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韓国の産業通商資源部(MOTIE)は2022年7月20日に、「高レベル放射性廃棄物の研究開発ロードマップ(案)」を公表した。本ロードマップ案は、2021年12月7日にMOTIEが案を公表し、同年12月27日に第10回原子力振興委員会において確定した「第2次高レベル放射性廃棄物管理基本計画」(以下「基本計画」という)の後続措置である。基本計画では、「高レベル放射性廃棄物の輸送・貯蔵・処分の能力向上と効率的な管理のために必要な技術を持続的に開発すること」を示していた。 MOTIEはロードマップ案の副題として「高レベル放射性廃棄物の安全な管理のための技術的な青写真(ブループリント)」を付しており、必要な技術を段階的に確保していく上で、スケジュールの明確化と体系的な研究開発を推進する必要性を強調している。

図 韓国産業通商資源部が公表した高レベル放射性廃棄物研究開発ロードマップ(案)

図 韓国産業通商資源部が公表した高レベル放射性廃棄物研究開発ロードマップ(案)

ロードマップ案では、輸送、貯蔵、サイト、処分の4分野の104の要素技術を抽出しており、専門家へのアンケート調査やレビューグループでの議論等を踏まえ、高レベル放射性廃棄物の管理に関する先進国での開発状況と比較した達成度を分析し、①既に国内で技術が開発済のもの、②開発中のもの、③今後開発が必要なものに分類している。これらの分析をもとに、それぞれの要素技術が必要となる時期に対応する技術開発スケジュールとして、輸送と貯蔵に関する技術は2037年、サイトに関する技術は2029年、処分に関する技術は2055年までに技術開発を完了させるとした目標が示されている。また、研究開発には1997年から2022年の間に合計4,000億ウォン(約382億円、1ウォン=0.0956円として換算)を投資しており、今後2023年から2060年の間に合計9,002億ウォン(約861億円)を投資する予定としている。これに加え、地下研究施設の建設には、4,936億ウォン(約472億円)の投資が必要になるとの見通しが示されている。

また、MOTIEは本ロードマップ案の意義について、尹錫悦(ユン・ソンニョル)大統領就任後の2022年7月5日に韓国政府が決定した「新政府のエネルギー政策の方向性」において、気候変動対策やエネルギー安全保障の強化のため、原子力発電をフルに活用する必要があるとの方針が示されており、原子力政策の大前提が安全第一であることを踏まえて、高レベル放射性廃棄物の技術的研究開発に関するロードマップを策定して実施し、国民の安全確保に万全を期すものと述べている。

ロードマップ案については今後、国内でディスカッションが実施されるほか、フィンランドやフランスといった主要国や、国際原子力機関(IAEA)や経済協力開発機構/原子力機関(OECD/NEA)といった国際機関のレビューを受けて、2022年下半期には最終決定される予定となっている。MOTIEは、ロードマップの作成と並行して、サイト選定の手順・方法・スケジュール、誘致地域への支援、高レベル放射性廃棄物の安全な処分のための専門機関の設立を含む特別法の制定に向けた取組を進める計画である。

【出典】

韓国の原子力安全委員会(NSSC)は、2022年7月7日に開催された第160回原子力安全委員会において、韓国原子力環境公団(KORAD)が2015年12月24日に申請していた「低中レベル放射性廃棄物処分センター」の第2段階処分施設の建設・操業許可を発給することを決定した。第2段階処分施設の処分概念は、地表近くに設けた人工構築物(コンクリートピット)に放射性廃棄物を埋設する方式であり、わが国の青森県六ヶ所村で操業中の低レベル放射性廃棄物埋設センターで行われているピット処分と同様な方式である。許可を受けた処分容量は200Lドラム缶換算で12.5万本である。KORADは、原子力安全委員会から建設・操業許可が発給され次第、直ちに本格的な工事に着手するとしている。KORADは、第2段階処分施設の操業を2025年に開始する計画である。

低中レベル放射性廃棄物処分センターの処分施設

低中レベル放射性廃棄物処分センターの処分施設

低中レベル放射性廃棄物処分センターは、韓国東部の慶州市陽北面奉吉里(キョンジュ市ヤンブク面ポンギル里)にあり、海岸部の起伏のある地域に立地している。2015年から放射性廃棄物の処分を開始している第1段階処分施設は、岩盤空洞処分方式を採用しており、山腹にある地上施設の斜坑入り口から約110~160mの深さ(海抜約-80~-130m)に建設された6基のサイロで構成されており、処分容量は200Lドラム缶換算で10万本である

韓国では、産業通商資源部(MOTIE)が2020年12月に策定した「第2次低中レベル放射性廃棄物管理基本計画」において、将来の原子力発電所の廃止措置に伴って発生する放射性廃棄物の処分に備えるべく、2027年までに200Lドラム缶換算で38.5万本の規模の処分容量を3段階で確保する計画となっている。今回の「低中レベル放射性廃棄物処分センター」の第2段階処分施設の建設・操業許可が発給されることにより、第2段階までの準備が整ったことになる。

表:韓国における低中レベル放射性廃棄物の処分容量の確保計画
区分 第1段階 第2段階 第3段階
処分方式 岩盤空洞処分方式 ピット処分方式 トレンチ処分方式
処分可能な廃棄物の分類 中レベル放射性廃棄物以下 低レベル放射性廃棄物以下 極低レベル放射性廃棄物のみ
処分規模
(200Lドラム缶換算)
10万本 12.5万本 16万本

【出典】

韓国の産業通商資源部(MOTIE)は、2021年12月7日付けの公告において、高レベル放射性廃棄物を安全に管理する方式と手続きを提示する「第2次高レベル放射性廃棄物管理基本計画(案)」(以下「第2次基本計画案」という)を公表し、2021年12月21日を期限としたパブリックコメントの募集を開始した。MOTIEは、この第2次基本計画案において、高レベル放射性廃棄物(使用済燃料)を安全かつ効率的に管理するための政策ロードマップを提示する意向を持っている。

MOTIEは、今回の第2次基本計画案の検討に資するため、2019年5月に人文・社会、法律・科学、コミュニケーション・紛争管理、調査・統計などの中立的な専門家15名で構成される「使用済燃料管理政策再検討委員会」(以下「再検討委員会」という)を設置し、再検討委員会が行う勧告を最大限尊重して政策を推進する考えを示していた。再検討委員会は、2021年3月に政府へ提出した勧告書において、使用済燃料管理特別法を制定する必要性を指摘するなど、使用済燃料の管理政策の見直しに関する勧告を行っていた。MOTIEは第2次基本計画案において、再検討委員会が指摘した特別法の制定や現行の放射性廃棄物管理法の全面改正を検討する方向性を打ち出している。また、今後の法整備を踏まえて、使用済燃料の中間貯蔵施設や処分施設のサイト選定プロセス、地域支援策、技術開発、人材育成などを含む高レベル放射性廃棄物管理基盤の構築、並びに専任組織の設置を行うとしている。

なお、第1次基本計画は朴槿恵(パク・クネ)政権時の2016年7月に策定されたが、翌2017年5月に発足した文在寅(ムン・ジェイン)政権における漸進的な脱原子力発電政策に伴う使用済燃料の予測発生量の低減に対応するため、2018年5月から基本計画の見直しが行われていた 。

■第2次基本計画案における高レベル放射性廃棄物管理の基本方針

MOTIEは再検討委員会の勧告を受けて、高レベル放射性廃棄物管理の基本方針を構成する原則の見直しを行っている。第1次基本計画では原則3に含まれていた「原子力発電所の持続可能な発展」という記述を削除し、新たに「可逆性・回収可能性の考慮」(原則6)を加えている。第2次基本計画案に提示されている高レベル放射性廃棄物管理の基本方針となる原則は以下のとおりである。

~第2次高レベル放射性廃棄物管理基本計画(案)における基本方針~

原則1:
高レベル放射性廃棄物を国家の責任の下で安全に管理し、安全管理に関する国内外の規範を誠実に遵守する
原則2:
高レベル放射性廃棄物を生態・環境的に安全に管理し、国民の健康と環境に対する危害防止を最優先に考慮する
原則3:
高レベル放射性廃棄物に関する情報を公開し、国民と住民の参加と共感の中で信頼を高める
原則4:
原子力発電の恩恵を享受した現世代が高レベル放射性廃棄物の管理責任を果たし、管理費用は発生者が負担する
原則5:
高レベル放射性廃棄物の輸送・貯蔵・処分能力向上と効率的な管理のために必要な技術を持続的に開発する
原則6:
技術的発展の可能性と安全性に関する条件の変化などを踏まえ、意思決定の可逆性と高レベル放射性廃棄物の回収可能性を考慮する

政府の重点推進課題として、以下の3項目を取り上げている。

  1. 科学的合理性と社会的合意に基づく管理施設の確保
  2. 地域共同体に向けた政府全体としての支援・コミュニケーション体制構築
  3. 安全管理のための政策基盤拡充

■政策ロードマップ

重点推進課題1.に関してMOTIEは、高レベル放射性廃棄物の管理施設のサイト選定が急務であるという認識のもと、処分施設の操業開始までに要する期間が、サイト選定作業の着手から37年後となるような政策ロードマップを示している。また、使用済燃料の中間貯蔵施設、地下研究施設及び処分施設を同一のサイトに立地する構想である。

処分方式としては、多重バリアシステムによる地層処分を優先的に考慮するが、技術的代替案(超深孔処分など)も並行して考慮することを示している。なお、第1次基本計画では、政策ロードマップに「国際共同貯蔵・処分の可能性の検討」及び「研究用地下研究所の立地・建設・操業」が盛り込まれていたが、これらは第2次基本計画案では削除されている。

高レベル放射性廃棄物管理施設に関する政策ロードマップ

 

■第2次基本計画の策定に向けた今後の予定

今回公表された第2次基本計画案に対しては、行政手続法の規定により、2021年12月21日を期限として産業通商資源部(MOTIE)長官宛てで意見書の提出が可能となっている。MOTIEは、案に対する追加的な専門家議論と国民の意見収斂のため、討論会を開催する意向を明らかにしている。なお、韓国では2022年3月に大統領選挙が予定されている。

第2次基本計画案は、原子力振興委員会の専門委員会による検討、原子力振興委員会本会議の審議・議決を経て確定される。また、高レベル放射性廃棄物管理基本計画は、国会の所管常任委員会に提出されることとなっている。

【出典】

 

【2022年1月7日追記】

韓国で2021年12月27日に、国務総理(首相)が主宰する第10回原子力振興委員会が開催され、本会議での審議・議決を経て、高レベル放射性廃棄物を安全に管理する方式と手続きを提示した「第2次高レベル放射性廃棄物管理基本計画」(以下「第2次基本計画」という)が確定した。原子力振興委員会は、韓国における原子力利用に関する重要事項を審議・決定する政府の意思決定機関であり、第2次基本計画の策定を担当した産業通商資源部(MOTIE)のほか、科学技術情報通信部、外交部の各部長官1 、民間委員等が出席して開催された。

今回の原子力振興委員会では、原子力に関する技術開発及び利用政策を一貫的かつ体系的に推進するため、最上位の法定計画として5年ごとに策定される「原子力振興総合計画」(第6次)も併せて審議・確定された。放射性廃棄物の安全な管理基盤の構築を目的として、使用済燃料の貯蔵及び処分に関する研究開発については、2021年から2029年の期間に合計4,300億ウォン(約411億円、1ウォン=0.0956円として換算)の予算とする計画である。

【出典】


  1. 韓国の「部」はわが国の「省」にあたる []

韓国で2016年に策定された「高レベル放射性廃棄物管理基本計画」(以下「基本計画」という)の見直しのために産業通商資源部(MOTIE)が設置した「使用済燃料管理政策再検討委員会」(以下「再検討委員会」という)は、2019年5月から進めてきた使用済燃料の管理政策の見直しに関する検討を踏まえ、2021年3月18日に、政府に対する勧告を公表した。再検討委員会は今後、勧告を政府に伝達した上で、活動を終了することとなっている。

再検討委員会は、文在寅(ムン・ジェイン)大統領の漸進的な脱原子力政策に沿った場合の使用済燃料の発生量予測の変化などを踏まえて、使用済燃料の最終処分と中間貯蔵、管理施設のサイト選定手続き等の課題について、専門家検討グループや市民参加団を設置するなどして検討を進めてきた。再検討委員会による政府への勧告は、以下のように8項目にわたっている。

  1. 使用済燃料の管理の原則
    • 今後の「第2次高レベル放射性廃棄物管理基本計画」(以下「第2次基本計画」という)1 の策定に当たって、「原子力発電所の持続可能な発展」という記述を残すか否かを、さらにコミュニケーションを実施した上で検討すべきである。
    • 使用済燃料管理の原則に「意思決定の可逆性」と「回収可能性」に関する原則を追加すべきである。
  2. 使用済燃料政策決定システム
    • 使用済燃料管理政策の決定過程について、具体的な国民参加の原則と手続きなどを含む制度案を策定すべきである。
    • 使用済燃料管理政策を担当する独立行政委員会の新設を優先的に考慮すべきである2
  3. 最終処分施設や中間貯蔵施設の確保
    • 新たに策定する第2次基本計画では、同一サイトに最終処分施設と中間貯蔵施設の両方を建設する政策を優先すべきである。ただし、最終処分施設のサイト確保の不確実性を理由に別のサイトに中間貯蔵施設を確保しようという意見や、リスク分散の観点から分散型の中間貯蔵施設を確保しようという意見にも配慮すべきである。
    • 地層処分技術の安全性と現時点での実現可能性や、基本計画に示されたサイト選定期間(12年間)の適切性に関しては、様々な意見があることを考慮した上で、地層処分の安全性を中心とした技術開発と、サイト選定に関連した地域の受容性の向上のため、具体的な推進策を策定すべきである。
  4. 管理施設のサイト選定の手順
    • 第2次基本計画の策定の過程において、科学技術的妥当性と国民・住民の受容性の両方を確保できるサイト選定の原則と手続きを提示すべきである。
    • 専門家検討グループが設置に合意したサイト選定委員会の構成や運営、サイト選定手続の法制化等について、具体的な方策を策定すべきである。
    • 住民の合意と科学技術的な評価等に基づいて、受容性の高いサイト選定手続きを策定すべきである。
  5. 管理施設の立地地域の支援原則と方法
    • 第2次基本計画策定の過程において、地域コミュニティを対象に支援するという原則に基づいて、住民が共感でき、地域社会全体に利益が均等に行き渡る合理的な支援策を策定すべきである。
    • 支援の原則と範囲について法制化し、これらの法令には、住民からの意見収集の方法を含めるべきである。
    • 具体的な支援対象範囲を定めるに当たっては、管理施設との距離を考慮して、専門家、住民などと積極的にコミュニケーションすべきである。
  6. 使用済燃料の一時貯蔵施設の拡充
    • 月城(ウォルソン)原子力発電所の使用済燃料の一時貯蔵施設の増設については、原子力安全委員会の許認可等の法的手続きが行われており、地域の意見収集の結果、市民参加団の81.4%が増設に賛成した3 。政府は適切な時期に、安全性を確保しつつ月城原子力発電所の使用済燃料の一時貯蔵施設を増設すべきである。
    • 政府と原子力発電事業者は、法令上公開可能な情報を最大限に公開して透明性を高めて、積極的な説明とコミュニケーション活動を展開して、原子力発電所と一時貯蔵施設の安全性に対する国民の信頼を獲得できるように努力すべきである。
    • 第2次基本計画の策定過程において、使用済燃料の一時貯蔵施設の定義と建設のための手続きに関する法的、制度的な整備案を策定すべきである。
    • 使用済燃料の一時貯蔵施設の設置に関する地域支援と補償システムを精査して、合理的な地域支援方策を策定するために努力すべきである。
    • 使用済燃料の一時貯蔵施設の拡充については、再検討委員会による月城(ウォルソン)原子力発電所の使用済燃料の一時貯蔵施設の増設に関する意見収集の経験も踏まえ、第2次基本計画の策定過程において、原子力発電所立地地域住民、市民社会、原子力産業界などの利害関係者の参加のもと、新たに議論を進めるべきである。
  7. 使用済燃料の発生量と貯蔵容量飽和の展望
    • 貯蔵容量の飽和見通しの推定に関する専門家の多様な意見を十分に検討して、重要な管理施設が段階的に適切な時期に設置できるように方策を策定すべきである。
  8. 使用済燃料の管理技術の開発
    • 第2次基本計画の策定において、地層処分をはじめとする様々な最終処分方式の安全性と妥当性の検証技術を確保できる方策と研究支援体制を早急に整備すべきである。
    • 見解が分かれた政策決定と技術開発の連動の有無等の関係もバランスよく確立し、使用済燃料の管理政策と関連技術の開発が有機的に推進されるようにすべきである。

再検討委員会は、勧告をより体系的に実行に移すには、使用済燃料管理特別法の制定が必要であり、同法には、使用済燃料の定義などの基本概念からサイト選定の手続きと誘致地域の支援などに至るまで、使用済燃料の管理政策全般を含める必要があると勧告している。また、再検討委員会のキム・ソヨン委員長は、勧告の内容の多くが立法政策事案であるため、政府と国会が協力して取り組む必要があると指摘している。

【出典】


  1. 高レベル放射性廃棄物管理基本計画は2016年7月に策定されており、今回の再検討委員会の勧告において、今後策定される改定版の高レベル放射性廃棄物管理基本計画は「第2次高レベル放射性廃棄物管理基本計画」と呼ばれている。 []
  2. 新たな委員会の設置について、勧告によると、専門家検討グループからは国務総理傘下に諮問委員会を設置する案、独立行政委員会を設置する案、原子力振興委員会傘下に専門委員会を設置する案などが出された。全国を対象とした意見収集では、独立行政委員会を設置すべきという意見が多数意見となった。 []
  3. 勧告をまとめた報告書は、月城原子力発電所の使用済燃料の一時貯蔵施設増設に関する意見収集において、対立が激化し、手続きをスムーズに進めることができなかったことにも言及している。 []

韓国の産業通商資源部(MOTIE)は、2019年5月29日のプレスリリースにおいて、「使用済燃料管理政策再検討委員会」(以下「再検討委員会」という)を設置し、使用済燃料の管理政策の見直しに本格的に着手したことを公表した。今後、再検討委員会は、2016年に策定された「高レベル放射性廃棄物管理基本計画」(以下「基本計画」という)について、文在寅(ムン・ジェイン)大統領の漸進的な脱原子力政策に沿った場合の使用済燃料の発生量予測の変化などを踏まえて、使用済燃料の管理政策の枠組みに関する検討を行い、勧告書をMOTIEに提出する予定である。再検討委員会は当面の作業として、原子力発電所の立地地域住民を対象に使用済燃料の管理政策に対する意見を収集する。

2016年にMOTIEが前政権の下で策定した基本計画では、高レベル放射性廃棄物の管理の方針として、①最終処分施設の許認可取得を目的とした地下研究所(URL)、②使用済燃料の中間貯蔵施設、③最終処分施設の3施設を1カ所のサイトにおいて段階的に建設するとし、最終処分施設サイトの選定に12年間を掛けることなどの計画を示していた。MOTIEは、基本計画に沿った法案策定を進めていたが、2017年5月の政権交代を受けて、国会審議は無期限延期となっていた。

文政権の漸進的な脱原子力政策と使用済燃料管理政策の見直し

韓国で2017年10月に閣議決定された「エネルギー転換ロードマップ」では、原子力発電について、計画中の原子炉は建設せず、既設炉も設計寿命を超えた運転を認めない方針としていた。これを受けて、産業通商資源部(MOTIE)は2018年5月に「高レベル放射性廃棄物管理政策再検討準備団」(以下「準備団」という)を発足させ、基本計画の見直しのための再検討委員会の構成案、国民意見の収集方法などについて2018年11月まで検討を行っていた。

今回設置された再検討委員会の構成についてMOTIEは、韓国社会を代表するように、人文・社会、法律・科学、コミュニケーション・紛争管理、調査・統計などの中立的な専門家15名を集めるとともに、30代から60代の男女がバランスよく構成されるよう配慮したと説明している。

MOTIEは、再検討委員会の独立性を確保するとし、再検討委員会が勧告書を取りまとめる時期について言及していない。また、MOTIEは、再検討委員会が今後提出する勧告書を最大限尊重し、使用済燃料の管理政策を推進する考えを表明している。

表 使用済燃料管理政策再検討委員会委員
氏名 所属 専門分野
チェヒョンソン 明知大学 行政学科 教授

人文・社会

イヒョクウ 培材大学 行政学科 教授
キムジョンイン 水原大学 法・行政学部 教授
ユウォンソク 弁護士

法律・科学

シンヨンジェ 弁護士
キムスヨン KAIST 科学技術政策大学院 院長
チャンボヒェ 弁護士
キムミン 忠北大学 化学科 教授
チョンチョンファ 江原大学 公共行政学科 教授

コミュニケーション・紛争管理

イユンソク ソウル市立大学 都市社会学会 教授
キムドンヨン KDI国際政策大学院 教授
ユギョンハン 全北大学 新聞放送学科 教授
チョンジュジン 平和紛争研究所 所長
パクインギュ 高麗大学 統計学科 教授

調査・統計

キムソクホ ソウル大学 社会学科 教授

【出典】

 

【2019年11月18日追記】

韓国の産業通商資源部(MOTIE)が設置した「使用済燃料管理政策再検討委員会」(以下「再検討委員会」という)は、2019年11月12日付けのプレスリリースにおいて、使用済燃料管理政策の再検討に関する意見の収集に向け、専門家検討グループを発足させたことを公表した。専門家検討グループは今後、再検討委員会が国民と原子力発電所の立地地域住民を対象に使用済燃料の管理政策に対する意見を収集する際、提示する専門的資料を作成するほか、再検討委員会が政府に提出する勧告書の作成にも参加する。専門家検討グループは、19名の技術グループと15名の政策グループの2つのサブグループで構成されており、原子力発電所の立地自治体、原子力業界及び再検討委員会からの推薦によってメンバーが選定された。

技術グループ及び政策グループは、それぞれ以下の課題について検討を行う。

  • 技術グループ:①使用済燃料の発生量と貯蔵施設の飽和時期の見通し、②使用済燃料管理の技術水準、③最終処分・中間貯蔵・一時貯蔵に関する課題
  • 政策グループ:④使用済燃料管理の原則、⑤使用済燃料政策の決定プロセス、⑥使用済燃料管理施設のサイト選定手順、⑦使用済燃料管理施設の地域支援の原則と方法

再検討委員会のプレスリリースによると、2019年11月8日に専門家検討グループの準備会合が開催され、上記の2つのサブグループの役割や今後の検討スケジュールについて確認が行われた。なお、専門家検討グループのメンバーの氏名や所属、今後の具体的な検討スケジュールは現時点で公表されていない。

【出典】

 

【2020年3月31日追記】

韓国の産業通商資源部(MOTIE)が設置した「使用済燃料管理政策再検討委員会」(以下「再検討委員会」という)は、2020年3月18日に、専門家検討グループによる検討結果に関する報告書を公表した。専門家検討グループは、技術グループと政策グループの2つのサブグループで構成されており、2019年11月の発足から約3カ月間で合計14回の会合が開催されて議論を行った。

専門家検討グループの議論における合意事項と合意に至らなかった事項

専門家検討グループは、使用済燃料の安全かつ国民の合意が得られる管理政策の策定に向け、国内原子力発電所における使用済燃料の発生状況と貯蔵容量が飽和する時期、国内外の使用済燃料の管理政策と管理状況、技術に関する状況などを検討し、以下の通り、9の合意事項と12の合意に至らなかった事項を整理した。

  • 専門家検討グループで合意に至った事項
  1. 使用済燃料の特性や貯蔵施設の飽和等を考慮し、国民の安全と環境の保護のために最終処分が必要であること
  2. 最終処分には回収可能性の概念を反映させること
  3. 現時点における最終処分方式として、相対的に最も適している地層処分方式の適用を検証する研究や技術開発を推進し、超深孔処分などの他の処分方式の研究も並行して実施する必要があること
  4. 使用済燃料の発生量と貯蔵容量の飽和時期算定の前提条件として、第8次電力需給基本計画を基に算出することは合理的であること
  5. 最終処分まで使用済燃料を安全に管理するためには、中間貯蔵施設が必要であること
  6. 2016年7月に策定された「高レベル放射性廃棄物管理基本計画」(以下「基本計画」という)において、使用済燃料管理の原則の一つとして「原子力発電の持続可能な発展」が打ち立てられているが、現政権による「漸進的な脱原子力政策」に基づき、放射性廃棄物の管理は原子力発電の推進と分離する必要があるため、「原子力発電の持続可能な発展」という事項の削除が望まれること。一方、使用済燃料管理の原則には、「意思決定プロセスの可逆性」と「処分施設運営過程での回収可能性」を追加すること
  7. 使用済燃料の管理政策は、国民の合意が重要であることから、政策決定過程で国民や住民参加を制度的に反映させる必要があり、意思決定プロセスに直接参加するためのシステムを用意すること
  8. 使用済燃料管理施設のサイト選定のために、独立した機関である「サイト選定委員会」の設置が必要であること
  9. 使用済燃料管理施設の誘致地域への支援原則として、「個人より地域社会とコミュニティを対象に支援」、「現在の世代だけでなく、将来世代も恩恵を受けられるような長期・段階的支援」、「地域対立解消のため、サイト選定過程に参加した全地域への適切な支援」を考慮する必要があること
  • 専門家検討グループで合意に至らなかった事項
  1. 使用済燃料の発生量の推定における、第8次電力需給基本計画上の原子力発電利用率の適用の妥当性
  2. 使用済燃料管理の技術開発と政策決定を連動して推進すべきか否か
  3. 最終処分方式である地層処分技術の安全性が立証済みか否か
  4. 韓国で考えられる地層処分システムの安全評価、地質調査結果に基づく、現時点での地層処分の実現可能性
  5. 基本計画(2016年7月)では、最終処分施設のサイトの選定期間を12年と設定しているが、その期間の長さの妥当性
  6. 中間貯蔵施設と最終処分施設とを同一のサイトに建設することの是非
  7. 中間貯蔵施設を一箇所に集中すべきか、または複数箇所へ分散すべきか
  8. 2016年以前に建設された軽水炉に付属している使用済燃料プールにおいて、貯蔵ラックを稠密化することの安全性
  9. 発電所敷地内に使用済燃料プールや乾式貯蔵施設等の貯蔵施設を増設する場合における全国公論化の必要性
  10. 基本計画(2016年7月)に示された使用済燃料管理原則のうち、「高レベル廃棄物管理の効率性向上」の項目における「使用済燃料の発生の最小化」との文言の追加の必要性
  11. 使用済燃料政策を決定する制度に関する改善の必要性
  12. 使用済燃料管理施設のサイト選定段階での住民の同意による受容性と科学的・技術的評価による安全性の確保に関して、どちらを優先的な考慮事項とするか

報告書に関する公開討論会

再検討委員会は、専門家検討グループによる報告書の内容に基づいて、2020年3月25日に公開討論会を開催した。公開討論会では、技術グループ、政策グループにおける検討結果を再検討委員会の委員2名から説明し、その後、パネルディスカッションが行われた。パネルディスカッションでは、専門家検討グループ2名、科学技術系1名、人文社会系1名、市民社会系1名の5名で技術グループ、政策グループの検討結果がそれぞれ議論された。なお、今回の公開討論会は、新型コロナウイルス感染症対策のため、オンラインにて行われ、再検討委員会の委員や専門家の議論への意見をオンラインで収集し、これに対して委員や専門家が回答を行う形式とされた。

今後、2020年3月18日に公開された専門家検討グループによる報告書や公開討論会で提示された意見は、全国の原子力発電所立地地域での意見収集の際に、参考資料として活用される。

【出典】

 

【2020年5月27日追記】

韓国の産業通商資源部(MOTIE)が設置した「使用済燃料管理政策再検討委員会」(以下「再検討委員会」という)は、2020年5月25日のプレスリリースにおいて、使用済燃料管理の中長期政策に関する国民の意見収集のため、全国民から選出された549名で構成される市民参加団を組織し、2020年5月23日にオリエンテーション会合を開催したことを公表した。オリエンテーション会合は、韓国中部のテジョン市のメイン会場と全国14カ所のサテライト会場を結んだウェブ会議形式で行われた。

再検討委員会は、使用済燃料管理政策の見直しに向けた国民意見の調査・収集を迅速に行うため、議論を実施するための市民参加団の設置計画を2020年4月14日に明らかにしていた。市民参加団員の選出は、入札公募と提案評価を経てMOTIEより委託された調査会社であるHankook Research社が行った。同社は2020年4月17日より同年5月22日までの約1カ月の間に、全国民から無作為抽出した2万人に対して、電話で市民参加団への参加意思を確認した。その後、参加意思を表明した者を対象に、性別、年齢、地域などの統計学的特性を反映するように無作為抽出する方法で549名を市民参加団員として選出した。

使用済燃料管理の中長期政策を議論する市民参加団は、今後約4週間にわたり動画資料を活用したオンライン学習を行う。その後、総合討論会を2回開催する予定である。なお、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)対応のため、総合討論会は全国の複数箇所に設置される会場でのビデオ会議や、分科会ごとで異なる会場の利用などが予定されている。市民参加団が議論するテーマとしては、以下の5点がある。

  • 処分と中間貯蔵
  • 使用済燃料管理の原則
  • 使用済燃料政策の決定のためのシステム(意思決定構造と手続き)
  • 管理施設のサイト選定手続き1
  • 管理施設の地域支援の原則及び方法

再検討委員会は、市民参加団に参加していない国民の意見も収集できるようにするため、オンライン公開討論会の実施も計画している。

なお、再検討委員会の2020年4月14日付けプレスリリースでは、使用済燃料管理の中長期政策に関する市民参加団とは別に、原子力発電所内における使用済燃料の一時貯蔵に関する市民参加団について、原子力発電所の立地地域住民から参加者を募集して組織する予定であることも併せて公表している。

【出典】

 

【2020年11月6日追記】

韓国の産業通商資源部(MOTIE)が設置した「使用済燃料管理政策再検討委員会」(以下「再検討委員会」という)は、使用済燃料管理政策の見直しに向けた国民意見の調査・収集を迅速に行うため、「使用済燃料管理の中長期政策を議論する市民参加団」(以下「市民参加団」という)を設置していたが、2020年10月30日に、市民参加団から意見収集を行った結果を公表した。

市民参加団は、全国から性別、年齢、地域などの統計的特性を反映するように選定された549名で構成されている。市民参加団のメンバーは、2020年5月23日に開催されたオリエンテーション会合の後、7週間にわたって学習を行うとともに、2020年7月には3日間にわたる第1次総合討論会で議論を行った。引き続き3週間の学習を行って、2020年8月に2日間にわたる第2次総合討論会で議論を行った。再検討委員会は、市民参加団を通じた意見収集について、以下のように結果を整理している。

  • 使用済燃料の管理シナリオとして集中中間貯蔵を行うべきか、または、最終処分を行うべきかについて議論が行われた。市民参加団の63.6%が「集中型の中間貯蔵と最終処分の組み合わせ」を支持しており、学習を通じてこの割合が増加している。
  • 使用済燃料の中長期管理方針の決定のための政策決定システムに関して、必要な改善策について議論を行った結果、市民参加団の91.9%が「原子力振興委員会とは別に使用済燃料管理委員会(仮称)を新設すべき」という意見に賛成している。
  • 最終処分施設や中間貯蔵施設のサイト選定をどのように進めるべきか議論を行った結果、市民参加団の80.1%が「適性を科学的に評価した後、地域住民の過半数が同意すればサイトとして選定する」という意見に賛成している。

再検討委員会は、市民参加団のオンライン形式の学習・総合討論の期間を通じて、4回にわたって原子力に関する知識を問うアンケート調査を行ってきたが、回を追って市民参加団の正答率が向上してきたことから、学習期間の設定が総合討論会における熟議の向上に役立ったとの認識を示している。今後、再検討委員会は、市民参加団からの意見収集の結果等を検討した上で、政策勧告案を策定するとしている。

【出典】


  1. 「管理施設のサイト選定手続き」については、特定のサイトを選定することではなく、サイト選定の方法を決定することが議題とされている。 []

韓国産業通商資源部(Ministry of Trade, Industry and Energy, MOTIE)は、2016年5月26日のプレスリリースにおいて、「高レベル放射性廃棄物管理基本計画(案)」(以下「基本計画案」という)を公表し、パブリックコメントの募集を開始した。この基本計画案は、2015年6月末に使用済燃料公論化委員会(以下「公論化委員会」という)からMOTIE長官に提出された「使用済燃料の管理に関する勧告」 を踏まえて策定されたものである。MOTIEは、基本計画案を2016年6月17日までパブリックコメントに付した後、2016年6月中旬頃には公聴会等を通じて国民の意見聴取を行い、2016年7月頃、国務総理主宰の原子力振興委員会での審議を経て確定させる予定である。

韓国では、1978年に商業用の原子力発電所が運転を開始し、2015年12月時点で24基の原子炉が運転中である。このうち20基が加圧水型軽水炉(PWR)、4基がカナダ型重水炉(CANDU炉)である。原子力発電所で発生した使用済燃料は、原子力発電所内の使用済燃料プール及び乾式貯蔵施設に貯蔵されており、貯蔵量は2014年3月時点で約1.3万トン(ウラン換算)となっている。

■ 高レベル放射性廃棄物料管理に関する政策の方向性

MOTIEは基本計画案において、高レベル放射性廃棄物の管理について、国民の安全の最優先や現世代による管理責任の負担、廃棄物発生者による管理費用の負担等の原則を示した上で、政策の方向性として下記の事項を示している。

○ 許認可用の地下研究所(URL)、中間貯蔵施設、最終処分施設を1カ所のサイトにおいて段階的に確保する方向で推進する。

  • 科学的サイト調査と民主的方式によるサイト選定(約12年間)を行う。
  • サイト確保後、中間貯蔵施設の建設(約7年間)と許認可用の地下研究所の建設・実証研究(約14年間)を同時に推進する。
  • 許認可用の地下研究所における実証研究後、最終処分施設を建設(約10年間)する。
  • 中間貯蔵施設の操業までは、原子力発電所サイト内で使用済燃料を管理することは不可避である。

○国際協力により、国際共同貯蔵・処分施設の確保にも併行して取り組む。

○ 安全性と経済性の両方の達成を目指す重要な管理技術を適時に確保する。

○ 管理施設の操業に関する情報は常に公開し、地域住民との持続的にコミュニケーションを行う。

使用済燃料の処分施設等に関する所要期間の見込み(基本計画案より作表)

基本計画(案)

※注: 使用済燃料公論化委員会は、最終的な勧告「使用済燃料の管理に関する勧告」(2015年6月29日)において、2051年までに処分施設を建設し、操業を開始するよう勧告していたが、今回MOTIEが公開した基本計画案では、各工程の所要期間の見込みを示しているが、処分場の操業開始年は明示していない。

 

基本計画案では、この他に、処分方式としては、操業中の回収可能性を考慮した地層処分方式を優先して考慮するものの、超深孔処分等の代替研究も国際共同研究として推進すること、使用済燃料の管理・処分費用として約53.3兆ウォン(約4.9兆円)を見込むこと、基本計画の実施のための法令や諮問機関の整備を推進すること等が述べられている。

また、国際共同貯蔵・処分については、経済性と将来の不確実性を勘案して、国内でのサイト選定と並行して推進することとしている。その上で、国際共同貯蔵・処分施設の実現に積極的に対応できるよう、2017年より経済性、安全性、回収可能性等に対する分析と法的検討を推進するとともに、国内での管理施設のサイト選定の進捗度と海外動向を勘案し、推進の要否を決定するとしている。

■ 使用済燃料管理サイトの選定について

使用済燃料の中間貯蔵施設と処分施設の両方を立地するサイトの選定については、地質調査等によるサイトの適合性評価のための科学的な妥当性確保と、地域住民の意思を確認する手順の順守、サイト選定等に対する客観的で透明性の高い手続きと方式を規定する法制度を整備するとしている。MOTIEはサイト選定手続きを以下のステップで進めるとしており、(1)~(4)に8年間、(5)に4年間で、全体で12年間の所要期間を見込んでいる。

(1)不適合な地域の除外
(2)サイトの公募
(3)基本調査
(4)住民の意思の確認
(5)詳細調査

地下研究所については、処分施設と同一サイトにおける、処分施設の許認可申請データの取得のための地下研究所の建設に先立ち、別途、研究用の地下研究所(Generic URL)を建設し、処分施設のサイト選定、設計、建設、操業等のために処分システムの研究を行うとしている。研究用の地下研究所の確保と操業には約10年間、その後の許認可用の地下研究所の建設・操業には約14年間の所要期間を見込むことが示されている。また、許認可用の地下研究所での実証研究を10年間以上実施した後、処分施設へと拡大するとしている。

 

【出典】

【2016年8月25日追記】

韓国産業通商資源部(MOTIE)は、「高レベル放射性廃棄物管理基本計画」(以下「基本計画」という)の原子力振興委員会1 による審議・承認を受け、「高レベル放射性廃棄物管理手続きに関する法律」の法案を策定した。本法案は、2016年8月11日から9月19日までの間にパブリックコメントに付された後、国会審議等を経て、2016年内の制定が見込まれている。
「高レベル放射性廃棄物管理手続きに関する法律」は、高レベル放射性廃棄物管理委員会の設置、サイト選定手続き等を定めるものであり、基本計画に盛り込まれた政策を実施することを目的としたものである。法案の骨子は以下のとおりである。

第1章:総則
第2章:高レベル放射性廃棄物管理委員会
    委員会の設置、構成・運営等を規定
第3章:サイト適合性調査手続き
    適合性調査計画の策定、基本調査及び精密調査、サイト予定地の確定、
    誘致地域支援委員会の設置、構成・運営等を規定
第4章:管理施設の建設・操業
    管理施設の建設計画、操業時の管理基準等を規定
第5章:附則
第6章:罰則

なお、基本計画は、2016年7月25日の第6回原子力振興委員会において、審議・承認された。基本計画の承認に関する国務調整室(OPC)、韓国産業通商資源部(MOTIE)、韓国未来科学創造部(MSIP)による、2016年7月25日付の共同プレスリリースでは、「高レベル放射性廃棄物管理手続きに関する法律」の立法過程における地域説明会等を通じ、ステークホルダーとの継続的なコミュニケーションを図り、基本計画の5年毎の見直しに反映するとしている。

 

【出典】

 

【2018年5月15日追記】

韓国政府は、朴槿恵(パク・クネ)前政権当時の第6回原子力振興委員会(2016年7月25日開催)において審議・承認された「高レベル放射性廃棄物管理基本計画」(以下「基本計画」という)の見直しに着手した。

韓国産業通商資源部(Ministry of Trade, Industry and Energy, MOTIE)は2018年5月11日、「高レベル放射性廃棄物管理政策再検討準備団」(以下「準備団」という)を発足させ、基本計画の再検討のための委員会(以下「再検討委員会」という)の設置に向けた準備作業を開始することを発表した。

準備団のメンバーは、政府、環境団体、原子力業界、原子力発電施設立地地域それぞれの推薦による15名から構成され、合意形成分野の専門家や立地自治体の環境監視機関の代表者なども含まれる。準備団は今後、基本計画の再検討の目標、再検討委員会の構成案、再検討すべき議題の特定、国民の意見の収集方法について検討し、2018年8月頃、MOTIEに対して政策建議書を提出する予定である。

【出典】

 

【2018年9月14日追記】

韓国産業通商資源部(MOTIE)は、「高レベル放射性廃棄物管理基本計画」(以下「基本計画」という)の見直しのために2018年5月11日に発足させた「高レベル放射性廃棄物管理政策再検討準備団」(以下「準備団」という)について、活動期間を2カ月延長することを発表した。準備団は、発足以降の約4カ月の活動の結果、基本計画の再検討のための委員会(以下「再検討委員会」という)の円滑な運営につなげるためには、さらに議論を深める必要があるとして、活動を2018年11月12日まで延長することを議決した。準備団は、当初は2018年8月頃としていた政策建議書の提出について、2018年11月末までにMOTIEへ提出するよう予定を変更した。

MOTIEは、準備団から提出される政策建議書を最大限尊重して再検討委員会の構成や運営方法を決定し、2018年内にはこれを公表する計画である。

【出典】


  1. 原子力振興委員会は、原子力振興法に基づいて設置される非常設の委員会であり、国務総理が主宰し、原子力の利用に関する重要事項を審議・議決するための政府の意思決定機関である。 []

韓国の中・低レベル放射性廃棄物処分場である「月城(ウォルソン)原子力環境管理センター」の第1段階施設(地下空洞処分施設、処分量10万本)の竣工式が2015年8月28日に行われ、一般市民を含む1,000名以上が参加した1 。竣工式では、来賓による地下空洞処分施設の視察や、本事業の功労者44名の表彰が行われた。なお、本施設では2015年7月13日より廃棄物の処分を開始している

韓国では、中・低レベル放射性廃棄物処分場と使用済燃料の中間貯蔵施設を同一サイトに立地するとした当初の放射性廃棄物管理政策が見直され、2004年12月に、2つの施設の建設を分離して推進する政策が策定された。その後、地域振興策を含めたサイト選定に関する法制度が整備され、中・低レベル放射性廃棄物処分場の誘致に応じた4自治体の中から、住民投票で最も賛成率が高かった慶州市が、2005年11月に中・低レベル放射性廃棄物処分場のサイトとして決定された。第1段階施設の竣工までの経緯は以下に示すとおりである。当初は2010年6月の竣工(工期53か月)を予定していたが、2009年、2012年にそれぞれ竣工予定を延長し、総工期は最終的には90か月に及んでいる。総工費は1兆5,436億ウォンである。

なお、第2段階処分施設(浅地中処分、処分量12万5千本)の建設事業は2019年までの竣工を予定している。

月城原子力環境管理センター第1段階施設の竣工までの経緯
2007年7月 電源開発事業実施計画公示
2008年7月 中・低レベル放射性廃棄物処分施設建設・操業許可発給
2008年8月 工事着工
2009年6月 竣工予定を2010年6月から2012年12月に変更
2010年1月 処分事業主体が韓国水力原子力株式会社(KHNP)から韓国放射性廃棄物管理公団(KRMC)(現 韓国原子力環境公団(KORAD))に移管
2012年1月 竣工予定を2012年12月から2014年6月に再変更
2014年6月 施工完了
2014年12月 使用前検査承認
2015年7月 廃棄物処分を開始(2015年7月13日、ドラム缶16本を処分)

また、韓国政府は月城原子力環境管理センターの立地にあたり、一般支援事業として2007年から2035年までの間、55事業、総額3兆2,253億ウォンの支援を、さらに特別支援事業として3事業の実施および特別支援金3,000億ウォンの支給を約束している。支援事業はおおむね計画通りに推移しているが、遅れが生じている一部の大型事業6件については、「中低レベル放射性廃棄物処分場の誘致に関する特別法」により設置された誘致地域支援委員会に正常化計画を2015年末までに上程し、改善策を講じていくとしている。

一般支援事業の進捗状況(2015年8月時点)
総事業件数および総予算 完了済件数及び執行済予算 進行中件数及び状況

55件
3兆2,253億ウォン

28件
1兆7,165億ウォン

27件
うち6件の大型事業については2015年中に正常化計画を上程予定

特別支援事業の進捗状況(2014年末時点)
項目 状況

韓国水力原子力株式会社(KHNP)の本社移転

2015年末までに完了予定

特別支援金(3,000億ウォン)

2006年5月執行済

陽子加速器事業

総事業費3,143億ウォン(国庫1,836億ウォン、地方費1,067億ウォン、民間125億ウォン)のうち、国庫・民間支援分を執行済

放射性廃棄物搬入手数料

年間約46億ウォン(ドラム缶1本あたり637,500ウォン)

継続事業

 

【出典】

 

【2016年7月29日追記】

韓国原子力環境公団(KORAD)は2016年7月26日、中・低レベル放射性廃棄物処分場である「月城(ウォルソン)原子力環境管理センター」の第2段階施設(浅地中処分)の建設に関して、産業通商資源部(MOTIE)から電源開発事業実施計画の承認を受けたことを公表した2

電源開発事業実施計画の承認により、処分施設の建設に必要な手続きのうち、国土開発事業、道路工事、農地転用等の関連法令に関する手続きが完了し、KORADは公共施設(道路、電気、水道施設等)の設置や処分施設建設予定地の整地工事などの基盤整備工事に着手する。なお、今後、KORADが第2段階処分施設自体を建設するには、別途、原子力安全委員会(NSSC)から原子力安全法に基づく建設許可を取得する必要がある。

【出典】
• 韓国原子力環境公団 2016年7月26日付プレスリリース、
https://www.korad.or.kr/krmc2011/user/community/report/report_main.jsp?mode=read&idx=250&rnumValue=248

• 電源開発促進法


  1. 韓国政府からは国務総理、産業通商資源部第二次官が、立地自治体からは慶尚北道(キョンサンプクド)知事、慶州(キョンジュ)市長が、また、電気事業者からは韓国水力原子力株式会社(KHNP)社長が参列している []
  2. 電源開発事業実施計画の承認手続きは、電源開発促進法に定められた原子力施設の建設に必要な手続きのひとつである。同法第3条等の規定により、放射性廃棄物管理事業者である韓国原子力環境公団(KORAD)が建設する放射性廃棄物処分施設は電源設備の付帯施設と位置づけられており、同法の適用を受ける []

韓国産業通商資源部(Ministry of Trade, Industry and Energy, MOTIE)が設置した使用済燃料公論化委員会(以下「公論化委員会」という)は、2015年6月11日のプレスリリースにおいて、「使用済燃料管理勧告(案)」(以下「勧告案」という)を公表した。今回の勧告案は今後、国会での議論を反映させたのち、MOTIE長官に提出する予定としている。

韓国では、中低レベル放射性廃棄物処分場と使用済燃料の中間貯蔵施設を同一サイトに立地する放射性廃棄物管理政策を見直し、これらを分離して推進することとしており 、現在、使用済燃料の管理方策を検討する段階にある。公論化委員会は、使用済燃料の管理方策に対する様々なステークホルダー、一般市民、専門家などからの意見を取りまとめるため、放射性廃棄物管理法 に基づいて2013年11月に設置された政府から独立した民間諮問機関であり、人文社会・技術工学分野の専門家、原子力発電所立地地域の代表、市民社会団体の代表からなる15名により構成されている。

公論化委員会が2013年に策定した公論化実行計画 によれば、国民を使用済燃料から安全に保護する方策のすべてが議論の対象となりうるとしつつも、処分場サイト選定や地域振興など、使用済燃料の管理方策の決定後に議論すべき事項については基本的な原則程度の議論にとどめ、処分前の貯蔵など中・短期的な現実的解決手段について集中的に議論するとしていた。今回の勧告案は、これらの事項について、討論会、円卓会議、タウンミーティング、アンケート、インターネット等の方法を用いて、専門家、市民・環境団体、原子力発電所立地地域住民、一般国民から聴取した意見に加え、「使用済燃料管理方策の課題導出のための専門家検討グループ」による意見書 に基づいて進められた議論を取りまとめたものである。

「使用済燃料管理勧告(案)」において公論化委員会が提言した使用済燃料管理フロー

図1「使用済燃料管理勧告(案)」において公論化委員会が提言した使用済燃料管理フロー

今回の勧告案において公論化委員会は、韓国における使用済燃料管理方策に関する10項目の勧告を行っている。公論化委員会は、使用済燃料の処分施設の操業開始を2051年とすることを勧告しており、その実現に向けて、2020年までに処分施設のサイト、または処分施設のサイトと類似条件の地域を地下研究施設(URL)のサイトとして選定し、2030年には地下研究施設の操業・実証研究を開始(図1)するのが望ましいとしている。また、公論化委員会は、2020年から地下研究施設のサイトで「処分前貯蔵施設」の建設を開始し、現在は各原子力発電所で貯蔵されている使用済燃料を一カ所に集中して貯蔵可能にすることを勧告している。

今回の勧告案には、今後の使用済燃料管理方策の策定・実施に関するロードマップも含まれており、2015年中に韓国政府が「放射性廃棄物管理基本計画」を策定し、関係法令を整備した上で、2016年には政府、民間事業者、国民が共同で出資する「使用済燃料技術・管理公社(仮称)」を設立することが提案されている。

公論化委員会の勧告案に示された10か条の勧告は以下のとおりである。

  1. 使用済燃料の管理方策の最優先原則は国民の安全である。
  2. 現在、各原子力発電所のサイト内の臨時貯蔵施設に貯蔵されている使用済燃料は、貯蔵容量が上限を超えたり、操業許可期間が満了したりするよりも以前に、安定的な貯蔵施設を整備し、移転させることを原則とする。
  3. 政府は2051年までに処分施設を建設し、操業を開始すること。そのために、処分施設サイトまたは処分施設サイトと類似のサイト条件を持つ地域において、地下研究所(URL)用サイトを2020年までに選定して建設に着手し、2030年より実証研究を開始することが望ましい。
  4. 使用済燃料処分施設および地下研究施設が立地する地域に、地域住民のハザード監視のための住民参加型「環境監視センター(仮称)」を設置する。立地地域には、関連研究機関の設置による雇用創出と地域経済の活性化、使用済燃料処分手数料の自治体への納付、および地域都市開発計画策定を支援し、開発初期費用を特別支援金により負担するなどの支援を行うこと。
  5. 処分施設の操業までの間、地下研究施設サイトには処分前貯蔵施設を建設して処分前の使用済燃料を貯蔵可能とすること。ただし、やむを得ない場合には各原子力発電所サイト内に短期貯蔵施設を設置し、処分までの間は貯蔵することも許容する(図1参照)。また、国際共同管理施設の立ち上げのためには緊密な国際協力も必要である。
  6. 各原子力発電所サイト内に短期貯蔵施設を設置する場合には、地域に「使用済燃料貯蔵費用」を支払うこと。透明性が高く、効果的な資金の積み立てのため、住民財団(仮称)を設立・運営する。現在すでにサイト内に貯蔵されている使用済燃料についても、合理的な費用の支払いについて政府・立地自治体間で具体的な協議を行うこと。
  7. 使用済燃料貯蔵、輸送、処分、有害性の低減、減容のための技術開発の優先順位を定め、段階的な細部計画を策定して研究を進めること。このためには規制機関による規制基準策定が急がれる。技術開発を主導する仕組みとしての技術開発統合システムも必要である。
  8. 使用済燃料管理の安全性に加え、責任、安定性、効率性、透明性が担保されることが望ましい。このため、政府、民間事業者、国民が共同で出資する「使用済燃料技術・管理公社(仮称)」を設立することが適切である。
  9. 使用済燃料管理の透明性、安定性、持続可能性を担保し、政策の信頼性を確保するため、「使用済燃料特別法(仮称)」を速やかに制定し、必要に応じ現行関連法を改正すること。
  10. 使用済燃料管理政策を速やかに策定・実行するため、省庁横断的意思決定機関である「使用済燃料政策企画会議(仮称)」および実務推進機関である「使用済燃料政策企画団(仮称)」を政府組織内に設置・運営すること。

 

【出典】

使用済燃料公論化員会 2015年6月11日付プレスリリース、
https://www.pecos.go.kr/activity/news.asp?idx=2387&state=view&menu=10

【2015年7月3日追記】

使用済燃料公論化委員会(以下「公論化委員会」という)は、2015年6月11日に公表した「使用済燃料管理勧告(案)」について、2015年6月16日に国会討論会を開催し、その結果を受けて最終案を取りまとめ、2015年6月29日に最終的な勧告「使用済燃料の管理に関する勧告」(以下「最終勧告」という)として産業通商資源部(MOTIE)長官に提出した。

最終勧告では、当初の勧告案(第10条)において政府組織内での設置が規定されていた2つの機関名が改められた。具体的には、省庁横断的意思決定機関の名称が「使用済燃料政策企画会議(仮称)」から「使用済燃料管理長官会議(仮称)」へ、実務推進機関の名称が「使用済燃料政策企画団(仮称)」から「使用済燃料管理対策推進団(仮称)」へとそれぞれ改められた。

公論化委員会は最終勧告において、「政府は使用済燃料管理政策を策定、推進する過程において、必要な情報を正確かつ迅速に提供し、健全なコミュニケーションを継続し、国民及び立地地域住民が関連政策について理解し、合理的に判断できる環境を整えなくてはならない」としている。また、政府が実質的な努力を速やかに進め、政策の推進に必要な信頼を確保することが重要だと強調している。

公論化委員会は、最終勧告の提出をもって20か月にわたる活動を終え、解散する。

【出典】

韓国産業通商資源部(Ministry of Trade, Industry and Energy, MOTIE)が設置した使用済燃料公論化委員会(以下「公論化委員会」という)は、2014年8月11日のプレスリリースにおいて、使用済燃料管理方策の課題導出のための専門家検討グループ(以下「専門家検討グループ」という)から「使用済燃料管理方策に関する課題及び検討意見書」(以下「検討意見書」という)を受領したことを公表した。今後、公論化委員会は、検討意見書に基づいて、使用済燃料管理方策に関する具体的かつ詳細な議論を行う予定である。

専門家検討グループは、使用済燃料管理方策の課題を導出するために公論化委員会が設置した諮問会議であり、地質学、材料学、原子力、経済、社会、法律などの関連分野の15人の専門家で構成されている。今回作成された検討意見書は、このグループが、2014年2月から7月まで行った議論の成果を取りまとめたものである。

検討意見書では、使用済燃料は特別な管理を実施する必要性があることを前提に、現状及び当面の課題、並びに中・長期の管理方法を統合的に検討した上で、現時点で解決すべき課題とこれに対する検討の方向性を示す次の5つの事項を提言している。

1.法律上の用語の再整備

現在の法律で使われている用語の一部には、未定義もしくは適切な定義がされていないため、不必要な誤解と障害を引き起こしていると推測される。これらの用語の定義は、科学技術的基準(放射線量、発熱量、被ばく線量等)に基づいて明確にする必要がある。

  •  例:「一時貯蔵」及び「中間貯蔵」: 「一時」及び「中間」には特に期間は設定されていない。しかし、これらの用語を使って中・長期の管理方法が表現されている。

2.専門家の議論への参加を制度化

使用済燃料を含めた放射性廃棄物の管理方法を準備していく過程で、原子力分野はもとより、岩盤工学、地質学、コンクリート/材料学などのさまざまな分野の専門家が参加し、使用済燃料の貯蔵施設及び貯蔵プール/貯蔵容器の設計(臨界、遮へい、熱、構造などの要素を考慮)、管理などのための徹底的な議論を常時実施することを支援するシステムが必要である。

3.管理方法検討及び処分施設確保作業の継続

すべての中・長期管理方法(永久処分、リサイクル/再処理、長期中間貯蔵)を同時に検討する必要がある。また、許可された乾式貯蔵容器の確保と使用済燃料の貯蔵と処分施設の確保のための努力を同時に推進する必要がある。具体的には以下の事項を実施する必要がある。

  •  乾式貯蔵容器の材料、設計、製作に関する技術開発及び許認可関連基準の設定
  •  永久処分のための関連技術開発及び地質調査の実施

4.放射性廃棄物管理スケジュールの整合性の確保

2016年には既存の使用済燃料貯蔵施設は満杯となる見通しである。中・長期管理方策と整合させつつ直近の貯蔵容量確保を図る対応策も検討する必要がある。

5.複数の使用済燃料管理方法の検討

月城(ウォルソン)原子力発電所の重水炉1 4基から発生する使用済燃料は、他の原子力発電所で導入された軽水炉19基から発生する使用済燃料とは物理的特性が異なるため、工学的な観点からも別の方法で管理する必要がある。

【出典】


  1. 天然ウランを燃料として使用するカナダ型重水炉(CANDU) []

韓国産業通商資源部長官が設置した使用済燃料公論化委員会(以下「公論化委員会」という。)は、2014年1月29日に「公論化実行計画」を策定し、韓国産業通商資源部に提出した。公論化委員会は、放射性廃棄物管理法に基づいて設置された政府から独立した民間諮問機関であり、人文社会・技術工学分野の専門家、原子力発電所立地地域の代表、市民社会団体の代表により構成されている。公論化委員会では、2013年10月に設置された以降、公論化プログラムの第1段階となる実行計画の策定を進めていた。

公論化委員会は、公論化実行計画において「公論化の目的」、「議論の基本原則」、「議論のテーマ」、「議論の方法」及び「スケジュール」を定めたことを受け、第2段階として本格的な議論に着手するとしている。第2段階の初期では、懸案の導出を目的とした議論を行い、その後、多くの時間を国民の意見収集に当てる考えである。2014年10月からは第3段階となる勧告(報告書)の取りまとめ作業を開始し、2014年末に目標が設定されている政府への勧告書の提出を行う予定である。

<使用済燃料公論化のスケジュール>

公論化_スケジュール_小

 

2014年2月3日付の公論化委員会のプレスリリースでは、今回策定された「公論化実行計画」の前提となる、公論化の目的、議論の基本原則、テーマ、方法論について、以下のように説明している。

1.公論化の目的

「国民を保護し、国民が共感できる使用済燃料の管理計画を立案する」ことを公論化の最終的な目的とする。これまで使用済燃料管理の問題については、政府や韓国水力原子力発電株式会社(KHNP)、韓国原子力環境公団(KORAD)などが「どのような管理方策が最善か」という推進側中心の視点から提起していたが、公論化委員会は、国民の視点から「国民の安全」を最優先の課題として、使用済燃料の管理方策を議論するという立場から提起するとしている。公論化委員会は「国民の安全と国民の共感」に基づいた使用済燃料の管理方策を最終目標として提示し、活動の主要課題を「安全」と「共感」に置く。

 2.議論の基本原則

公論化プロセスへの参加者に対して、「責任」、「透明性」、「熟議」、「全体論指向」、「回帰」を公論化委員会の5大原則として提示する。これら公論化の基本原則は、使用済燃料公論化タスクフォース(2008年)が提示した8大原則を基に公論化委員会において再構築したものである。

<使用済燃料公論化のための議論の基本原則>

責任 世代間の公平性を考慮し、根拠のある意見を述べ、発言に伴う道徳的な責任を負う
透明性 公論化進行事項と関連資料を公開し、誰もが容易にアクセスできるようにする
熟議 参加者は同意的な公論を導出する意思を持ち、学習と討論に積極的に参加して熟考して十分に議論する
全体論指向 議論過程においては、技術的・工学的な側面と社会的・法制度的な側面を分離せず、それらを全体的に考慮する
回帰 議論の過程の途上、または意思決定後に重大な問題点が確認された場合には、原点に立ち戻って議論する

3.議論のテーマ

国民を使用済燃料から安全に保護する法案のテーマ全てが議論の対象となる。議論のテーマに対する先入観を排除し、議論の必要がある懸案を公論化プロセスで導出するという視点によるものである。議論の進行においては、使用済燃料管理政策の上位政策である国家エネルギー政策の関連事項を尊重するとともに、次の点に留意する。

  • サイト選定及び地域振興などの使用済燃料管理方策の決定後に議論すべき事項については、基本的な原則程度の議論にとどめる。
  • 使用済燃料公論化タスクフォース(2008年)、使用済燃料政策フォーラム(2011年)などで議論された内容について、可能な限り対応することを議論の原則として提示する。

 4.議論の方法

公論化における議論は、段階的な方法で進める。

議論の最初の段階では、これまでの学習と現場視察を通じて把握された使用済燃料管理の現状を基に、公論化委員会や専門家が参加した議論を通じて懸案(公論化委員会において重視すべき事項を定めたもの)を導出する。

次の段階では、公論化委員会と専門家が導出した懸案に対して、国民、専門家、利害関係者、原子力発電立地地域の住民、市民グループなどからの幅広く意見を収集する。意見の収集方法としては、各種シンポジウム、説明会、フォーラム、公論調査、現場視察、インターネットによる意見収集(懸案別、意見収集対象別)などを活用する予定である。

最終の段階では、収集した意見に関する定量的評価と定性的評価を統合して、使用済燃料管理方策を最終的に評価し、この評価結果に基づく勧告を策定する。

 <議論方法>

公論化_議論の方法_小

 

【出典】