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《ドイツ》社会諮問委員会がサイト選定に向けた勧告を取りまとめ

ドイツにおける高レベル放射性廃棄物処分場の選定プロセスに関与する連邦レベルの公衆参加組織である社会諮問委員会は、2019年11月13日に活動報告書を公表した。活動報告書の中で社会諮問委員会は、2016年の設置以降の委員会の活動を総括し、将来的に直面すると考えられる課題に関連して、サイト選定手続きの実施に向けた連邦政府などに対する勧告を示している。

社会諮問委員会は、中立的な立場からサイト選定手続き全体を監視するとともに、関係者間の調整を行うため、「高レベル放射性廃棄物の最終処分場のサイト選定に関する法律」(以下「サイト選定法」という)1 において、議会選出委員12名、市民代表委員6名の合計18名での設置が規定されており、2016年11月に、議会選出委員6名、市民代表委員3名の9名で暫定的に設置されて活動を開始した。現在は、議会選出委員6名、市民代表委員5名の合計11名2 で活動を行っている。

社会諮問委員会の活動の総括

社会諮問委員会は2016年の発足以降、2019年9月末までに計33回の定例会合を開催した。定例会合で社会諮問委員会は、処分実施主体である連邦放射性廃棄物機関(BGE)やサイト選定手続きを監督する連邦放射性廃棄物処分安全庁(BfE)との情報共有、意見交換を行うとともに、隣国スイスにおけるサイト選定状況についても情報提供を受けている。加えて、閉鎖に向けた取組が進められているアッセⅡ研究鉱山や、廃止措置手続き中のモルスレーベン低中レベル放射性廃棄物処分場をはじめとする原子力施設の視察も実施した。また、サイト選定法や公衆参加のあり方、中間貯蔵、地質学的データ等をテーマに、市民を交えた対話集会やワークショップなどの公開イベントをこれまでに9回開催している。このうち2回は、16歳から30歳の若年層を対象とし、サイト選定手続きへの関与についての議論が行われた。

透明性が高く、かつ公正なサイト選定手続きに向けた勧告

社会諮問委員会は活動報告書において、透明性が高く、かつ公正なサイト選定手続きに向けた連邦政府などに対する以下の9つの勧告を示している。

  1. サイト選定における地質学的データを原則公開とするための法制度が必要である
  2. 現時点で公開可能なデータの公表や対話イベントの開催などを含めた、サイト選定の初期段階からの公衆の参加と高い透明性の確保が重要である
  3. サイト選定初期段階での公衆参加方式決定や参加者の招待方法などの決定には、多様な意見が反映されることが重要である
  4. サイト区域の提案後の公衆参加の枠組みの設置プロセスにおいて、関心ある公衆を排除しないことが重要である
  5. 公衆の早期参加を実現するためには、意見募集実施の時期や期間の設定を慎重に行うことが必要である
  6. サイト選定での公衆参加における学習の場として、中間貯蔵施設の活用を検討すべきである
  7. サイト選定に対する政治の関心を向上させる必要がある
  8. 社会諮問委員会の委員の選出及び再任を適時に実施する必要がある
  9. 全ての利害関係者の意見を採り入れていくために、社会諮問委員会の活動の作業プロセスを改善する必要がある

社会諮問委員会は、これまでも透明性が高く、かつ公正なサイト選定手続きの実現のために優先順位の高い課題に継続して対処してきたが、今後もこの姿勢で活動を続けていくとしている。

 

【出典】

  1. 2017年5月の法改正により「発熱性放射性廃棄物の最終処分場のサイト選定に関する法律」から法律名が変更された []
  2. 2018年8月に市民代表委員が3名追加されたが、その後2016年に選出された1名の市民代表委員は辞任している []

(post by tokushima.hideyuki , last modified: 2024-07-24 )