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韓国

2004年2月4日、韓国産業資源部(MOCIE)は、中低レベル放射性廃棄物処分場及び使用済燃料中間貯蔵施設サイトの新規誘致公募に関する告示を発表した。これは2003年12月10日に発表された「放射性廃棄物管理事業推進の補完方針」に従い、住民投票を必須手続きとすることで、施設誘致について住民自らが決められるように制度的に保証するほか、新しい手続きの導入によって、扶安(プアン)郡蝟島(ウィド)以外の地域にも誘致申請の機会を与えるものである。

同告示では、まず対象とする施設について、中低レベル放射性廃棄物処分場、使用済燃料中間貯蔵施設及びそれに関連した施設としており、使用済燃料の再処理施設および高レベル放射性廃棄物の最終処分場については、今回の告示で選定される候補地の対象施設ではないことを明言している。

今回の告示で示された新たな誘致申請の手続きは以下の通りである。(下図に手続きの流れを示す)

(1) 予備申請及び住民の意見聴取

  • 地方自治体の首長1)は以下のいずれかの場合、2004年9月15日までに産業資源部長官に予備申請を行うことが可能。
  • 施設の誘致を希望する住民が、2004年5月31日までに、当該邑・面・洞(日本の町村に相当)の有権者の三分の一以上の誘致賛成署名を添付し、産業資源部長官に誘致を申し込み、その誘致申請書の受付事実について、産業資源部長官から通知を受けた場合。
  • 施設誘致を希望する住民が、当該邑・面・洞の有権者の三分の一以上の誘致賛成署名を添付して、地方自治体首長に予備申請を要請した場合。
  • 当該市・郡・区議会が決議の下、地方自治体首長に予備申請を要請した場合。
  • 地方自治体首長は、予備申請を行うのに平行して、住民の意見を反映するための公開討論会、行政区域別共同説明会などを行う。

(2) 住民投票

  • 産業資源部長官は予備申請と住民の意見聴取手続きを経た自治体首長に、住民投票法の規定に則り、施設の誘致を問う住民投票の実施を要求。
  • 住民投票の実施を要求された自治体首長は、住民投票法に則り、住民投票を実施する。ただし、住民投票法は2004年2月5日現在ではまだ施行されていないので、施行前に住民投票を行う場合には、住民投票法の関連規定を参照し、当該地方自治体首長が住民投票の具体的な手続きと方法を定めて実施する。
  • 住民投票はサイト適合性が確認されてから実施し、サイト適合性は地元住民の代表が参加する「サイト選定委員会」において、立地に関する技術基準上の欠格事項の有無を審査して評価を行う。
  • 住民投票は、投票有権者の三分の一以上の投票と、有効投票数の過半数の賛成で可決する。

(3) 本申請

  • 住民投票の結果、可決した地域の地方自治体首長は、2004年11月30日までに産業資源部長官に本申請書を提出。
  • プアン郡は、住民投票を通じて可決した場合、別途の申請手続きなしに本申請が完了したものとする。

(4) 施設予定区域の候補サイト選定

  • 産業資源部長官は、本申請を完了した地方自治体首長を対象に、「サイト選定委員会」の審査を経て、2004年12月31日までに施設予定区域の候補サイトを選定する。

サイト選定手続き(告示)

同告示では、サイト選定過程の透明性と施設の安全性の保証という観点から、サイト適合性の調査段階における住民などの利害関係者の参加を制度的に保証する、当該地域の住民代表、自治体首長が推薦する専門家、学会、マスメディア、社会市民団体の代表などによって構成される『サイト選定委員会』を設けるほか、建設及び操業段階に関しても、同様の構成による『運営委員会』を設置することが述べられている。

また、政府は、2003年12月10日に産業資源部が「放射性廃棄物管理事業推進の補完方針」を発表して以来、プアン郡で一部の社会市民団体が反対住民を中心に任意の賛否住民投票を強行しようとしている動きがあることに対して、憂慮を示す見解も発表している。その中では、賛否住民の合意抜きの一方的な住民投票の実施は問題の解決につながらず、参加と合意による決定原則に反し、正常な国政業務の遂行を阻害するものであるため、いかなる場合にも投票結果の法的効力や拘束力を認めないと述べている。さらに、賛否住民が互いに膝を交えて、必要な手続きについて検討することを重ねて呼びかけている。

一方、政府は今後の放射性廃棄物施設の選定を地元住民と社会市民団体の参加の下、透明かつ公正な手続きで行う計画であることを表明しており、施設の必要性と安全性について国民のコンセンサスを得るための『放射性廃棄物処分施設の安全性検証チーム』を構成、運営する計画に加えて、今後のエネルギー政策の推進過程で、参加と議論を活性化するため、政府と市民・社会団体などが一緒に参加する『エネルギー政策官民合同フォーラム』を構成、運営する計画を示している。

【注1】
韓国の地方自治体としては、広域自治体(ソウル特別市、6つの広域市、道)とその下に基礎自治体(市、郡、特別市及び広域市の自治区)があり、この基礎自治体の下部行政単位として邑、面、洞がある。ここでの地方自治体首長は基礎自治体の長を指す。

【出典】

  • 産業資源部プレスリリース、2004年2月4日  
    http://www.mocie.go.kr/notice/news/report_view.asp?num=6097&jungchak_menu=0
  • 放射性廃棄物処分施設のサイト公募に関する告示、2004年2月4日
  • 扶安反対対策委の住民投票強行方針に対する政府の見解、2004年2月4日

2003年12月10日、韓国産業資源部(MOCIE)の尹鎭植長官は、中低レベル放射性廃棄物処分場、使用済燃料中間貯蔵施設などの立地候補地として選定した扶安(プアン)郡の蝟島(ウィド)サイトの是非について住民投票を行うこと、およびプアン以外の自治体にも住民投票を経て申請の機会を与えることなど、これまでのサイト選定過程に新たに住民投票手続きを導入する方策を発表した。

中低レベル放射性廃棄物処分場、使用済燃料中間貯蔵施設などのサイト選定については、2003年7月15日までの期限で自主的誘致申請がある場合に、当該地域を優先的にサイト選定過程に入れて推進することが明らかにされていて、7月14日付でプアン郡が申請を行った結果、2003年7月24日に立地候補地として選定されていた。その後この選定を巡る社会的軋轢が高まる中、盧武鉉大統領は閣議において、紛争解決に政治的な介入を行う可能性を否定した上で、政府のプアン郡住民との対話の必要性など、適切な手続きをとることの重要性を強調していた。

尹鎭植長官は発表の中で、政府によるプアン郡ウィドのサイト選定過程において、プアン郡住民の意志が十分に反映されなかった点と、プアン郡の申請当時、誘致意志のあった他の自治体がサイト選定過程に十分参加できない状況だったことを認め、結果的に、国民とプアン郡住民に混乱と不便を招いたことを謝罪した。

今回発表された追加的な方策は以下のものが挙げられる。

  • 現在、プアン対策委員会と議論を進めている住民投票手続きを公式の意見収集の手続きとして推進する。
  • 誘致するその他の自治体にも、住民投票手続きの導入など、補完の手続きを行うことで、サイト選定過程への参加機会を保証する。
  • 誘致する自治体における住民投票で、誘致賛成の結果を得た自治体が複数現れて本申請を行った場合、審査によって最終サイトを選定する。
  • 複数の誘致する自治体が競合した場合、プアン郡に対して優先的に配慮する。

なお、住民投票については、誘致する自治体が現在国会で審議中の住民投票法案の内容を踏まえて、適切な住民投票手続きを設け、これに従って当該自治体の長が実施することになる。

【出典】

  • 産業資源部プレスリリース、2003年12月10日
    http://www.mocie.go.kr/notice/focus/focus_view.asp?num=1365&page=1&keyfield=&key=&startday=&endday=
  • 産業資源部長官の発表文、2003年12月10日
  • 韓国政府ウェブサイトプレスリリース、2003年11月26日、http://www.kois.go.kr/kwnews/news.html

2003年7月24日、韓国における中低レベル放射性廃棄物の管理に責任を有する産業資源省(MOCIE)と処分の実施主体である韓国水力原子力株式会社(KHNP)は中低レベル放射性廃棄物処分場、使用済燃料中間貯蔵施設、及びその関連施設(研究支援施設、広報及び住民のための施設、環境施設)の立地候補地として、西海岸沿いのプアン(扶安)郡にある蝟島(ウィド)を選定した。(場所については下図参照)

MOCIEとKHNPは2003年2月4日に4カ所の立地候補地を選定する一方で、候補地に選ばれた4ヶ所以外の地域で2003年中に自主的誘致申請がある場合、当該地域を優先的にサイト選定の過程に入れ、推進することを明らかにしていた。その後MOCIEは2003年5月1日付のプレスリリースで自主的誘致申請の期限を2003年7月15日迄とすることを公表していた。

最終的にこの期限までに申請を行った地方自治体はプアン郡(7月14日付で申請)のみであった。これを受けて、政府・学術経験者・研究者・社会団体で構成されるサイト選定委員会が評価調査等を行った結果、同郡ウィドのみを立地候補地として選定するに至った。今後の事業計画は以下のとおりである。なお、処分方式については今後のサイト調査結果をもって決定されることになっている。

2004年7月末までに、ウィドにおける精密地質調査・事前環境検討などを実施した後、ウィドを電源開発特例法による電源開発事業予定区域として指定・告示し、サイトの特性調査及び環境影響評価を実施

  • 2006年9月までに、土地買収、各種許認可の取得および詳細設計を実施
  • 2006年10月からは中低レベル放射性廃棄物管理施設の建設に着工
  • 2008年12月に中低レベル放射性廃棄物管理施設を竣工
  • 2016年12月に使用済燃料の中間貯蔵施設を竣工

ウィドの住民の大部分は今回のサイト誘致に賛成している。ウィドの面積は14.14km2で、現在672世帯1,468名の住民が住んでいる。陸地である格浦(キョッポ)港との距離は14.4kmとなっている。

韓国の処分場立地候補地地図
外務省ウェブサイト(http://www.mofa.go.jp/mofaj/area/korea/index.html)より作成

【出典】

  • 韓国水力原子力株式会社ウェブサイト、http://www.khnp.co.kr/、2003年8月
  • 韓国環境技術院ウェブサイト、http://www.knetec.com/、2003年8月
  • 産業資源部プレスリリース、2003年5月1日、7月14日、15日、24日

2003年2月5日、韓国産業資源部(MOCIE)1 は中低レベル放射性廃棄物処分場および使用済燃料中間貯蔵施設の立地候補地4ヶ所を公表した。

  • 西海岸側:全羅北道にある高敞【コーチャン】、全羅南道にある霊光【ヨンクワン】
  • 東海岸側:慶尚北道にある蔚珍【ウルチン】と盈徳【ヨントク】

今後1年間、この4ヶ所において地質・環境調査および地域協議を実施し、政府・学術経験者・研究者・社会団体で構成される「サイト選定委員会」にて、最終的に2ヶ所(全羅から1ヶ所、慶尚北道から1ヶ所)を選定する予定である。選定された2ヶ所には、政府からそれぞれ300億ウォン(約30億円:1ウォン=約0.1円)および様々な地域共生プロジェクトが実施される。【出典1、2】

政府と韓国水力原子力株式会社(KHNP)は、候補地に選ばれた4地域以外の他の地域で今年中に自主的誘致申請がある場合、当該地域を優先的にサイト選定の過程に入れ、推進することを明らかにしている。【出典2】

韓国では、MOCIEが原子力発電所の建設・運転、中低レベル放射性廃棄物管理に関する責任を負っている【出典3】。またKHNPが、国家放射性廃棄物管理方針に基づき、放射性廃棄物管理およびプロジェクト推進の責任を負っている【出典4】。1997年に韓国科学技術部(MOST)からMOCIEに放射性廃棄物管理の責任が移管された後、MOCIEは新しい放射性廃棄物管理計画を策定した。同計画は、1998年に原子力委員会によって承認されている【出典3】

韓国では中低レベル放射性廃棄物処分場を2008年までに、使用済燃料については、中間貯蔵施設が建設される2016年まで、各原子力発電所にて貯蔵することとなっている【出典3】。現在、中低レベル放射性廃棄物はサイト内貯蔵されており、2008年には満杯となると見込まれている【出典1】。

候補地の選定過程

MOCIEおよびKHNPは、放射性廃棄物施設用地として200万m2(500エーカー)のサイトを確保するため、2000年6月から沿岸部に所在する46の地方自治体に対して公募を行った。公募は当初の締め切りが4ヶ月延長され、2001年6月末まで行われたが、誘致申請をする自治体はなかった【出典1、4】。

しかしながら、全羅北道にある高敞【コーチャン】、全羅南道の霊光【ヨンクワン】康津【カンジン】、珍島【チンド】、忠清南道の保寧【ポリョン】の5つの自治体において誘致申請を要求する住民請願が提起された。MOCIE側はこの動きを、有権者の過半数に近い住民たちが誘致賛成署名に参加している全羅南道の霊光と康津等に見られるように、過去の選定とは異なり、オープンで民主的な手続である「公募方式」により推進した結果、施設の必要性と安全性、施設誘致時の地域共生等に対して地元住民の受容性と理解度が大きく向上したためと評価している。【出典5】

2001年7月にMOCIEとKHNPは地方自治体の誘致申請に依存する現行の「公募方式」から、より積極的な「事業者主導方式」に転換する計画を示した。この「事業者主導方式」とは、事業者であるKHNPが誘致公募過程で得た教訓と施設の諸立地基準を考慮して、適切な候補地を選定した後、当該地方自治体と地元住民とに積極的に提案・協議する方式である。一方、計画において政府は「事業者主導方式」により事業を推進しても、オープンで透明性のある手続を通し、地方自治体と地元住民との十分な協議を行い、最適なサイトを選定するように最善を尽くすとしている。【出典5】

今回の「事業者主導方式」による候補地選定は、徹底した文献調査と分析、現地調査と各分野の専門家で構成された諮問委員会での検討を経て実施され、全5段階の過程に分けて進められた。【出典2】

第1段階では、臨海地域のうち244邑面(町村)単位の立地可能地域を選定した。第2段階では、各地域における地質適合性調査を行い、対象地域を108まで絞り込んだ。第3段階では、108の対象地域の中で、自然・人文・社会環境という条件上、好ましい20地域を選定した。第4段階では事業環境の観点から11地域を選定し、最終の第5段階では原子力発電所の地理的分布、放射性廃棄物輸送の容易性等を勘案し、東海岸と西海岸に各2ケ所ずつ、計4地域を候補地として最終選定した。したがって、今回選定された地域は、サイトの安全性および技術的な面で非常に優れた地域であるとされている。【出典2】

処分量・処分方法

中低レベル放射性廃棄物処分場には、まず200リットルドラム缶10万本を処分し、最終的には80万本を処分することになっている。処分方法については、サイト選定後に決定される。【出典4】

なお、韓国では現在原子力発電プラント18基(PWR運転中14基およびCANDU炉運転中4基)が稼働中、2基が建設中である。政府は今後の電力需要の増加に備えて、2015年までに更に8基を増設する予定である。原子力発電は韓国における最大の電力供給源であり、約40%の需要を賄っている。【出典1】

【出典】

  • 韓国産業資源部(MOCIE)2003年2月5日付けプレスリリース
  • 韓国産業資源部(MOCIE)広報官室、報道資料、2003年2月
  • 韓国科学技術部(MOST: Ministry of Science and Technology)ウェブサイト、 http://www.most.go.kr
  • 韓国水力原子力株式会社(KHNP)ウェブサイト、http://www.khnp.co.kr
  • 韓国産業資源部(MOCIE)広報官室、報道資料、2001年7月

  1. MOCIE:Ministry of Commerce, Industry and Energy []