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《カナダ》核燃料廃棄物管理機関(NWMO)が使用済燃料の地層処分場サイト受け入れ地域選定後で最初となる2024年の年報及び2025~2029年の実施計画書を公表

カナダにおける使用済燃料処分の実施主体である核燃料廃棄物管理機関(NWMO)は、2025年3月24日に、核燃料廃棄物法の規定に従って2024年度の年報「共に未来を創る」を連邦天然資源大臣に提出し、公表した。また、これに併せて、「適応性のある段階的管理」(APM詳細はこちら)に関する2025~2029年の実施計画書を公表した。 2024年度の年報は、NWMOが2024年11月に使用済燃料の地層処分場サイトの受け入れ地域として、ワビグーン・レイク・オジブウェイ・ネーション(WLON)及びイグナス・タウンシップを選定した後   、最初の年報となる。本年報でNWMOは、2024年度の成果として、処分場サイトの受け入れ地域の選定を歴史的な節目として明記している。また、天然資源大臣からの要請を受けてNWMOが取りまとめた「放射性廃棄物に関する包括的戦略」について、天然資源省の承認を受けたことによって新たにNWMOの役割となった中レベル放射性廃棄物及び核燃料以外の高レベル放射性廃棄物(以下「中レベル放射性廃棄物等」という。)の地層処分の実施に関して、サイト選定プロセスの策定を開始したことを明らかにした。
また、2025~2029年の実施計画書では、NWMOにおける今後5年間の活動計画として、使用済燃料の地層処分場建設に向けた取組のほか、中レベル放射性廃棄物等の地層処分場のサイト選定プロセスの策定、及び将来的な原子炉プロジェクトで発生する使用済燃料の管理への準備に関しても概説している。

■使用済燃料の地層処分場建設に向けた取組

使用済燃料の地層処分場の受け入れ地域が選定されたことを受けてNWMOは、2025~2029年の期間に、地層処分場建設に向け、以下の5つの分野を優先事項として設定して取組を進めることを示している。

  • 規制意思決定プロセス
  • サイトの安全性と処分場の建設
  • サイトへの事業移転
  • 処分場建設における契約形態
  • 輸送計画の策定

規制意思決定プロセス

規制意思決定プロセスは、2025年に開始される予定である。NWMOは、正式には規制意思決定プロセスは処分場の建設地点が決定するまで開始できないが、プロセスのための準備はすでに開始しており、このように早い時点から準備を開始することで、規制機関のニーズに対応できるようにすることとしている。 今後5年間では以下を実施することとしている。

  • 環境、社会、健康及び経済に関する調査を完了するため、地域と関与し、意見を求める
  • WLONが策定して実施されるWLON独自の規制評価・承認プロセス(RAAP)に参加する
  • 連邦政府の規制意思決定プロセスに必要な資料を準備する

サイトの安全性と処分場の設計

NWMOは、環境や公衆の安全を最優先に事業を進めることとしており、処分場を受け入れるサイトにおける環境や社会、経済への影響を考慮していくとし、今後の5年間では以下を実施することとしている。

  • 地域、技術的な専門家、国際的な専門家と協力して工学的設計を進める
  • サイトの理解を進め、不確実性を低減し、プロジェクトのセーフティケースに対する全体的な信頼性を維持するために、安全評価と地質学的調査を継続する
  • 調査の計画と実施に適用可能な知見を取り込むために知識の保有者からのガイダンスを求める

サイトへの事業移転

NWMOは、事業の進展に伴う受け入れ地域や周辺地域の疑問や懸念に対処し、支援を継続していくとしており、サイトへの事業移転の準備を開始するとともに、地域における公平で多様性のある労働力を構築していくこととしている。今後の5年間は以下を実施することとしている。

  • 受入協定の実施に向け、受け入れサイトの自治体及び先住民と実施委員会を設置する
  • 処分場サイトの確定とサイト準備活動の開始を含めた選定されたサイトの管理
  • 組織の移転や規制意思決定プロセスに必要な組織的知見を確保し、新たなスキルを獲得するための人的リソース戦略を実施する
  • 専門技術センターの計画、設計、及び建設に向けた契約を開始する

専門技術センターについては、地域住民が展示などを通じて地層処分プロジェクトを学ぶ場とするとともに、カナダ国内及び国際的な知識共有の拠点としたいとしており、NWMOの事務所としても活用する意向で2028年までに施設の建設を完了したいとしている。

2025年

  • 選定されたサイトで、追加的なサイト特性調査活動を開始
  • 規制意思決定プロセスの開始
  • 輸送計画枠組みの更新(3年毎の更新)

2028年

  • 規制意思決定プロセスの一環として影響評価調査結果の提出
  • 専門技術センターの開設

2030年

  • 規制機関による承認(見込)
  • サイト準備のための許可の発給(見込)

2031年

  • カナダ原子力安全委員会(CNSC)への建設許可申請書の提出

2033年

  • 建設許可の発給(見込)
  • 建設の開始

2040~2045年

  • 地層処分場の操業開始
  • 使用済燃料の処分場への輸送開始

操業終了後

  • 監視期間の開始

■中レベル放射性廃棄物等の地層処分場サイト選定プロセスの策定

中レベル放射性廃棄物等の地層処分の実施主体として、NWMOは2025~2029年の期間に、地域主導の処分サイト選定プロセスを策定することとしている。2025年内に、NWMOは使用済燃料処分場のサイト選定に至ったプロセスの長所や教訓に基づき、中レベル放射性廃棄物等のサイト選定プロセス案を公表する予定である。サイト選定プロセスは2027年に決定され、2028年にはプロセスが開始される計画である。サイト選定プロセス開始後の主なスケジュールとしては、2030年半ばまでにサイト特性調査、処分場の予備的設計を行ってサイトを絞り込む、その後サイトを選定し2050年代に処分場の建設、操業を開始することとしている。

■将来のプロジェクトで発生する使用済燃料の管理への準備

カナダでは、連邦政府が2050年までの温室効果ガスネットゼロ排出の実現に向けた気候変動戦略の柱として原子力を位置づけており、既設の原子炉の運転延長のみならず、新しい原子炉の建設も進められている。また、原子力産業界では、小型モジュール炉や先進炉の技術開発が活発に進められている。こうした背景の下、今回の実施計画書には、将来のプロジェクトで発生する使用済燃料への準備についても盛り込まれている。NWMOは、自らが管理責任を負う使用済燃料及び放射性廃棄物の量や種類を変化させる可能性のある決定に備えるため、新たな原子炉建設の提案者と対話を行っている。

将来のプロジェクトで発生する使用済燃料の処分について、使用済燃料処分場サイトとして選定されたWLON及びイグナス・タウンシップにおける地層処分場は、地域の意欲と、追加的な技術評価での適合性を条件として、使用済燃料の処分容量を拡張できる可能性が有るとしているが、地域が望まない場合や拡張しても処分容量が不足する場合、中レベル放射性廃棄物等の地層処分場で処分する可能性も検討することとしている。

【出典】

 

(post by nunome.reiko , last modified: 2025-04-01 )