スウェーデン核燃料・廃棄物管理会社(SKB社)が2014年12月に提出していた短寿命低中レベル放射性廃棄物処分場(SFR)の拡張許可申請に関して 、環境法典に基づく申請書の審理を実施していたナッカ土地・環境裁判所は、2019年11月13日に、SFRの拡張を許可できるとした意見書を政府に提出した。土地・環境裁判所は、今回の政府への意見書の提出に先立って、土地・環境裁判所による主要審理プロセスとなる口頭弁論を2019年9月23日から10月3日まで開催し、環境団体のほか、原子力活動法に基づく申請書の審査を行っている放射線安全機関(SSM)からも意見を聴取していた。
また、SSMは、土地・環境裁判所での口頭弁論の後の2019年10月に、SKB社が放射線安全の要件を遵守して原子力活動を遂行できることを立証しているとした意見書を政府に提出した。SSMは、政府が原子力活動法に基づく許可を発給するのに際して、SFRでの処分量に上限を設定することのほか、SKB社がSFR拡張部分の建設、操業を行う前に、安全報告書を更新し、SSMの承認を受けることなどの許可条件を設定するよう提案している 。
今後、政府は、土地・環境裁判所及びSSMの意見書を踏まえ、SFRの拡張の可否を判断することになる 。政府がSFRの拡張の可否を判断する前に、地元エストハンマル自治体の意見を確認する手続きが必要となっている。
SFRの拡張計画
SKB社が操業している短寿命低中レベル放射性廃棄物処分場(SFR)は、バルト海の浅い沿岸部(水深は約5m)の約60m以深の岩盤内に設置されており、1つのサイロと4つの処分坑道で構成されている(図の右側の灰色部分)。当初SFRは、約63,000m3の短寿命低中レベル放射性廃棄物を処分できるように建設され、1988年から原子力発電所の運転に伴って発生する廃樹脂、雑固体などの短寿命運転廃棄物と呼ばれる放射性廃棄物を処分しているほか、医療、研究、産業で発生した放射性廃棄物も受け入れて処分している。
今回のSFRの拡張では、地下約120mに6つの処分坑道で108,000m3を増設(図の左側の青色部分)することにより、既存部分との合計で約171,000m3の処分容量となる。拡張部分は、主として廃止措置廃棄物の処分用区画であるが、運転廃棄物の一部も処分される。また、SFRの既存部分でも、廃止措置廃棄物の一部が処分される。
SKB社は、2019年9月に取りまとめた「放射性廃棄物の管理及び処分方法に関する研究開発実証プログラム2019」(RD&Dプログラム2019)1 において、SFRの拡張部分の建設を2023年に開始する計画としている。
【出典】
- ナッカ土地・環境裁判所、SKB社の拡張申請に関する政府への意見書(2019年11月13日)
Mark- och miljödomstolen yttrar sig till regeringen om SFR. Mål nr M 7062-13
(Nacka_TR_M7062-14_Yttrande_till_regeringen_191113.pdf) - スウェーデン核燃料・廃棄物管理会社(SKB社)、2019年11月13日付けプレスリリース
https://www.skb.se/nyheter/dubbelt-godkant-for-skbs-slutforvarsansokan/ - スウェーデン核燃料・廃棄物管理会社(SKB社)、2019年10月1日付けプレスリリース
https://www.skb.se/nyheter/nytt-forskningsprogram-presenteras/ - 「放射性廃棄物の管理及び処分方法に関する研究開発実証プログラム2019」(RD&Dプログラム2019)(SKB社、2019年9月)〔スウェーデン語: Fud-program 2019 Program för forskning, utveckling och demonstration av metoder för hantering och slutförvaring av kärnavfall〕
https://www.skb.se/publikation/2493433/FUD+2019.pdf
- RD&Dプログラムとは、使用済燃料を含む放射性廃棄物の安全な管理・処分、及び原子力施設の廃止措置に関する包括的な研究開発などの計画であり、原子力活動法に基づいて原子力発電事業者が3年毎に策定するよう義務づけられているものである。原子力発電事業者4社の委託によりSKB社が取りまとめを行っている。 [↩]
(post by sahara.satoshi , last modified: 2023-10-10 )