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《フィンランド》雇用経済省が設置したワーキンググループが放射性廃棄物管理に関する報告書を公表

フィンランドの雇用経済省(TEM)は、2019年9月2日付のプレスリリースにおいて、TEMが設置した2つのワーキンググループがそれぞれ作成した報告書として、原子力廃棄物管理に関する報告書、国家放射性廃棄物管理基金の運用に関する報告書を公表した。各々の報告書の概要は、以下の通りとなっている。

■原子力廃棄物管理に関するワーキンググループの報告書

雇用経済省は、原子力発電に伴って発生する原子力廃棄物のみならず、医療・産業・研究から発生する放射性廃棄物1 の全体について、安全で費用対効果の高い管理の目標、開発方法や可能な解決策を検討するため、2017年6月に雇用経済省、社会保健省、放射線・原子力安全センター(STUK)等の国の機関、処分実施主体のポシヴァ社、原子力発電事業者、大学の専門家などから構成されるワーキンググループ(原子力廃棄物管理に関する国家協力グループ)を設置していた。

本ワーキンググループは、フィンランドにおける原子力廃棄物管理の開発について、1983年の原子力廃棄物管理に係る政府原則決定に従って進められ、これまで着実に進展してきたとしている。今後、2020年代にオルキルオトに建設中の使用済燃料処分場が操業開始する予定であるほか、フィンランド技術研究センター(VTT)が保有している研究炉の廃止措置、原子炉新設に向けたプロジェクトを進めているフェノヴォイマ社による使用済燃料処分場のサイト選定等が予定されている。一方、フィンランドの現行の法規制では、原子力発電に伴って発生する原子力廃棄物は“原子力法”で規制されており、それ以外の医療・産業・研究から発生する放射性廃棄物管理は“放射線法”で規制されている。ワーキンググループは、廃棄物管理分野の法規制における重要な課題として、これらの2つの法律に基づく規制の一貫性を図るとともに、国際法の適切な反映、下位レベルの規制文書の策定などの作業を進めるよう、雇用経済省に提言した。

報告書においてワーキンググループは、既に発生した放射性廃棄物や将来発生する放射性廃棄物について、その発生場所や発生者、発生方法に関わらず、適切な管理を実施することが重要であると指摘している。また、報告書においてワーキンググループは、国の省庁や事業者等に対する勧告・提案を示しており、フィンランドで発生するあらゆる放射性廃棄物の管理における協力(例えば、既存の処分場へ他の事業者からの廃棄物を処分すること等)が可能となるような許認可手続や監督の実施方法を可能とする法整備のほか、フィンランドにおける放射性廃棄物管理における専門性維持や人材確保のために、実際のニーズの評価分析を行うよう勧告している。

さらに、ワーキンググループは、本報告書での勧告・提案への対応の実施状況を監督する監視グループを設置することも勧告している。

■国家放射性廃棄物管理基金の運用に関するワーキンググループの最終報告書

フィンランドでは原子力法に基づいて、原子力施設から発生する原子力廃棄物の処理・輸送・貯蔵・処分等に係る管理費用について、原子力発電事業者は、雇用経済省が所管する国家放射性廃棄物管理基金(VYR、以下「基金」という)へ積み立てている。また、原子力法により、原子力発電事業者が基金から資金貸付を受けることが可能な制度となっている。

この基金の運用に関するワーキンググループ(以下「基金ワークンググループ」という)は、基金の運用方法を規制する法制度に対する評価を行い、必要な改善策を提案することを目的として、2018年4月にTEMにより設置された。

基金の運用は1988年の設置から30年以上続いており、2018年末時点の基金残高は約26億ユーロ(約3,250億円、1ユーロ=125円で換算)となっている。また、オルキルオト原子力発電所3号機が運転を開始すれば、基金残高は更に大きくなると見込まれている。

基金ワーキンググループは、今回の報告書において、基金の長期にわたる運用状況を改善しつつ、廃棄物管理に将来必要となる費用を賄うのに十分な資産を確保しつつ、基金の長期の運用状況を改善できるように運用方法を改善できるとの見解を示している。また、より高い運用益を得られるようにするための手段として、積み立てを行っている原子力発電事業者に対する基金からの貸付を制限することにとり、保有資金の運用先を拡大するとともに、拡大した運用先への貸付期間を長くする方法を提案している。さらに、報告書では、基金運用やそのリスクマネジメント及び貸付業務を行う組織や管理体制の変更案が提示されている。

【出典】

  1. フィンランドでは、原子力利用に伴い発生した廃棄物を「原子力廃棄物」と定義し、それ以外の「放射性廃棄物」と区別されている。 []

(post by t-yoshida , last modified: 2023-10-10 )