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スイスのジュラ州にあるモン・テリ岩盤研究所を管理するスイス国土地理院(swisstopo)は、岩盤研究所の坑道拡張工事を2017年6月15日に開始したことを公表した。モン・テリ岩盤研究所では、放射性廃棄物の地層処分や二酸化炭素の地中貯留に関連して、今後10年の計画として約50件の新規研究プロジェクトが計画されているが、既存坑道ではスペースが不足することから、既存部分の南側に全長約600メートルの坑道を新たに掘削する。

今回の坑道拡張工事の総費用は約400万スイスフラン(日本円で約4億5,200万円、1スイスフラン=113円で換算、以下同様)と見積っている。坑道拡張工事は2019年半ばまでに完了する見込みであるが、工事中にも坑道掘削による水理・岩盤力学的な影響を調べる試験(Mine-by Test)が実施される予定である。

モン・テリ岩盤研究所の概要

モン・テリ岩盤研究所は、高速道路の避難・管理用トンネルと周囲のオパリナス粘土層を利用して設置された国際共同研究施設であり、1996年以降、約150件に及ぶ試験が実施されている。複数回に及ぶ坑道拡張工事により2017年6月現在、モン・テリ岩盤研究所の坑道延長は約700メートルとなっている。スイスの放射性廃棄物処分実施主体である放射性廃棄物管理共同組合(NAGRA)はモン・テリ岩盤研究所において、地層処分の候補母岩であるオパリナス粘土層中でのガスの拡散挙動、微生物の活動、母岩に対する熱影響に関する試験研究などを実施している。モン・テリ岩盤研究所における国際共同研究プロジェクトには、スイスを含めた8か国から以下の16の組織が参加しており、今回の坑道拡張工事の費用を分担するとしている。

  • スイス国土地理院(swisstopo、スイス)
  • 連邦原子力安全検査局(ENSI、スイス)
  • 放射性廃棄物管理共同組合(NAGRA、スイス)
  • 原子力研究センター(SCK・CEN、ベルギー)
  • 連邦原子力管理庁(FANC、ベルギー)
  • 放射性廃棄物管理機関(ANDRA、フランス)
  • 放射線防護・原子力安全研究所(IRSN、フランス)
  • 連邦地球科学・天然資源研究所(BGR、ドイツ)
  • 施設・原子炉安全協会(GRS、ドイツ)
  • 株式会社大林組(日本)
  • 国立研究開発法人日本原子力研究開発機構(JAEA、日本)
  • 一般財団法人電力中央研究所(CRIEPI、日本)
  • 放射性廃棄物管理公社(ENRESA、スペイン)
  • 核燃料廃棄物管理機関(NWMO、カナダ)
  • シェブロン・エネルギー技術社(Chevron Energy Technology ETC、米国)
  • エネルギー省(DOE、米国)

モン・テリ岩盤研究所には、これまでに総額約8,000万スイスフラン(約90億4,000万円)が投じられており、上記の16の組織も費用を分担してきた。

モン・テリ岩盤研究所の地下部分はジュラ州が所有権を有しているが、今回の坑道拡張工事についてジュラ州は2016年12月に、坑道拡張工事に必要な許可を発給していた。また、管理・操業者であるswisstopoは毎年、ジュラ州から研究プロジェクトの実施のための地下利用の許可を得ている。なお、モン・テリ岩盤研究所は研究施設として供用されており、将来にわたり放射性廃棄物処分場として利用されることはない。

mont-terri

モン・テリ岩盤研究所の位置

【出典】

スイスの処分実施主体である放射性廃棄物管理共同組合(Nationale Genossenschaft für die Lagerung radioaktiver Abfälle, NAGRA)は、2016年12月20日に、『放射性廃棄物管理プログラム2016』及び本プログラムに沿って実施される研究開発計画書を連邦エネルギー庁(Bundesamt für Energie, BFE)に提出したことを公表した。放射性廃棄物管理プログラムは、スイスの4カ所の原子力発電所にある5基の原子炉の運転、廃止措置、並びにそれらから発生する放射性廃棄物の貯蔵、処分の計画を示したものであり、2005年施行の原子力法及び原子力令に基づいて、5年毎に更新することになっている。放射性廃棄物管理ブログラム2016によると、医療・産業・研究等から発生してNAGRAが処分することになっている放射性廃棄物を含め、最終的に地層処分する放射性廃棄物の総量は、最大で約9万2千m3となると推定している。

 

表:放射性廃棄物管理プログラム2016における放射性廃棄物発生量の推定

 

放射性廃棄物の分類と廃棄物量(廃棄体の体積m

放射性廃棄物の発生

高レベル放射性廃棄物(HAA)

アルファ廃棄物
(ATA)

低中レベル放射性廃棄物
(SMA)

合計

使用済燃料(BE)

8,995

8,995

英国、フランスに委託した再処理に伴って返還される廃棄物(WA)

398

414

812

炉内構造物等(BA)

31,271

31,271

原子炉の運転廃棄物(RA)

1,811

1,811

原子炉の廃止措置廃棄物(SA)

24

27,366

27,390

医療、産業及び研究分野の廃棄物(MIF)

8

634

19,010

19,652

使用済燃料及びガラス固化体の廃棄体製造施設から発生する廃棄物(BEVA)

2,302

2,302

合計

9,402

1,072

81,760

92,234

*:わが国のTRU廃棄物に相当

 

○処分場サイト選定のスケジュール

スイスでは、NAGRAが特別計画「地層処分場」(以下「特別計画」という)に基づき、3段階からなるサイト選定プロセスを実施しており、現在、サイト選定第2段階にある。放射性廃棄物管理プログラム2016においてNAGRAは、公衆参加や各段階での審査手続、許認可手続の所要時間に不確定要素が多いことなどから、処分サイトの決定と概要承認手続きの終了を2031年としている。また、低中レベル放射性廃棄物用地層処分場の操業開始を2050年、高レベル放射性廃棄物用地層処分場の操業開始を2060年としている。

スイスにおける地層処分場サイト選定スケジュール

〇処分費用見積り

NAGRAは放射性廃棄物管理プログラム2016において、原子力発電事業者の団体であるスイスニュークリアが2016年12月に提出した原子力発電所の廃止措置及び放射性廃棄物の処分に関する費用見積りに基づいて、処分及び廃止措置の費用を示している。低中レベル放射性廃棄物処分、高レベル放射性廃棄物処分、廃止措置の費用見積りはそれぞれ以下の表のとおりである。

表:放射性廃棄物管理プログラムにおいて示された費用の見積り

項目

費用(1スイスフラン=105円で換算)

低中レベル放射性廃棄物処分

44億2,400万スイスフラン(約4,645億円)

高レベル放射性廃棄物処分

76億9,400万スイスフラン(約8,079億円)

原子力発電所の廃止措置*

34億600万スイスフラン(約3,576億円)

*:原子力発電所の廃止措置は電力会社が実施する。

〇研究開発計画書

NAGRAは『放射性廃棄物管理プログラム2016』と合わせて取りまとめた研究開発計画書において、今後5~10年に実施する研究を以下の図のような6つのテーマに分けて示している。これらのテーマの間では相互にデータや情報を交換しながら取り組みが進められる。NAGRAは研究開発の基本戦略について、今後、サイト選定第3段階で地質学的候補エリアが確定した際に見直しが必要になるとの認識を示している。

放射性廃棄物処分についてNAGRAが実施する基礎研究テーマ

【出典】

連邦原子力安全検査局(Eidgenössisches Nuklearsicherheitsinspektorat, ENSI)は2016年12月14日、処分実施主体である放射性廃棄物管理共同組合(Nationale Genossenschaft für die Lagerung radioaktiver Abfälle, NAGRA)に対し、地層処分場のサイト選定第3段階において検討する地質学的候補エリアに「北部レゲレン」を含めるべきとの見解を表明した。

NAGRAは、2016年8月に、地層処分場の技術的実現可能性に関するサイトの評価基準に関して、最大深度に係る補足文書をENSIに提出しており、最大深度700mより深いオパリナス粘土層での処分場の建設は極めて困難であり、建設・操業に関する安全面で不利になるなどの考え方を示した。オパリナス粘土層の多くが700m以深に分布している「北部レゲレン」については、予備候補として留保する提案を行っていた。

これに対してENSIは今回、北部スイスの地質学的データが十分とは言えない中で、NAGRAが示したオパリナス粘土層の安定性と堅牢性に関する想定は現在の科学技術的知見に照らして過度に保守的であると判断し、処分場建設上の適性の点で、北部レゲレンが明らかに不利であると判断できないとする見解を表明した。ENSIは今後、サイト選定第3段階において検討対象とする地質学的候補エリアを「チューリッヒ北東部」「ジュラ東部」「北部レゲレン」の3つとすべきとした審査報告書を2017年春に取りまとめる予定である。

今回のENSIの見解表明を受けてNAGRAは、ENSIの勧告を受け入れる意向を示している。NAGRAはすでに2016年2月の段階で、ENSIによる審査の結果により、北部レゲレンが予備候補ではなく優先候補とされた場合のスケジュールの遅延を避けるため、北部レゲレンにおけるサイト選定第3段階の探査を想定した準備作業(探査計画策定、三次元弾性波探査及びボーリング候補地点の検討等)に着手していることを公表している。NAGRAは、北部レゲレンにおいて、他の2つの優先候補と同様、2016年秋から三次元弾性波探査を実施しており、2017年春にはボーリング調査に向けた許認可申請も予定している。

○スイスにおけるサイト選定の現状

「第3段階に向けたサイト提案」 (NAGRA、技術報告書14-01「地質学的候補エリアの安全性の比較及び第3段階において検討対象とするサイトの提案」、2014年12月より)

「第3段階に向けたサイト提案」
(NAGRA、技術報告書14-01「地質学的候補エリアの安全性の比較及び第3段階において検討対象とするサイトの提案」、2014年12月より)

現在行われているサイト選定第2段階では、サイト選定第1段階で選定された高レベル放射性廃棄物の3つ、低中レベル放射性廃棄物の6つの地質学的候補エリアの中から、高レベル放射性廃棄物用、低中レベル放射性廃棄物用のそれぞれの地層処分場について、2カ所以上の候補を提案することが目標となっている。

高レベル放射性廃棄物の地層処分場について、当初の地質学的候補エリアは「ジュラ東部」「北部レゲレン」「チューリッヒ北東部」である。NAGRAは、2014年12月に取りまとめた技術報告書において、岩盤強度及び変形特性を考慮した上での建設上の適性の観点からの最大深度を地下700mと設定し、これに基づいて、オパリナス粘土層の多くが700mより深いところに分布している「北部レゲレン」をサイト選定第3段階で検討する優先候補とせず、予備候補として留保する提案を行っていた。

NAGRAの提案に対し、連邦原子力安全検査局(ENSI)の依頼に基づく外部専門家によるレビューにおいて、NAGRAが提出した岩盤力学的な基本情報や想定条件、設計基準等が不十分かつロバストではないと指摘しており、2015年11月にENSIは、「建設上の適性の観点から見た最大深度(岩盤強度及び変形特性を考慮して)」を用いた評価を可能とするため、NAGRAに補足情報の提出を求めていた。

NAGRAは2016年8月に地層処分場の技術的実現可能性に関するサイトの評価基準に関して、最大深度に係る補足文書をENSIに提出し、地質学的候補エリアの地質工学的条件について、構造地質学的な履歴や処分深度に応じた変化を踏まえて評価するとともに、処分場の人工バリア及び天然バリアに及ぼす影響を長期安全性の観点から評価することにより、高レベル放射性廃棄物用の地層処分場の最大深度を地下700mとする根拠を明らかにしていた。NAGRAは、北部レゲレンを地層処分場とすることについて、「チューリッヒ北東部」及び「ジュラ東部」と比較して明らかに適性が劣ると評価していた

ENSIは、2014年12月にNAGRAが取りまとめた報告書と今回の補足文書とを合わせて、サイト選定第2段階の絞り込み結果について審査を継続しており、今回2016年12月に、オパリナス粘土等の堆積岩層においては、処分空洞やシーリング構造物を十分な信頼性をもって建設可能な深度は地下900mまでと考えられることから、処分場建設上の適性の点で、北部レゲレンが明確に不利であると判断できないとした見解を表明した。

ENSIは2017年春を目途に審査報告書を公表する予定であったが、サイト選定手続きを監督する連邦エネルギー庁(Bundesamt für Energie, BFE)はENSIと協議を行い、審査報告書の公表に先立ち、審査結果の概要を明らかするようENSIに依頼したとしている。

 

○今後の予定

今後、連邦原子力安全検査局(ENSI)による2017年春の審査報告書の公表の後、原子力安全委員会(KNS)1 と州委員会2 がENSIの審査結果に対する見解を表明する。なお、6つの地域会議もそれぞれ、NAGRAの絞り込み提案に対する見解(一部は暫定見解)を表明済みである。連邦エネルギー庁(BFE)はENSIの審査結果、KNSと州委員会の見解等を踏まえて、地質学的候補エリアの提案に関する成果報告書を作成する。2017年末には、成果報告書とENSIの審査結果、各種見解など資料一式が3カ月にわたって州、自治体、政党、関心のある住民、近隣諸国を対象とした意見聴取に付される。意見聴取の結果を踏まえ、2018年末に連邦評議会3 が地質学的候補エリアの提案を承認する予定となっている。

 

【出典】

【2017年4月20日追記】

スイスの連邦原子力安全検査局(Eidgenössisches Nuklearsicherheitsinspektorat、ENSI)は2017年4月18日に、「サイト選定第3段階で調査を継続するサイトの提案に関する安全技術審査報告書」を公表し、改めて「北部レゲレン」を検討対象にすべきとの見解を示した。

ENSIは2016年12月14日に、今回と同様な審査結果の概要をすでに公表しており、処分実施主体である放射性廃棄物管理共同組合(Nationale Genossenschaft für die Lagerung radioaktiver Abfälle、NAGRA)に対して、優先候補として提案されている地質学的候補エリア「チューリッヒ北東部」及び「ジュラ東部」に加えて「北部レゲレン」についても、サイト選定第3段階での検討対象とすべきとの見解を表明していた。その際ENSIは、2017年春に審査報告書を公開する予定を示していた。

なお、審査報告書と併せてENSIは、NAGRAの地質学的候補エリアの提案に対する専門的な検討を地層処分場専門家グループ(EGT)、スイス国土地理院(swisstopo)、環境コンサルタント会社など複数の専門家・専門組織に委託しており、これらの組織などが作成した20以上の報告書もENSIのウェブサイトで公表されている。

 

【出典】

 


  1. 原子力安全委員会(Eidgenössische Kommission für nukleare Sicherheit, KNS)は、ENSI、環境・運輸・エネルギー・通信省(UVEK)、連邦評議会に対して安全性に関する重要な問題に関して助言する。 []
  2. 州内に地質学的候補エリアが含まれる7つの州に、近接する地方バーゼル半州を加えた8つの州の代表が参加している。また、投票権は有さないが、BFE、ENSI、ドイツの連邦環境・自然保護・建設・原子炉安全省(BMUB)、及びドイツの3つの自治体の代表者も参加している。 []
  3. 日本の内閣に相当 []
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合計16カ所のボーリング調査予定地点

スイスの処分実施主体である放射性廃棄物管理共同組合(Nationale Genossenschaft für die Lagerung radioaktiver Abfälle, NAGRA)は、2016927日に、地質学的候補エリア「ジュラ東部」及び「チューリッヒ北東部」において、サイト選定第3段階で実施するボーリング調査に必要な許可申請書を連邦エネルギー庁(Bundesamt für Energie, BFE)に提出したことを公表した。NAGRAは、ボーリング調査地点を選定するにあたり、これら2つのエリアにおいて20162月までに地表からの地質構造を調査する三次元弾性波探査を完了させていた。ボーリング調査は、2つの地質学的候補エリアのそれぞれ8地点(右の図の△)、計16地点で実施し、最大2,000メートルの深度までボーリング孔を掘削する計画である。

NAGRAは、特別計画「地層処分場」(詳細はこちら)に基づく地層処分場のサイト選定プロセス第2段階において、今回ボーリング調査の許可申請を行った2カ所の地質学的候補エリアを優先候補として提案している。この提案は、現在、BFE及び連邦原子力安全検査局(Eidgenössisches Nuklearsicherheitsinspektorat, ENSI)がレビュー等を行っており、サイト選定第3段階に進む地質学的候補エリアが確定するのは早くとも2018年末となる見込みである。サイト選定第3段階では最終的に、地層処分場を立地する1つのエリアを選定する計画となっており、ボーリング調査を含む地球科学的調査の結果に基づいて、地質学的候補エリア間の詳細な比較が行われることになっている。今回NAGRAが行ったボーリング調査の許可申請は、サイト選定第3段階に進む地質学的候補エリアが確定した後、速やかにボーリング調査に着手できるように、先行的に行ったものである。 

ボーリング調査の許可手続きと今後のスケジュール

原子力法第35条に基づいて、ボーリング調査のような地下に影響を及ぼす地球科学的調査の実施には、環境・運輸・エネルギー・通信省(Eidgenössisches Departement für Umwelt, Verkehr, Energie und Kommunikation, UVEK)の許可が必要となっており、UVEKの下で連邦エネルギー庁(BFE)が許可発給までの手続を担う1 。NAGRAが提出したボーリング調査の許可申請を受理したBFEは、許可申請書を2017年第1四半期に30日間の公衆縦覧に付す予定としている。また、BFEは、ボーリング調査に関する許可手続の状況について情報提供を行うため、2017年内に関係官庁や報道機関を対象としたセミナーを開催するとしている。BFEの作業と並行して、連邦原子力安全検査局(ENSI)は、今回NAGRAが許可申請したボーリング調査の内容について、安全面からの評価を行い、ボーリング調査が行われる16地点ごとに評価報告書を作成し、2017年末にBFEへ提出するとしている。ボーリング調査に関する許可手続が順調に進んだ場合、16地点でのボーリング調査のUVEKからの許可発給は2018年半ばとなる見込みである2

なお、現在進められているサイト選定第2段階のレビューの結果次第では、NAGRAが予備候補とした地質学的候補エリア「北部レゲレン」も、サイト選定第3段階に進む可能性が残っている。このため、NAGRAは、予備候補の北部レゲレンについても、ボーリング調査の実施地点を検討し、ボーリング調査の許可申請を行う意向である。 

【出典】


  1. 弾性波探査のように地下への影響の少ない調査の実施には、原子力法に基づく許可は不要である。ただし、原子力法令以外の連邦法や州法で別途定めがある場合は、それらの法令に基づく許可の取得が必要となっている。 []
  2. NAGRAはボーリング調査の過程で発生する新たな情報へ柔軟に対応するため、実際に必要とされるよりも多くの許可申請書を提出したとしており、全ての地点に対する許可が発給されない可能性を示している。 []

スイスの処分実施主体である放射性廃棄物管理共同組合(Nationale Genossenschaft für die Lagerung radioaktiver Abfälle, NAGRA)は、2016年8月12日に、地層処分場の技術的実現可能性に関するサイトの評価基準に関して、最大深度に係る補足文書を規制機関に提出したことを公表した。また、NAGRAは、NAGRAが設定した最大深度700mより深いオパリナス粘土層での処分場の建設は極めて困難であること、最大深度700mよりも深く処分する場合には建設・操業に関する安全面で不利になることなどの見解を示した。
今回NAGRAが提出した補足文書は、2014年12月に取りまとめたNAGRA技術報告書『地質学的候補エリアの安全性の比較及び第3段階において検討対象とするサイトの提案』に対して、規制機関である連邦原子力安全検査局(Eidgenössisches Nuklearsicherheitsinspektorat, ENSI)が2015年11月に提示した補足情報の要求に対応するものである。ENSIは、地質学的候補エリアの絞り込みにNAGRAが用いた指標「建設上の適性の観点から見た最大深度(岩盤強度及び変形特性を考慮して)」に関する技術情報に不足があり、評価基準の妥当性を検証できないと指摘していた。今回の補足文書においてNAGRAは、様々な深度における処分空洞、密封、バリアの概念を比較した結果を示している。

○スイスにおけるサイト選定の現状

「第3段階に向けたサイト提案」 (NAGRA、技術報告書14-01「地質学的候補エリアの安全性の比較及び第3段階において検討対象とするサイトの提案」、2014年12月より)

「第3段階に向けたサイト提案」
(NAGRA、技術報告書14-01「地質学的候補エリアの安全性の比較及び第3段階において検討対象とするサイトの提案」、2014年12月より)

現在行われているサイト選定第2段階では、サイト選定第1段階で選定された高レベル放射性廃棄物の3つ、低中レベル放射性廃棄物の6つの地質学的候補エリアの中から、高レベル放射性廃棄物用、低中レベル放射性廃棄物用のそれぞれの地層処分場について、2カ所以上の候補を提案することが目標となっている。

高レベル放射性廃棄物の地層処分場について、当初の地質学的候補エリアは「ジュラ東部」「北部レゲレン」「チューリッヒ北東部」である。NAGRAは、2014年12月に取りまとめた技術報告書において、岩盤強度及び変形特性を考慮した上での建設上の適性の観点からの最大深度を地下700mと設定し、これに基づいて、オパリナス粘土層の多くが700mより深いところに分布している「北部レゲレン」をサイト選定第3段階で検討する優先候補とせず、予備候補として留保する提案を行っていた。

NAGRAの提案に対する連邦原子力安全検査局(ENSI)の依頼に基づく外部専門家によるレビューにおいて、NAGRAが提出した岩盤力学的な基本情報や想定条件、設計基準等が不十分かつロバストではないとの指摘を受けており、2015年11月にENSIは、「建設上の適性の観点から見た最大深度(岩盤強度及び変形特性を考慮して)」を用いた評価を可能とするため、NAGRAに補足情報の提出を求めていた。

今回、NAGRAは地質学的候補エリアの地質工学的条件について、構造地質学的な履歴や処分深度に応じた変化を踏まえて評価するとともに、処分場の人工バリア及び天然バリアに及ぼす影響を長期安全性の観点から評価することにより、高レベル放射性廃棄物用の地層処分場の最大深度を地下700mとする根拠を明らかにした。NAGRAは、北部レゲレンを地層処分場とすることについて、「チューリッヒ北東部」及び「ジュラ東部」と比較すると明らかに適性が劣ると評価している。

○今後の予定

今後、連邦原子力安全検査局(ENSI)は、2015年1月にNAGRAが取りまとめた報告書と今回の補足文書とを合わせて、サイト選定第2段階の絞り込み結果について審査を継続する。特別計画「地層処分場」(詳細はこちら)に基づいて、ENSIは審査結果の取りまとめを2017年春に公表する予定である。その後、原子力安全委員会(KNS)1 と州委員会2 がENSIの審査結果に対する見解を表明する。ENSIの審査結果、KNSと州委員会の見解を踏まえて、連邦エネルギー庁(BFE)は地質学的候補エリアの提案に関する成果報告書とファクトシートを作成する。2017年末には、成果報告書とファクトシートについて3か月にわたって州、自治体、政党、関心のある住民、近隣諸国を対象に意見聴取が実施される。意見聴取の結果を踏まえ、2018年末に連邦評議会3 が地質学的候補エリアの提案を承認する予定となっている。

 

【出典】


  1. 原子力安全委員会(Eidgenössische Kommission für nukleare Sicherheit, KNS)は、ENSI、環境・運輸・エネルギー・通信省(UVEK)、連邦評議会に対して安全性に関する重要な問題に関して助言する。 []
  2. 州内に地質学的候補エリアが含まれる7つの州に、近接する地方バーゼル半州を加えた8つの州の代表が参加している。また、投票権は有さないが、連邦エネルギー庁(Bundesamt für Energie, BFE)、連邦原子力安全検査局(ENSI)、ドイツの連邦環境・自然保護・建設・原子炉安全省(BMUB)、及びドイツの3つの自治体の代表者も参加している。 []
  3. 日本の内閣に相当 []

スイスの連邦原子力安全検査局(Eidgenössisches Nuklearsicherheitsinspektorat, ENSI)は、2016年7月28日付プレスリリースにおいて、スイス北部の高速道路トンネルの掘削現場において、オパリナス粘土層を対象とした岩盤力学的な調査を実施することを公表した。この調査は、2016年2月から開始されている「ベルヒェン代替トンネル」のトンネル掘削工事と並行して進められる予定であり、ENSIがチューリッヒ工科大学に委託して実施する。

ベルヒェン・トンネルの位置(Tagesanzeiger紙より引用)

ベルヒェン・トンネルの位置(Tagesanzeiger紙より引用)

ベルヒェン代替トンネル

スイスの高速道路A2ルート上にあるベルヒェン・トンネルは、1970年代に建設され、スイス北部のジュラ山脈を貫く上下2本、合計4車線のトンネルである。2023年から大規模な改修工事を行う計画であり、改修中に閉鎖するトンネルの代替として運用するため、2016年2月から全長3.2km、2車線のベルヒェン代替トンネルの建設が開始されている。代替トンネルの開通は2022年の予定であり、トンネル工事には、スイス最大級の掘削機が投入されている。

オパリナス粘土は、放射性廃棄物管理共同組合(Nationale Genossenschaft für die Lagerung radioaktiver Abfälle, NAGRA)が2015年1月に提案した地質学的候補エリア「ジュラ東部」及び「チューリッヒ北東部」の母岩である。ベルヒェン代替トンネルの位置は、これら2つの地質学的候補エリアとは重なっていないが、母岩と同様のオパリナス粘土層が存在する。連邦原子力安全検査局(ENSI)は、地層処分場プロジェクトとは直接関係のないベルヒェン代替トンネルにおいて、大規模なオパリナス粘土層を掘削する機会を利用することにより、既存の地下研究施設では実施できなかった岩盤力学的な調査を実施するとしている。

調査では、実際の構造地質学・水理地質学的条件下において、トンネル掘削機を用いた場合におけるオパリナス粘土層の挙動や掘削後のオパリナス粘土の膨張に係る挙動等を、光学スキャン、写真撮影、各種計測、実験室での分析等により確認する計画である。

ENSIは調査に向け、同トンネルを管轄する連邦道路庁(ASTRA)及びトンネル工事事業者らと協議を進める意向である。ENSIは本調査の予算として、17万5,000スイスフラン(2,030万円、1スイスフラン=116円で換算)を計上している。

 

【出典】

連邦エネルギー庁(Bundesamt für Energie, BFE)は2016年3月22日のプレスリリースにおいて、実施主体である放射性廃棄物管理共同組合(Nationale Genossenschaft für die Lagerung radioaktiver Abfälle, NAGRA)が2015年1月に提出していた環境影響評価に関する報告書等について、環境保護法令に基づく要件を概ね満足しているとの連邦環境庁(Bundesamt für Umwelt, BAFU)の見解を公表した。NAGRAは、特別計画「地層処分場」(以下「特別計画」という)に基づいて放射性廃棄物処分場に係る地質学的候補エリアとして「チューリッヒ北東部」と「ジュラ東部」とを優先候補として提案した際、それぞれで環境影響評価の予備調査を実施し、地質学的候補エリア別の「予備調査報告書」及び「本調査第1ステージの実施のための仕様書」(以下「仕様書」という)をBFEに提出していた。(スイスにおける放射性廃棄物処分場に係る環境影響評価プロセスについては下記の解説を参照)

NAGRAの予備調査報告書と仕様書を審査する連邦環境庁(BAFU)は、連邦自然・景観保護委員会(Eidgenössische Natur- und Heimatschutzkommission, ENHK)の暫定的な見解や関係州からの意見を評価し、ジュラ東部について24件、チューリッヒ北東部について22件の要求事項・勧告を提示している。要求事項には、国家景観・自然遺産リストの登録対象となっている区域への影響を最小化するため、立地、建物の配置、風景との調和などの項目を改善すべきとの要求等が含まれている。BAFUはNAGRAに対し、要求事項・勧告に従って、環境影響評価の仕様書を修正するよう求めている。

なお、連邦原子力安全検査局(Eidgenössisches Nuklearsicherheitsinspektorat, ENSI)は2017年春までの予定で、NAGRAがサイト選定第2段階の絞り込み提案の際に提出した報告書の審査を行っている。その過程でENSIは、NAGRAが予備候補とした地質学的候補エリア「北部レゲレン」に関する一部の技術情報の不備を指摘しており、NAGRAが現在対応を行っている。ENSIによる審査の結果、北部レゲレンを優先候補から外すことは不適切であると判断された場合、NAGRAは北部レゲレンについても、今後、環境影響評価の予備調査を実施することになる。

 

〔解説〕 スイスにおける放射性廃棄物処分場に係る環境影響評価プロセス

放射性廃棄物処分場に係る環境影響評価は、特別計画及び環境影響評価令に基づき、予備調査、本調査第1ステージ、本調査第2ステージの順序で段階的に進められる。

予備調査は、処分場プロジェクト実施前の環境の状態、環境保護のための措置等の計画の詳細、予測される環境影響を評価するものである。本調査第1ステージと第2ステージは、それぞれ概要承認と建設許可の許認可段階で実施される環境影響評価である。

環境影響評価の実施の手順は以下の通りである。

サイト選定第2段階

・NAGRAが環境影響評価の予備調査を実施し、「予備調査報告書」を作成。

・NAGRAは環境影響評価の「本調査第1ステージの実施のための仕様書」を作成し、予備調査報告書とともに連邦エネルギー庁(BFE)へ提出。

・環境に関する観点で審査・評価し、連邦エネルギー庁(BFE)を支援する連邦環境庁(BAFU)が予備調査報告書と仕様書を評価。

サイト選定第3段階

・NAGRAが環境影響評価の本調査第1ステージを実施し、報告書を作成。報告書は概要承認の申請書類の一部としてBFEへ提出。

・NAGRAは環境影響評価の本調査第2ステージの実施のための仕様書を作成。

・州や関心のある住民等は申請書類、その他関連書類に対する意見を表明。

・BAFUが報告書と仕様書を評価。

建設許可申請

・NAGRAが環境影響評価の本調査第2ステージを実施し、報告書を作成。報告書は建設許可のその他の申請書類とともに環境・運輸・エネルギー・通信省(UVEK)へ提出。

・BAFUが報告書を評価。

 

 

【出典】

【2016年4月20日追記】

放射性廃棄物管理共同組合(NAGRA)は2016年4月13日に、北部レゲレンにおけるサイト選定第3段階での探査計画、サイト選定第2段階での環境影響評価の予備調査報告書(2015年3月31日付)、並びに、サイト選定第3段階での環境影響評価の本調査第1ステージに係る「本調査第1ステージの実施のための仕様書」を連邦エネルギー庁(BFE)へ提出した。

NAGRAは2016年2月に、ENSIによる審査の結果、北部レゲレンが予備候補ではなく優先候補とされた場合のスケジュールの遅延を避けるため、北部レゲレンにおけるサイト選定第3段階での探査を想定した準備作業に着手していることを公表していた

なお、NAGRAが優先候補として提案した地質学的候補エリア「ジュラ東部」と「チューリッヒ北東部」については、環境影響評価の予備調査報告書に対する連邦環境庁の審査が2016年3月までに完了している。

【出典】

スイスの連邦評議会1 は2015年10月8日、地層処分場の設置に係る立地地域への経済的措置としての「交付金」及び影響に対する「補償金」について、現行の法制度の十分性に関する検討結果を取りまとめた報告書を公表した。本報告書は、スイスの国民議会(下院)の環境・都市計画・エネルギー委員会(UREK-N)が2013年4月9日に連邦評議会に対して検討を要請していたものである。UREK-Nの要請を受けて連邦評議会は、今回公表した報告書「地層処分場の影響—国民議会環境・都市計画・エネルギー委員会(UREK-N)要請13.3286(2014年4月9日付)に対応する連邦評議会報告」において、特別計画「地層処分場」(以下「特別計画」という)に十分に規定されていることから、追加的な法整備は不要であるとの結論を示している。

特別計画に基づくサイト選定手続では、交通インフラなど他の事業にも共通する土地収用法に基づく補償義務に加え、放射性廃棄物処分場の立地地域に対する経済的措置として「交付金」及び立地地域へ及ぼす影響に対する措置として「補償金」が規定されている。

特別計画における「交付金」

特別計画では、国としての課題の解決への貢献に報いる経済的措置として、処分場の立地地域に対し、「交付金」を支払うことを定めている。特別計画に基づく「交付金」は、補助金法における交付金や土地収用法における補償のような法的根拠に基づく措置とは異なり、立地地域との個別の取り決めに基づいて支払われるものである。なお、スイスではすでに、原子力発電所や中間貯蔵施設について、取り決めに基づいて事業者が立地地域に対し、経済的措置を講じている。

「交付金」の分配・使途については、サイト選定第3段階の概要承認の発給前に、処分実施主体である放射性廃棄物管理共同組合(Nationale Genossenschaft für die Lagerung radioaktiver Abfälle, NAGRA)が地域会議、関係する州、自治体と協議し、取り決める。概要承認が発給され処分場サイトが確定した後に、NAGRAを経由する形で、廃棄物発生者がこの取り決めに基づいて立地地域へ「交付金」を支払う。

特別計画における「補償金」

特別計画では、地層処分場の計画や建設・操業に伴い立地地域に及ぼす影響に対し、「補償金」を支払うことが定められている。「交付金」の場合と同様に、特別計画に基づく「補償金」は、法律に基づく措置ではなく、地域会議及び関係する州が表明する影響に関して、廃棄物発生者、地域会議、関係する州、自治体との交渉の上で取り決められるものである。補償内容は連邦エネルギー庁(BFE)の承認を受ける必要がある。「補償金」に係る資金は、「交付金」と同様に、NAGRAを通じて廃棄物発生者が提供する。

地層処分場により立地地域が受ける影響に関して、特別計画は肯定的な面と影響の両面を早期に確認するよう要求しており、すでに連邦エネルギー庁(BFE)が2014年11月に、放射性廃棄物の地層処分場が立地地域に与える社会影響・経済影響・環境影響に関する調査の最終報告書を公表している

なお、「交付金」及び「補償金」の資金は、連邦が監督する放射性廃棄物管理基金により確保されることになっている。廃棄物発生者はこの基金に毎年拠出金を払い込んでおり、積立てられた資金のうち低中レベル放射性廃棄物用処分場については約3億スイスフラン(約381億円、1スイスフラン=127円で換算)、高レベル放射性廃棄物用処分場については約5億スイスフラン(約635億円)が立地地域に対する「交付金」及び「補償金」に充てられることになっている。2 連邦エネルギー庁(BFE)は、サイト選定第2段階終了までに、関係する州、自治体及び廃棄物発生者の関与のもと、「交付金」及び「補償金」に係る交渉の具体的なプロセスをガイドラインとしてまとめる予定である。

 

【出典】


  1. 日本の内閣に相当。 []
  2. 放射性廃棄物管理基金の管理委員会は廃棄物発生者による拠出金の額を決定する際の根拠として、原子力発電事業者の団体であるスイスニュークリアによる費用見積(2011年版)を用いている。 []

スイスの処分実施主体である放射性廃棄物管理共同組合(NAGRA)は、2015年8月28日に、地質学的候補エリア「ジュラ東部」における三次元弾性波探査1 の実施について、アールガウ州の建設・運輸・環境省がNAGRAに対して許可発給したことを公表した。NAGRAは、2015年1月末に、地層処分場のサイト選定プロセス第2段階における地質学的候補エリアの絞り込みの結果として「ジュラ東部」と「チューリッヒ北東部」の2カ所を提案していた。サイト選定第3段階に進む地質学的候補エリアが確定するまでの間、NAGRAは2つの地質学的候補エリアにおいて、地表から三次元弾性波探査を実施する予定としていた

三次元弾性波探査の対象範囲とスケジュール

今回のアールガウ州の許可発給を受け、NAGRAは関係する地権者へ説明して承諾を得た後、2015年9月末から12月半ばにかけて、ジュラ東部において三次元弾性波探査を実施する予定である。ジュラ東部では、高レベル放射性廃棄物(HLW)、中低レベル放射性廃棄物(I/LLW)処分場の暫定的な設置範囲とされる区域の全域を含む約96km2(下左図中)を三次元弾性波探査の範囲としている。

ジュラ東部での三次元弾性波探査が終了後、NAGRAは2016年1月から約3週間にわたり、もう一つの地質学的候補エリア「チューリッヒ北東部」の北部約21km2(下右図中)を対象として三次元弾性波探査を実施する予定である。なお、南部の高レベル放射性廃棄物処分場の地質学的候補エリアを中心とする約50km2の範囲については、既存の地質情報としてNAGRAが1997~1999年にかけて実施した三次元弾性波探査の結果が利用可能であるため2 、今回の三次元弾性波探査の範囲は北部に限定したものとなっている。

「ジュラ東部」における三次元弾性波探査対象区域

「ジュラ東部」における三次元弾性波探査対象区域
(NAGRA、パンフレット「第3段階に向けた三次元弾性波探査(ジュラ東部版)」、2015年1月より)

「チューリッヒ北東部」における三次元弾性波探査対象区域

「チューリッヒ北東部」における三次元弾性波探査対象区域
(NAGRA、パンフレット「第3段階に向けた三次元弾性波探査(チューリッヒ北東部版)」、2015年1月より)

 

スイスのサイト選定プロセスにおける三次元弾性波探査の位置づけ

スイスでは、特別計画「地層処分場」(以下「特別計画」という)に基づいて、3段階でのサイト選定手続きが進められている。サイト選定に係る地球科学的調査のうち、地表から行う調査には弾性波探査やボーリング調査などがあるが、弾性波探査のように地下への影響の少ない調査の実施には、原子力法に基づく許可は不要である3 。ただし、原子力法令以外の連邦法や州法で別途定めがある場合は、それらの法令に基づく許可の取得が必要となっている4

サイト選定プロセス第2段階での地質学的候補エリアの絞り込み過程においてNAGRAは、第1段階で選定された全6つの地質学的候補エリアの比較可能性の確保・改善を目的として、2011年から2012年にかけて「ジュラ東部」と「北部レゲレン」(下の地図参照)を中心とするスイス北部を対象に、二次元弾性波探査を実施した。この際には、NAGRAは事前に対象地域の自治体への説明や州当局との協議を行い、土地所有者に連絡をした上で実施した 。なお、ボーリング調査等、原子力法に基づく許可が必要な地球科学的調査については、NAGRAが2010年の報告書において、追加の調査を実施せずに第2段階における予備的安全評価が可能との判断を示しており 、連邦原子力安全検査局(ENSI)もこの判断を肯定している 5

地質学的候補エリア「ジュラ東部」及び「チューリッヒ北東部」の位置

地質学的候補エリア「ジュラ東部」及び「チューリッヒ北東部」の位置
(NAGRA、技術報告書14-01「地質学的候補エリアの安全性の比較及び第3段階において検討対象とするサイトの提案」、2014年12月より

2015年9月現在、スイスにおける地層処分場のサイト選定プロセスは、第2段階の終盤に差し掛かっており、各地質学的候補エリアにおける地層処分場の地上施設の設置地点案(右の地図の赤丸)を含む形で、「ジュラ東部」と「チューリッヒ北東部」の2つの地質学的候補エリアの絞り込み結果についての連邦原子力安全検査局(ENSI)などによる審査が行われているところである。NAGRAは2015年4月に、これら2つの地質学的候補エリアで実施する三次元弾性波探査及びボーリング調査のスケジュールを公表した。NAGRAは、ボーリング調査の実施に当たっては、原子力法による許可が必要となっており、具体的には、環境・運輸・エネルギー・通信省(UVEK)から地質学的候補エリアでの地球科学的調査の許可を受ける必要があるとしている。また、ボーリング調査の作業は、NAGRAが提案した2つの地質学的候補エリアを連邦評議会が承認する2017年以降(すなわちサイト選定プロセス第3段階)に開始するとしている

 

【出典】

 

【2015年10月5日追記】

放射性廃棄物管理共同組合(NAGRA)は2015年10月1日に、地質学的候補エリア「ジュラ東部」における三次元弾性波探査を同日に開始したことを公表した。今回の探査はアールガウ州ベツベルク自治体(Bözberg)周辺の約96km2の区域を対象としており、約3カ月をかけて実施する予定としている。三次元弾性波探査の対象区域には、農地や人口密集地が含まれており、NAGRAは探査作業の実施に先立ち、関係住民の同意を得ている。

三次元弾性波探査(反射法)では、人工的に地震を発生させる起振車を用いて、地層の境目で反射した弾性波を地表に設置した受振器で測定する。実際の作業は、NAGRAの委託を受けたドイツのDMT社の120名で実施し、起振車6台、受振器6万台が用いられ、ケーブル総延長は150kmに及ぶとされている。

 

【出典】

 

【2016年10月27日追記】

「北部レゲレン」における三次元弾性波探査対象区域 (NAGRA、パンフレット「第3段階に向けた地球科学的調査」、2016年4月より)

「北部レゲレン」における三次元弾性波探査対象区域
(NAGRA、パンフレット「第3段階に向けた地球科学的調査」、2016年4月より)

放射性廃棄物管理共同組合(NAGRA)は2016年10月24日に、地質学的候補エリア「北部レゲレン」における三次元弾性波探査を開始することを公表した。今回の探査は、ドイツ・スイス両国をまたぐ約91km2の区域を南北2つのブロックに分けて2017年2月まで実施される。北側のブロックは、大部分がドイツ領内(バーデン・ビュルテンベルク州)に属する。一方、南側のブロックはスイス領内である。

NAGRAは、2015年1月末にサイト選定第2段階における地質学的候補エリアの絞り込みにおいて、北部レゲレンをサイト選定第3段階に進む地質学的候補エリアとせず、予備候補とする内容の提案を行っている。この提案について、現在、連邦原子力安全検査局(ENSI)が審査を行っているが、北部レゲレンが予備候補ではなく優先候補となる可能性が残っている。このため、NAGRAは2016年2月に、北部レゲレンが優先候補となる場合を想定して準備作業に着手していることを公表していた。NAGRAは、北部レゲレンにおいても三次元弾性波探査を行うことにより、サイト選定第3段階での作業スケジュールの遅延を回避できるとしている。

 

【出典】

【2017年2月8日追記】

放射性廃棄物管理共同組合(NAGRA)は2017年2月3日に、地質学的候補エリア「北部レゲレン」における三次元弾性波探査を終了した。これにより、地質学的候補エリア「ジュラ東部」「チューリッヒ北東部」「北部レゲレン」を対象に2015年10月から実施された一連の三次元弾性波探査が終了した。

3つの地質学的候補エリアで実施された三次元弾性波探査は、スイスでは過去最大規模のものであり、調査範囲は合計で約200km2に及んだ。測定地点は5万1,000カ所に上った。調査範囲の関係自治体は53であり、NAGRAは地権者3,999人と事前協議を行い、このうち98%に相当する3,907人の地権者から所有地における探査に対する同意を得たとしている。

サイト選定に係る地球科学的調査のうち、原子力法に基づく許可が必要なボーリング調査についてNAGRAは、2016年9月にジュラ東部とチューリッヒ北東部での実施に向けた許可申請書を既に提出しており、今後、北部レゲレンについてもボーリング調査の許可申請を行う意向である

 

【出典】


  1. 弾性波探査(反射法)は専用の車両や小規模の発破を用いて人工的に振動を発生させ、地層の境目で反射した弾性波を地表に設置した受振器で測定する手法であり、地下の岩盤構造の把握を目的として実施される。 []
  2. NAGRAはスイス国内における高レベル放射性廃棄物等の処分の実現可能性を実証した「処分の実現可能性実証プロジェクト」の一環として、1997~1999年に現在の地質学的候補エリア「チューリッヒ北東部」南部に相当する区域を対象に、三次元弾性波探査及びボーリング調査を実施した。プロジェクトの最終報告書は2002年に公表されている。 []
  3. スイスの原子力令第61条において、弾性波探査、並びに、例えば重力探査、電気探査及び電磁探査等の物理探査は、原子力法による地球科学的調査の許可が不要であることが規定されている。 []
  4. 地質学的候補エリア「ジュラ東部」が所在するアールガウ州では、州法「地下及び天然資源の開発に関する法律」第4条において、地下深部の利用を想定した活動を州当局の許可の対象と定めている。 []
  5. NAGRAによる第2段階の絞り込みに向けた現有知識の証明は、特別計画に基づく手続きの一環として実施されたものである。NAGRAの報告書を審査したENSIは2011年、原子力法上の許可が必要な地質学的調査は不要とのNAGRAの判断を認めつつも、41項目の補足要求を付した 。これらの要求項目にNAGRAが対応したことを受け、ENSIは2014年8月に、NAGRAの現有知見は第2段階の絞り込み実施に十分な水準に達しているとの最終判断を示した 。 []
「第3段階に向けたサイト提案」 (NAGRA、技術報告書14-01「地質学的候補エリアの安全性の比較及び第3段階において検討対象とするサイトの提案」、2014年12月より)

「第3段階に向けたサイト提案」
(NAGRA、技術報告書14-01「地質学的候補エリアの安全性の比較及び第3段階において検討対象とするサイトの提案」、2014年12月より)

スイスの処分実施主体である放射性廃棄物管理共同組合(Nationale Genossenschaft für die Lagerung radioaktiver Abfälle, NAGRA)は、2015年1月30日に、特別計画「地層処分場」(以下「特別計画」という)に基づくサイト選定第2段階における地質学的候補エリアの絞り込みの結果として、「チューリッヒ北東部」及び「ジュラ東部」の2つを提案したことを公表した。NAGRAは、絞り込んだ2つの地質学的候補エリアについて、高レベル放射性廃棄物、低中レベル放射性廃棄物のいずれの処分場にも適しているとしている。今回のNAGRAによる提案については、今後、連邦原子力安全検査局(Eidgenössisches Nuklearsicherheitsinspektorat, ENSI)等による審査を経た上で、連邦評議会1 が承認することにより、サイト選定第3段階に進む候補として確定することとなっている。確定時期は2017年半ばと見込まれている

「サイト地域の安全性比較結果」 (NAGRA、パンフレット「地層処分場の地質学的候補エリア---第3段階に向けたNAGRA提案」、2015年1月より)

「サイト地域の安全性比較結果」
(NAGRA、パンフレット「地層処分場の地質学的候補エリア—第3段階に向けたNAGRA提案」、2015年1月より)

現在行われているサイト選定第2段階では、サイト選定第1段階で選定された高レベル放射性廃棄物の3つ、低中レベル放射性廃棄物の6つの地質学的候補エリアの中から、高レベル放射性廃棄物用、低中レベル放射性廃棄物用のそれぞれの地層処分場について、2カ所以上の候補を提案することが目標となっている。この目標に向けてNAGRAは、科学的・技術的な基準に基づいて、安全性の観点からサイト(地下施設及び付属する地上施設の設置区域を含む)を比較する作業を進めていた。具体的には、「天然バリアの有効性」「天然バリアの長期安定性」「天然バリアの探査可能性・評価可能性」「建設上の適性」の4つの評価項目を設けて、その下に複数の指標を設定し、これらを「最適」(右図中の濃緑色)、「適格である」(薄緑色)、「条件付きで適格である」(黄色)、「あまり適格ではない」(桃色)の4段階で評価した。なお、NAGRAは、今回の地質学的候補エリアの絞り込みにおいて、社会・政治的な基準は考慮していないとしている。

今回、NAGRAが提案したチューリッヒ北東部、ジュラ東部は、高レベル放射性廃棄物処分場、低中レベル放射性廃棄物処分場のいずれについても、上記の4つの評価項目及び指標のすべてに対して「最適」または「適格である」との評価がされている。NAGRAは、これら2つの地質学的候補エリアでは、不透水性の岩盤であるオパリナス粘土が適切な深度にあり、氷河等による侵食の影響を受けず長期に安定して存在しているため、放射性廃棄物を安全に閉じ込めることができると結論付けている。高レベル放射性廃棄物処分場の地質学的候補エリアとして検討していた北部レゲレンについては、「建設上の適性」が「あまり適格ではない」と評価しており、第3段階で検討する優先候補とせず、予備候補として留保することを提案している。

今後は連邦原子力安全検査局(ENSI)が2016年を目途に、NAGRAが取りまとめた選定根拠に関する報告書を審査することとなる。チューリッヒ北東部及びジュラ東部がサイト選定第3段階に進む候補として確定するまでの間、NAGRAは2つの地域を対象に地表からの三次元弾性波探査を実施する予定である。なお、ボーリング調査は、サイト選定第3段階(2017年半ば以降)で実施することになっている。NAGRAは、ボーリング調査の実施候補区域として、チューリッヒ北東部の7カ所、ジュラ東部の8カ所を示しており、最終的には各地域とも4カ所程度でボーリング調査を実施する計画である。NAGRAは、サイト選定第3段階において最終的な候補サイトを提案できるようになる時期を2020年頃としており、2027年頃には処分サイトが確定する見込みである。

【出典】

 

【2015年4月20日追記】

スイスの放射性廃棄物管理共同組合(NAGRA)は、2015年4月16日の記者会見において、絞り込んだ2つの地質学的候補エリアで実施する三次元弾性波探査及びボーリング調査のスケジュールを公表した。

NAGRAは、地質学的候補エリア及びその周辺において、三次元弾性波探査を実施する予定である。地質学的候補エリア「ジュラ東部」については、地権者から探査の了承を2015年7月~8月に得た上で、2015年10月には探査を開始するとしている。「ジュラ東部」での三次元弾性波探査は約3カ月を予定している。その後、2016年1月から地質学的候補エリア「チューリッヒ北東部」で三次元弾性波探査を開始し、3週間程度で終了するとしている。

また、今回公表のスケジュールでボーリング調査については、地質学的候補エリア「ジュラ東部」及び「チューリッヒ北東部」のそれぞれ7カ所から8カ所の地点について、2015年末までに調査の実施に必要な申請をNAGRAが行う予定としている。ボーリング調査などの地球科学的調査の実施に当たっては、原子力法による許可が必要となっており、具体的には、環境・運輸・エネルギー・通信省(UVEK)が地質学的候補エリアでの地球科学的調査の許可を発給することとなる。実際の掘削作業は、NAGRAが提案した2つの地質学的候補エリアを連邦評議会が承認する2017年以降に開始するとしている。

【出典】

 

【2015年9月11日追記】

スイスにおける放射性廃棄物処分場のサイト選定手続を監督する連邦エネルギー庁(Bundesamt für Energie, BFE)は2015年9月9日、実施主体である放射性廃棄物管理共同組合(NAGRA)に対し、NAGRAが2015年1月に提案した第2段階における地質学的候補エリアの絞り込みの結果の根拠に関する報告書について、技術情報に不足があるとして、今後数カ月以内に追加資料を提出するよう指示したことを公表した。

BFEによる今回の指示は、NAGRAの報告書を審査中の連邦原子力安全検査局(Eidgenössisches Nuklearsicherheitsinspektorat, ENSI)の指摘に基づくものである。NAGRAは第2段階での地質学的候補エリアの絞り込み結果の提案において、処分に適した地層の最大深度が深いため、「建設上の適性」の面で不利であることを理由に、地質学的候補エリア「北部レゲレン」を第3段階において検討する優先候補とせず、予備候補として留保する提案を行っていた。これについてENSIは、NAGRAが提示した「建設上の適性」の項目に関する根拠データは不完全であり、審査を行うには不十分であることを指摘した。ENSIは指摘部分以外について審査を継続する。

BFEは、NAGRAに対する追加資料の提出指示に伴い、サイト選定のスケジュールが半年から1年遅延する見込みとしている。なお、BFEは、複雑な検証プロセスにおける科学技術的データの追加要求は何ら特別なことではなく、今後も同様の追加指示を出す可能性があるとしている。

【出典】

【2015年11月20日追記】

スイスの連邦原子力安全検査局(ENSI)は2015年11月9日、放射性廃棄物管理共同組合(NAGRA)に対する要求書「特別計画『地層処分場』第2段階における指標『建設上の適性の観点から見た最大深度』に関する追加要求」を公表した。

現在、ENSIは、NAGRAが2015年1月に提案したサイト選定第2段階における地質学的候補エリアの絞り込みの結果の根拠に関する報告書を審査している。今回のENSIの要求書は、ENSIが2015年9月に建設上の適性に関する技術情報の不足を指摘したことに関して、ENSIの依頼に基づく外部専門家による2件のレビュー結果をまとめるとともに、レビュー結果に基づく具体的な追加要求事項を示したものである。(【2015年9月11日追記】参照)。

サイト選定第1段階における地質学的候補エリアの境界設定にあたり、NAGRAは安全性と技術的実現可能性に関する13の基準に対応する指標を複数設定した。このうちの1つの指標である「建設上の適性の観点から見た最大深度」に関しては、オパリナス粘土等の堆積岩層において処分空洞やシーリング構造物を十分な信頼性をもって建設可能な最大深度について、低中レベル放射性廃棄物処分場の場合は地下800mまで、高レベル放射性廃棄物処分場の場合は地下900mまでとすることを最低限の要件として提案を行っていた。

NAGRAは、サイト選定第2段階の絞り込み作業においても本指標を引き続き用いているが、指標の名称を「建設上の適性の観点から見た最大深度(岩盤強度及び変形特性を考慮して)」へと変更するとともに、スイス北部の地質学的候補エリアにおける最大深度を、低中レベル放射性廃棄物処分場の場合は地下600m、高レベル放射性廃棄物処分場の場合は地下700mまでとする「最適化要件」を設定し、この最適化要件に合わせて指標の評価基準を変更した。

しかし、外部専門家によるレビューにおいて、NAGRAが提出した岩盤力学的な基本情報や想定条件、設計基準等が不十分かつロバストではないとする指摘がされた。これを受けてENSIは、上記の指標「建設上の適性の観点から見た最大深度(岩盤強度及び変形特性を考慮して)」の最適化要件、並びに評価基準の妥当性を検証できないとする立場を取り、この指標に基づいて地質学的候補エリアの優劣を評価することは疑問の余地があるとしている。

外部専門家によるレビュー結果を踏まえ、ENSIは、今回の要求書においてNAGRAに対し、指標を用いて評価できるようにするために必要な補足事項を示した。

ENSIがNAGRAに求めた補足事項のうち、主要なものは以下の通りである。

  • NAGRAが地層処分概念に修正を加えた概念をいくつか提案していることについて、それらの修正した概念に基づく処分場の建設・操業及び長期安全性に及ぼす影響についての検討・評価結果を、各々の修正した概念の優劣を含めて記載した文書を作成すること。
  • 構造地質学的な履歴や処分深度に応じた変化を踏まえて、地質学的候補エリアの地質工学的条件を評価すること。
  • 処分場の建設段階及び操業段階における崩落などの事故シナリオについて示すとともに、こうした事故への対処方法を示すこと。
  • 処分場の範囲や深度に応じた坑道の支保についての概念や、坑道の支保に用いられる物質等が、処分場の人工バリア及び天然バリアに及ぼす影響を長期的安全性の観点から評価すること。

 

【出典】                                        

【2016年2月10日追記】

スイスの放射性廃棄物管理共同組合(NAGRA)は2016年2月8日のプレスリリースにおいて、地層処分場の地質学的候補エリアの「サイト地域」を持っているすべての州の機関として設置されている州安全ワーキンググループ(AG SiKa)2 及び州安全専門家グループ(KES)3 が、NAGRAのサイト選定プロセス第2段階での絞り込み結果を評価した報告書を提示したことを公表した。これら2つのグループは報告書の中で、地質学的候補エリアの北部レゲレンを第3段階における予備候補とするのではなく、引き続き調査対象として残すべきとの見解を示した。

NAGRAは2015年1月に地層処分場のサイト選定プロセス第2段階での絞り込み結果を公表し、6つの地質学的候補エリアのうち、ジュラ東部とチューリッヒ北東部の2エリアを優先候補として調査を継続し、北部レゲレンを高レベル放射性廃棄物処分に係る予備候補とし、ジュートランデン、ジュラ・ジュートフス、ヴェレンベルクを低中レベル放射性廃棄物処分に係る予備候補として留保することを提案していた。これに対して、AG SiKaとKESは、NAGRAが提案した2つの優先候補に北部レゲレンを加えた3エリアで調査を継続すべきとの意見を表明したことになる。一方、AG SiKa、KESは、NAGRAの提案のうち、以下の点について賛同している。

  • 全種類の放射性廃棄物について、処分場の母岩としての検討対象をオパリナス粘土に集中すること
  • ジュートランデン、ジュラ・ジュートフス、ヴェレンベルクの3カ所を第3段階において検討する優先候補ではなく、低レベル放射性廃棄物処分の予備候補として留保すること

北部レゲレンに関しては、NAGRAの提案を審査している連邦原子力安全検査局(ENSI)が技術情報の不足を指摘し、これを受けてサイト選定手続を監督する連邦エネルギー庁(BFE)がNAGRAに対し、2015年9月に、追加資料の提出を指示している。

NAGRAは2016年中頃までに追加資料をENSIに提出する予定である。ENSIは、技術情報が不足している部分以外の審査を継続しており、審査結果の取りまとめは2017年の春頃となる見込みとされている。

なお、ENSIによる審査の結果により、北部レゲレンが予備候補ではなく優先候補とされた場合でのスケジュールの遅延を避けるため、NAGRAはすでに、北部レゲレンにおける第3段階の探査を想定した準備作業(探査計画策定、三次元弾性波探査及びボーリング候補地点の検討等)に着手ずみである。

 

【出典】

 

【2016年4月20日追記】

連邦原子力安全検査局(ENSI)は2017年の春頃を目途に、放射性廃棄物管理共同組合(NAGRA)によるサイト選定プロセス第2段階での絞り込み結果に対する審査を行っているが、NAGRAは、2016年4月14日に、ENSIの審査結果を待たずに、NAGRAがサイト選定プロセス第2段階での絞り込みの段階で予備候補とした地質学的候補エリア「北部レゲレン」において、2016年秋に三次元弾性波探査を実施することを公表した。

NAGRAが優先候補として提案していた地質学的候補エリア「ジュラ東部」と「チューリッヒ北東部」においては、三次元弾性波探査を実施しており、2016年2月に終了している。これら2つの地質学的候補エリアについて、今後のサイト選定プロセス第3段階で実施するボーリング調査については、原子力法に基づく地球科学的調査の許可申請を2016年夏に行う予定である。ボーリング調査は、それぞれの地質学的候補エリアについて8カ所で行うとしている。なお、北部レゲレンについても、三次元弾性波探査の終了後、ボーリング調査に必要となる許可申請を2016年末から2017年初頭に行うとしている。

【出典】


  1. 日本の内閣に相当 []
  2. 州安全ワーキンググループ(AG SiKa)は、1つまたは複数のサイト地域を含む州に対する安全性の評価に係る計画・調整を担う。 []
  3. 州安全専門家グループ(KES)は、安全性に関する資料の評価において州を支援し、助言する機関として特別計画「地層処分場」に設置が規定されており、州安全ワーキンググループ(AG SiKa)の支援を受けている。 []