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《スイス》NAGRAが地域会議との検討に向けた処分場の地上インフラ配置案を公表

スイスの処分実施主体である放射性廃棄物管理共同組合(NAGRA)は、201959日に、3つの地質学的候補エリアを対象とした地層処分場の地上インフラの配置案を公表した。NAGRAは、既に20139月以降、地上施設の設置区域を絞り込んだ案の概要を公表しているが、今回は、ガラス固化体のオーバーパック等を含む廃棄体製作施設の配置の他、地上施設の設置区域外に設ける可能性がある換気用及び掘削した岩石の搬送用の建設立坑の位置、廃棄体の積み下ろし駅を加えるなど、より広範な地上インフラの配置案を提示している。NAGRAは、今回提示した地上インフラの配置案は最終的なものではなく、今後のサイト選定第3段階での地域会議との協議において、建物の外観デザインや処分場の建設・操業時の作業が住民生活や環境へ及ぼす影響などを具体的に議論していくための資料となると説明している。

NAGRAが今回提示した地上インフラの配置案は、高レベル放射性廃棄物用処分場(HAA処分場)と低中レベル放射性廃棄物用処分場(SMA処分場)を併設する場合を想定して作成したものである。このため、配置案には2種類の廃棄体製作施設―①ガラス固化体及び使用済燃料をオーバーパックする施設、②低中レベル放射性廃棄物を処分するためにコンクリート製容器に収納する施設 1 ―が含まれている。

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ジュラ東部の地上施設の設置区域案(左)と今回の地上インフラ配置案(右)

NAGRAは、高レベル放射性廃棄物のオーバーパック施設を地層処分場の地上施設に含めない代替オプションとして、既存のヴュレンリンゲン放射性廃棄物集中中間貯蔵施設(ZZL)の敷地に配置する案が考えられるとしている。ZZLでは、国内4カ所の原子力発電所から発生する低中レベル放射性廃棄物と使用済燃料の他、英仏での再処理に伴って返還されたガラス固化体も貯蔵されており、地質学的候補エリア「ジュラ東部」の地上施設の設置区域とアーレ川を挟んだ対岸にある(図参照)。

また、低中レベル放射性廃棄物の廃棄体製作施設に関する代替オプションとしては、各原子力発電所に設ける、あるいはZZLに設けるの2通りが考えられるとしている。

地域会議の要望と連邦評議会のNAGRAへの要求

サイト選定第2段階において、チューリッヒ北東部の地域会議は、高レベル放射性廃棄物または低中レベル放射性廃棄物の廃棄体製作をサイト地域外で実施することの長所及び短所を説明して欲しいとの要望を出していた。また、2018年11月21日に連邦評議会2 は、NAGRAに対し、サイト選定第3段階の取組として、サイト地域3 を含む州や自治体当局、市民で構成される地域会議の要望を考慮した上で、処分場の建設時に必要となる建設立坑の配置案を提示し、廃棄体製作施設をサイト地域外に設置する可能性を検討するよう求めていた 。

今後の予定

NAGRAは、地域会議と立地州との協議は2021年初頭まで続く見通しであり、寄せられた意見・要望を受けて2022年までに地上インフラ計画の見直しと詳細化を進めるとしている。NAGRAは2024年に地層処分場の候補サイトを提案し、概要承認申請書を提出するとしている。

 

【出典】

  1. スイスでは現在、低中レベル放射性廃棄物は原子力発電所またはヴュレンリンゲン放射性廃棄物集中中間貯蔵施設(ZZL)でドラム缶などに収納して保管されている。 []
  2. 日本の内閣に相当 []
  3. サイト選定第3段階におけるサイト地域は、地上施設、地下施設、地上・地下のインフラの一部または全てが立地する「インフラ立地自治体」と「その他関係自治体」で構成される。 []

(post by yamamoto.keita , last modified: 2023-10-10 )