韓国政府は、2004年12月17日付けの韓国産業資源部(MOCIE)のプレスリリースにおいて、同日開催された第253回原子力委員会(委員長:首相)で、中低レベル放射性廃棄物処分場と使用済燃料の中間貯蔵施設を同一サイトに立地するこれまでの放射性廃棄物管理政策を見直し、これを分離して推進することを議決したことを発表した。
同プレスリリースでは、今回の原子力委員会の決定は、政府がここ18年間進めてきた放射性廃棄物管理政策の基本的な枠組みを変更した画期的な政策転換であると位置付けており、すでに国際的に安全性が立証され、管理経験の蓄積された中低レベル放射性廃棄物処分場のみを優先的に建設することで、今後の施設の誘致を行うことになる自治体の負担が大きく緩和されるものと期待すると述べられている。また、使用済燃料の中間貯蔵施設については、中低レベル放射性廃棄物処分場のサイトには建設を行わず、時間的余裕をもって十分な話し合いを経て、国民のコンセンサスを得た上で最適な解決策を模索するとしている。
また、同プレスリリースでは、韓国では中低レベル放射性廃棄物のサイト内貯蔵容量の余裕がないため、廃棄物処分場がスムーズに建設できない場合、電力供給の40%を占める原子力発電に影響が生じるおそれがあるとしている。そのため、MOCIEはサイト内貯蔵容量の飽和が予想される2008年までに中低レベル放射性廃棄物処分場を建設するように最善の努力を傾けるとしている。
さらに、MOCIEは中低レベル放射性廃棄物処分場のサイト選定に向けた新たな手続きを策定する過程で、地元住民、市民・社会団体、学会、関連のある専門家などの意見を十分に聞き、透明性のある手続きとすると同時に、住民の受容性の向上および混乱の解消に向けた多角的な方策を講じることも打ち出している。
韓国では、これまでは中低レベル放射性廃棄物処分場と使用済燃料の中間貯蔵施設を組み合わせたサイト選定を行ってきており、2004年2月に発表された新たな候補サイトの誘致公募手続き に基づき、2004年5月31日の地域による誘致請願の期限までには7市・郡10地域が請願を行った 。しかし、2004年9月15日に期限を迎えた誘致の予備申請を行った自治体は無く、政府は早々にサイト選定手続方式についての新たな案を策定し、地元住民、社会・市民団体などとの十分な話し合いを経て、国民のコンセンサスが得られるような透明性のある手続きを通じて、放射性廃棄物の管理事業を進めたいとの考えを示していた 。
なお、2003年のサイト選定によって激しい住民間の対立が生じた扶安(プアン)郡に対して、政府は住民投票の実施は事実上困難との見解を示していた 。今回、政府は同プレスリリースで、政府を挙げての迅速な混乱の解消および地域経済の活性化策などを策定していく計画であることを表明している。
【注】
韓国の地方自治体としては、広域自治体(ソウル特別市、仁川などの6つの広域市、道)とその下に基礎自治体(市(シ)、郡(グン)、特別市及び広域市の自治区(グ))があり、この基礎自治体の下部行政単位として邑(ウプ)、面(ミョン)、洞(ドン)がある。ここでの地方自治体は基礎自治体を指す。
【出典】
- 産業資源部(MOCIE)プレスリリース、2004年9月16日
- 産業資源部(MOCIE)プレスリリース、2004年7月12日
- 放射性廃棄物処分施設誘致地域支援などに関する特別法(案)
(post by 原環センター , last modified: 2023-10-10 )