータを収集した。BGEの中間報告書の取りまとめを受けて設置された「サイト区域専門会議」は、2021年8月に、今後のサイト地域の指定に向けた公衆参加の計画を検討できるようにするために、サイト選定のマイルストーンを早急に明らかにするようBGEに求めていた

今般BGEは、サイト区域専門会議の提言に対応するため、サイト選定手続きを進める上で必要な作業工程を検討(スケジューリング)することにより、サイト決定に至るまでの全体スケジュールの見通しを考察した報告書を取りまとめた。既に着手している母岩の種類別の予備的安全評価や関連する研究開発などの工程計画を踏まえると、BGEによる第1段階における限定数のサイト地域の提案は、約5年後の2027年後半となる見通しである。また、BGEは第2段階において実施する地上からの探査には、対象となるサイト地域数に応じて9~11年を要すると推定している。第3段階で実施する地下探査の所要期間は、その実施内容によって大幅に変わり、ボーリング調査のみの場合には5~6年、地下研究所を設置する調査を行う場合には13~23年と推定している。なお、これらの所要期間の推定には、規制当局による審査や連邦議会での決定プロセスに要する時間は含めていない。

図:ドイツのサイト選定手続きの所要期間見積り

図:ドイツのサイト選定手続きの所要期間見積り

■今後の公衆参加活動に向けたBGEによる提案

ドイツでは2013年に制定されたサイト選定法において、サイト選定手続きは《可逆性のあるプロセス》であると定めており、最終処分場サイトの決定を2031年までに行う目標を掲げている。BGEは、今回提示したサイト選定手続きの所要期間の見積りには多くの未確定・不確定な要素があることに言及した上で、法律上の目標年の達成はもはや現実的ではないとの考えを表明した。また、今後、サイト選定手続き全体を通じた信頼性のあるスケジュールを具体化していくために、継続的でオープンな協議を行っていくことが必要との考えを示した。こうした観点からBGEは、2~3年ごとに公開ワークショップを開催し、一般市民や関係者と対話しつつ、以下に示す課題を検討していくことを提案している。

  • 第2・第3段階での絞り込みに必要十分な探査方法
  • 第2段階の地上からの探査、第3段階での地下探査のプログラムについて、社会的合意が得られ、かつ許認可プロセスが円滑に進むような計画策定方法
  • 第1段階で実施する予備的安全評価を含め、段階的に行われる安全評価が信頼あるものとなるために必要な要素
  • サイト選定手続きに関与する多くの関係者(アクター)間の意思疎通が円滑になるような対話の進め方

BGEは、今回のプレスリリースを通じて、BGEがメンバーとして参加している「サイト選定フォーラム計画チーム」1 の企画運営による公開ワークショップが2023年1月13日に開催されることを告知している。

【出典】


  1. 2021年8月のサイト区域専門会議の提言に基づき設置される、サイト地域の提案までの間に公衆参加を行うサイト選定フォーラムの設置準備などを行う組織であり、BGEのほか、規制機関である連邦放射性廃棄物処分安全庁(BASE)、社会諮問委員会、社会団体、市民、35歳以下の市民、地方自治体、学術界の代表で構成されている。 []

フィンランドにおける高レベル放射性廃棄物(使用済燃料)の処分実施主体であるポシヴァ社は、エウラヨキ自治体オルキルオトにおいて、2016年12月から使用済燃料処分場の建設を開始している。着工から丸6年を迎えた2022年12月5日付けの同社プレスリリースにおいて、処分場建設の進捗状況を公表した。

図1:使用済燃料処分場のイメージ図(出典:Posiva Oy)

図1:使用済燃料処分場のイメージ図(出典:ポシヴァ社(Source: Posiva))

使用済燃料処分場は、フィンランド南西部のバルト海沿岸部にあるオルキルオト島にあり、地上のキャニスタ封入施設と地下400~450mに設置される最終処分場で構成される。

地下の最終処分場では、2021年5月から実際の処分に使用する5本の処分坑道の掘削が行われていたが、本年2022年6月に掘削が完了した。5本の処分坑道の総延長は1,700mであり、これらの坑道の床面から鉛直方向に掘削する180本の処分孔を設置できる長さにあたる。この処分孔の掘削に使用する掘削装置がドイツの企業から2022年6月に納入された。ポシヴァ社は2023年から、一連の処分操業での作業を検証するため、模擬廃棄体を用いた統合機能試験を実施する予定であるが、ドイツ製の処分孔掘削装置により、地下での統合機能試験が行われる坑道において試験用処分孔の掘削も行われていた。

図2:銅-鋳鉄キャニスタ(出典:ポシヴァ社(Source: Posiva))

また、地上のキャニスタ封入施設については、2019年6月より建屋の建設が開始されていたが、2022年5月に予定通りに建屋が完成し、建設会社からポシヴァ社に引き渡された。キャニスタ封入施設は、原子力発電所で貯蔵されている使用済燃料を輸送キャスクに収納された状態で受け入れ、処分用の銅-鋳鉄キャニスタ(外側が銅製、内側が鋳鉄製)に使用済燃料を移し替えて封入する施設である。キャニスタ封入施設では、使用済燃料を乾燥した後に処分用キャニスタに収納し、アルゴンガスが充填される。キャニスタの蓋部分は「摩擦撹拌溶接法」(friction stir welding、FSW)と呼ばれる方法により溶接され、放射性核種が漏洩しないように使用済燃料が処分用キャニスタ内に密封される。

ポシヴァ社は建屋の引き渡しを受けた後、キャニスタ封入施設内の操業で用いられる機械・装置類の設置等を進めている。2022年10月には使用済燃料の乾燥装置がキャニスタ封入施設内に据え付けられ、試運転が完了している。また、2022年11月にはキャニスタ溶接装置の搬入・据え付けが行われた。その他、放射線量が高い使用済燃料を遠隔操作するためのマニピュレータもキャニスタ封入施設内に設置されている。

■今後の予定

ポシヴァ社は、実際の使用済燃料を収納したキャニスタの処分開始を2020年代半ばに開始する意向であり、まずは2023年に予定している総合機能試験を完了させた後、2021年末に提出した使用済燃料処分場の操業許可申請書を更新する予定である。ポシヴァ社は、同社を共同出資によって設立した2つの電力会社であるテオリスーデン・ヴォイマ社(TVO社)とフォルツム・パワー・アンド・ヒート社(FPH社)が現在運転している計4基の原子炉から発生する使用済燃料4,000トン(ウラン換算)を処分するとしており、2023年に商業運転を開始予定のTVO社のオルキルオト原子力発電所3号機から発生する使用済燃料の処分については、2070年以降にポシヴァ社が別途の操業許可申請を行う予定である。

【出典】

ベルギーの連邦政府は、高レベル及び長寿命の放射性廃棄物を自国内で地層処分するとの方針を決定し、これらの放射性廃棄物の安全かつ責任のある長期管理を行っていくための正式な国家政策の確立に向けて法整備を行った。2022年12月2日に発効した新たな王令に基づいて、ベルギーの放射性廃棄物管理の実施主体である放射性廃棄物・濃縮核分裂性物質管理機関(ONDRAF/NIRAS)1 は、地層処分の実施に向けて、これまで未確定だった処分場の概念や母岩の種類、サイト選定方法、実施スケジュールなどの国家政策について、段階的に決定していくための可逆性のある意思決定プロセスを検討し、提案する役割を担うことになる。

ベルギーの原子力発電所

図:ベルギーの原子力発電所の位置

ベルギーでは2022年11月末現在、電力会社であるエレクトラベル社(親会社はフランスのEngie社)が所有する2カ所の原子力発電所で合計6基の原子炉が運転中である2 。これらの原子力発電所から発生する使用済燃料を含め、高レベル及び長寿命の放射性廃棄物について、ONDRAF/NIRASは2020年4月に、国家政策として地層処分の方針を規定する王令案とともに、地層処分に関する戦略的環境アセスメントレポート(以下「SEAレポート」という)を取りまとめていた。今回の王令制定の必要性について連邦政府は、①欧州連合(EU)で2011年に採択された「使用済燃料及び放射性廃棄物の管理に関する指令」 を国内法制化するEU加盟国としての義務に対応すること、②放射性廃棄物管理の世代間及び世代内の公平に関する義務を果たすこと、③最終的な財務責任者として連邦政府が負担しなければならない可能性のある原子力債務の発生を回避することが可能となると説明している。

■高レベル及び長寿命の放射性廃棄物の国家政策の正式な確立に必要となる事項

連邦政府は、今回制定された「高レベル及び長寿命の放射性廃棄物の長期管理に関する国家政策の最初の部分を制定し、この国家政策の他の部分を段階的に制定するプロセスを規定する王令」の条文において、国家政策は段階的に確立されるものであり、少なくとも以下の4つの事項によって構成されると規定している。

  • 国家政策の段階的な確立及び運営維持に関する意思決定プロセス
  • あらゆるステークホルダーとの協議を経て決定される、可逆性、回収可能性及びモニタリングの期間に関する取り決め
  • 高レベル及び長寿命の放射性廃棄物の長期管理方法の選定
  • 処分が実施されるサイトの選定

高レベル及び長寿命の放射性廃棄物に関する正式な国家政策は、今後ONDRAF/NIRASが提案する意思決定プロセスの実施を通じて確立されていくため、それまでの間は、予備的な長期管理方法の概念を「ベルギー国内での1カ所以上のサイトでの地層処分」とする旨を王令で規定した。意思決定プロセスに関して、ONDRAF/NIRASは以下の事項を考慮に入れる必要がある。

  • 放射性廃棄物管理の様々な側面とその相互依存性、すなわち安全、核セキュリティ、環境保護の側面だけはでなく、科学、技術、財政、社会、規制の側面も考慮すること
  • 意思決定の準備が、特に審議プロセスや専門家及び市民からなる代表パネルを通じて、参加型で、公正かつ透明な方法で行われ、各段階において、国、地域及び地方レベル、また、適切な場合には国際レベルにおいて、市民社会を含む全ての関係者に情報が与えられ、情報に基づいた関与の機会が与えられること
  • 地層処分技術の開発に必要となる社会基盤、及び地層処分施設と同施設が立地する地域社会との調和が長期間にわたって可能であるようにすること
  • 国家政策を監視する際のあり方が含まれるようにすること

ONDRAF/NIRASは、2022年11月24日付けのプレスリリースにおいて、今回の王令制定はONDRAF/NIRASが公共的使命を果たしていくための第一歩であり、地層処分の実施を伴う意思決定プロセスの優先順位を明確にしていくとともに、可逆性の枠組みの元で、ベルギー国内での地層処分の選択を確認・修正していくために、広範な社会的議論が2023年に行われることを表明している。

【出典】

 

【2023年4月25日追記】

ベルギーで高レベル及び長寿命の放射性廃棄物の長期管理に関する公衆の意見収集と議論を目的とした対話活動『放射性廃棄物の未来に関する対話』(Dialogue sur l’avenir des déchets radioactifs)が2023年4月19日から開始された。対話活動の運営は、ベルギーの公益財団であるボードワン財団3 が担当しており、専用のウェブサイトが開設された。今後1年間を通じた対話活動において、自治体などの関連機関や組織、ステークホルダーを交えたワークショップを開催するほか、以下に示す3つの取り組みが行われる予定である。

  • 地域のグループ、組織や協会などを対象とした『グループディスカッション』
  • 16歳以上のすべての市民を対象とした『討論会』
    参加者は、複数回の議論を経て、提言を含めた報告書を作成する。募集人数は32名であり、幅広い意見が得られるように参加者が選定される。関係者や本テーマに積極的に取り組んでいる者は除外される。
  • 16~18歳の学生を対象とした『出張授業』

ベルギーでは、2022年10月22日付けの王令により、高レベル及び長寿命の放射性廃棄物の地層処分方針が法制化されたが、処分場サイトの選定方法や意思決定プロセスを含む正式な国家政策は今後、段階的に確立していくことになっている。ベルギーの放射性廃棄物管理の実施主体である放射性廃棄物・濃縮核分裂性物質管理機関(ONDRAF/NIRAS)は、ベルギー国内での地層処分の選択を確認・修正していく広範な社会的議論の場として、今回の対話活動の企画・運営をボードワン財団に依頼していた。対話活動には、ONDRAF/NIRASは専門家として参加する。

規制機関である連邦原子力管理庁(FANC)は、公衆の意見が国家政策に反映される機会となるとして今回の対話活動に賛同するとともに、自らの権限と役割に関する情報を広く提供していく意向を表明している。

【出典】


  1. ONDRAF/NIRASは、経済・エネルギー省の監督の下、ベルギー国内に存在するすべての放射性廃棄物を管理する役割を担う公的機関である。 []
  2. ベルギーでは7基の原子炉が導入されたが、2003年に脱原子力法が制定し、2025年までに原子力発電から撤退する方針であった。しかし、ベルギーの総発電電力量の半分を賄う原子力発電に代わるエネルギーを見いだせなかったことから、7基のうち5基の原子炉の延長が決定している。なお、2022年9月に1基閉鎖しており、2023年中にもう1基が閉鎖予定である。 []
  3. ボードワン財団は、ボードワン国王治世25周年を記念して1972年に設立された多元的な公益財団である。様々な社会問題に対する人々の意識を高め、前向きな変化をもたらすことを目的として、中立かつ、透明性及び客観性のある対話の場を企画・運営している。なお、ボードワン財団は2009年と2010年に、高レベル放射性廃棄物の長期管理に関する討論会を実施した実績がある。 []

写真:立坑の坑口構築工事の模様
(ノオラオ社ウェブサイトより引用)

図1:地下研究所の概念図
(ノオラオ社ウェブサイトより引用)

ロシアにおける放射性廃棄物管理の実施主体である国営企業ノオラオ社(NO RAO)は、2022年11月15日のプレスリリースで、高レベル放射性廃棄物等の処分が計画されているシベリア中央部のクラスノヤルスク地方エニセイスキーにおいて、地下研究所の一部となる立坑の坑口構築工事を開始したことを公表した。坑口構築工事では、地上から約5mの深さまで掘削し、直径約6mの鉄筋コンクリート製の支保リングを設置する。その後、立坑を550mまで掘削する予定である。

地下研究所が設置される地域の地下150m以深には、ニジュネカンスキー地塊(Nizhnekansky rock massif)と呼ばれる岩盤1 が広がっている。ノオラオ社は2018年から、ジェレズノゴルスク市から6kmの距離にあるエニセイスキーサイトの地下研究所建設地において、送電線敷設や電力供給システムなどの地上のインフラ工事を行っていた。ノオラオ社は、2024年までに地下にアクセスする立坑3本と立坑に接続する水平坑道を建設し(図1)、その後、実規模の技術実証試験を行う予定である。

■ロシアにおける地層処分計画

ロシアでは2011年に「放射性廃棄物管理法」が制定され、同法において高レベル放射性固体廃棄物と長寿命中レベル放射性固体廃棄物を地層処分することが定められた2 。また、同法に基づき、安全で経済的な放射性廃棄物管理を実施する国家事業者として、2012年にノオラオ社が設立された。

図2:地層処分場の概念図
(ノオラオ社ウェブサイトより引用)

図3:高レベル放射性廃棄物の処分概念図(Polyakov et al., (2013)より引用)。ガラス固化された発熱性の高レベル放射性廃棄物は、長さ75mの垂直の処分孔への処分が考えられている。

高レベル放射性廃棄物処分場のサイト選定は1990年代に開始されており、
鉱業化学コンビナート(MCC)3 が所在するクラスノヤルスク州ジェレズノゴルスク市に近いニジュネカンスキー地塊を対象として20の潜在的なサイトで調査を実施し、その中から5か所、さらに2か所に絞り込みが行われ、2008年に処分候補地としてエニセイスキーサイトが選定されていた。2012年には、法律に基づく地元での公聴会を経て、処分場全体のうち先行的に建設を行う施設としての地下研究所の建設が承認され、処分の実現可能性の調査を目的として建設が進められている。

ノオラオ社はニジュネカンスキー地塊の深度450mから550mの領域内が地層処分に適していると考えている。地層処分場の概念として、深さ450mと525mの2層の水平坑道を鉛直方向で接続する約75mの処分孔において、ガラス固化された発熱性の高レベル放射性廃棄物を縦方向に多段積みで定置する処分概念を検討している(図2,図3)。

ノオラオ社は、地下研究所での試験結果に基づいて、地下研究所を拡張して最終処分施設とする可能性を2030年以降に判断する。また、ノオラオ社によれば、地下研究所に放射性廃棄物を持ち込むことはないとしている。処分の長期安全性を確認し、公衆協議を経て、処分施設の操業許可を取得した後になって初めて処分場に放射性廃棄物が持ち込まれる。

【出典】


  1. ニジュネカンスキー地塊(Nizhnekansky rock massif)は32~26億年前の始生代に形成された片麻岩や原生代のドレライトの岩脈などから構成されており、シベリア中央部の地下に約3,500km2にわたって分布している。 []
  2. ロシアでは処分方法に関連させて放射性廃棄物を6つのクラスに分類している。クラス1は発熱性高レベル放射性固体廃棄物、クラス2は高レベル放射性固体廃棄物と長寿命中レベル放射性廃棄物に分類され、いずれも地層処分が適切であるとされている。クラス3は100mの深さまでの浅地中処分施設への処分相当の低中レベル放射性固体廃棄物、クラス4は地表レベルの浅地中処分施設への処分相当の低レベル放射性固体廃棄物及び極低レベル放射性固体廃棄物に分類される。クラス5は低中レベル放射性液体廃棄物、クラス6は探鉱や精錬等で発生する廃棄物に分類されている。エニセイスキーで計画されている地層処分場では、クラス1と2の放射性廃棄物の処分が検討されている。 []
  3. MCCではロシア各地の原子力発電所で発生した使用済燃料の貯蔵事業を行っており、今後使用済燃料の再処理工場の稼働も2020年代の開始を予定している。過去には軍事用プルトニウムの生産も行われていた。 []
第7パネルに定置された最後の廃棄物容器

第7パネルに定置された最後の廃棄物容器

米国のエネルギー省(DOE)の環境管理局(EM)及びカールスバッド・フィールド事務所(CBFO)は、2022年10月25日に、軍事起源のTRU廃棄物の地層処分場である廃棄物隔離パイロットプラント(WIPP)について、地下処分施設の第7パネルでの廃棄物定置活動が2022年10月20日に完了したことにより、重要なマイルストーンを達成したことを公表した。第7パネルについては、2013年7月にニューメキシコ州環境省(NMED)からTRU廃棄物処分のための使用の承認を受け、廃棄物定置が開始された。その後、2014年2月に発生した火災事故及び放射線事象によって操業を一時停止し、復旧活動の結果、2017年1月から操業が再開されていた。なお、DOEは、2021年11月時点で、第7パネルは2022年7月に一杯となる見込みを示していた。今後は、第7パネルは閉鎖され、2022年8月にNMEDから使用が承認された第8パネルでの廃棄物定置活動が行われることとなる。

第7パネルでの定置状況(2022年6月16日時点)

第7パネルでの定置状況(2022年6月16日時点)

WIPPの2014年2月の放射線事象は、放射性物質の外部への漏洩を伴って第7パネルで発生した。放射性物質漏洩の原因は、第7パネル第7処分室に定置されたロスアラモス国立研究所(LANL)から搬入された1本の廃棄物ドラムと確認され、2015年5月には第7パネル第7処分室は早期閉鎖された。2014年の放射線事象によってWIPPの地下処分施設の一部は放射性物質で汚染され、除染作業や一部区域の早期閉鎖が行われたものの、第7パネルでは防護服、防護マスク等を使用した定置活動が行われてきた。第7パネルでの定置完了により、放射性物質による汚染のない環境での作業に復帰することになり、今後の第8パネルでの活動では防護服等は不要になる。

第8パネル

第8パネル

WIPPの地下処分施設は8つの処分パネルで構成されており、各処分パネルは、幅が33フィート(約10m)、高さが13フィート(約4m)、長さが300フィート(約91m)の7つの処分室で構成されている。各処分パネルにおける廃棄物の定置は、一番奥の第7処分室から開始され、一番手前の第1処分室での定置が完了すると処分パネルは完全に閉鎖される。なお、WIPPでは、処分区域の一部閉鎖等を受けて、代替処分パネルの建設が計画されている

今回定置が完了し、今後閉鎖される第7パネルでは、第1処分室には2,600を超える廃棄物容器が定置されており、第7パネル全体では20,056本の廃棄物容器が定置された。廃棄物容器の多くは55ガロン(約200リットル)ドラムであるが、第1処分室では11,000ポンド(約5トン)の4つの大型廃棄物容器も定置されている。WIPPでは、1999年3月からTRU廃棄物の受入れ、定置が行われており、第7パネルでの廃棄物定置が完了した時点での廃棄物の総処分量は、ネットベース(LWA総量)で約7.2万m3となっている1 。パネル別の処分量を見ると、一部の処分室が未使用のまま閉鎖された第7パネルでの処分量が最も少なくなっている。

定置廃棄物* 第1パネル 第2パネル 第3パネル 第4パネル 第5パネル 第6パネル 第7パネル 合計
閉鎖 閉鎖 閉鎖 閉鎖 閉鎖 閉鎖 定置完了
55ガロンD/M 38,139 23,865 8,394 12,858 21,255 12,317 15,544 132,372
標準廃棄物容器 1,239 3,176 1,730 1,405 2,200 3,033 904 13,687
10-D/M O/P 35 1,451 2,227 1,048 788 459 993 7,001
85ガロンD/M 2 0 0 3 0 0 0 5
100ガロンD/M 0 1,278 5,409 11,050 9,951 6,546 2,531 36,765
標準大型容器2S 0 0 0 0 0 220 19 239
蓋取外し可能72-B容器 0 0 0 198 246 239 18 701
蓋固定72-B容器 0 0 0 0 18 0 0 18
遮蔽容器 0 0 0 0 0 9 47 56
 
TMW CH容器(m3 10,497 17,998 17,092 14,258 15,927 14,467 10,534 100,773
TMW RH容器(m3 0 0 0 176 235 215 26 652
TMW 総量 (m3) 10,497 17,998 17,092 14,434 16,162 14,682 10,560 101,424
 
LWA CH容器(m3 7,563 13,103 9,863 10,420 12,113 11,428 7,210 71,699
LWA RH容器(m3 0 0 0 84 153 113 11 362
LWA総量 (m3) 7,563 13,103 9,863 10,504 12,266 11,541 7,221 72,060
*容器タイプ別に示された数字は、容器数 D/M:ドラム、O/P:オーバーパック、CH:直接ハンドリングが可能(Contact Handled)、RH:遠隔ハンドリングが必要(Remote Handled)、TMW:TRU混合廃棄物(TRU Mixed Waste)、LWA:1992年WIPP土地収用法に規定の処分量に対応する廃棄物量

【出典】


  1. WIPPにおけるTRU廃棄物の処分量は、1992年WIPP土地収用法で620万立方フィート(約17.6万m3)と規定されている。WIPPにおける処分量については、従来は最も外側の廃棄物コンテナの容量(表中のTMW総量)で計算されていたが、2018年12月にニューメキシコ州環境省(NMED)によって承認された許可変更により、1992年WIPP土地収用法上の処分量は、廃棄物コンテナに収納されている最も内側の廃棄物容器(例えば、55ガロンドラム)の容量(表中のLWA総量)で計算されることとなった。 []