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《英国》リンカンシャー州が地層処分施設のサイト選定プロセスから撤退し、コミュニティパートナーシップが解散

英国イングランド東部のリンカンシャー州は2025年6月3日の州議会において、地層処分施設の立地を検討する「テッドルソープGDFコミュニティパートナーシップ」からの脱退を決定した。リンカンシャー州議会の決定によるリンカンシャー州の脱退により、同コミュニティパートナーシップに参加する自治体組織がなくなり、コミュニティパートナーシップの設立条件が満たせなくなることから、同コミュニティパートナーシップは解散し、リンカンシャー州内でのサイト選定プロセスも終了した。

■リンカンシャー州におけるサイト選定プロセス終了までの経緯

サイト選定プロセスの概略(出典:NWS、コミュニティガイダンスの図を一部修正)

①関係者との初期対話期間(~2021年10月)

英国では、2018年政策文書に基づき地層処分事業の実施主体であるニュークリアウェイストサービス(NWS、当時はRWM社)が、2018年12月から地層処分施設のサイト選定プロセスを開始した。リンカンシャー州議会は、同州イーストリンジー市にあるテッドルソープ・ガスターミナル跡地の利用策の一環として、地層処分施設(GDF)の立地に関心を示し、サイト選定プロセスに基づきNWSとの初期対話を開始した。

テッドルソープWGエリア

テッドルソープGDFワーキンググループの検討対象エリア(RWM社の初期評価レポートを元に原環センターにて作成)

②ワーキンググループ活動期間(2021年10月~2022年6月)

リンカンシャー州議会は、地層処分施設の立地可能性に関してニュートラルな立場を維持し、オープンな形で検討を行うため、2021年10月に「テッドルソープGDFワーキンググループ」1 を設置した。当初のワーキンググループのメンバーは、リンカンシャー州と、ガスターミナル跡地を有する地域自治体組織(準自治体)のテッドルソープ・パリッシュで構成されていた。その後、ガスターミナル跡地を有する基礎自治体であるイーストリンジー市の参画を得て、地層処分施設の立地可能性を検討するための「調査エリア」の特定を進めた。

 

 

③コミュニティパートナーシップ活動期間(2022年6月~2025年6月)

2022年6月にワーキンググループは、地層処分施設のサイト選定プロセスにおける「調査エリア」を特定し、地層処分施設(GDF)の立地可能性を検討するための「テッドルソープGDFコミュニティパートナーシップ」2 を設立した3

テッドルソープ調査エリア

コミュニティパートナーシップは2018年政策文書に基づき、より広範な地元の代表者を含むように規定されており、継続的な対話と意思決定を行うためのプラットフォームを提供するものである。当初のコミュニティパートナーシップのメンバーは、NWS、リンカンシャー州及びイーストリンジー市であったが、その後、テッドルソープ・パリッシュ(準自治体)、ボランティア団体及び企業がメンバーとして参加した。

コミュニティパートナーシップは、陸地の地下には放射性廃棄物を処分しない方針として、GDFの地下施設の設置候補地を調査エリア沖の領海内(約22km)に設定した。また、地上施設の設置候補地については、ガスターミナル跡地を含む約110km2の範囲として、地層処分施設のサイト評価作業を行った。

NWSは2024年11月に、リンカンシャー州がサイト選定プロセスに参画した以降、ガスターミナルの跡地利用について、他のエネルギー事業との利害関係が明確になったことで、既存の調査エリア内において地上施設の代替案を調査・検討していることを公表した。

特定された重点エリア(テッドルソープ調査エリア)

その後、2025年1月に、NWSがGDFのサイト評価に向けた取組みを重点的に行う重点エリアを公表した。公表した重点エリアでは、地上施設の設置候補エリアとして当初予定していたガスターミナル跡地ではなく、調査エリア内の内陸の田園地帯(約3.8km2)が設定された。NWSは地上施設の候補エリアの変更理由として、沿岸地域は内陸よりも洪水のリスクが高いこと、さらに、ガスターミナル跡地の他事業への利用が有力となり、両事業に必要な土地の確保が難しいと判断したことを挙げている。

NWSの公表を受け、ガスターミナル跡地を有するイーストリンジー市は、2025年2月に田園地帯の工業化に対する地域の強い懸念を理由にコミュニティパートナーシップからの脱退を表明し、2025年4月に正式に脱退した。また、リンカンシャー州議会は、2025年3月に、当初予定していた地上施設の設置候補エリアが変更されたことを理由にコミュニティパートナーシップからの脱退を表明し、2025年6月の州議会で正式にコミュニティパートナーシップから脱退することを決定した。

■英国のサイト選定の現状

英国イングランドでサイト選定プロセスに参加するコミュニティパートナーシップの調査エリア

今回、リンカンシャー州でのサイト選定プロセスの終了により、英国の地層処分施設のサイト選定プロセスに参加しているのは、イングランド北西部のカンバーランド市に設立された「ミッドシップコープランドGDFコミュニティパートナーシップ」と「サウスコープランドGDFコミュニティパートナーシップ」の2つとなった。NWSは、この2つのコミュニティパートナーシップと連携しながら、サイト選定プロセスを進展させていくとし、引き続き、多くのコミュニティがサイト選定プロセスに参加できる機会を検討している。

 

 

 

【出典】

  1. ワーキンググループは、コミュニティ全体での協議に発展させていくための準備組織である。 []
  2. コミュニティパートナーシップは、当該調査エリアでの地層処分施設の立地可能性を中長期的なスパンで検討していくグループである。 []
  3. 「テッドルソープGDFワーキンググループ」はコミュニティパートナーシップの設立をもって活動を終了 []

(post by f-yamada , last modified: 2025-06-19 )