米国において、超ウラン核種を含む放射性廃棄物(TRU廃棄物)の地層処分場である廃棄物隔離パイロットプラント(WIPP)を所管するエネルギー省(DOE)カールスバッド・フィールド事務所(CBFO)は、2019年8月22日に、「2019-2024年戦略計画」の最終ドラフト(以下「ドラフト戦略計画」という。)を公表した。ドラフト戦略計画は、WIPPの今後5年間の戦略計画を示すものであり、ステークホルダーの意見を求めるものとされている。ドラフト戦略計画に対するコメントは、2019年9月30日まで受け付けられている。
公表されたドラフト戦略計画は、2014年にWIPPで発生した事象 から得られた教訓を反映したプログラムの強化策を示すとともに、以下のような項目についての将来を展望するものであるとされている。
- インフラの再投資
- 施設及び操業方法の刷新
- 今後に必要となるプロジェクトの承認を得るため、規制プロセスの戦略的利用
- 有害廃棄物施設許可の10年目の許可更新1
- 1992年WIPP土地収用法で規定する処分容量2のTRU廃棄物を定置するための処分パネル増設
- 輸送のためのTRU廃棄物の特性評価/認証活動の合理化・改善
また、ドラフト戦略計画では、直近のDOE戦略計画との整合性を示した上で、カールスバッド・フィールド事務所(CBFO)の4つの達成目標、規制アプローチ、岩盤管理(ground control)、地下の処分施設南側区域の閉鎖、ステークホルダーとの関わりなどが示されている。CBFOの達成目標としては、以下の4点が掲げられている。
- 安全上重要で不可欠なWIPPの主要インフラシステムの再投資及び刷新
- フル操業の定置能力までの輸送の大幅な増加
- カールスバッド・フィールド事務所(CBFO)の安全管理プログラムの継続的改善
- 関連する規制戦略とともに処分場計画・設計の成熟化
なお、カールスバッド・フィールド事務所(CBFO)は、2019年8月19日付のフェイスブック記事においても、ドラフト戦略計画を公表して意見を求める予定を伝えていた。このフェイスブック記事では、以下の2回のパブリックミーティングを開催することが伝えられている。
- 2019年8月26日:ニューメキシコ州サンタフェ市
- 2019年8月28日:ニューメキシコ州カールスバッド市
【出典】
- エネルギー省(DOE)カールスバッド・フィールド事務所(CBFO)、「戦略計画2019-2024」、ステークホルダー意見募集のための最終ドラフト(2019年8月)
https://wipp.energy.gov/pdfs/DOE-CBFO-19-3605%20CBFO%20Strategic%20Plan%202019-2023-Rev%200.1-DRAFT.pdf - エネルギー省(DOE)廃棄物隔離パイロットプラント(WIPP)ウェブサイト
https://wipp.energy.gov/index.asp - エネルギー省(DOE)カールスバッド・フィールド事務所(CBFO)、フェイスブック記事(2019年8月19日、11:25)
https://www.facebook.com/WIPPNews/photos/a.751793184970048/1334747653341262/?type=3&theater - エネルギー省(DOE)カールスバッド・フィールド事務所(CBFO)、廃棄物隔離パイロットプラント(WIPP)状況報告書(2019年8月21日)
http://www.wipp.energy.gov/general/GenerateWippStatusReport.pdf - ニューメキシコ州環境省(NMED)、廃棄物隔離パイロットプラント(WIPP)のページ
https://www.env.nm.gov/hazardous-waste/wipp/
- 資源保全・回収法(RCRA)に基づく有害廃棄物処分に係る許可であり、RCRAの下での規制権限を有するニューメキシコ州環境省(NMED)によって発給されている。許可期間は10年間であり、2010年に1回目の許可更新が行われている。 [↩]
- WIPPにおけるTRU廃棄物の処分容量は、1992年WIPP土地収用法で620万立方フィート(約17.6万m3)と規定されている。WIPPにおける処分量については、従来は最も外側の廃棄物コンテナの容量で計算されていたが、2018年12月にニューメキシコ州環境省(NMED)によって承認された許可変更により、1992年WIPP土地収用法上の処分量は、廃棄物コンテナに収納されている最も内側の廃棄物容器(例えば、55ガロンドラム)の容量で計算されることとなった。2019年8月17日時点での1992年WIPP土地収用法上の処分量は約68,489m3であり、従来ベースの処分量(約96,718m3)より3割近く少なくなっている。 [↩]
(post by inagaki.yusuke , last modified: 2023-10-10 )