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《スイス》NAGRAがサイト選定第3段階におけるボーリング調査を開始

ビューラッハにおけるボーリング孔掘削の様子

スイスの処分実施主体である放射性廃棄物管理共同組合(NAGRA)は2019年4月15日に、地質学的候補エリア「北部レゲレン」でのボーリング調査の地点であるビューラッハ(Bülach)において、2018年12月に開始したサイト選定第3段階で最初となるボーリング孔の掘削作業に着手した。最大2,000メートルの深度までボーリング孔を掘削する計画であり、処分場の母岩となるオパリナス粘土層の厚さ、透水性、組成の調査等を行う。ボーリング掘削作業には、6~9ヶ月を要する見込みである。

NAGRAは、作業現場に情報公開コーナーを設置するほか、オープンデーを設けて現地見学を可能にする予定であり、市民・ステークホルダーに対してボーリング調査に関する情報提供を行うとしている。

ボーリング調査の許可手続きと進捗状況

サイト選定プロセスを定めた特別計画「地層処分場」(詳細はこちら)によると、サイト選定第3段階では、概要承認の申請書提出に向けた準備を行う上で、安全性の観点からの詳細な比較を可能とするため、必要に応じて弾性波探査、ボーリング調査などの地球科学的調査を行って、サイト特有の地質学的知見を収集することになっている。サイト選定第3段階には、3つの地質学的候補エリア「ジュラ東部」「北部レゲレン」「チューリッヒ北東部」が残っている。

三次元弾性波探査については、NAGRAがサイト選定第2段階の期間において先行的に実施済みである 。ボーリング調査のような地下に影響を及ぼす地球科学的調査の実施にあたっては、スイスの原子力法に基づき、環境・運輸・エネルギー・通信省(UVEK)の許可が必要とされている。UVEKが2019年1月に公表したボーリング調査の許可発給状況によれば、NAGRAは3つの地質学的候補エリア内の合計23の調査候補地点についてボーリング調査の許可申請を行っており、うち4地点について許可発給を受けている。

NAGRAは、今回のビューラッハに続き、既にボーリング調査の許可発給を受けている地質学的候補エリア「チューリッヒ北東部」のトリュリコン(Trüllikon)において、2019年夏にボーリング調査を開始する予定としている。

 

【出典】

 

【2019年12月4日追記】

スイスの処分実施主体である放射性廃棄物管理共同組合(NAGRA)は2019年11月28日、地質学的候補エリア「北部レゲレン」でのボーリング調査の地点であるビューラッハ(Bülach)において、2019年4月15日に開始されたボーリング孔の掘削作業が終了したことを公表した。ビューラッハは、サイト選定第3段階で行われる一連のボーリング調査における最初の掘削地点である。NAGRAは、地下1,370mに達するボーリング孔を掘削してボーリングコアを採取したが、処分場の母岩となるオパリナス粘土層の厚みが100mを超えており、オパリナス粘土の組成や硬度などから、地層処分場への適性に関して肯定的なデータが得られたとしている。

NAGRAは、ビューラッハでの掘削現場に情報公開コーナーを設置しており、ボーリング調査が行われた約7ヶ月間に2,000人以上が現地を見学し、地元自治体や住民、公衆との協力が円滑に行われたとしている。なお、スイスでは、規制機関である連邦原子力安全検査局(ENSI)が、3つの地質学的候補エリアである「ジュラ東部」「北部レゲレン」「チューリッヒ北東部」のそれぞれに、関係自治体や州、隣接するドイツの自治体(該当する場合)が参加する「ボーリング調査情報共有グループ(Begleitgruppen)」を設置しており、関係自治体等のボーリング調査に関する情報ニーズを取りまとめ、連邦政府、NAGRAから情報提供を受ける受け皿として活動している

NAGRAは、3つの地質学的候補エリアを比較するには、すべてのエリアでのボーリング調査が必要であり、現時点でどのエリアが最適であるかを示す段階ではないと強調している。NAGRAは3つの地質学的候補エリアで合計23地点を対象にボーリング調査の許可を申請しており、2019年11月までに環境・運輸・エネルギー・通信省(UVEK)から16地点について許可発給を受けている。地質学的候補エリア「チューリッヒ北東部」での最初のボーリング調査は2019年8月に開始しており、「ジュラ東部」では2020年に開始する予定である。

 

【出典】

(post by yamamoto.keita , last modified: 2024-02-13 )