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このWebサイトでは、諸外国における高レベル放射性廃棄物の最終処分や地層処分の計画の動きに注目し、 "海外情報ニュースフラッシュ"として 最新の正確な情報を迅速に提供しています。 ニュースフラッシュを発行した後も、記事トピックをフォローしています。必要に応じて、情報の"追記"を行っています。


スイスの処分実施主体である放射性廃棄物管理共同組合(NAGRA)は、2020年8月17日に、ガラス固化体をオーバーパックする施設及び使用済燃料をキャニスタに封入する施設(以下、両者を合わせて「キャニスタ封入施設」という)の立地オプションを比較する報告書を公表した。キャニスタ封入施設は、地層処分場の地上施設を構成する主要な施設の一つ1 であり、サイト選定プロセスの第3段階に残っている3つのサイト地域2 に設定されている地上施設設置区域に建設するケースをメインのオプションとしているが、高レベル放射性廃棄物の大部分が貯蔵されているヴュレンリンゲン放射性廃棄物集中中間貯蔵施設(ZZL)に建設するケースも想定されている。今回のNAGRAの報告書は、前述の2ケース以外のオプションとして、原子力発電所にキャニスタ封入施設を建設するケースなどを加えることにより、立地オプションに関する検討を充実させたものである。

検討の経緯

高レベル放射性廃棄物のキャニスタ封入施設については、地層処分場の地上施設の設置区域に設置する想定で検討が進められてきた。しかし、サイト選定プロセスの第2段階において、処分場の地上インフラ配置案を検討する過程で、チューリッヒ北東部の地域会議はNAGRAに対し、キャニスタ封入施設等をサイト地域外に設置することのメリット及びデメリットを説明して欲しいとの要望を表明していた。これを受けて連邦評議会3 は、2018年11月のサイト選定第2段階終了時にNAGRAに対し、地域会議の要望を考慮した上で、キャニスタ封入施設等をサイト地域外に設置する可能性を検討するよう要求した   。

この検討要求に応えるためにNAGRAは、高レベル放射性廃棄物のキャニスタ封入施設について、①「地層処分場サイトの地上施設設置区域内」での立地をレファレンスケースとして、②「ヴュレンリンゲン放射性廃棄物集中中間貯蔵施設(ZZL)サイト内」、③「ベツナウ中間貯蔵施設(ZWIBEZ)4 サイト内」、④「原子力発電所5 サイト内」、⑤「新規立地」の5つの立地オプションを想定して、輸送、追加で必要となる敷地面積、既存インフラや経験を有する熟練作業員の利用可能性、セキュリティと保障措置、コストといった項目の比較・検討を以下の通り行った。

  • ①「地層処分場サイトの地上施設設置区域内」での立地
    長所:地層処分場の地上施設の設置区域内のキャニスタ封入施設から地層処分場への輸送のみであり、輸送の負担が非常に軽い。②や③の中間貯蔵施設サイト内での立地と比較すると、既存の施設が現時点で存在しないことから、設計上の制約が少ない。
  • ②「ヴュレンリンゲン放射性廃棄物集中中間貯蔵施設(ZZL)サイト内」での立地
    長所:現状、使用済燃料とガラス固化体の輸送貯蔵兼用キャスクの大部分が貯蔵されており、高レベル放射性廃棄物用の廃棄体積み替えセルを備えている。既存のインフラを利用することにより、施設面積を小さくできる。また、熟練作業員の活用が見込める。コストの面では①「地層処分場サイトの地上施設設置区域内」での立地と比較すると、同等あるいは最大5%の軽減が期待できる。
  • ③「ベツナウ中間貯蔵施設(ZWIBEZ)サイト内」での立地
    長所:ZZL同様、既存インフラを利用することによって施設面積を小さくでき、熟練作業員の活用も可能である。
    短所:現状、廃棄物の輸送貯蔵兼用キャスクの大部分がZZLにあることから、ZZLからZWIBEZへのキャスク輸送を行わなければならなくなる。コストの面では、①「地層処分場サイトの地上施設設置区域内」での立地と比較すると、同等あるいは最大5%増大する。
  • ④「原子力発電所サイト内」での立地と⑤「新規立地」
    短所:既存インフラや熟練作業員の活用等の面では利便性はない。コストについては、①「地層処分場サイトの地上施設設置区域内」での立地と比べて20%程度増大する。

上記の検討の結果、NAGRAは、ケース①と比較してケース②と③のみ、敷地面積を小さくすることが可能であり、採用する余地があるとしている。このうち、ケース②のヴュレンリンゲン放射性廃棄物集中中間貯蔵施設では、使用済燃料の貯蔵容器への詰め替え作業を行っているため、キャニスタ封入施設と類似する作業経験をもつ熟練作業員の活用を見込むことができる。こうした理由から、NAGRAは、①「地層処分場サイトの地上施設設置区域内」での立地と②「ヴュレンリンゲン放射性廃棄物集中中間貯蔵施設(ZZL)サイト内」での立地が好適であるとした。NAGRAは今回の検討結果をもとに、地上施設の設置箇所の決定に向けて、地域会議や関係する州と議論を進めていくとしている。

 

【出典】

 


  1. 地層処分場の地上施設には、低レベル放射性廃棄物の廃棄体製作施設も含まれるが、今回のNAGRAの報告書では、その立地オプションについては検討していない。 []
  2. サイト選定第3段階におけるサイト地域は、地上施設、地下施設、地上・地下のインフラの一部または全てが立地する「インフラ立地自治体」と「その他関係自治体」で構成される。 []
  3. 日本の内閣に相当 []
  4. ZWIBEZはベツナウ原子力発電所内に立地する []
  5. ゲスゲン、ライプシュタット両原子力発電所サイトを想定 []

スイスの環境・運輸・エネルギー・通信省(UVEK)は2020年6月8日付で、放射性廃棄物管理共同組合(NAGRA)がサイト選定第3段階において、3つの地質学的候補エリア「ジュラ東部」、「チューリッヒ北東部」、「北部レゲレン」でのボーリング調査の許可申請について、合計21の調査候補地点に対する許可発給を完了した。NAGRAは2016年9月、2017年8月の2回に分けてボーリング調査に必要な許可申請書を提出しており、必要な地点数に余裕をとって23地点でボーリング調査を行う予定としていたが、北部レゲレンの2地点の申請を取り下げていた。UVEKは、NAGRAによるボーリング調査の許可申請書の審査を順次進め、2018年8月に発給した3地点を皮切りに  、16回に分けて許可を発給した。

■ボーリング調査の実施状況

NAGRAは、許可を受けた複数の地点でボーリング調査を実施しており、最大2,000mの深度までボーリング孔を掘削する計画である。2020年6月現在のボーリング調査の実施状況は以下のとおりである。

  ボーリング地点 地質学的候補エリア 期間
1 ビューラッハ 北部レゲレン 2019年4月~2019年11月
2 トリュリコン-1 チューリッヒ北東部 2019年8月~2020年4月
3 マルターレン チューリッヒ北東部 2020年2月~ (実施中)
4 ベツベルク-1 ジュラ東部 2020年4月~ (実施中)

※複数箇所ボーリングする場合は、ハイフン(-)以降の数字で識別

NAGRAはボーリング調査の作業場所に情報公開コーナーを設置し、現地見学を受け入れている   。新型コロナウイルスの感染拡大に伴い、2020年3月から見学者の受け入れを停止していたが、2020年6月12日にベツベルク-1で「オープン・パビリオン」と題する見学ツアーを開催するとともに、マルターレンでも現地見学の受け入れを再開する。

■今後の予定

NAGRAは、3つの地質学的候補エリアの計21地点でボーリング調査の許可発給を受けているが、これら全てでボーリング調査を実施するものではなく、先行したボーリング調査で得られた結果に基づいて、他の地点でのボーリング調査の実施必要性を個別に判断していくとしている。NAGRAはボーリング調査の結果を踏まえて、2022年頃に高レベル放射性廃棄物と低中レベル放射性廃棄物の処分場を異なる地質学的候補エリアに設置するか、両処分場を1つの地質学的候補エリアに設置するかを決定する予定である。

 

<参考:ボーリング調査の許可手続き>

サイト選定プロセスを定めた特別計画「地層処分場」(詳細はこちら)によると、サイト選定第3段階では、概要承認(詳細はこちら)の申請書提出に向けた準備を行う上で、安全性の観点からの詳細な比較を可能とするために、必要に応じて弾性波探査、ボーリング調査などの地球科学的調査を行って、サイト特有の地質学的知見を収集することになっている。ボーリング調査のような地下に影響を及ぼす地球科学的調査の実施にあたっては、スイスの原子力法に基づき、環境・運輸・エネルギー・通信省(UVEK)の許可が必要とされている。

 

【出典】

スイスの連邦評議会1 は2019年11月6日に、「廃止措置・廃棄物管理基金令」(以下「基金令」という)の改正を閣議決定した。改正後の基金令は、2020年1月1日に発効する予定である。基金令は、将来の原子力発電所などの廃止措置に要する費用、並びに原子力発電所の運転終了後の期間において、使用済燃料や放射性廃棄物の管理に要する資金の確保を目的としており、原子力発電事業者5社は、廃止措置基金、放射性廃棄物管理基金という2つの基金へ拠出を行っている。将来費用の見積りは5年毎に行われている。今回2019年の改正における主な変更点は以下のとおりである。

  • 将来費用の見積りにおける予備費の上乗せに関する規定の削除
  • 基金の投資利回りと物価上昇率の改訂
  • 基金積立金不足時及び超過時の規定変更

■予備費規定の削除

基金令の前回2015年改正において、不測の事態に備えた予備費(コンティンジェンシー)として、原子力発電事業者が支払う基金拠出金の算定に際し、放射性廃棄物管理及び廃止措置の費用見積に30%を上乗せする規定が導入されていた。しかし、2016年に原子力発電事業者の団体であるスイスニュークリアは、より合理的な費用見積り手法を導入し、費用項目毎に不確実性やコスト上昇リスク、コスト削減機会を考慮した精緻化された費用見積りを取りまとめていた。スイスニュークリアの費用見積りを受けた基金の管理委員会(以下「基金委員会」という)は、新たな費用見積り手法に沿って審査を行い、その結果として、費用超過への備えとして一般予備費(地層処分場では12.5%)として加算する案を環境・運輸・エネルギー・通信省(UVEK)に提案していた。スイス連邦会計検査院(EFK)は、費用見積りに対する監査において、新たな費用見積り手法によって上乗せ金額が適切に算定されていることから、2015年改正基金令で定められていた定率30%の予備費の上乗せは不要との見解を示した。

このような流れを受け、今回の基金令の改正では、2016年見積りで採用された新たな費用見積り手法の使用を義務づけるように規定の変更を行うとともに、30%の予備費を上乗せする規定が削除された。

■基金の投資利回りと物価上昇率の改訂

今回の基金令の改正では、基金拠出額の算定に用いる基金の投資利回り、物価上昇率といったパラメータの改定が行われた。基金令では従来から、枠組み条件に大きな変化がある場合に、このようなパラメータの見直しを行うことを定めている。今回の改正では、投資利回りを改正前の3.5%から2.1%に引き下げ、物価上昇率を1.5%から0.5%に引き下げた。これにより、基金の実質金利(=投資利回り-物価上昇率)は改正前の2.0%から1.6%に変更される。

投資利回りの見直しの理由について、基金令改正の説明文書では、金融市場での長期間にわたる金利の低迷を挙げている。一方、物価上昇率については、処分場の設置や原子力発電所の廃止措置に関連する物価上昇率の算定基準とする指数を、消費者物価指数(1.5%)から、スイス連邦統計庁が公表する建設価格指数(0.5%)に変更したことによる。

■基金積立金不足時及び超過時の規定変更

改正前の基金令では、原子力発電所の運転終了時点における基金への拠出額と目標金額の差が10%以内の場合、差分の払込は不要であると規定していたが、今回の改正で当該の規定が削除され、原子力事業者は運転終了時点での不足分の払込を義務づけた。また、同様に、改正前の基金令では、基金への積立金額において目標額の10%を上回る超過が発生した都度、その超過分の金額が拠出者に払い戻されることになっていたが、今回の改正により、事業者への余剰金の払い戻しは基金の最終決済時に限定されることとなった。なお、基金に不足が発生した場合には、従来通り、拠出金額算定においてに考慮されることになっている。

 

【出典】


  1. 日本の内閣に相当 []

スイスの連邦原子力安全検査局(ENSI)は、2019年9月26日に、地層処分場の長期安全性を確保するために適用される目標を定める指針ENSI-G03「地層処分場」の改訂版の草案(以下「指針案」という)を公表し、意見聴取を開始した。意見聴取は2020年1月10日まで行われる。今回ENSIが公表した指針案は、2009年にENSIが策定した指針ENSI-G03「地層処分場の設計原則とセーフティケースに関する要件」を置き換えるものである。ENSIは、原子力令第11条(地層処分場の設計についての原則)の規定に基づいて、地層処分場のための特別設計原則を指針として定めることになっている。

2009年の指針ENSI-G03の策定後、国際原子力機関(IAEA)が2011年に特定安全要件 No.SSR-5「放射性廃棄物の処分」を策定しているほか、2014年には西欧原子力規制者会議(WENRA)が「放射性廃棄物の処分施設の安全性に関するレファレンスレベル」を策定している。ENSIは、これらの国際的な議論を指針案に反映したとしている。

サイト選定第3段階とENSI-G03の改訂

スイスでは、特別計画「地層処分場」(以下「特別計画」という)に基づいてサイト選定を行っており、現在、サイト選定第3段階にある。サイト選定第2段階において地質学的候補エリアが3カ所まで絞り込まれ、2018年11月からサイト選定第3段階が開始された。現在、処分実施主体である放射性廃棄物管理共同組合(NAGRA)は、3カ所の地質学的候補エリアを1カ所にまで絞り込む作業を行っている。NAGRAは、2024年に地層処分場の候補サイトを提案し、概要承認申請書の提出を予定している。概要承認申請書の審査プロセスにおいては、地層処分場の長期安全性を評価するための基準は、指針ENSI-G03(2009年の指針、あるいは今回改訂する指針)が使用されることになっている。なお、地層処分場プロジェクトの概要承認の発給は、連邦評議会1 が行うことになっている。

スイスでは、概要承認の発給を受けてから地下特性調査施設の建設を含む詳細な地球科学的調査が実施される。地層処分場を建設するためには、別途、建設許可を受ける必要がある。

ENSI-G03の指針案の文書構成

高レベル放射性廃棄物の処分場概念図

「高レベル放射性廃棄物の処分場概念図」(NAGRA技術報告書NTB16-01「処分義務者による放射性廃棄物管理プログラム2016」を元に原環センターが作成)

スイスの原子力令第64条において地層処分場は、放射性廃棄物を処分する主処分施設、パイロット施設及び試験区域から構成されると定めている(右図参照)。このうち、パイロット施設については、原子力令第66条の規定において、少量の代表的な実廃棄物を定置して、廃棄物、埋め戻し材及び母岩の挙動などをモニタリングし、地層処分場の閉鎖決定のための根拠を得ると定めている。

ENSI-G03の指針案は、現行版と同様に、地層処分場の長期安全性を確保するための防護目標及び防護基準、ならびに地層処分場の設計、建設などに係わる要件を定めるとともに、地層処分場の段階毎のセーフティケースを規定している。ENSI-G03「地層処分場」の指針案の構成を以下の通り示す。

1 はじめに
2 法的根拠
3 対象及び適用範囲
4 基本条件
 4.1 地層処分場の防護目標
 4.2 防護目標を実現するための原則
 4.3 防護基準
 4.4 安全性の最適化
5 設計
 5.1 基本的要件
 5.2 追加的要件
6 監視、パイロット施設及びマーカー
 6.1 監視
 6.2 パイロット施設
 6.3 永続的なマーカー
7 地層処分場における活動
 7.1 地球科学的調査
 7.2 最終処分
 7.3 埋め戻しとシーリング
 7.4 多大な費用を発生させない回収
 7.5 操業期間中における一時的な閉鎖
 7.6 地層処分場の閉鎖
8 土木工学上の計画と建設
 8.1 地下構造物
 8.2 地上施設及び補助アクセス施設
9 セーフティケース
 9.1 操業段階のセーフティケース
 9.2 閉鎖後段階のセーフティケース
10 セキュリティと保障措置
 10.1 セキュリティ
 10.2 保障措置
11 品質保証とドキュメンテーション
12 参照文献一覧
付属書1 概念(ENSI用語集による)
付属書2 地層処分場の計画、建設、操業及び閉鎖段階の流れを示す概略図

:補助アクセス施設は、換気用立坑及び掘削した岩石の搬送用の建設立坑から構成される。

【出典】


  1. 日本の内閣に相当 []

スイスの処分実施主体である放射性廃棄物管理共同組合(NAGRA)は、201959日に、3つの地質学的候補エリアを対象とした地層処分場の地上インフラの配置案を公表した。NAGRAは、既に20139月以降、地上施設の設置区域を絞り込んだ案の概要を公表しているが、今回は、ガラス固化体のオーバーパック等を含む廃棄体製作施設の配置の他、地上施設の設置区域外に設ける可能性がある換気用及び掘削した岩石の搬送用の建設立坑の位置、廃棄体の積み下ろし駅を加えるなど、より広範な地上インフラの配置案を提示している。NAGRAは、今回提示した地上インフラの配置案は最終的なものではなく、今後のサイト選定第3段階での地域会議との協議において、建物の外観デザインや処分場の建設・操業時の作業が住民生活や環境へ及ぼす影響などを具体的に議論していくための資料となると説明している。

NAGRAが今回提示した地上インフラの配置案は、高レベル放射性廃棄物用処分場(HAA処分場)と低中レベル放射性廃棄物用処分場(SMA処分場)を併設する場合を想定して作成したものである。このため、配置案には2種類の廃棄体製作施設―①ガラス固化体及び使用済燃料をオーバーパックする施設、②低中レベル放射性廃棄物を処分するためにコンクリート製容器に収納する施設 1 ―が含まれている。

Jura ost JO-3+

ジュラ東部の地上施設の設置区域案(左)と今回の地上インフラ配置案(右)

NAGRAは、高レベル放射性廃棄物のオーバーパック施設を地層処分場の地上施設に含めない代替オプションとして、既存のヴュレンリンゲン放射性廃棄物集中中間貯蔵施設(ZZL)の敷地に配置する案が考えられるとしている。ZZLでは、国内4カ所の原子力発電所から発生する低中レベル放射性廃棄物と使用済燃料の他、英仏での再処理に伴って返還されたガラス固化体も貯蔵されており、地質学的候補エリア「ジュラ東部」の地上施設の設置区域とアーレ川を挟んだ対岸にある(図参照)。

また、低中レベル放射性廃棄物の廃棄体製作施設に関する代替オプションとしては、各原子力発電所に設ける、あるいはZZLに設けるの2通りが考えられるとしている。

地域会議の要望と連邦評議会のNAGRAへの要求

サイト選定第2段階において、チューリッヒ北東部の地域会議は、高レベル放射性廃棄物または低中レベル放射性廃棄物の廃棄体製作をサイト地域外で実施することの長所及び短所を説明して欲しいとの要望を出していた。また、2018年11月21日に連邦評議会2 は、NAGRAに対し、サイト選定第3段階の取組として、サイト地域3 を含む州や自治体当局、市民で構成される地域会議の要望を考慮した上で、処分場の建設時に必要となる建設立坑の配置案を提示し、廃棄体製作施設をサイト地域外に設置する可能性を検討するよう求めていた 。

今後の予定

NAGRAは、地域会議と立地州との協議は2021年初頭まで続く見通しであり、寄せられた意見・要望を受けて2022年までに地上インフラ計画の見直しと詳細化を進めるとしている。NAGRAは2024年に地層処分場の候補サイトを提案し、概要承認申請書を提出するとしている。

 

【出典】


  1. スイスでは現在、低中レベル放射性廃棄物は原子力発電所またはヴュレンリンゲン放射性廃棄物集中中間貯蔵施設(ZZL)でドラム缶などに収納して保管されている。 []
  2. 日本の内閣に相当 []
  3. サイト選定第3段階におけるサイト地域は、地上施設、地下施設、地上・地下のインフラの一部または全てが立地する「インフラ立地自治体」と「その他関係自治体」で構成される。 []

ビューラッハにおけるボーリング孔掘削の様子

スイスの処分実施主体である放射性廃棄物管理共同組合(NAGRA)は2019年4月15日に、地質学的候補エリア「北部レゲレン」でのボーリング調査の地点であるビューラッハ(Bülach)において、2018年12月に開始したサイト選定第3段階で最初となるボーリング孔の掘削作業に着手した。最大2,000メートルの深度までボーリング孔を掘削する計画であり、処分場の母岩となるオパリナス粘土層の厚さ、透水性、組成の調査等を行う。ボーリング掘削作業には、6~9ヶ月を要する見込みである。

NAGRAは、作業現場に情報公開コーナーを設置するほか、オープンデーを設けて現地見学を可能にする予定であり、市民・ステークホルダーに対してボーリング調査に関する情報提供を行うとしている。

ボーリング調査の許可手続きと進捗状況

サイト選定プロセスを定めた特別計画「地層処分場」(詳細はこちら)によると、サイト選定第3段階では、概要承認の申請書提出に向けた準備を行う上で、安全性の観点からの詳細な比較を可能とするため、必要に応じて弾性波探査、ボーリング調査などの地球科学的調査を行って、サイト特有の地質学的知見を収集することになっている。サイト選定第3段階には、3つの地質学的候補エリア「ジュラ東部」「北部レゲレン」「チューリッヒ北東部」が残っている。

三次元弾性波探査については、NAGRAがサイト選定第2段階の期間において先行的に実施済みである 。ボーリング調査のような地下に影響を及ぼす地球科学的調査の実施にあたっては、スイスの原子力法に基づき、環境・運輸・エネルギー・通信省(UVEK)の許可が必要とされている。UVEKが2019年1月に公表したボーリング調査の許可発給状況によれば、NAGRAは3つの地質学的候補エリア内の合計23の調査候補地点についてボーリング調査の許可申請を行っており、うち4地点について許可発給を受けている。

NAGRAは、今回のビューラッハに続き、既にボーリング調査の許可発給を受けている地質学的候補エリア「チューリッヒ北東部」のトリュリコン(Trüllikon)において、2019年夏にボーリング調査を開始する予定としている。

 

【出典】

 

【2019年12月4日追記】

スイスの処分実施主体である放射性廃棄物管理共同組合(NAGRA)は2019年11月28日、地質学的候補エリア「北部レゲレン」でのボーリング調査の地点であるビューラッハ(Bülach)において、2019年4月15日に開始されたボーリング孔の掘削作業が終了したことを公表した。ビューラッハは、サイト選定第3段階で行われる一連のボーリング調査における最初の掘削地点である。NAGRAは、地下1,370mに達するボーリング孔を掘削してボーリングコアを採取したが、処分場の母岩となるオパリナス粘土層の厚みが100mを超えており、オパリナス粘土の組成や硬度などから、地層処分場への適性に関して肯定的なデータが得られたとしている。

NAGRAは、ビューラッハでの掘削現場に情報公開コーナーを設置しており、ボーリング調査が行われた約7ヶ月間に2,000人以上が現地を見学し、地元自治体や住民、公衆との協力が円滑に行われたとしている。なお、スイスでは、規制機関である連邦原子力安全検査局(ENSI)が、3つの地質学的候補エリアである「ジュラ東部」「北部レゲレン」「チューリッヒ北東部」のそれぞれに、関係自治体や州、隣接するドイツの自治体(該当する場合)が参加する「ボーリング調査情報共有グループ(Begleitgruppen)」を設置しており、関係自治体等のボーリング調査に関する情報ニーズを取りまとめ、連邦政府、NAGRAから情報提供を受ける受け皿として活動している

NAGRAは、3つの地質学的候補エリアを比較するには、すべてのエリアでのボーリング調査が必要であり、現時点でどのエリアが最適であるかを示す段階ではないと強調している。NAGRAは3つの地質学的候補エリアで合計23地点を対象にボーリング調査の許可を申請しており、2019年11月までに環境・運輸・エネルギー・通信省(UVEK)から16地点について許可発給を受けている。地質学的候補エリア「チューリッヒ北東部」での最初のボーリング調査は2019年8月に開始しており、「ジュラ東部」では2020年に開始する予定である。

 

【出典】

スイスの連邦評議会1 は、2018年11月21日の閣議において特別計画「地層処分場」(以下「特別計画」という)に基づくサイト選定手続について、サイト選定第2段階の成果報告書を承認したことにより、サイト選定第2段階は終了し、サイト選定第3段階が開始されることとなった。2011年12月から開始されたサイト選定第2段階においては、6つの地質学的候補エリアが検討され、このうち、「ジュラ東部」「チューリッヒ北東部」「北部レゲレン」の3つをサイト選定第3段階に進む候補とした。

「サイト選定第2段階で確定した地質学的候補エリア」(NAGRAウェブサイト」、2018年11月22日を元に原環センターが作成)

■サイト選定第3段階開始に向けた連邦評議会の決定事項

連邦評議会は、処分実施主体である放射性廃棄物管理共同組合(NAGRA)の提案、連邦原子力安全検査局(ENSI)及び原子力安全委員会(KNS)の見解、意見聴取の結果を踏まえて、サイト選定第3段階に向けて、以下の事項を決定した。

  • サイト選定第3段階では、高レベル放射性廃棄物及び低中レベル放射性廃棄物の地層処分場について、地質学的候補エリア「ジュラ東部」「北部レゲレン」「チューリッヒ北東部」を対象として詳細調査を実施する。
  • 地質学的候補エリア「ジュラ・ジュートフス」「ジュートランデン」「ヴェレンベルク」は予備候補として留保する。
  • NAGRAは、高レベル放射性廃棄物の処分場と低中レベル放射性廃棄物の処分場を同じ地質学的候補エリアに建設する場合の長所と短所を検討する。
  • 各地質学的候補エリアにおいて検討する地上施設の設置区域は、JO-3+(ジュラ東部)、NL-2またはNL-6(北部レゲレン)、ZNO-6b(チューリッヒ北東部)とする。
  • NAGRAは、上記の地上施設の設置区域から離れた場所に設置する換気用立坑と掘削土砂輸送用の建設立坑について提案し、処分場の建設段階と操業段階における活動範囲、地上インフラの外観デザインなどについて、サイト地域の要望を考慮しつつ、特別計画の目標と環境保護が最良な形で達成されるように最適化すべきである。このため、NAGRAは、サイト地域2 を含む州や自治体当局、市民で構成される地域会議との協働のもと、ガラス固化体のオーバーパック等を処分場の地上施設ではなく、サイト地域外で行う可能性について検討することを認める。

なお、サイト選定第2段階では、地上施設の設置区域として、廃棄体の製作施設を設置可能な場所を検討してきているが、チューリッヒ北東部の地域会議から、廃棄体の製作をサイト地域外で実施することの長所及び短所を説明して欲しいとの要望が出されており、今回の連邦評議会の決定は、このような地域会議の意見を反映したものとなっている。

■サイト選定第2段階での取組

サイト選定第2段階では、サイト選定第1段階(2008年~2011年)で選定された6つの地質学的候補エリア(ただし、高レベル放射性廃棄物用処分場の地質学的候補エリアは3カ所)から、高レベル放射性廃棄物用処分場、低中レベル放射性廃棄物用処分場について、それぞれ最低2カ所の候補を選定する取組が行われた。

2015年1月にNAGRAは、地層処分場のサイト選定第2段階での絞り込み結果として、「チューリッヒ北東部」及び「ジュラ東部」の2つを優先候補として第3段階での詳細調査対象とすることを提案した。しかし、規制機関である連邦原子力安全検査局(ENSI)が2016年12月に、NAGRAが予備候補として留保した「北部レゲレン」について、北部スイスの地質学的データが十分とは言えない中で、NAGRAが示した想定が現在の科学技術的知見に照らして過度に保守的であると判断し、同エリアも引き続き優先候補として検討すべきとの見解を示し、諮問機関である原子力安全委員会(KNS)もこれを支持した

サイト選定第2段階では、6つの地質学的候補エリアそれぞれに、関係する州や自治体当局や個人が参加する地域会議が設置され、NAGRAがこの地域会議との協働により、各エリアにおける処分場地上施設の設置区域を特定する取組も行われた。また、NAGRAによる安全上の比較評価に加え、連邦エネルギー庁(BFE)により、地層処分場が与える社会影響・経済影響・環境影響に関する調査も行われた

このような取組を受けて、サイト選定手続きを監督する連邦エネルギー庁(BFE)が2017年11月に公表した第2段階の成果報告書草案では、「チューリッヒ北東部」「ジュラ東部」「北部レゲレン」を優先候補とし、同草案は2017年11月22日から2018年3月9日までの約3か月にわたって意見聴取にかけられた。意見聴取では、個人・組織から約1,550件の意見が提出され、うち431件がスイス、1,120件がドイツ、3件がオーストリアから寄せられたものであった。NAGRAも、これら3つのエリアがサイト選定第3段階で引き続き検討対象となることを想定して三次元弾性波探査を先行実施するととともに、サイト選定第3段階で実施されるボーリング調査に向けて、ボーリング地点の特定と許可申請などの準備作業を進めてきた

■今後の予定

サイト選定第3段階が開始されたことを受け、今後NAGRAは、2019年初頭から順次、必要な許可が発給された地点について、3つの地質学的候補エリアにおけるボーリング調査を実施する。NAGRAはこれら詳細調査を踏まえてサイトの比較を行い、最終的なサイト候補を提案し、2024年末までに連邦エネルギー庁(BFE)に対して概要承認を申請する。サイト選定プロセスを監督するBFEは、連邦評議会による概要承認の決定を2030年頃としている。

なお、サイト選定第3段階では、NAGRAと関係地域との間で、地上施設、交付金・補償金など地域開発関連、安全性の問題等に関する具体的な交渉が行われる。また、連邦エネルギー庁(BFE)が社会経済影響に関する詳細調査を実施する。地質学的候補エリア「ジュラ東部」「チューリッヒ北東部」「北部レゲレン」では2018年内に、サイト選定第2段階で設置された地域会議を、第3段階における公衆参加の機能と役割に合わせて再編成し、規約変更や代表者の選定等を実施する予定である。

 

 

【出典】


  1. 日本の内閣に相当 []
  2. サイト選定第3段階におけるサイト地域は、地上施設、地下施設、地上・地下のインフラの一部または全てが立地する「インフラ立地自治体」と「その他関係自治体」で構成される。 []

スイスの連邦原子力安全検査局(ENSI)は、2018年9月26日付けのプレスリリースにおいて、2019年以降と見込まれるサイト選定第3段階においてボーリング調査が実施される地質学的候補エリア毎に、関係自治体などが参加する情報共有のためのグループを設置することを明らかにした。本グループは「ボーリング調査情報共有グループ」(〈ドイツ語〉Begleitgruppen)と呼ばれ、ボーリング調査に関する関係自治体の情報ニーズを取りまとめて、連邦政府や処分実施主体である放射性廃棄物管理共同組合(NAGRA)から、迅速かつ分かりやすい情報提供を受けることを目的としており、関係自治体のほか、州、隣接するドイツの自治体(該当する場合のみ)も参加している。該当する3つの地質学的候補エリアのうち、「北部レゲレン」と「チューリッヒ北東部」では、それぞれ2018年9月24日と25日に初回会合が開催された。残る「ジュラ東部」でも、エリア内でのボーリング調査の許可発給を待って、初回会合が開催される予定である。

ボーリング調査の許可手続きと進捗状況

サイト選定プロセスを定めた特別計画「地層処分場」によると、サイト選定第3段階では、概要承認の申請書提出に向けた準備を行う上で、安全性の観点からの詳細な比較を可能にするため、必要に応じて弾性波探査、ボーリング調査などの地球科学的調査を行って、サイト特有の地質学的知見を収集するとしている。

三次元弾性波探査については、NAGRAがサイト選定第2段階において先行的に実施済みである。ボーリング調査については、サイト選定第3段階の開始後すぐに実施できるよう、NAGRAが2016年9月と2017年8月に3つの地質学的候補エリア「北部レゲレン」、「チューリッヒ北東部」「ジュラ東部」内の合計22の調査候補地点についてボーリング調査の許可申請書を提出している。このうち、北部レゲレンの1地点及びチューリッヒ北東部の2地点の合計3地点については、2018年8月に許可を取得済みである

 

【出典】

スイスの放射性廃棄物管理基金と廃止措置基金の両基金の管理委員会(以下「基金委員会」という)と連邦原子力安全検査局(ENSI)は2017年12月21日に、原子力発電事業者が2016年12月に取りまとめた放射性廃棄物管理の費用見積りに対する審査結果を公表した。廃止措置・廃棄物管理基金令(以下「基金令」という)に基づいてENSIは、安全技術の観点から原子力発電事業者が行った費用見積りに対する審査を行っている。また、基金委員会は、原子力発電事業者が基金に拠出する金額を決定する上で必要となる将来費用の額を環境・運輸・エネルギー・通信省(UVEK)に提案する役割を担っている。

■原子力発電所の廃止措置と運転終了後の放射性廃棄物管理に要する費用

スイスの地層処分場サイト選定プロセスでは、①高レベル放射性廃棄物と低中レベル放射性廃棄物用の処分場をそれぞれ1カ所ずつの計2カ所に建設するケースと、②両方の処分場を同じ場所に建設するとの2つのオプションが検討されている。原子力発電事業者は、サイト選定プロセスの結果として最終的にケース②となった場合には、処分費用の削減が期待できるとしており、ケース①と②の可能性を共に50%と仮定した場合の期待値を将来費用の額として設定するよう提案していた。

これに対し、基金委員会は、将来費用の資金確保を確実にする観点から、将来費用の金額を高めに設定するように、ケース①と②の可能性を60%、40%の確率で重みをつけて期待値を算出すべきとしている。さらに、基金委員会は、地層処分費用に関して、原子力発電事業者による見積りが楽観的であるとして、事業者が積算した基本コストの12.5%を一般予備費(ドイツ語でgenereller Sicherheitszuschlag)として加算すべきとしている。

上記のような見直しの結果、基金委員会は、原子力発電事業者が提案していた将来費用の額である 217億6,700万スイスフラン(約2兆5,000億円)に対して、約7.9%上回る 234億8,400万スイスフラン(約2兆7,000億円)を環境・運輸・エネルギー・通信省(UVEK)に提案するとしている。

表:地層処分費用の見積り(単位:百万スイスフラン 1スイスフラン=115円で換算)
項目 原子力発電事業者の
見積額
基金委員会が提案する
将来費用の額
備考
(A)地層処分費用 11,303
(約1兆3,000億円)
12,693
(1兆4,600億円)
 
内訳      
(1)基本コスト 8,125
(約9,300億円)
8,229
(約9,500億円)

変動コストは、処分場立地ケースによって変動する部分のコストである。処分場立地ケースの確率配分は、原子力発電事業者と基金委員会で異なる。

(2)変動コスト 3,178
(約3,700億円)
3,435
(約3900億円)
(3)一般予備費
(計上せず)
1,029
(約1,200億円)

基金委員会は、基本コストの12.5%を設定

(B)中間貯蔵、輸送、輸送・貯蔵容器、再処理費用 7,058
(約8,100億円)
7,058
(約8,100億円)
 
(C)廃止措置費用 3,406
(約3,900億円)
3,733
(約4,300億円)
 
合計
(A)+(B)+(C)
21,767
(約2兆5,000億円)
23,484
(約2兆7,000億円)

基金委員会の提案額は、原子力発電事業者の見積りの約7.9%増

 

■ENSIによる安全技術の観点からの審査

連邦原子力安全検査局(ENSI)は、エンジニアリング会社等の外部専門家の協力を得て、原子力発電事業者が取りまとめた費用見積りを審査している。ENSIは、スイスニュークリアが費用算定に用いた技術、スケジュール、組織、操業に係る想定は、現行の基準規則類に適合しており、これまでの知見や最新の科学技術水準に見合うものであり、技術データに関しても品質基準を満たしていると評価し、費用算定の技術的根拠として妥当なものであると結論付けている。

その上でENSIは、放射性廃棄物管理に関して、次回2022年に行われる費用見積りにおける主要課題として、以下の3点を勧告している。

  • 高レベル放射性廃棄物と低中レベル放射性廃棄物を同じ場所に処分するケースを検討する場合について、処分場の地上施設の設計・操業の具体的な概念を示し、その概念に基づいた見積りを行うこと。
  • 高レベル放射性廃棄物用処分場の地上施設について、使用済燃料を受け入れから処分廃棄体を製造するまでの一連の作業手順を具体化すること。
  • 地上施設を構成する建屋間のインターフェースに着目したモデル解析を再度実施し、既に見つかっている不整合を是正し、不足点を補うこと。

■今後の予定

基金委員会は、環境・運輸・エネルギー・通信省(UVEK)よる将来費用の決定を待って、2017年から2021年において原子力発電事業者が基金へ拠出する金額を決定することになる。基金委員会は、UVEKによる決定は2018年秋になるとの見通しを示している。

 

【出典】

【2018年4月20日追記】

スイスの環境・運輸・エネルギー・通信省(UVEK)は2018年4月12日に、原子力発電所の廃止措置と運転終了後の放射性廃棄物管理に要する将来費用の見積額を245億8,100万スイスフラン(約2兆8,300億円、1スイスフラン=115円で換算)と決定したことを公表した。今回UVEKが決定した見積額は、放射性廃棄物管理基金と廃止措置基金の両基金の管理委員会(以下「基金委員会」という)がUVEKに提案した見積額よりも約11億スイスフラン(約1,300億円)多く、この費用の増加は以下の項目で見直しを加えたことによるものと説明している。

<地層処分費用>

  • 高レベル放射性廃棄物の処分場と低中レベル放射性廃棄物の処分場とを異なる場所に建設するケースで将来費用を決定したことによる費用増:
    スイスの地層処分場選定プロセスでは、①高レベル放射性廃棄物と低中レベル放射性廃棄物の処分場をそれぞれ1カ所ずつの計2カ所に建設する場合、②両方の処分場を同じ場所に建設する場合が検討されており、費用算定においても、これらの2つのケースのオプションが検討されている。②のケースでは、①のケースと比較して処分費用の削減が期待される。原子力発電事業者は、ケース①と②の可能性を50%、50%の確率で重みをつけて期待値を算出するよう提案していたが、基金委員会は、60%、40%の確率とするよう提案していた。一方、UVEKは、現在の処分場選定プロセスでは、②のケースの是非を決定できる段階には至っていないとして、①の2カ所に建設するケースで将来費用を決定した。これによりUVEKの決定は、基金委員会の提案と比較すると、約6億5,100万スイスフラン(約750億円)の増額となっている。
  • 地層処分場立地地域への交付金支払いの可能性を高く見積ることによる費用増:
    スイスでは、国としての課題解決への貢献に対する経済的措置として、処分場の立地地域に対して交付金を支払うとされている。廃棄物管理基金から支出される立地地域に対する交付金の支払いについては、法的根拠が存在しておらず、自由意思によって行われる関係者との交渉の結果として取り決められることから、原子力発電事業者と基金委員会は4億スイスフラン(約460億円)を確保するよう提案していたが、UVEKは将来費用を確実に確保する観点から8億スイスフラン(約920億円)を確保するように決定した。

<廃止措置費用>

  • 原子力発電所サイトを全て更地に回復することによる費用増:
    原子力発電事業者の見積りでは、廃止措置の完了後に汚染のない建屋の一部がサイトに残る「ブラウンフィールド」と呼ばれる条件で算出していたが、基金委員会は建屋をすべて解体して、サイトを更地にする「グリーンフィールド」の可能性も費用見積りに含めるべきとの見解から、グリーンフィールドの可能性を80%、ブラウンフィールドの可能性を20%とした場合の期待値を算出するよう提案していた。UVEKは、廃止措置・廃棄物管理基金令(以下「基金令」という)における廃止措置費用の定義に従い、全ての建屋を撤去する費用を確保するとして、グリーンフィールドの条件で将来費用を決定した。これによりUVEKの決定は、基金委員会提案と比較すると、約4,600万スイスフラン(約53億円)の増額となっている。

 

原子力発電事業者の見積額、基金委員会が提案した将来費用額、UVEKが決定した費用額を下表に示す。

表:廃棄物管理・廃止措置費用の見積り(単位:百万スイスフラン 1スイスフラン=115円で換算)

項目 原子力発電事業者の見積額 基金委員会が提案した将来費用額  UVEKが決定した将来費用額 
 地層処分費用  11,303
(約1兆3,000億円)
12,693
(約1兆4,600億円)
13,744
(約1兆5,800億円)
 中間貯蔵、輸送、輸送・貯蔵容器、再処理費用  7,058
(約8,100億円)
 7,058
(約8,100億円) 
 7,058
(約8,100億円) 
 廃止措置費用  3,406
(約3,900億円) 
 3,733
(約4,300億円) 
 3,779
(約4,300億円) 
 合計 21,767
(約2兆5,000億円)

23,484
(約2兆7,000億円)

24,581
(約2兆8,300億円)

 

今後の予定

基金委員会は、今回のUVEKの決定に先立つ2016年12月に、2017年から2021年の期間に原子力発電事業者が基金へ支払うべき拠出金の暫定額を決定している。現在、スイスでは、基金令の改正が予定されており、基金委員会は2017年から2021年の期間に原子力発電事業者が基金へ支払うべき拠出金の正式な額については、改正した基金令の発効後に決定するとしている。基金令の改正の閣議決定は2019年前半と見込まれている。

 

【出典】

地層処分場のサイト選定手続きを監督する連邦エネルギー庁(Bundesamt für Energie、BFE)は2017年11月23日のプレスリリースにおいて、特別計画「地層処分場」(以下「特別計画」という)に基づくサイト選定第2段階の成果報告書の草案を公表し、意見聴取を開始した。現在、BFEは、サイト選定第3段階に進める候補の確定に向けて、連邦評議会1 による承認を受けるために成果報告書の取りまとめを行っている。今回公表された成果報告書の草案は、2011年12月から開始されたサイト選定第2段階において検討された6つの地質学的候補エリアのうち、「ジュラ東部」「チューリッヒ北東部」「北部レゲレン」の3つを第3段階に進む候補とする内容となっている。

現在行われているサイト選定第2段階では、サイト選定第1段階で選定された高レベル放射性廃棄物の3つ、低中レベル放射性廃棄物の6つの地質学的候補エリアの中から、高レベル放射性廃棄物用、低中レベル放射性廃棄物用のそれぞれの地層処分場について、2カ所以上の候補を提案することが目標となっている。2015年1月に処分実施主体である放射性廃棄物管理共同組合(Nationale Genossenschaft für die Lagerung radioaktiver Abfälle, NAGRA)は絞り込み作業の結果、高レベル放射性廃棄物用処分場の優先候補として2つの地質学的候補エリア「ジュラ東部」と「チューリッヒ北東部」を優先候補として提案し、「北部レゲレン」は予備候補として留保する提案を行った。NAGRAの提案に対して、規制機関である連邦原子力安全検査局(Eidgenössisches Nuklearsicherheitsinspektorat, ENSI)は2016年12月に、北部スイスの地質学的データが十分とは言えない中で、NAGRAが示したオパリナス粘土層の安定性と堅牢性に関する想定は、現在の科学技術的知見に照らして過度に保守的であると判断し、「北部レゲレン」も引き続き優先候補として検討すべきとの見解を示していた。また、原子力安全委員会(Eidgenössische Kommission für nukleare Sicherheit、KNS)も2017年7月に、ENSIの見解を支持するとしていた。

■サイト選定第2段階の成果報告書草案の主な内容

今回公表された成果報告書の草案は、上記のNAGRAの提案、連邦原子力安全検査局(ENSI)及び原子力安全委員会(KNS)の見解を踏まえたものである。成果報告書の草案の主な内容は以下の通りである。

  • サイト選定第2段階では、高レベル放射性廃棄物及び低中レベル放射性廃棄物の地層処分場の候補として、地質学的候補エリア「ジュラ東部」「北部レゲレン」「チューリッヒ北東部」まで絞り込む。NAGRAはサイト選定第3段階において、高レベル放射性廃棄物及び低中レベル放射性廃棄物の処分場を同一サイト内に設置する場合の長所と短所を検討する。
  • 地質学的候補エリアの絞り込みに伴い、地上施設の設置区域は、JO-3+(ジュラ東部)、NL-2またはNL-6(北部レゲレン)、ZNO-6b(チューリッヒ北東部)とする。
  • 地質学的候補エリア「ジュラ・ジュートフス」「ジュートランデン」「ヴェレンベルク」はサイト選定第3段階での詳細調査の対象とはしないが、特別計画に基づくサイト選定手続きが終了するまで、予備候補として留保する。
  • サイト選定第3段階ではサイト地域の範囲や地域会議の構成を変更する。サイト地域は、地上施設、地下施設、地上・地下のインフラの一部または全てが立地する「インフラ立地自治体」と「その他関係自治体」で構成される2

 

■今後の予定

BFEはプレスリリースにおいて、成果報告書の草案に対する意見聴取を2017年11月22日から2018年3月9日まで実施するとしている。特別計画に基づいてBFEは、州、関係する連邦機関及び隣接諸国、並びに国内の関係する組織にサイト選定第2段階でNAGRAが提出した報告書や規制機関等の審査結果、成果報告書とファクトシートの草案を送付することとなっており、2011年に終了した第1段階でも同様の手続きが取られた。今後の意見聴取の結果などを踏まえて連邦評議会は、成果報告書を承認するか否かを判断する。サイト選定第2段階の完了は2018年末となる見込みである。

【出典】


  1. 日本の内閣に相当 []
  2. サイト選定第2段階までは、特別計画「地層処分場」の「2.2.2 地質学的候補エリア、計画範囲、サイト地域」及び「略語一覧、用語」に従い、サイト地域は、「候補エリア所在自治体(地質学的候補エリアが領域の一部あるいは全体にわたって含まれる自治体)、並びに計画範囲(建設される可能性のある地上施設の配置を考慮して、地質学的候補エリアの広がりによって確定される地理的領域)の境界内に全体が含まれるか、それを管轄領域の一部に含む自治体によって構成される。また、事情によってはその他の自治体がサイト地域に含まれることもある」と定義されていたが、サイト選定第3段階では、サイト地域の構成に変更が加えられるということである。 []