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《スイス》規制機関ENSIが地層処分場の長期安全性に関する指針の改訂版の草案を公表

スイスの連邦原子力安全検査局(ENSI)は、2019年9月26日に、地層処分場の長期安全性を確保するために適用される目標を定める指針ENSI-G03「地層処分場」の改訂版の草案(以下「指針案」という)を公表し、意見聴取を開始した。意見聴取は2020年1月10日まで行われる。今回ENSIが公表した指針案は、2009年にENSIが策定した指針ENSI-G03「地層処分場の設計原則とセーフティケースに関する要件」を置き換えるものである。ENSIは、原子力令第11条(地層処分場の設計についての原則)の規定に基づいて、地層処分場のための特別設計原則を指針として定めることになっている。

2009年の指針ENSI-G03の策定後、国際原子力機関(IAEA)が2011年に特定安全要件 No.SSR-5「放射性廃棄物の処分」を策定しているほか、2014年には西欧原子力規制者会議(WENRA)が「放射性廃棄物の処分施設の安全性に関するレファレンスレベル」を策定している。ENSIは、これらの国際的な議論を指針案に反映したとしている。

サイト選定第3段階とENSI-G03の改訂

スイスでは、特別計画「地層処分場」(以下特別計画という)に基づいてサイト選定を行っており、現在、サイト選定第3段階にある。サイト選定第2段階において地質学的候補エリアが3カ所まで絞り込まれ、2018年11月からサイト選定第3段階が開始された。現在、処分実施主体である放射性廃棄物管理共同組合(NAGRA)は、3カ所の地質学的候補エリアを1カ所にまで絞り込む作業を行っている。NAGRAは、2024年に地層処分場の候補サイトを提案し、概要承認申請書の提出を予定している。概要承認申請書の審査プロセスにおいては、地層処分場の長期安全性を評価するための基準は、指針ENSI-G03(2009年の指針、あるいは今回改訂する指針)が使用されることになっている。なお、地層処分場プロジェクトの概要承認の発給は、連邦評議会1 が行うことになっている。

スイスでは、概要承認の発給を受けてから地下特性調査施設の建設を含む詳細な地球科学的調査が実施される。地層処分場を建設するためには、別途、建設許可を受ける必要がある。

ENSI-G03の指針案の文書構成

高レベル放射性廃棄物の処分場概念図

「高レベル放射性廃棄物の処分場概念図」(NAGRA技術報告書NTB16-01「処分義務者による放射性廃棄物管理プログラム2016」を元に原環センターが作成)

スイスの原子力令第64条において地層処分場は、放射性廃棄物を処分する主処分施設、パイロット施設及び試験区域から構成されると定めている(右図参照)。このうち、パイロット施設については、原子力令第66条の規定において、少量の代表的な実廃棄物を定置して、廃棄物、埋め戻し材及び母岩の挙動などをモニタリングし、地層処分場の閉鎖決定のための根拠を得ると定めている。

ENSI-G03の指針案は、現行版と同様に、地層処分場の長期安全性を確保するための防護目標及び防護基準、ならびに地層処分場の設計、建設などに係わる要件を定めるとともに、地層処分場の段階毎のセーフティケースを規定している。ENSI-G03「地層処分場」の指針案の構成を以下の通り示す。

1 はじめに
2 法的根拠
3 対象及び適用範囲
4 基本条件
 4.1 地層処分場の防護目標
 4.2 防護目標を実現するための原則
 4.3 防護基準
 4.4 安全性の最適化
5 設計
 5.1 基本的要件
 5.2 追加的要件
6 監視、パイロット施設及びマーカー
 6.1 監視
 6.2 パイロット施設
 6.3 永続的なマーカー
7 地層処分場における活動
 7.1 地球科学的調査
 7.2 最終処分
 7.3 埋め戻しとシーリング
 7.4 多大な費用を発生させない回収
 7.5 操業期間中における一時的な閉鎖
 7.6 地層処分場の閉鎖
8 土木工学上の計画と建設
 8.1 地下構造物
 8.2 地上施設及び補助アクセス施設
9 セーフティケース
 9.1 操業段階のセーフティケース
 9.2 閉鎖後段階のセーフティケース
10 セキュリティと保障措置
 10.1 セキュリティ
 10.2 保障措置
11 品質保証とドキュメンテーション
12 参照文献一覧
付属書1 概念(ENSI用語集による)
付属書2 地層処分場の計画、建設、操業及び閉鎖段階の流れを示す概略図

:補助アクセス施設は、換気用立坑及び掘削した岩石の搬送用の建設立坑から構成される。

【出典】

  1. 日本の内閣に相当 []

(post by yamamoto.keita , last modified: 2024-02-13 )