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カナダの使用済燃料処分の実施主体である核燃料廃棄物管理機関(NWMO)は、使用済燃料処分場のサイト選定の取組に対する新型コロナウイルス感染症(COVID-19)対策に伴う行動制限等による影響を考慮し、1カ所の好ましいサイトの選定を約1年遅らせ、2024年秋に改めたことを公表した。NWMOのサイト選定担当副社長は、「サイト候補自治体における活動に関して、対面での関与や交流がほとんどできない状況であったことから、サイト選定の時期を延期することにより、サイト候補自治体が事業の受入れに関して検討するための時間を得ることができる」と述べている。

NWMOは2022年6月には、オンタリオ州北部のイグナス・タウンシップ、同州南部のサウスブルース自治体の候補2サイトの技術的な有望性を示した報告書を取りまとめており、これら2自治体との間で、処分場受入れに関する合意につながる正式な協定文書の策定に向けた協議を進めていた 。NWMOの計画では、1カ所の好ましいサイトの選定の後、当該サイトにおける詳細なサイト特性調査のほか、環境アセスメント等の許認可手続きも開始される予定である。

NWMOは、今回のサイト選定時期の変更は、使用済燃料処分の全体スケジュールには影響を与えないとしており、2033年の処分場建設開始、2040年代当初の操業開始に変更はないとしている。

【出典】

カナダの使用済燃料処分の実施主体である核燃料廃棄物管理機関(NWMO)は、2022年6月に、使用済燃料処分場のサイト選定プロセスの第3段階第2フェーズにおいて候補として残っている2自治体について、いずれの自治体においても処分場を建設できる技術的な見通しがあるとの結論を示した技術報告書を取りまとめた。NWMOは、2017年からオンタリオ州北部のイグナス・タウンシップにおいて、また、2020年から同州南部のサウスブルース自治体において、地下深部のボーリング・コアの取得を含む地質調査を行っていた。NWMOは、今回公表した技術報告書において、これまでの調査結果に基づいたNWMOとしての評価とその根拠を次の6つの観点から取りまとめており、「安全性への信頼(Confidence in Safety)」報告書と呼んでいる。

  • ①地質学的な閉じ込め特性と隔離特性
  • ②サイトの長期安定性
  • ③将来における人間侵入
  • ④サイト特性調査
  • ⑤処分場の建設・操業・閉鎖
  • ⑥輸送
レヴェル・サイト(左)とサウスブルース・サイト(右)の地図

レヴェル・サイト(左)とサウスブルース・サイト(右)の地図

NWMOは「安全性への信頼」報告書において、2自治体での処分場地上施設の候補地点を提示している。イグナス・タウンシップでは、市街地中心部から西方約35kmの原野(州が直轄する土地)に調査エリアを特定していたが、この調査エリアがある「レヴェル底盤」(Revell Batholith)として知られる27億年前に形成された結晶質の岩体に着目して、候補地名として「レヴェル・サイト」という呼称が採用された。また、サウスブルース自治体では、地下約650mにある石灰岩を主体とする地層が注目されており、候補地名は「サウスブルース・サイト」と呼称される。NWMOは、処分場の受け入れを検討している2自治体の公衆や先住民への情報提供と対話に役立てる目的で、レヴェル・サイト版とサウスブルース・サイト版の2種類の「安全性への信頼」報告書を作成している。

NWMOは、いずれのサイトにおいても長期にわたり安全性を確保できる処分場を建設可能であるとした結論を示しているが、この結論は2022年初めの時点で得られている地質情報に基づくものであり、今後、処分場の設計を進め、規制当局への許認可申請の準備を整えるためには、複数年にわたる詳細なサイト特性調査を実施する必要があることを強調している。

■自治体との正式な協力関係の構築に向けて

サイト選定プロセスの次段階となる第4段階においては、NWMOは関心を表明した自治体と協力して、地層処分プロジェクトの影響を受ける可能性がある周辺自治体、先住民、州政府の参加を得て、広域を対象とした環境影響評価を行うことになっている。第4段階に進むに当たっては、当該自治体が今後約十年にわたって行われるサイト評価、広域調査への関心を正式に表明することが前提条件となっている。

NWMOは、2023年に1カ所の好ましいサイトを選定する目標に向けて、イグナス・タウンシップ及びサウスブルース自治体との間で、処分場受け入れに関する合意につながる正式な協定文書の策定に向けた協議を進めている。この協定文書の策定に先がけて、大まかな方向性を相互に確認するため、NWMOは、合意覚書(MOU)を取り交わすステップを踏んでいる。

NWMOとサウスブルース自治体は、2022年6月14日にMOUの締結を公表した。公表されたMOUの内容には、同自治体で好ましいサイトが特定された場合、NWMOは①同自治体に専門技術センター(Centre of Expertise)を建設する、②不動産価値の維持に協力する、③他国の使用済燃料を輸入しない、④自治体の必要経費に対する協力を継続する、⑤NWMO本部を立地地域に移転する、等が記載されている。なお、調査が先行していたイグナス・タウンシップでは、2021年11月の自治体広報誌において、地層処分プロジェクトが地元コミュニティと足並みが揃うように協働する計画の重要性に焦点を当てた内容のMOUをNWMOと締結していることを明らかにしている。

【出典】

カナダの使用済燃料処分の実施主体である核燃料廃棄物管理機関(NWMO)は、2023年までに1カ所の好ましいサイトを特定するという目標をかかげている 。NWMOは、サイト選定プロセスの第3段階第2フェーズに残っているオンタリオ州のイグナス・タウンシップ及びサウスブルース自治体の2自治体において、地上からの調査による使用済燃料処分場の潜在的な適合性の予備的評価を進めているところである 。

■イグナス・タウンシップにおける調査の現状

イグナス・エリアでのボーリング調査の模様(NWMO提供)

イグナス・エリアでのボーリング調査の模様(NWMO提供)

オンタリオ州北部のイグナス・タウンシップは、州都トロントから北西に約1,600km、カナダ大陸横断高速道路(トランス・カナダ・ハイウェイ)上にあり、主な産業は林業と観光業である。イグナス・タウンシップは面積約93km2、人口約1,200人の小さな自治体であり、その周囲に隣接する自治体はない。オンタリオ州北部の人口分布はまばらであるため、特定の自治体に属さず州が直轄する地域が広がっている。

イグナス・タウンシップでは、市街中心部から西方約35kmの原野に調査エリアが特定されている(州が直轄する土地であり、特定の地名がないためイグナス・エリアと呼称されている)。このエリアはカナダ楯状地に位置しており、NWMOは地下施設を地表から約500mの深さにある結晶質岩に建設することを検討している。NWMOは、イグナス・エリアにて2017年11月6日にボーリング調査を開始している。

NWMOはイグナス・エリアでの活動に関する2021年11月のプレスリリースにおいて、予定していたボーリングコアの採取作業を完了したことを公表した。2021年11月までの約4年間で長さ1kmのボーリングを合計6本掘削しており、今後、ボーリング調査で取得されたデータの分析が行われる。

ボーリング調査と並行してNWMOは、使用済燃料処分場プロジェクトによる環境影響の評価に必要となる情報を獲得するために環境ベースラインモニタリングプログラムの策定を進めている。このプログラムに地元の関心や懸念を反映するために、NWMOは2021年の夏期から「コミュニティ・サンプリングプログラム」を立ち上げ、イグナス及び周辺地域の動植物、地表水などのサンプリングを地域住民と協力して進めている。野生のヘラジカや淡水魚の狩猟、キノコやベリーの採取を目的に立ち入る人々にサンプルを提供してもらうほか、協力者に対してサンプリング技術のトレーニングを提供する取り組みが行われている。NWMOは、地域の人々と協力すること自体が、環境ベースラインモニタリングプログラムの目的や成果情報を相互に学ぶ機会となっており、教育的な効果を生み出していると述べている。

■サウスブルース自治体における調査の現状

サウスブルース自治体でのボーリング調査の模様(NWMO提供)

サウスブルース自治体でのボーリング調査の模様(NWMO提供)

オンタリオ州南部にあるサウスブルース自治体は、ヒューロン湖の東側約40キロメートルの内陸に位置しており、面積約490km2、人口は約5,600人である。土地は西側にゆるやかに傾斜して平坦に広がっており、農業が主要産業となっている。

サウスブルースでは、使用済燃料処分場の母岩として地下約600メートルに分布するオルドビス紀の堆積岩(約4億5,000万年~5億年前に形成)が考えられている。NWMOは、サウスブルース自治体での活動に関する2021年11月のプレスリリースにおいて、専用の車両を用いた三次元弾性波探査を開始したことを公表した。また、地質構造の理解に役立てるために、NWMOは2本の試験用ボーリング孔の掘削を2022年の夏までに完了させたい意向である。

また、NWMOはサウスブルースにおいても環境ベースモニタリングプログラムの策定と実施を、土地所有者や河川管理当局と共同で進めている。この地域の住民は農業と関わる水資源に関心が高い。そのため、NWMOはフィールド調査エリア周辺の土地所有者の農業用井戸水をサンプリングに利用させてもらう一方、井戸水の分析データを双方で共有するといった協力関係を築いている。分析データの公平性を期すために、NWMOは、それらの井戸水のほか、調査エリアを含むソーギーン川水系の表層水のサンプリングと分析を、サウスブルース自治体を含む15自治体が共同で設立しているソーギーンバレー保護局(SVCA)に委託している。

NWMOによるサイト選定プロセスの進捗動向(2021年12月時点)

NWMOによるサイト選定プロセスの進捗動向(2021年12月時点)

【出典】

カナダ原子力安全委員会(CNSC)は、2021年1月29日、放射性廃棄物の管理に関する規制要件とガイダンスを定めた規制文書「REGDOC-2.11.1 廃棄物管理 第1巻:放射性廃棄物の管理」(以下「REGDOC-2.11.1第1巻」という。)を新規に策定するとともに、関連する既存の規制文書「REGDOC-2.11.1 廃棄物管理 第3巻:放射性廃棄物の処分のためのセーフティケース」(以下「REGDOC-2.11.1第3巻」という。)を改訂したことを公表した。CNSCは2018年12月に、今回策定されたREGDOC-2.11.1の上位文書にあたる規制文書「REGDOC-2.11 カナダにおける放射性廃棄物の管理及び廃止措置の枠組み」を策定しており、その下位に属する廃棄物管理に関する規制文書REGDOC-2.11.1シリーズを以下の3巻の文書で構成する計画であった。今回のREGDOC-2.11.1第1巻の策定により、REGDOC-2.11.1シリーズの規制文書が出揃ったことになる。

  • REGDOC-2.11 カナダにおける放射性廃棄物の管理及び廃止措置の枠組み
    (2018年12月発行)

    • REGDOC-2.11.1 廃棄物管理 第1巻:放射性廃棄物の管理
      (2021年1月発行) ※今回新たに発行
    • REGDOC-2.11.1 廃棄物管理 第2巻:ウラン鉱山廃棄物の岩石及び鉱さいの管理
      (2018年11月発行)
    • REGDOC-2.11.1 廃棄物管理 第3巻:放射性廃棄物の処分のためのセーフティケース
      (2021年1月発行、第2版)※今回第1巻の発行にあわせて改訂

■REGDOC-2.11.1第1巻の概要

今回新たに策定されたREGDOC-2.11.1第1巻は、原子力安全管理法に基づく許認可取得者である事業者に対して、放射性廃棄物管理に係る要件とガイダンスを定めた規制文書である。一般要件として、許認可取得者は、「廃棄物の安全な管理に責任を負わなければならない」、「廃棄物管理の安全性確保のためのプログラムを開発し、実施しなければならない」、「安全性を継続的に改善するために操業経験や類似施設からの教訓、科学技術の進歩を利用しなければならない」などと定め、放射性廃棄物管理の各段階(発生、取扱、処理、輸送、貯蔵、処分)における事業者の責務を示している。その上で、廃棄物の貯蔵施設と処分施設について、それぞれ施設の設計、建設、操業に関する要件を示している。

REGDOC-2.11.1第1巻においてCNSCは、放射性廃棄物の貯蔵施設、処分施設の双方に対する一般要件として、「適用される規制に従い、放射性廃棄物処分施設のライフサイクル全体のセーフティケースの開発、実施、維持」を要求している。さらに、処分施設については、閉鎖後安全評価についても開発、実施、維持を要求している。

■REGDOC-2.11.1第3巻の改訂

REGDOC-2.11.1第1巻におけるセーフティケース及び閉鎖後安全評価の規制要求に対応するため、今回のREGDOC-2.11.1第1巻の策定と同時に、放射性廃棄物処分のセーフティケース開発及びそれを裏付ける安全評価活動に係る規制要件とガイダンスを定めたREGDOC-2.11.1第3巻の改訂も行われた1

CNSCは、廃棄物処分施設の許認可のためにセーフティケースをCNSCに提出しなければならないとしており、放射性廃棄物処分のためのセーフティケースと安全評価の定義を示し、セーフティケースの役割や構成要素、要件などを示している。また、セーフティケースには、サイトの特性や廃棄物の特性、人工バリア及び天然バリアの記述などの処分システム全体に関する定性的・定量的な説明を要求している。

 

【出典】


  1. 今回の改訂により、REGDOC-2.11.1第3巻のタイトルが変更された。2018年5月初版のタイトルは「放射性廃棄物管理の長期安全性の評価」であったが、2019年5月改訂版では「放射性廃棄物の長期管理のためのセーフティケース」となり、今回2021年1月改訂版において「放射性廃棄物の処分のためのセーフティケース」に変わった。 []

カナダの天然資源省は、2020年11月16日付けのニュースリリースで、放射性廃棄物政策の見直し(modernize)に向けて、公衆、先住民、廃棄物発生者、州政府などの様々なステークホルダーを含む全国民的な関与プロセス(inclusive engagement process)を開始したことを公表した。天然資源省は、カナダの放射性廃棄物政策が、今後も国際的な最良の慣行に合致するとともに、既存及び将来発生する放射性廃棄物の管理活動を牽引するリーダーシップをもたらすものとしたい考えである。また、天然資源省は、この関与プロセスの一環として、カナダの使用済燃料処分の実施主体である核燃料廃棄物管理機関(NWMO)に対して、放射性廃棄物の所有者及び発生者、先住民、カナダ国民と協働して、低・中レベル放射性廃棄物を含めた包括的な放射性廃棄物管理戦略を開発するための対話を主導するよう要請したことを明らかにした。

■放射性廃棄物政策の見直しの背景とスケジュール

カナダの現行の放射性廃棄物政策は、連邦政府が1996年に策定した「放射性廃棄物政策の枠組み」に基づいており、放射性廃棄物の発生者と所有者による処分のための制度と資金確保に関する責任について、以下のように定めている。

  • 連邦政府は、放射性廃棄物処分が安全で、環境に配慮し、包括的に、費用対効果の高い形で、また統合的に実施されるようにする。
  • 連邦政府は、廃棄物発生者と所有者が承認された処分計画に従って資金確保と操業の責任を果たすことができるようにするために、政策を策定し、それらの者を規制・監督する責任を負う。
  • 廃棄物発生者と所有者は、汚染者負担の原則に従い、処分やその他の放射性廃棄物に関して必要となる施設のための資金確保、組織、マネジメント及び操業に責任を負う。
  • 廃棄物発生者は、規制上の審査と承認が必要になる施設や活動に関する計画を策定して実行し、また承認を得たら、報告や遵守に関する審査に加えて、許認可で定められた要件と条件に従う。

「放射性廃棄物政策の枠組み」に基づいて、1997年に安全規制に関する「原子力安全管理法」が制定されたほか、2002年に使用済燃料の長期管理の枠組みを定める「核燃料廃棄物法」が制定され、使用済燃料処分の実施主体である核燃料廃棄物管理機関(NWMO)が設立された

NWMOは、核燃料廃棄物法によって、使用済燃料の長期管理アプローチを開発し、天然資源大臣に提案する任務を与えられた。NWMOは、カナダ国民との関与プロセスを展開し、聴き取った意見を集約・反映して「適応性のある段階的管理」(詳しくは こちら)を提案した。NWMOが提案したアプローチは、天然資源大臣の勧告を踏まえた2007年6月の総督決定により、カナダの使用済燃料の長期管理アプローチとして決定した。NWMOは、2010年5月に使用済燃料処分場のサイト選定を開始し、現在は2カ所の自治体でサイト選定が進められている

一方、低・中レベル放射性廃棄物については、オンタリオ・パワージェネレーション(OPG)社が所有するブルース原子力発電所サイトでの地層処分場(DGR)の建設を目指していたが、プロジェクトに対する賛否を問う先住民による投票結果を受けて、OPG社は2020年1月31日、同サイトにおけるDGRの建設を断念し、代替サイトを検討する方針に転じている

このような状況から、連邦政府は今回、カナダの全ての放射性廃棄物を安全かつ長期にわたって管理するための確固とした政策と明瞭な道筋を示すため、ステークホルダーと協力し、カナダ国民と対話していく考えを表明した。天然資源省は、カナダ国民との対話に向けた特設ウェブサイトを設置しており、廃棄物の最小化(minimization)と貯蔵施設に関する情報提供を行っているほか、質問を提示して回答を求めるディスカッションペーパーを公表している。その他のトピックのディスカッションペーパーも追加される予定である。カナダ国民との関与プロセスは、2021年3月31日までを継続する。天然資源省は、関与プロセスを通じて寄せられた意見を集約した報告書を公表して、コメントを募集した後、2021年秋には最新化した政策を公表する予定である。

■包括的な放射性廃棄物管理戦略の開発

天然資源大臣は、低・中レベル放射性廃棄物を含めた放射性廃棄物政策の見直しに向けたカナダ国民との関与プロセスの開始の公表に先がけ、2020年11月13日に核燃料廃棄物管理機関(NWMO)に書簡を送り、カナダにおける唯一の包括的な放射性廃棄物管理戦略(an integrated strategy)の開発のための対話をNWMOが主導するよう要請していた。

天然資源大臣は、現行の放射性廃棄物政策においては放射性廃棄物の発生者と所有者(以下「事業者」という)に対して、それぞれが個別に廃棄物管理計画(長期を含む)を開発するよう求めており、様々な事業者が多様な取組を検討しているものの、そのような取組が対話を通じてステークホルダーやカナダ国民に周知されなければならないと指摘している。また、事業者は自らが管理する放射性廃棄物の特性を最も良く理解しており、それらの事業者が協力して唯一の包括的な放射性廃棄物管理戦略を開発しなければならないとも考えている。こうした理由から、天然資源大臣は、事業者やステークホルダー、カナダ国民との対話を始めるにあたり、これまで使用済燃料管理と公衆関与のリーダーを果たしてきたNWMOが適任であるとしている。

天然資源大臣は、今後開発していくカナダの包括的な放射性廃棄物管理戦略には、以下の要素が含まれなければならないとしている。

  • 現在と将来における廃棄物量という観点からの、カナダにおける現在の放射性廃棄物管理の状況の説明。なお、小型モジュール炉(SMR)を導入した場合に発生する廃棄物や、廃棄物の特性、場所及び所有権を考慮する。
  • カナダの放射性廃棄物の長期管理や処分方策における現行の計画と進捗のアップデート、及び対処しなければならないギャップ。
  • 現在及び将来の放射性廃棄物インベントリに対応するための概念的なアプローチ。これには、様々なタイプの放射性廃棄物の長期管理や処分のための技術オプション、及びカナダにおける放射性廃棄物の長期管理施設のそれぞれに関するオプションを含む。
  • 廃棄物の長期管理施設の計画、統合、設置及び操業に関する考慮事項。

天然資源大臣からの要請を受けたNWMOは、低・中レベル放射性廃棄物の包括的な管理戦略に関して、実用的な勧告を連邦政府に提示したいとの考えとともに、使用済燃料の長期管理アプローチの開発から実施を通じ、カナダ国民との関与に関する20年にわたる経験と知識を活用して協力する姿勢を明らかにした。

【出典】

 

【2022年8月30日追記】

カナダの核燃料廃棄物管理機関(NWMO)は2020年11月から、天然資源大臣の要請を受けて、低・中レベル放射性廃棄物の包括的な管理戦略に関するカナダ政府への勧告案の検討を行っている。NWMOは2022年8月に、包括的な放射性廃棄物管理戦略(ISRW)に関する特設ウェブサイトにおいて、「パブリックコメント募集のための包括的な放射性廃棄物管理戦略ドラフト版」(以下「ISRWドラフト版」という)を公表するとともに、2022年8月25日から2022年10月24日までの期間でパブリックコメントの募集を開始した。

NWMOは今回のISRWドラフト版において、以下の7項目の勧告案を提示している。

  • 勧告1 低レベル放射性廃棄物は、複数の浅地中処分施設で、廃棄物所有者が処分すべきである。
  • 勧告2 中レベル放射性廃棄物は、国内1カ所の地層処分場(DGR)で処分すべきであり、その実施主体をNWMOとすべきである。
  • 勧告3 実施主体から独立した第三者組織が、包括的な放射性廃棄物管理戦略(ISRW)の遂行を監督すべきである。
  • 勧告4 将来の施設の立地が計画されている地域の地元コミュニティや先住民の同意は、立地の際に取得すべきである。
  • 勧告5 施設の設計では水の保護を最優先にすべきである。
  • 勧告6 処分施設の長期間にわたる管理体制を確立すべきである。
  • 勧告7 我々は今行動すべきであり、将来世代に先送りすべきでない。

NWMOは、カナダのあらゆる放射性廃棄物を、後世代においても安全に、責任のある形で、効果的に管理できるようにするための最善のオプションについて、その考え方を見い出して共有するため、2021年1月から2022年6月までの18カ月にわたって、産業界、教育・研究機関、市民団体、議員や若年者の代表を含む国民や先住民と様々なエンゲージメント(engagement)活動を行ってきた。この期間においてNWMOは、国際的なベンチマーク、実績調査、技術的及びコスト見積り評価などの情報提供も行い、幅広く意見を求めている。

今回のISRWドラフト版のパブリックコメント募集期間が終了した後、NWMOはコメント等を踏まえて、包括的な放射性廃棄物管理戦略(ISRW)に関する最終的な勧告を取りまとめる予定である。NWMOは、カナダ政府が改定作業を進めている、新たな「放射性廃棄物管理及び廃止措置の政策」とISRWに関する勧告とが整合したものとなるようにする必要性から、ISRWに関する最終的な勧告の提出は、2022年後半に予定されているカナダ政府による新たな政策の公表の後とするとの考えを表明している。

【出典】

カナダの使用済燃料処分場のサイト選定プロセスに参画している2地域のうち、サウスブルース自治体で、処分場が立地する場合の将来ビジョン(まちづくり計画)を考える地域ビジョン・ワークショップが2019年12月から2020年2月にかけて計9回開催され、合計で144名の住民が参加した。サウスブルース自治体は、オンタリオ州南部に位置しており、人口は約5,600人である。サウスブルース自治体の地域連絡委員会は2020年5月27日に、地域ビジョン・ワークショップでの議論をまとめた報告書案をウェブサイトで公表し、ワークショップの参加者に限らず、広く住民からの意見を募集している。意見募集の期間は2020年6月30日までとなっている。

■サウスブルース自治体での地域ビジョン・ワークショップ

今回の地域ビジョン・ワークショップは、カナダ核燃料廃棄物管理機関(NWMO)の使用済燃料処分場プロジェクトに対して、サウスブルース自治体住民がどのように思っているのかを住民間で共有する機会をつくり出し、住民の考えや期待を探ることを目的として開催された。ワークショップの企画・運営のため、外部コンサルタント会社2社、サウスブルース自治体とNWMOの各代表で構成される合同チームが組織された。全9回のワークショップへ各回の参加者は10~30名であり、最初の2回を自治体議会と行政職員を対象に試験的に開催した後、続く6回を住民参加のワークショップ、最後の1回が若年層(中学生及び高校生)を対象としたワークショップとしている。ワークショップ参加者は、以下の3つの話題について少数のグループに分かれて議論した。

  1. NWMOの使用済燃料処分場プロジェクトが重視すべきこと、目標とすべきこと
  2. 同プロジェクトについて不安に思うこと、知りたいこと
  3. サイト選定プロセス第4段階において、技術的安全性と地域社会の福祉面の評価を目的として建設が予定されている「専門技術センター」のデザインや活動についての意見

地域ビジョン・ワークショップの報告書案では、サウスブルース自治体の住民参加者は、地域の住民と環境の安全・セキュリティ確保が大前提であるという認識のもと、サウスブルース自治体が優先すべき最重要事項として、使用済燃料処分場プロジェクトの全体を良く知り、地域にとってのメリットとデメリットを理解することが不可欠であると考えていることを明らかにしている。その上で、サウスブルース自治体の福祉と係わる将来ビジョンづくりの取組において、住民が重視する事項として寄せられた様々な意見について、①地域のインフラ、②人(人口変動や住民にとっての魅力)、③文化、④地域経済、⑤自然環境の5つの観点で整理している。参加者が表明した意見が正しいか、誤っているかといった区別はせず、どのような意見も貴重なものであるとして記録している。

■サウスブルース自治体でのサイト選定プロセスの経緯

カナダの使用済燃料処分の実施主体である核燃料廃棄物管理機関(NWMO)は、2010年から9つの段階で構成されるサイト選定プロセスを開始している。サウスブルース自治体は、オンタリオ州南部のブルース郡に属する自治体であり、ブルース郡のキンカーディン自治体には、ブルースパワー社が運転するブルース原子力発電所がある。サウスブルース自治体を含むブルース郡内の5自治体は、2012年前半にNWMOに対して「知識を深めることの関心表明」を順次行っていた。これら5自治体でサイト選定プロセス第3段階第1フェーズの机上調査が行われ、その結果から2014年12月にNWMOが3自治体を除外した 

NWMOは2019年5月に、サウスブルース自治体とヒューロン=キンロス・タウンシップにおいて、サイト選定第3段階第2フェーズのフィールド調査の実施に向けて、土地所有者の許可を得るために「土地アクセスプロセス」を公表した 。サウスブルース自治体内でのティーズウォーター・コミュニティ北西の土地の複数の所有者との合意に達したことを受けて、NWMOは2020年1月にヒューロン=キンロス・タウンシップを除外している 。NWMOは、2020年後半からサウスブルース自治体でボーリング調査を開始する予定である。

現在、カナダの使用済燃料処分場サイト選定プロセスは、オンタリオ州北部のイグナス・タウンシップと同州南部のサウスブルース自治体の2つに絞り込まれている。NWMOは、サイト選定における検討事項として、安全性を確保するための基準に加えて、地元自治体と地域の長期的な福祉の向上に関する要素を組み込んでいる。NWMOは、1カ所の好ましいサイトを2023年に特定する計画である 

《参考》カナダにおける核燃料廃棄物処分場のサイト選定プロセス

カナダにおける核燃料廃棄物処分場のサイト選定プロセス

【参考出典】『連携して進む:カナダの使用済燃料の地層処分場選定プロセス』(NWMO, 2010年)

 

【出典】

カナダの使用済燃料処分の実施主体である核燃料廃棄物管理機関(NWMO)は、「適応性のある段階的管理」(APM詳細はこちら)の実施に関して、2020年から2024年までの5カ年の実施計画書をウェブサイトで公表した。NWMOは、毎年、今後5年間の行動計画をまとめた実施計画書を公表している。今回の実施計画書では、NWMOが1ヵ所の好ましいサイトの特定を予定している2023年以降のスケジュールが示されており、地層処分場の操業開始は2040年代前半となる見通しとなっている。なお、地層処分場のサイト選定プロセスは、2020年1月にオンタリオ州北部のイグナス・タウンシップと同州南部のサウスブルース自治体の2つに絞り込まれている 

2023年

  • 1カ所の好ましいサイトの特定
  • 輸送計画の枠組みの確定
  • 影響評価(impact assessment)におけるプロジェクトの説明文書の提出
  • サイト準備のための許可申請の提出

2024年

  • 詳細なサイト特性調査の開始
  • 影響評価調査結果の提出
  • 連邦政府の規制プロセスの開始
  • 専門技術センター建設開始の申請書の提出

2026年

  • 影響評価の承認(見込)
  • サイト準備のための許可の発給(見込)

2028年

  • 建設許可申請書の提出

2032年

  • 建設許可の発給(見込)

2033年

  • 設計と建設の開始

2040~2045年

  • 地層処分場の操業開始

■パートナーシップ構築への取り組み

NWMOは今後5年間の取り組みとして、従来設定していた7つの優先事項(工学技術、サイト評価、安全性、人材確保、許認可、パートナーシップ、輸送)を中心に活動計画を構成しているが、2019年版の実施計画書 で設定していた優先事項「公衆の関与」(engagement)は、今回の実施計画書では「パートナーシップ」に名称が変更された。

NWMOは、2018年に「先住民との和解の取り組みに関する宣言」(Reconciliation Statement)を制定しているほか、2019年にNWMOのマネジメントシステムにおいて、全てのNWMOスタッフが先住民の歴史や先住民の権利に関する国連宣言、条約などの教育等を受けることを義務づける「和解方針」(Reconciliation Policy)を定めた。この方針を反映して、NWMOは全ての優先事項の実施内容において、先住民族の知識と和解を反映させるとしている。

NWMOは今回の実施計画書において、地層処分場プロジェクトの実施に必要となる好意的かつ弾力性を備えたパートナーシップ(supportive and resilient partnership)を構築するために、プロジェクトに係わる自治体と協働するとし、以下の活動を行うとしている。

  • 地域がサイト選定活動に完全に参加するために必要なリソースを確保し、地域の関心を反映させ、プロジェクトを進めながら福祉を段階的に向上させる。
  • 影響評価(impact assessment)の構成要素としての社会的影響とベースライン調査を完了させる。
  • 核燃料の最終的な輸送の計画を含む「適応性のある段階的管理」(APM)の進捗状況について、カナダの原子力立地地域に説明する。
  • 以下との関係構築を図り、維持する。
    • サイト選定プロセスへの参加を選択した関心のある地域、その地域の先住民及びその周辺地域
    • APM及びサイト選定プロセスの進捗状況を共有するための国、州及び地域レベルに設立された先住民組織
    • 地方自治体が重要と考える観点をより良く理解し、協力してAPMを実施していくために協力する自治体連合体(複数州にまたがる連合体)
    • 連邦、州、地方自治体
    • 非政府組織及び市民社会全般
  • 先住民の居住地域の文化や言語、慣習、取り組みは多様であることを認識しつつ、先住民の有識者を含む潜在的に影響を受ける先住民との協力を続ける。
  • NWMOが2019年に策定した先住民との「和解方針」を実際の活動に反映させる。
  • 処分場立地の受け入れ意欲の評価計画(willingness assessment plan)を作成し、それを使用し最終的なサイト選定の決定を通知する。
  • より具体的に「社会的受容(social acceptance)」及び「喜んで受け入れる(willing host)」という用語を定義し、それらをどのように立証できるかを理解するため、サイト選定プロセスに関与する自治体、地域、先住民と協働する。
  • カナダの計画について、若年層を含むカナダ国民とカナダ先住民との間の認識を高めるための取り組みを継続する。
  • カナダの計画の詳細を共有するため、わかりやすい展示やコミュニケーションツール、マルチメディアの開発を続け、Webサイトとソーシャルメディアプラットフォームを通じてオンラインでの関与を拡大する。

【出典】

カナダのオンタリオ・パワージェネレーション(OPG)社は、2020年1月31日に、同社が所有するブルース原子力発電所サイトでの建設を目指していた低・中レベル放射性廃棄物の地層処分場(DGR)プロジェクトに関して、今後、DGRプロジェクトの代替となる安全かつ恒久的な解決策を検討する意向を示すプレスリリースを公表した。これは、同日に、DGRの建設予定地のあるブルース半島に居住するソーギーン・オジブワネーション先住民1 により、DGRプロジェクトに対する賛否を問う投票が行われ、賛成170票、反対1,056票の結果となったことを受けたものである。OPG社は、先住民の意思を尊重するとともに、主要なステークホルダーの関与によるサイト選定プロセスの策定を進めていく考えを明らかにした。

OPG社は、オンタリオ州内に3ヶ所の原子力発電所(原子炉計20基)を所有しており、これらの原子力発電所で発生した低・中レベル放射性廃棄物の地層処分場の立地に関して、2004年に地元キンカーディン自治体との間で立地協定を締結していた。その後、OPG社は2011年4月に、DGRプロジェクトの環境影響評価書(EIS)、予備的安全評価書等を連邦政府の合同評価パネル(JRP)に提出し、2015年5月にJRPは、環境に重大な影響が及ぶ可能性は低いと結論していた。OPG社は、JRPによる審査過程で、2013年に開催された公聴会において、ソーギーン・オジブワネーション先住民の支持なくDGRを建設しないことを確約していた。なお、その後の手続きとしては、環境大臣による環境影響に関する決定を受けた上で、JRPがサイト準備・建設に関する許認可を発給するのみとなっていた。

OPG社は、新たなサイト選定プロセスは先住民や関心のある自治体の関与を含むものにするとの考えを表明するとともに、これまで構築してきた相互の尊重や協力、信頼関係を基礎として、ソーギーン・オジブワネーション先住民と対話を継続する意向を明らかにした。また、OPG社は、放射性廃棄物処分のための恒久的な解決策を検討しつつ、廃棄物の減容技術の開発、非汚染物質の再利用など、発生元において放射性廃棄物の発生量を最小化する取組を行っていくとしている。

【出典】

 

【2020年6月29日追記】

カナダ影響評価庁(Impact Assessment Agency of Canada, IAAC)は、2020年6月26日に、オンタリオ・パワージェネレーション(OPG)社が計画していた低・中レベル放射性廃棄物の地層処分場(DGR)の環境影響評価プロセスの終了を公告した。2020年1月31日に実施されたソーギーン・オジブワネーション先住民による投票結果を受けて、OPG社は2020年5月27日に、DGRプロジェクトの環境影響評価プロセスを公式に終了するよう求める書簡を環境大臣に提出していた。

OPG社は、環境大臣に提出した書簡において、環境影響評価書等の審査のために連邦政府が指名した合同評価パネルの4年間の活動に感謝するとともに、キンカーディン自治体及び隣接する自治体から受けた15年にわたる支援に対する感謝の意を明らかにした。また、OPG社は、同社が所有する原子力発電所から発生する放射性廃棄物の安全かつ恒久的な解決策の開発に引き続き取り組んでいくとしている。

【出典】


  1. ※ソーギーン・オジブワネーション先住民(SON)の居住地域は、ブルース原子力発電所サイトが立地しているブルース半島の大部分を占めている。先住民は特定の法的権利を有しており、その土地の占有者としての管理義務を果たすこととなっている。 []
NWMOによるサイト選定プロセスの進捗動向(2020年1月時点)

NWMOによるサイト選定プロセスの進捗動向(2020年1月時点)

カナダの使用済燃料処分の実施主体である核燃料廃棄物管理機関(Nuclear Waste Management Organization, NWMO)は、2020年1月24日、使用済燃料処分場のサイト選定プロセスの第3段階第2フェーズが実施されていたオンタリオ州のヒューロン=キンロス・タウンシップ(図中19番)について、サイト選定プロセスから除外したことを公表した。これにより、カナダの使用済燃料処分場のサイト選定プロセスに残る自治体は、オンタリオ州北部のイグナス・タウンシップ(図中5番)と同州南部のサウスブルース自治体(図中20番)の2つに絞り込まれた。NWMOは、2023年までに1カ所の好ましいサイトを選定することを目指している。

NWMOは2019年5月から、土地所有関係が複雑であるオンタリオ州南部のヒューロン=キンロス・タウンシップ及びサウスブルース自治体において、土地所有者からフィールド調査を行う許可を得るための「土地アクセスプロセス」(Land Access Process)を公表し、NWMOと土地所有者との双方に有益な関係の構築を進めていた。NWMOは今回のプレスリリースにおいて、サウスブルース自治体のティーズウォーター・コミュニティ北西の土地の複数の所有者との合意が得られ、フィールド調査の実施にとって十分な広さである合計で約1,300エーカー(526ヘクタール)の土地が確保できたとしたとしている。NWMOは、土地アクセスプロセスの結果により、2自治体のどちらか一方でサイト選定プロセスを進めていくとしており、サウスブルース自治体で土地が確保できたため、ヒューロン=キンロス・タウンシップを除外することとなった。

NWMOは、土地所有者から土地アクセスプロセスに関する合意文書を得ることによって、最終的に約1,500エーカー(600ヘクタール)の土地へのアクセスする権利を取得する意向である。この土地の面積は、処分場地下施設と同等の広さであり、また、地上施設が建設される約250エーカー(100ヘクタール)よりも十分に広いものである。NWMOは、既に合意を得た土地に隣接する土地の所有者と協議を継続していくとしている。なお、NWMOが提案する土地アクセスプロセスでは、NWMOがフィールド調査を実施する権利を得るものの、土地所有者は土地の継続利用が可能である。将来、この土地が処分場建設地として選定された場合には、NWMOは土地所有者から土地を購入する権利を行使することになっている。

NWMOはサウスブルース自治体内の土地において、ボーリング孔の掘削や基礎的な環境のモニタリングを数カ月以内に開始し、地域の特性を調査するとしている。また、ヒューロン=キンロス・タウンシップは除外されたものの、サウスブルース自治体において取組を進めていく中で、近隣自治体として重要な役割を引き続き担っていくとしている。さらに、NWMOは、先住民との連携も継続していくとしている。

【出典】

 

【2020年10月19日追記】

カナダの使用済燃料処分の実施主体である核燃料廃棄物管理機関(NWMO)は、2020年10月のプレスリリースにおいて、サウスブルース自治体におけるフィールド調査に向けて、複数の土地所有者から合意文書を得ることにより、NWMOが目標としている1,500エーカー(約600ヘクタール)の土地へアクセスする権利を取得したことを公表した。NWMOは、サウスブルース自治体のティーズウォーター・コミュニティの北西部の2カ所においてボーリング調査を行う予定であり、最初のボーリング調査は2021年4月頃となる見通しを明らかにした。

NWMOは、今後、フィールド調査を通じた地質学的な特性調査に向けて、微小地震モニタリングステーションや、浅部地下水をモニタリングする井戸を設置する予定である。NWMOは、地元コミュニティから寄せられている懸念に対応するため、地層処分場の候補サイト内や周辺にある個人所有の井戸水のほか、近隣を流れるティーズウォーター川のモニタリングを計画に含める予定である。

また、NWMOは、土地アクセスプロセスの一環として、サウスブルース自治体との協議の下、NWMOのプロジェクトの実施によって資産価値に影響があった場合、資産の所有者に補償を行うことに言及している。NWMOは、資産価値保護プログラムを地域の福祉に関する調査の一部として開発するとしており、地元コミュニティの関与も得て、2021年内に開発を完了させたいとしている。

【出典】

NWMOによるサイト選定プロセスの進捗動向(2019年11月時点)

カナダの使用済燃料処分の実施主体である核燃料廃棄物管理機関(Nuclear Waste Management Organization, NWMO)は、2019年11月26日、使用済燃料処分場のサイト選定プロセスの第3段階第2フェーズが実施されていたオンタリオ州のホーンペイン・タウンシップとマニトウェッジ・タウンシップ(図中9番と8番)について、サイト選定プロセスから除外したことを公表した。NWMOは、サイト選定プロセスに残っていた5自治体を、地理的な近さに応じて3地域(イグナス地域、ヒューロン=キンロス/サウスブルース地域、ホーンペイン/マニトウェッジ地域)にまとめ、ボーリング調査の実施に向けた計画の策定やパートナーシップの構築を進めていた。NWMOは、2023年までに1カ所の好ましいサイトの特定に向けて、より詳細な調査と評価を行うために、3地域を①処分の安全性、②輸送の安全性、③パートナーシップ構築の可能性の3点から評価した結果、イグナス地域とヒューロン=キンロス/サウスブルース地域は、プロジェクトを進めていく上で必要となる、深く、幅のあるパートナーシップ構築の可能性が強いとして、この2地域での活動に注力していくとしている。

今回サイト選定プロセスから除外されたホーンペイン/マニトウェッジ地域に関してNWMOは、地層処分場のサイト選定プロセスに対する地域のこれまでの貢献を高く評価するとともに、地元の持続的開発と福祉向上のために独自に利用できる資金として、ホーンペイン・タウンシップ、マニトウェッジ・タウンシップ、先住民であるコンスタンス・レイク・ファースト・ネーション(Constance Lake First Nation)にそれぞれ70万カナダドル(5,740万円)、近隣自治体であり2017年にサイト選定プロセスから除外された後も前向きな協力を続けていたホワイトリバー・タウンシップに60万カナダドル(4,920万円)、協力を受けていたその他の3つの先住民族に対して計75万カナダドル(6,150万円)を提供するとしている。(1カナダドル=82円として換算)

■2023年までに1カ所の好ましいサイトの選定に向けて

NWMOは、今後も技術的な適性の確認のための調査、プロジェクトの受け入れに対する地域の意向の確認や、前向きなパートナーシップの構築が必要だとしている。安全性については、更なるフィールド調査やより詳細なサイトの評価が必要であり、パートナーシップについては、それぞれの地域においてプロジェクトをどのように実施できるか、必要とされるパートナーシップの構築が可能となるように、更なる取組が必要だとしている。さらに、こうした取組には、プロジェクト実施計画や将来的に締結するパートナーシップ協定の草案の共同策定が含まれるとされている。

《参考》カナダにおける核燃料廃棄物処分場のサイト選定プロセス

カナダにおける核燃料廃棄物処分場のサイト選定プロセス

【参考出典】『連携して進む:カナダの使用済燃料の地層処分場選定プロセス』(NWMO, 2010年)

 

【出典】