Learn from foreign experiences in HLW management

《韓国》知識経済部(MKE)と慶州市が放射性廃棄物処分場の建設に関する協力覚書を締結

韓国政府の知識経済部(MKE)1 の2010年8月5日付のプレスリリースによると、知識経済部と中低レベル放射性廃棄物処分場の立地自治体である慶州(キョンジュ)市 は、放射性廃棄物管理における政府と自治体の協力を規定した放射性廃棄物管理法に基づき、「知識経済部・慶州市間の放射性廃棄物処分場の建設に関する協力覚書」を締結した。本覚書は、処分場建設に伴う地域支援事業の推進や、今後の処分場建設を円滑に進めることなどを確認するものである。慶州市は2005年11月に住民投票を経て処分場のサイトとして決定されており、2009年1月には処分事業の実施主体として韓国放射性廃棄物管理公団(KRMC)が設立されていたが、KRMCは同年6月に、岩盤等級が当初の想定よりも低いことが判明したため、処分場の竣工が遅れることを明らかにしていた

本覚書では、主として以下の3点に関する確認事項が示されている。

  1. 特別支援事業の推進
  2. 一般支援事業のうち、優先的に取り組む事業
  3. 処分場建設を円滑に進めていく上での協力事項

(以下、100ウォン=7.5円で換算)

1.  特別支援事業の推進

4件の特別支援事業2 について、下記の点が示されている。

  • 特別支援金:総額3,000億ウォン(約225億円)が慶州市に支給されており、そのうち1,500億ウォンは放射性廃棄物の搬入時に使用可能となる3(参考:2006年5月17日既報)
  • 放射性廃棄物搬入手数料:放射性廃棄物が搬入されると、ドラム缶1本当たり637,500ウォン(約4万7,800円)が支払われる4
  • 韓国水力原子力株式会社(KHNP)本社の移転:覚書によれば、KHNP本社とともに、韓国放射性廃棄物管理公団(KRMC)の本社も、2014年までに慶州市に移転される。
  • 陽子加速器事業:422億ウォン(約31億6,500万円)の国費の追加により事業を推進する。

2.  一般支援事業のうち、優先的に取り組む事業

55件の一般支援事業(総予算約2.8兆ウォン(約2,100億円))の中から、優先的に取り組む12件の事業(下表)が選定されている。55件の一般支援事業は、「中低レベル放射性廃棄物処分場の誘致地域に関する特別法」に基づき設置された誘致地域支援委員会が選定したものである。なお、これらの事業のうち、コンベンションセンター及び多目的施設の建設と、エネルギー博物館の建設は、韓国水力原子力株式会社(KHNP)が実施するものである。

優先的に進められる一般支援事業(12件)

事業名 総事業費(億ウォン) 事業終了期限
コンベンションセンター及び多目的施設の建設 1,280 2014年
エネルギー博物館の建設 2,000 2014年
国民賃貸住宅の建設 500 2012年
地方道路929号線の迂回道路の建設 338 2012年
慶州甘浦(カンポ)港の総合開発 322 2015年
観光客休憩施設の整備 100 2012年
慶州歴史都市文化館の建設 600 2014年
市立火葬場の整備事業 144 2011年
放射性廃棄物処分場周辺地域における上水道の拡充 218 2015年
下水最終処理施設の設置 766 2012年
廃棄物焼却場の設置 350 2012年
慶州東学発祥地の整備事業 100 2014年

3.  処分場建設を円滑に進めていく上での協力事項

了解されている協力事項として、以下が示されている。

  • 知識経済部(MKE)と韓国放射性廃棄物管理公団(KRMC)による、中低レベル放射性廃棄物処分場の第1段階における建設の安全な実施のための管理
  • 放射性廃棄物の貯蔵施設への早期搬入に向けた、知識経済部と慶州市の協力(なお、同処分場における放射性廃棄物の貯蔵施設の使用許可は、2010年6月7日に慶州市より発給されている。)
  • 中低レベル放射性廃棄物処分場における第2段階(ドラム缶12万5,000本)の処分に向けた、知識経済部と慶州市の協力
  • 協力の実現のための、知識経済部の放射性廃棄物課と慶州市の国策事業団で構成される協議会の活用

参考:韓国における中低レベル放射性廃棄物処分場のサイト選定と建設の経緯

韓国では、中低レベル放射性廃棄物処分場と使用済燃料の貯蔵施設を同一のサイトに建設する方針でサイト選定が進められてきたが、中低レベル放射性廃棄物の原子力発電所サイトにおける貯蔵容量の逼迫等を背景として、2004年12月に、2つの施設の建設を分離して推進する政策が策定された(2005年1月7日既報)

その後、地域振興策を含めたサイト選定に関する法制度が整備され、中低レベル放射性廃棄物処分場の誘致に応じた4自治体の中から、住民投票で最も賛成率が高かった慶州市が、2005年11月にサイトとして決定された(2005年11月8日既報)

処分場の総処分容量は200リットルドラム缶80万本であり、現在進められている第1段階では10万本を、地下80mの岩盤に設置される垂直円筒状の空洞に処分することとされている。2006年6月の情報では、処分場の面積は約210万㎡で、総事業費は1兆1,445億ウォン(約858億3,800万円)となっている(2006年7月5日既報)

処分事業の実施主体は、韓国水力原子力株式会社(KHNP)であったが、2009年1月に施行された放射性廃棄物管理法の規定に従い、新たな実施主体として韓国放射性廃棄物管理公団(KRMC)が設立された(2009年1月22日既報)
KRMCは、放射性廃棄物の発生者による負担金等で構成される放射性廃棄物管理基金などによって運営されている。

【出典】

  • 知識経済部(MKE)、2010年8月5日付プレスリリース
  • 放射性廃棄物管理法
  • 中低レベル放射性廃棄物処分場の誘致地域に関する特別法
  • 中低レベル放射性廃棄物処分場の誘致地域に関する特別法施行令
  1. 韓国の「部」は、わが国の「省」に相当 []
  2. 「中低レベル放射性廃棄物処分場の誘致地域に関する特別法」は、4件の事業のうち、特別支援金の支給、搬入手数料の徴収、及び韓国水力原子力株式会社(KHNP)本社の移転について規定している。なお同法には、陽子加速器事業に係る規定はない。 []
  3. 「中低レベル放射性廃棄物処分場の誘致地域に関する特別法」によれば、原子力発電事業者は処分場の建設自治体に対して、特別支援金による支援を行うことができる。2006年5月に、韓国水力原子力株式会社(KHNP)は慶州市に対して、特別支援金3,000億ウォンを支給したことを公表した。3,000億ウォンのうち、1,500億ウォンは処分場建設の実施計画承認によって、既に使用可能となっている。 []
  4. 「中低レベル放射性廃棄物処分場の誘致地域に関する特別法」によれば、放射性廃棄物の管理事業者は放射性廃棄物の納入者より、放射性廃棄物の納入手数料を徴収することができる。同法は、この手数料は施行令の規定に従い処分場の建設自治体と管理事業者に割り当てるとしている。施行令は、建設自治体の地域支援に充てる手数料を、ドラム缶1本当たり637,500ウォンと規定している。 []

(post by y-nishimura , last modified: 2023-10-11 )