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《米国》廃棄物隔離パイロットプラント(WIPP)の新換気システム(SSCVS)の試験・試運転段階が完了

米国の軍事起源のTRU廃棄物の地層処分場である廃棄物隔離パイロットプラント(WIPP)について、WIPPを操業するエネルギー省環境管理局(DOE/EM)は2025年3月4日に、地下処分施設の換気能力を強化する「安全上重要な閉じ込め換気システム(SSCVS、Safety Significant Confinement Ventilation System)」の試験・試運転段階が完了し、重要なマイルストーンを達成したことを公表した。DOE/EMは、今回のマイルストーン達成により、SSCVSが2025年内に供用開始となるとの見込みを示している。WIPPでは、2014年の放射線事象の影響によって換気能力の強化が必要となっており、新たな換気システムであるSSCVS及び新たな立坑(New Utility Shaft)の建設が進められてきた

WIPPの新換気システム(SSCVS)の外観

図1:WIPPの新換気システム(SSCVS)の外観

SSCVSの試験・試運転の段階は、2024年6月にSSCVS施設の建設が完了した後、WIPPの管理・操業契約者(M&O)であるサラド・アイソレーション・マイニング・コントラクターズ(SIMC)社により、2023年10月から実施されてきた。試験・試運転段階では、SSCVSの試験、総合調整、操業手順・ガイドラインの策定や、DOEのカールズバッド・フィールド事務所(CBFO)の操業チームメンバーの訓練及び資格認定などが行われており、個々のシステムの試験の後、SSCVS全体が完全に機能するかが確認された。SSCVSは、試験・試運転が完了した後に、WIPPの操業チームメンバーへと引き渡された。今後は、SSCVSがWIPPの他のシステムと完全に統合されたものとなっているかの評価が行われ、主系統・予備系統が想定通りに機能すること、及び操業チームメンバーが新換気システムを完全に理解して習熟していることが確認される。SSCVSの運転前には、DOE/EMによる最終的な評価が行われ、その承認後に操業チームメンバーがSSCVSをWIPPの地下換気システムに連結することとなる。

WIPPの新換気システム(SSCVS)新フィルタ建屋内のHEPAフィルター

図2:SSCVS新フィルタ建屋内のHEPAフィルター

SSCVSは、WIPPの地下施設への新たな空気取入口となる新たな立坑と連携して機能するものであり、SSCVSが地下施設の空気を吸い込み、岩塩粒子を除去した後、22ユニットの高性能粒子(HEPA)フィルタを通して外気に排出される。SSCVSにより、WIPP地下施設での空気流量は毎分17万立方フィート(約4,810m3)から54万立法フィート(15,300m3)へと大きく増加することとなる。SSCVSは、主要な2つの建屋から構成されており、塩分削減建屋(Salt Reduction Building)では地下施設からの空気中の岩塩粒子を前もってろ過し、新フィルタ建屋(New Filter Building)でファンとHEPAフィルタによってさらに空気が浄化される。SSCVSの完成により、2014年2月14日の放射能事象の発生前のペースでのTRU廃棄物の受け入れが可能になると考えられている。

WIPPの全景と新換気システム(SSCVS)

図2:WIPPの全景と新換気システム(SSCVS)

■廃棄物隔離パイロットプラント(WIPP)について

WIPPは、ニューメキシコ州南東部のカールズバッド市から26マイル(約42km)に位置しており、過去の国防活動から発生した軍事起源のTRU廃棄物の処分のために設置された地層処分場であり、1999年3月26日から処分が実施されている。WIPPの地下処分施設は、2億5,000万年前の岩塩層内の約2,150フィート(約655m)の深度に建設されている。WIPPでは2014年2月14日に放射線事象が発生して操業が停止されていたが、2017年1月に操業が再開され、2024年10月にはWIPPへのTRU廃棄物輸送回数が14,000回を超えたことが公表されるなど、廃棄物の受け入れペースが減少していたものの、順調に操業が続けられていた。

【出典】

(post by inagaki.yusuke , last modified: 2025-03-10 )