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《スイス》連邦評議会が廃止措置・廃棄物管理基金令改正を閣議決定

スイスの連邦評議会1 は2019年11月6日に、「廃止措置・廃棄物管理基金令」(以下「基金令」という)の改正を閣議決定した。改正後の基金令は、2020年1月1日に発効する予定である。基金令は、将来の原子力発電所などの廃止措置に要する費用、並びに原子力発電所の運転終了後の期間において、使用済燃料や放射性廃棄物の管理に要する資金の確保を目的としており、原子力発電事業者5社は、廃止措置基金、放射性廃棄物管理基金という2つの基金へ拠出を行っている。将来費用の見積りは5年毎に行われている。今回2019年の改正における主な変更点は以下のとおりである。

  • 将来費用の見積りにおける予備費の上乗せに関する規定の削除
  • 基金の投資利回りと物価上昇率の改訂
  • 基金積立金不足時及び超過時の規定変更

■予備費規定の削除

基金令の前回2015年改正において、不測の事態に備えた予備費(コンティンジェンシー)として、原子力発電事業者が支払う基金拠出金の算定に際し、放射性廃棄物管理及び廃止措置の費用見積に30%を上乗せする規定が導入されていた。しかし、2016年に原子力発電事業者の団体であるスイスニュークリアは、より合理的な費用見積り手法を導入し、費用項目毎に不確実性やコスト上昇リスク、コスト削減機会を考慮した精緻化された費用見積りを取りまとめていた。スイスニュークリアの費用見積りを受けた基金の管理委員会(以下「基金委員会」という)は、新たな費用見積り手法に沿って審査を行い、その結果として、費用超過への備えとして一般予備費(地層処分場では12.5%)として加算する案を環境・運輸・エネルギー・通信省(UVEK)に提案していた。スイス連邦会計検査院(EFK)は、費用見積りに対する監査において、新たな費用見積り手法によって上乗せ金額が適切に算定されていることから、2015年改正基金令で定められていた定率30%の予備費の上乗せは不要との見解を示した。

このような流れを受け、今回の基金令の改正では、2016年見積りで採用された新たな費用見積り手法の使用を義務づけるように規定の変更を行うとともに、30%の予備費を上乗せする規定が削除された。

■基金の投資利回りと物価上昇率の改訂

今回の基金令の改正では、基金拠出額の算定に用いる基金の投資利回り、物価上昇率といったパラメータの改定が行われた。基金令では従来から、枠組み条件に大きな変化がある場合に、このようなパラメータの見直しを行うことを定めている。今回の改正では、投資利回りを改正前の3.5%から2.1%に引き下げ、物価上昇率を1.5%から0.5%に引き下げた。これにより、基金の実質金利(=投資利回り-物価上昇率)は改正前の2.0%から1.6%に変更される。

投資利回りの見直しの理由について、基金令改正の説明文書では、金融市場での長期間にわたる金利の低迷を挙げている。一方、物価上昇率については、処分場の設置や原子力発電所の廃止措置に関連する物価上昇率の算定基準とする指数を、消費者物価指数(1.5%)から、スイス連邦統計庁が公表する建設価格指数(0.5%)に変更したことによる。

■基金積立金不足時及び超過時の規定変更

改正前の基金令では、原子力発電所の運転終了時点における基金への拠出額と目標金額の差が10%以内の場合、差分の払込は不要であると規定していたが、今回の改正で当該の規定が削除され、原子力事業者は運転終了時点での不足分の払込を義務づけた。また、同様に、改正前の基金令では、基金への積立金額において目標額の10%を上回る超過が発生した都度、その超過分の金額が拠出者に払い戻されることになっていたが、今回の改正により、事業者への余剰金の払い戻しは基金の最終決済時に限定されることとなった。なお、基金に不足が発生した場合には、従来通り、拠出金額算定においてに考慮されることになっている。

 

【出典】

  1. 日本の内閣に相当 []

(post by yamamoto.keita , last modified: 2024-07-24 )