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《韓国》使用済燃料管理政策再検討委員会が政府に対する勧告を公表

韓国で2016年に策定された「高レベル放射性廃棄物管理基本計画」(以下「基本計画」という)の見直しのために産業通商資源部(MOTIE)が設置した「使用済燃料管理政策再検討委員会」(以下「再検討委員会」という)は、2019年5月から進めてきた使用済燃料の管理政策の見直しに関する検討を踏まえ、2021年3月18日に、政府に対する勧告を公表した。再検討委員会は今後、勧告を政府に伝達した上で、活動を終了することとなっている。

再検討委員会は、文在寅(ムン・ジェイン)大統領の漸進的な脱原子力政策に沿った場合の使用済燃料の発生量予測の変化などを踏まえて、使用済燃料の最終処分と中間貯蔵、管理施設のサイト選定手続き等の課題について、専門家検討グループや市民参加団を設置するなどして検討を進めてきた。再検討委員会による政府への勧告は、以下のように8項目にわたっている。

  1. 使用済燃料の管理の原則
    • 今後の「第2次高レベル放射性廃棄物管理基本計画」(以下「第2次基本計画」という)1 の策定に当たって、「原子力発電所の持続可能な発展」という記述を残すか否かを、さらにコミュニケーションを実施した上で検討すべきである。
    • 使用済燃料管理の原則に「意思決定の可逆性」と「回収可能性」に関する原則を追加すべきである。
  2. 使用済燃料政策決定システム
    • 使用済燃料管理政策の決定過程について、具体的な国民参加の原則と手続きなどを含む制度案を策定すべきである。
    • 使用済燃料管理政策を担当する独立行政委員会の新設を優先的に考慮すべきである2
  3. 最終処分施設や中間貯蔵施設の確保
    • 新たに策定する第2次基本計画では、同一サイトに最終処分施設と中間貯蔵施設の両方を建設する政策を優先すべきである。ただし、最終処分施設のサイト確保の不確実性を理由に別のサイトに中間貯蔵施設を確保しようという意見や、リスク分散の観点から分散型の中間貯蔵施設を確保しようという意見にも配慮すべきである。
    • 地層処分技術の安全性と現時点での実現可能性や、基本計画に示されたサイト選定期間(12年間)の適切性に関しては、様々な意見があることを考慮した上で、地層処分の安全性を中心とした技術開発と、サイト選定に関連した地域の受容性の向上のため、具体的な推進策を策定すべきである。
  4. 管理施設のサイト選定の手順
    • 第2次基本計画の策定の過程において、科学技術的妥当性と国民・住民の受容性の両方を確保できるサイト選定の原則と手続きを提示すべきである。
    • 専門家検討グループが設置に合意したサイト選定委員会の構成や運営、サイト選定手続の法制化等について、具体的な方策を策定すべきである。
    • 住民の合意と科学技術的な評価等に基づいて、受容性の高いサイト選定手続きを策定すべきである。
  5. 管理施設の立地地域の支援原則と方法
    • 第2次基本計画策定の過程において、地域コミュニティを対象に支援するという原則に基づいて、住民が共感でき、地域社会全体に利益が均等に行き渡る合理的な支援策を策定すべきである。
    • 支援の原則と範囲について法制化し、これらの法令には、住民からの意見収集の方法を含めるべきである。
    • 具体的な支援対象範囲を定めるに当たっては、管理施設との距離を考慮して、専門家、住民などと積極的にコミュニケーションすべきである。
  6. 使用済燃料の一時貯蔵施設の拡充
    • 月城(ウォルソン)原子力発電所の使用済燃料の一時貯蔵施設の増設については、原子力安全委員会の許認可等の法的手続きが行われており、地域の意見収集の結果、市民参加団の81.4%が増設に賛成した3 。政府は適切な時期に、安全性を確保しつつ月城原子力発電所の使用済燃料の一時貯蔵施設を増設すべきである。
    • 政府と原子力発電事業者は、法令上公開可能な情報を最大限に公開して透明性を高めて、積極的な説明とコミュニケーション活動を展開して、原子力発電所と一時貯蔵施設の安全性に対する国民の信頼を獲得できるように努力すべきである。
    • 第2次基本計画の策定過程において、使用済燃料の一時貯蔵施設の定義と建設のための手続きに関する法的、制度的な整備案を策定すべきである。
    • 使用済燃料の一時貯蔵施設の設置に関する地域支援と補償システムを精査して、合理的な地域支援方策を策定するために努力すべきである。
    • 使用済燃料の一時貯蔵施設の拡充については、再検討委員会による月城(ウォルソン)原子力発電所の使用済燃料の一時貯蔵施設の増設に関する意見収集の経験も踏まえ、第2次基本計画の策定過程において、原子力発電所立地地域住民、市民社会、原子力産業界などの利害関係者の参加のもと、新たに議論を進めるべきである。
  7. 使用済燃料の発生量と貯蔵容量飽和の展望
    • 貯蔵容量の飽和見通しの推定に関する専門家の多様な意見を十分に検討して、重要な管理施設が段階的に適切な時期に設置できるように方策を策定すべきである。
  8. 使用済燃料の管理技術の開発
    • 第2次基本計画の策定において、地層処分をはじめとする様々な最終処分方式の安全性と妥当性の検証技術を確保できる方策と研究支援体制を早急に整備すべきである。
    • 見解が分かれた政策決定と技術開発の連動の有無等の関係もバランスよく確立し、使用済燃料の管理政策と関連技術の開発が有機的に推進されるようにすべきである。

再検討委員会は、勧告をより体系的に実行に移すには、使用済燃料管理特別法の制定が必要であり、同法には、使用済燃料の定義などの基本概念からサイト選定の手続きと誘致地域の支援などに至るまで、使用済燃料の管理政策全般を含める必要があると勧告している。また、再検討委員会のキム・ソヨン委員長は、勧告の内容の多くが立法政策事案であるため、政府と国会が協力して取り組む必要があると指摘している。

【出典】

  1. 高レベル放射性廃棄物管理基本計画は2016年7月に策定されており、今回の再検討委員会の勧告において、今後策定される改定版の高レベル放射性廃棄物管理基本計画は「第2次高レベル放射性廃棄物管理基本計画」と呼ばれている。 []
  2. 新たな委員会の設置について、勧告によると、専門家検討グループからは国務総理傘下に諮問委員会を設置する案、独立行政委員会を設置する案、原子力振興委員会傘下に専門委員会を設置する案などが出された。全国を対象とした意見収集では、独立行政委員会を設置すべきという意見が多数意見となった。 []
  3. 勧告をまとめた報告書は、月城原子力発電所の使用済燃料の一時貯蔵施設増設に関する意見収集において、対立が激化し、手続きをスムーズに進めることができなかったことにも言及している。 []

(post by eto.jiro , last modified: 2023-10-17 )