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英国のカンブリア州アラデール市と地層処分事業の実施主体である放射性廃棄物管理会社(RWM社)とは、2022年1月18日に、アラデール市で特定されていた1つの「調査エリア」において、地層処分施設(GDF)の立地を検討する「アラデールGDFコミュニティパートナーシップ」を設立した。これを受けて当該調査エリアでは、GDF設置の可能性について、より詳細な検討(わが国の概要調査に相当)が行われることになる。なお、2018年12月から開始したサイト選定プロセスにおいて、コミュニティパートナーシップの設立に至ったケースとしては、2021年11月及び12月にカンブリア州コープランド市で設立された2つのコミュニティパートナーシップに続いて今回が3例目となる。

■コミュニティパートナーシップ設立までの経緯

アラデールGDFCP_SearchArea3

アラデール市は2021年1月に、地層処分施設のサイト選定プロセスにおける「調査エリア」の特定と提案、並びにコミュニティパートナーシップの設立に向け、アラデールGDFワーキンググループを設置し、同市南東部に広がる湖水地方(イングランド北西部に位置する英国最大の国立公園)を除いたエリアを対象として検討を進めていた。その後、ワーキンググループは、同市西部に調査エリア(図の茶色の範囲)を絞り込んでいた

アラデール市議会は2021年11月24日に、ソルウェイ海岸部の特別自然美観地域を調査エリアから除外することを条件としてコミュニティパートナーシップへの参加を決定し、その設立に向けた準備を進めていた。調査エリアの範囲は、英国政府の2018年政策文書に基づき、コミュニティや自治体組織等から協議に参加可能な者が特定できるように、選挙区を最小単位として設定される。今回設置されたアラデールGDFパートナーシップの調査エリアには13の選挙区が含まれており、総面積は約320km2となっている。

これまで調査エリアの特定を行ってきた「アラデールGDFワーキンググループ」は、今回のパートナーシップの設立を受けて活動を終了し、コミュニティの関与の手段としての役割はコミュニティパートナーシップが引き継ぐことになる。なお、アラデールGDFワーキンググループは2021日12月20日付のニュースレターにおいて、地域住民との対話を通じて得られた課題として、アラデール市の地質が地層処分施設の設置・建設に適しているのかを理解できるようにすることが重要だと指摘している。

アラデールGDFコミュニティパートナーシップの初期メンバーは、RWM社とアラデール市議会のほか、カンブリア州地方議会連合(CALC)、カンブリア商工会議所、カンブリア州で人材開発や就労支援をしているInspira社1 であるが、コミュニティパートナーシップが調査エリア内にある様々なコミュニティの意見を反映できるよう、他の参加組織の募集を継続している。なお、今後より多くのメンバーの参加を得て新たに議長が任命されるまでの間は、カンブリア州地方議会連合の代表としてワーキンググループに参加していたメアリー・ブラッドリー氏が暫定的に議長を務めることとなっている。

■コミュニティパートナーシップの役割

コミュニティパートナーシップは、当該調査エリアでの地層処分施設の立地可能性を中長期的なスパンで検討していくグループである。また、コミュニティパートナーシップの活動と並行し、RWM社が地質や社会インフラの適合性に関する調査を進めることとなる。RWM社は、地層処分施設の地下施設の設置可能性の検討のため、コープランド市とアラデール市の沖合での物理探査の準備を進めており、2022年夏には船舶を用いた調査を開始する予定である。

アラデールGDFコミュニティパートナーシップに対して、英国政府から年間最大100万ポンド(1億4,600万円、1ポンド=146円)のコミュニティ投資資金の提供が始まる。この投資資金は、地層処分施設プロジェクトが長期的な性質を持つため、それが実働するまでの数年間にわたり、雇用やインフラ、主要投資に関連する恩恵(ベネフィット)が実現しない可能性があることを念頭において提供されるものである。同パートナーシップは、このコミュニティ投資資金の運用管理の役割を担うことになり、パートナーシップのウェブサイト(allerdale.workinginpartnership.org.uk)でコミュニティ投資資金の仕組みや申請方法の案内を開始している。

【出典】


  1. Inspira社は、アラデールGDFワーキンググループのメンバーではなかったが、ワーキンググループの対話活動の支援等を行っていた。 []

英国カンブリア州コープランド市と地層処分事業の実施主体である放射性廃棄物管理会社(RWM社)は、2021年11月16日に、コープランド市で特定されていた2つの「調査エリア」のうち、同市中部の調査エリアでの地層処分施設(GDF)の立地を検討する「ミッドコープランドGDFコミュニティパートナーシップ」を設立した。これを受けて当該調査エリアでは、GDF設置の可能性について、より詳細な検討(わが国の概要調査に相当)が行われることになる。同市南側の調査エリアについても、初期の参画組織での手続きが完了次第、独立した「サウスコープランドGDFコミュニティパートナーシップ」が数週間以内に設立される予定である。なお、2018年12月から開始したサイト選定プロセスにおいて、コミュニティパートナーシップの設立に至ったケースは、今回のミッドコープランドGDFコミュニティパートナーシップが初めてとなる。

■コミュニティパートナーシップ設立までの経緯

コープランド市は2020年11月に、地層処分施設のサイト選定プロセスにおける「調査エリア」の特定と提案、並びにコミュニティパートナーシップの設立に向け、コープランドGDFワーキンググループを設置し、2021年9月には、2箇所の調査エリアを特定していた。調査エリアの範囲は、英国政府の2018年政策文書に基づき、コミュニティや自治体組織等から協議に参加可能な者が特定できるように、選挙区を最小単位として設定されている。これらの調査エリアに属する選挙区で構成される「コミュニティパートナーシップ」の設立に関して、コープランド市議会で検討が行われていた。コープランド市では、2カ所の調査エリアのそれぞれを対象として、2つのコミュニティパートナーシップが設立されることになった。

なお、これまで調査エリアの特定を行ってきた「コープランドGDFワーキンググループ」は作業を終了し、以降はコミュニティの関与の手段としての役割は各コミュニティパートナーシップが引き継ぐことになる。

ミッドコープランドGDFコミュニティパートナーシップの初期メンバーには、RWM社とコープランド市議会のほか、カンブリア州地方議会連合(CALC)が参加している。同パートナーシップは、ミッドコープランド調査エリア内に存在する地域自治組織(準自治体)等に参加要請を行っており、より多くのメンバーの参加を得た後に新たに議長が任命されるまでの間は、コープランドGDFワーキンググループの議長を務めたマーク・カリナン氏が暫定的に議長を務める。

■コミュニティパートナーシップの役割

コミュニティパートナーシップは、当該調査エリアでの地層処分施設の立地可能性を中長期的なスパンで検討していくグループである。RWM社は、地層処分施設の地下施設の設置可能性の検討のため、コープランド沖での物理探査の準備を進めており、2022年夏には船舶を用いた調査を開始する予定である。

ミッドコープランドGDFコミュニティパートナーシップは、参加メンバーそれぞれの長期ビジョン開発を手助けするために公衆参加を促進していく。また、同パートナーシップに対して、英国政府から年間最大100万ポンド(1億4,600万円、1ポンド=146円)のコミュニティ投資資金の提供が始まる。この投資資金は、地層処分施設プロジェクトが長期的な性質を持つため、それが実働するまでの数年間にわたり、雇用やインフラ、主要投資に関連する恩恵(ベネフィット)が実現しない可能性があることを念頭において提供されるものである。ミッドコープランドGDFコミュニティパートナーシップは、このコミュニティ投資資金の運用管理の役割を担うことになる。ミッドコープランドGDFコミュニティパートナーシップのウェブサイト(midcopeland.workinginpartnership.org.uk)では、コミュニティ投資資金の仕組みや申請方法の案内を開始している。

【出典】

 

【2021年12月15日追記】

英国カンブリア州コープランド市と地層処分事業の実施主体である放射性廃棄物管理会社(RWM社)とは、2021年12月14日に、コープランド市で特定されていた2つの「調査エリア」のうち、同市南部の調査エリアでの地層処分施設(GDF)の立地を検討する「サウスコープランドGDFコミュニティパートナーシップ」を設立した。今回のコミュニティパートナーシップの設立は、「ミッドコープランドGDFコミュニティパートナーシップ」に続き、2例目となる

サウスコープランドGDFコミュニティパートナーシップの初期メンバーには、RWM社とコープランド市議会のほか、カンブリア地方議会連合(CALC)、地元議員を含むコミュニティの代表者が参加している。また、同パートナーシップに先立ち設立されたミッドコープランドGDFコミュニティパートナーシップと同様に、より多くのメンバーの参加を得た後に新たに議長が任命されるまでの間は、コープランドGDFワーキンググループの議長を務めたマーク・カリナン氏が暫定的に議長を務める。

RWM社は、地層処分施設の地下施設の設置可能性の検討のため、コープランド沖での物理探査の準備を進めており、2022年夏には船舶を用いた調査を開始する予定である。

【出典】

 

英国イングランド東部に位置するリンカンシャー州議会は2021年10月12日に、地層処分施設(GDF)のサイト選定プロセスにおける「調査エリア(Search Area)」の特定に向けてワーキンググループを設置した。リンカンシャー州議会は、同州東部の北海に面したイーストリンジー市にあるテッドルソープ・ガスターミナル1 の跡地利用を検討する一環として、2021年7月には英国の地層処分事業の実施主体である放射性廃棄物管理会社(RWM社)との初期対話を開始していた。このため、このワーキンググループは「テッドルソープGDFワーキンググループ」(Theddlethorpe GDF Working Group)と名付けられている。テッドルソープGDFワーキンググループは、情報発信を目的としたウェブサイトを開設するとともに、当面はテッドルソープ及びその周辺エリアでの関心を高めるため、リーフレットの配布や情報イベントを開催する予定である。

テッドルソープWGエリア

テッドルソープGDFワーキンググループの検討対象エリア
(RWM社の初期評価レポートを元に原環センターにて作成)

RWM社は、既存の情報を基にリンカンシャー州議会向けに作成した初期調査レポートにおいて、テッドルソープ・ガスターミナル跡地及びその周辺エリアは地層処分施設(GDF)を設置できる可能性を有していると評価している。また、RWM社は、GDFの設置によって、イーストリンジー市2 が目指している地域経済の構造転換に貢献する可能性があるとの考えを示している。

 

■テッドルソープGDFワーキンググループの構成と今後の活動予定

英国において2018年12月から開始した地層処分施設(GDF)のサイト選定プロセスにおいて、ワーキンググループの設置に至ったのは、2020年11月のコープランド市、2021年1月のアラデール市 に続いて今回が3例目である。

テッドルソープGDFワーキンググループの設立時点では、RWM社とリンカンシャー州議会の代表者のほか、ガスターミナルが所在する地域自治組織(準自治体)であるテッドルソープ・パリッシュ議会がメンバーとして参加している。同ワーキンググループは、イーストリンジー市議会に参加要請をしていることを明らかにしている。今後、同ワーキンググループは、コミュニティ全体の市民の参画を得て、市民の意見を理解するとともに、適性を有するサイトや受け入れの意向を持つコミュニティを追求していくため、さらなる検討対象となる「調査エリア」の特定やRWM社とともにプロセスを前進させていく「コミュニティパートナーシップ」の初期メンバーの特定も行う予定である。

 

<参考:初期対話とワーキンググループの設置について>

英国政府の2018年政策文書『地層処分の実施-地域社会との協働:放射性廃棄物の長期管理』(以下「2018年政策文書」という)で設定されたサイト選定プロセスでは、地層処分施設の設置に関心を示す者、または、設置候補エリアを提案したい者であれば、地層処分事業の実施主体である放射性廃棄物管理会社(RWM社)と初期対話(initial discussion)を開始できることになっている  。

また、2018年政策文書で設定されたサイト選定プロセスでは、初期対話において、地層処分施設(GDF)の設置に向け、さらなる検討を進めていくことに合意した場合には、当該地域の自治体組織に報告して、コミュニティ全体での協議に発展させていくための準備組織「ワーキンググループ」を設置することになっている。

 

【出典】

 

【2022年2月15日追記】

Theddlethorpe_search_area-map_landscape

(出典:テッドルソープGDFワーキンググループウェブサイトの図を一部修正)

英国リンカンシャー州に設置されたテッドルソープGDFワーキンググループは2022年2月8日付けのプレスリリースにおいて、イーストリンジー市の中の2つの選挙区から構成される「調査エリア(Search Area)」を特定したことを公表した。同ワーキンググループは、テッドルソープ・ガスターミナルの跡地利用を検討する一環として、(放射性廃棄物管理会社(RWM社)とリンカンシャー州議会の代表者、地域自治組織(準自治体)であるテッドルソープ・パリッシュ議会を初期メンバーとして2021年10月に設立された。その後2021年12月には、テッドルソープ・ガスターミナルを抱える基礎自治体であるイーストリンジー市の参画を得て、地層処分施設の立地可能性を検討する調査エリアの特定を進めていた。

今回特定された調査エリアの範囲は、英国政府の2018年政策文書『地層処分の実施-地域社会との協働:放射性廃棄物の長期管理』 に基づいて、コミュニティや自治体組織等から協議に参加可能な者が特定できるように、イーストリンジー市の選挙区3 が最小単位となるように設定されている。テッドルソープGDFワーキンググループは、今回特定した調査エリアは最初の提案であり、地層処分施設にアクセスする道路や鉄道ルートなどの検討が進むにつれて、必要に応じて変更する可能性があることを指摘することの重要性を示している。なお、2018年から開始したサイト選定プロセスにおいて、調査エリアの特定に至ったのは、2021年9月のコープランド市、2021年10月のアラデール市に続いて今回が3例目である。

今後、テッドルソープGDFワーキンググループは、地域住民の関心を高めるために、調査エリアの特定に関する地域対話イベントを開催する予定である。

【出典】

 


  1. テッドルソープ・ガスターミナルでは、北海の約100kmを超える沖合にある海上掘削基地と海底パイプラインで結び、日産約400万m3の天然ガスを生産していた。2018年8月に生産を終了。プラント施設の廃止措置が行われており、2022年には農地への転用が可能な状態に戻される予定である。 []
  2. イーストリンジー市は、面積が約1,762km2、人口が約14万人の農業と観光業を産業の中心とした自治体である。 []
  3. 現在、イーストリンジー市の選挙区は37あり、市議会議員の定数は55名である。今回調査エリアとなった2つの選挙区の議員定数は、ウィザーン・テッドルソープ:1名、マブルソープ3名である。 []

英国の地層処分事業の実施主体である放射性廃棄物管理会社(RWM社)は、2021年1月14日付けのプレスリリースにおいて、英国カンブリア州のアラデール市が地層処分施設(GDF)のサイト選定プロセスにおける「調査エリア(Search Area)」の特定に向けてワーキンググループ(正式名称:アラデールGDFワーキンググループ)を設置したことを公表した。ワーキンググループは、調査エリアの特定を行っていくが、プロセスを進めるための「コミュニティパートナーシップ」の設置に向け、参画する初期メンバーの募集を行うとしている。なお、2018年12月から開始したサイト選定プロセスにおいて、ワーキンググループの設置に至ったのは、2020年11月のコープランド市に続いて今回が2例目である。

■ワーキンググループの設置までの経緯:初期対話

アラデール市は、原子力施設が数多く立地するコープランド市の北に隣接しており、原子力産業に従事している住民が多く居住している。アラデール市は以前、2008年6月に開始された英国白書「放射性廃棄物の安全な管理-地層処分の実施に向けた枠組み」に基づく地層処分場選定プロセスにおいても関心表明を行っていたが、カンブリア州議会での反対多数の議決により、当時の選定プロセスから撤退している 。

英国政府の2018年政策文書『地層処分の実施-地域社会との協働:放射性廃棄物の長期管理』(以下「2018年政策文書」という)で設定されたサイト選定プロセスでは、地層処分施設の設置に関心を示す者、または、設置候補エリアを提案したい者であれば、地層処分事業の実施主体である放射性廃棄物管理会社(RWM社)と初期対話(initial discussion)を開始できることになっている 

アラデール市では、官民再生パートナーシップによる地域再生事業などを手掛けるGenR8 North社1 が地層処分施設の立地に関心を示し、GenR8 North社とRWM社の初期対話が実施された。ワーキンググループのウェブサイトでは、初期対話の期間にRWM社が取りまとめた初期評価レポート(Initial evaluation report)が公表されている。RWM社は、既存の情報に基づけば、GenR8 North社が関心を示すエリア2 は地層処分施設を設置できる可能性を有しているとの結論を示している。

アラデールGDFワーキンググループの検討対象エリア(出典:アラデールGDFワーキンググループウェブサイトの図を一部修正)

アラデールGDFワーキンググループの検討対象エリア(出典:アラデールGDFワーキンググループウェブサイトの図を一部修正)

■ワーキンググループの設置と構成

2018年政策文書で設定されたサイト選定プロセスでは、初期対話において、地層処分施設(GDF)の設置に向け、さらなる検討を進めていくことに合意した場合には、当該地域の自治体組織に報告して、コミュニティ全体での協議に発展させていくための準備組織「ワーキンググループ」を設置することになっている。

今回アラデール市で設置されたワーキンググループでは、議長にヨークシャーデールズ国立公園局の元メンバー3 であるジョスリン・マナーズ-アームストロング氏が就任する。また、ワーキンググループには、アラデール市議会、RWM社及びGenR8 North社が参加する。なお、GenR8 North社の意向もあり、アラデール市のうちの湖水地方の国立公園の敷地は検討対象から除外されることとなっている。

■今後の取組

コープランド市のワーキンググループと同様に、アラデール市のワーキンググループも、今後、コミュニティ全体の市民の参画を得て、市民の意見を理解するとともに、適性を有するサイトや受け入れの意向を持つコミュニティを追求していくため、さらなる検討対象となる「調査エリア」の特定を行っていくとしている。また、RWM社とともにプロセスを前進させていく「コミュニティパートナーシップ」の初期メンバーの募集もワーキンググループの課題となっている。

【出典】

 

【2021年10月7日追記】

(出典:アラデールGDFワーキンググループウェブサイトの図を一部修正)

英国カンブリア州アラデール市に設置された地層処分施設(GDF)のサイト選定プロセスのワーキンググループは、2021年10月5日付のプレスリリースにおいて、同市内から約320平方キロメートルの「調査エリア(Search Area)」を特定したことを公表した。アラデール市では2021年1月にワーキンググループを設置し、地域の地質、環境問題、輸送インフラや安全性などに関する情報を基に調査エリアの特定作業を進めていた。今回特定された調査エリアの範囲については、英国政府の2018年政策文書に基づいて、コミュニティや自治体組織等から協議に参加可能な者が特定できるように、アラデール市の選挙区4 を最小単位として調査エリアが設定されている(図参照)。なお、2018年から開始したサイト選定プロセスにおいて、調査エリアの特定に至ったのは、2021年9月のコープランド市に続いて今回が2例目である。

アラデール市のワーキンググループは、調査エリアの特定やサイト選定プロセスの次の段階に関して、近日中に地域住民へ説明する予定である。

サイト選定プロセスを次の段階に進めるためには、地元コミュニティのメンバー、アラデール市、RWM社などで構成される「コミュニティパートナーシップ」を設立する必要がある。今後、パートナーシップが設立された場合、地層処分施設(GDF)設置の可能性について、より詳細な検討(わが国の概要調査に相当)が行われる。また、パートナーシップを形成するコミュニティ等には、経済振興、環境・福祉向上を目的とするプロジェクトに限定した形で、英国政府から年間最大100万ポンド(1億4,600万円、1ポンド=146円)の資金が提供されることになっている。

 

【出典】

 


  1. GenR8 North社は、カンブリア州に拠点を置く企業である。コープランド市における地層処分施設の立地にも関心を示しており、RWM社との初期対話を行っており、現在、コープランド市のワーキンググループにも参加している。 []
  2. 湖水地方の国立公園を除く、アラデール市の領域と隣接する沿海部を意味している。 []
  3. 英国における各国立公園局(National Park authorities)のメンバーは、法律に基づき、議会や国務長官により任命される。 []
  4. 現在、アラデール市の選挙区は23あり、市議会議員の定数は49名である。今回調査エリアの対象となった13の選挙区の議員定数は、アスパトリア:2名、ブロートンセントブリッジッツ:2名、ダルトン:1名、エレン・ギルクスク:2名、フリンビー:1名、ハリントン・サルターベック:3名、マリポートノース:3名、マリポートサウス:2名、ムーアクローズ・モスベイ:3名、シートン・ノースサイド:3名、セントジョンズ:3名、セントマイケルズ:2名、ステインバーン・クリフトン2名である。 []

英国カンブリア州のコープランド市は、2020年11月4日付のプレスリリースにおいて、地層処分施設(GDF)のサイト選定プロセスにおける「調査エリア(Search Area)」の特定に向けてワーキンググループ(正式名称:コープランドGDFワーキンググループ)を設置したことを公表した。ワーキンググループは、情報発信を目的としたウェブサイトを開設するとともに、調査エリアの特定と提案、並びに「コミュニティパートナーシップ」の設置に向け、コミュニティパートナーシップに参画する初期メンバーの募集を行うとしている。なお、2018年12月から開始したサイト選定プロセスにおいて、ワーキンググループの設置に至ったケースは今回のコープランドが初めてとなる。

■ワーキンググループの設置までの経緯:初期対話

コープランド市には、セラフィールド酸化物燃料再処理工場(THORP)などの多くの原子力施設が立地している。同市は以前、2008年6月に開始された英国白書「放射性廃棄物の安全な管理-地層処分の実施に向けた枠組み」に基づく地層処分場選定プロセスにおいても、関心表明を行っており、コープランド市議会は次段階に進むことを賛成多数で可決していたが、カンブリア州議会での反対多数の議決により、コープランド市は当時の選定プロセスから撤退している

英国政府の2018年政策文書『地層処分の実施-地域社会との協働:放射性廃棄物の長期管理』(以下「2018年政策文書」という)で設定されたサイト選定プロセスでは、地層処分施設の設置に関心を示す者、または、設置候補エリアを提案したい者であれば、地層処分事業の実施主体である放射性廃棄物管理会社(RWM社)と初期対話(initial discussion)を開始できることになっている。コープランド市のワーキンググループは、ウェブサイトにおいて、地層処分施設の立地に関心を示した4者とRWM社の初期対話の期間にRWM社が取りまとめた4つの初期評価レポート(Initial evaluation report)を公表している。

  • コープランド市議会(対象エリア:コープランド市とその沖合)
  • 民間企業(対象エリア:低レベル放射性廃棄物処分場(LLWR)近郊の沖合)
  • 民間企業(対象エリア:コープランド市とその沖合)
  • 個人(対象エリア:ギル・スコーア採石場と海岸の平原)

RWM社は、既存の情報に基づけば、コープランド市議会を含む4者が関心を示しているエリアはいずれも地層処分施設を設置できる可能性を有しているとの結論を示している。

 コープランド市のワーキンググループの検討対象エリア(出典:コープランドGDFワーキンググループウェブサイトの図を一部修正)


コープランドGDFワーキンググループの検討対象エリア(出典:コープランドGDFワーキンググループウェブサイトの図を一部修正)

■ワーキンググループの設置と構成

2018年政策文書で設定されたサイト選定プロセスでは、初期対話において、地層処分施設(GDF)の設置に向け、さらなる検討を進めていくことに合意した場合には、当該地域の自治体組織に報告して、コミュニティ全体での協議に発展させていくための準備組織「ワーキンググループ」を設置することになっている。コープランド市は、RWM社の初期評価レポートの提出を受け、2020年7月にコープランド市議会執行部において、以下の条件の下でワーキンググループの設置に向けて、RWM社と検討を進めることを決定した。

  • 現在、湖水地方の国立公園の敷地内にあるコープランド市の領域は、最初から検討対象として除外すること1
  • 現在コミュニティと進められているプロセスでは、GDFを沖合に設置することも可能となっていることを踏まえ、沖合も検討対象とすること
  • 市議会は、ワーキンググループの議長として、信頼できる独立した人物を任命したいと考えており、また市議会が負担するサイト選定プロセスに参加するために必要な正当な費用は全て補償されるべきであると考えていること

地層処分施設の設置に関心を示していた4者及びRWM社間でワーキンググループの設置に同意が得られたことを受けて、今回、初期のワーキンググループのメンバーのうち、自治体組織であるコープランド市からワーキンググループの設置が公表されることとなった。ワーキンググループの議長には、カンブリア州の南に位置するランカシャー州・ランカスター市議会の事務総長等を歴任してきたマーク・カリナン氏が就任する。なお、ワーキンググループのメンバーには、RWM社も含まれる。

■今後の取組

ワーキンググループは、今後、コミュニティ全体の市民の参画を得て、市民の意見を理解するとともに、適性を有するサイトや受け入れの意向を持つコミュニティを追求していくため、さらなる検討対象となる「調査エリア」の特定と提案を行っていくとしている。また、RWM社とともにプロセスを前進させていく「コミュニティパートナーシップ」の初期メンバーの募集もワーキンググループの課題となっている。

【出典】

 

【2021年10月5日追記】

英国カンブリア州コープランド市に設置された地層処分施設(GDF)のサイト選定プロセスのワーキンググループは、2021年9月29日付のプレスリリースにおいて、同市内から2箇所の「調査エリア(Search Area)」を特定したことを公表した。コープランド市では2020年11月にワーキンググループを設置し、地域の地質、環境問題、輸送インフラや安全性などに関する既存の情報を基に調査エリアの特定作業を進めていた。今回特定された調査エリアの範囲については、英国政府の2018年政策文書に基づいて、コミュニティや自治体組織等から協議に参加可能な者が特定できるように、コープランド市の選挙区2 を最小単位として調査エリアが設定されている(図参照)。

Copeland Search Areas

(出典:コープランドGDFワーキンググループウェブサイトの図を一部修正)

同プレスリリースにおいてワーキンググループは、今回特定した調査エリアそれぞれを含む選挙区で構成される「コミュニティパートナーシップ」の設立に関して、数週間のうちにコープランド市議会で決定される3 予定であることを明らかにした。コープランド市のコミュニティパートナーシップは、最大で2つ設立される可能性がある。

今後、コミュニティパートナーシップが設立された場合、地層処分施設(GDF)設置の可能性について、より詳細な検討(わが国の概要調査に相当)が行われる。また、パートナーシップを形成するコミュニティ等には、経済振興、環境・福祉向上を目的とするプロジェクトに限定した形で、英国政府から年間最大100万ポンド(1億4,600万円、1ポンド=146 円)の資金が提供されることになっている。

【出典】


  1. RWM社による初期評価の対象となった場所についてサイト調査への関心を表明した、コープランド市議会以外の3者も、湖水地方の国立公園の敷地は検討対象から除外するべきであるとの見解を示していた。 []
  2. 現在、コープランド市の選挙区は17あり、市議会議員の定数は33名である。今回調査エリアの対象となった4つの選挙区(図A~D)の議員定数は、A:2名、B:1名、C:3名、D:2名である。 []
  3. コミュニティパートナーシップを設立するには、調査エリアを含む自治体組織の同意と参加が必要となる。コープランド市の場合、コープランド市議会がすでにワーキンググループのメンバーとして、これまでの検討にも参加している。 []

英国の地層処分の実施主体である放射性廃棄物管理会社(RWM社)は、2020年8月4日に、英国内の地層処分に関する科学技術や専門知識の結集と形成、及び次世代の研究者の育成サポートを目的として、マンチェスター大学、シェフィールド大学と共同で「RWM研究サポートオフィス」(以下「RWM RSO」という)を設立したことを公表した。RWM社は、RWM RSOに対して最長10年間、総額約2,000万ポンド(約27.6億円、1ポンド=138円で換算)の資金提供を行うとしており、地層処分に関連する広範な研究活動を支援し、その成果をRWM社の活動に活用していく考えである。

■RWM RSOのスタッフ構成

RWM RSOは、地層処分に関連する9つの学問領域の研究開発を支援するとして、事務所はマンチェスター大学に設置されている。RWM RSOは発足時点で28名のスタッフで構成されており、このうち、支援対象となる研究プロジェクトの企画、組織化を担当するRSOプロジェクトチームには、マンチェスター大学から5名、シェフィールド大学から1名の計6名が参画している。また、RWM RSOの運営と活動を支援するため、RWM社から16名が参画している。その他に、学問領域ごとに研究リーダーを置いており、現在は9つの学問領域のうち、6領域の研究リーダーをマンチェスター大学から4名、シェフィールド大学から2名選任している。RWM RSOは、不在となっている3領域の研究リーダーを英国内の大学から募集している。

■RWM RSOが支援する地層処分に関連する学問領域

「RWM研究サポートオフィス」(RWM RSO)は、RWM社が行う地層処分と関連性をもつ学術的な研究を支援するとしており、支援対象となる学問領域を9領域に大別している。

  1. 先進製造(Advanced manufacturing)
  2. 応用数学(Applied mathematics)
  3. 応用社会科学(Applied social science)
  4. 環境科学(Environmental science)
  5. 地球科学(Geoscience)
  6. 材料科学(Materials science)
  7. パブリック・サイエンスコミュニケーション(Public communication of science)
  8. 放射化学(Radiochemistry)
  9. トレーニング(Training)

なお、RWM社は、これまでに地層処分の研究開発を行っており、2013年から地層処分に係る科学・技術研究における構造と範囲、地層処分事業を実施する上で重要なアウトプットをステークホルダーに提示することを念頭に置いて、『科学技術プログラム』を取りまとめている。RWM RSOは、支援対象となる上記の9つの学問領域は、RWM社が実施している研究開発活動のニーズに対応するものであるとしている。また、前述したRWM社から参画している16名については、RWM社で「一般的な条件における処分システムセーフティケース」(gDSSC)の開発などを担当した科学技術の専門家、コミュニティの参画や持続的開発などの専門家であり、RWM RSOの枠内で行われる研究活動を支援することとなっている。

【出典】

英国の原子力廃止措置機関(NDA)は2020年7月10日に、スコットランド北部にあるドーンレイサイトのサイト許可会社1 (SLC)及びイングランド北西部のドリッグ村近郊に位置する低レベル放射性廃棄物処分場(LLWR)のSLCの2社を、NDAの完全子会社に移行することを公表した。ドーンレイサイトのSLCは2021年3月に、LLWRのSLCは2021年7月に、NDAの完全子会社となる予定である。

ドーンレイサイト及びLLWRの操業は、両サイトを所有するNDAとの契約に基づき、SLCであるドーンレイサイト復旧会社(DSRL)及び低レベル放射性廃棄物処分場会社(LLWR社)がそれぞれ行っている。SLCの株を所有して経営する親会社(PBO)は、競争入札によって選定されており 、現在DSRLのPBOはキャベンディッシュ・ドーンレイ・パートナーシップ社2 、LLWR社のPBOは英国放射性廃棄物管理会社(UKNWM社)3 となっている(下図参照)。

図:NDAのPBO契約による事業実施体制

図:NDAのPBO契約による事業実施体制

今回のSLCの子会社化についてNDAは、強固に結集したNDAグループを構築し、サイトのクリーンアップや廃止措置をより効率的・効果的に実施しようとするNDAの戦略的な計画の一環であると説明している。また、先行してNDAの完全子会社化が実施されたセラフィールド社及びマグノックス社では、グループ間の協力が強固となり、組織横断的な相乗効果が得られたことも、今回の決定につながったとしている。

【出典】


  1. 原子力施設のサイト許可を持ち、サイトの管理・運営を行う会社 []
  2. キャベンディッシュ・ニュークリア社、ジェイコブズ社及びアメンタム社の共同企業体 []
  3. アメンタム社、スタズビック社及びOrano社の共同企業体 []

英国の地層処分事業の実施主体である放射性廃棄物管理会社(RWM社)は、2020年2月18日に、イングランドにおける地層処分施設(GDF)の候補サイトの評価方法を示した文書(以下「サイト評価方法書」という)を公表した。また、同日に、土地利用制度等が異なるウェールズ向けのサイト評価方法書も公表した1 。サイト評価方法書は、地層処分施設の「立地要因」と各立地要因の「評価項目」を示したものであり、今後、地層処分施設のサイト選定プロセスが進むにつれて、それらがどのように組み合わされ、適用されていくのかを分かりやすく説明することを目的としている。
サイト評価方法書の公表に先立ちRWM社は、2018年12月及び2019年1月に、イングランドとウェールズにおいて公衆協議を実施していた 。RWM社は、公衆協議で90件の意見書で寄せられた約800件のコメントを反映して、サイト評価方法書の目的を明確化にし、表現をわかりやすく改めたほか、特に複数サイトの比較評価(comparative assessment)に関する説明を充実したとしている。

■地層処分施設の「立地要因」と「評価項目」

RWM社は、地層処分施設の立地において検討すべき「立地要因」として、①安全とセキュリティ、②コミュニティ、③環境、④工学的成立性、⑤輸送、⑥支払いに見合った価値(Value For Money)2 の6つを設定している。これらの立地要因について検討すべき内容を明確にするため、それぞれの立地要因ごとに2~7つに細分化した「評価項目」を設定している。

立地要因(Siting Factor) 評価項目(Evaluation consideration)
①安全とセキュリティ
(Safety and Security)
・サイト調査期間中の安全
・建設期間中の安全
・操業期間中の安全
・閉鎖後の安全
・マネジメント要件
・セキュリティ
・保障措置
②コミュニティ
(Community)
・コミュニティの福祉
・社会
・経済
・健康
・地元コミュニティのビジョン
③環境
(Environment)
・環境影響
・生息地と種の保護
④工学的成立性
(Engineering Feasibility)
・柔軟性
・調査可能性
・設計・建設可能性
・処分インベントリ
・持続可能な設計
・廃棄物の調整とパッケージ
・回収可能性
⑤輸送
(Transport)
・輸送の安全
・輸送のセキュリティ
・輸送への影響
⑥支払いに見合った価値
(Value For Money)
・ライフタイムのコストと価値
・廃棄物の処分スケジュール

■サイト選定プロセスの進行とサイト評価の関係

サイト選定の概略図サイト選定の概略図
(出典:RWM, 協議文書「サイト評価方法案」(2018)の図を一部修正)

RWM社は今後、英国政府の2018年12月の政策文書である『地層処分の実施-地域社会との協働:放射性廃棄物の長期管理』(以下「2018年政策文書」という)で示されたサイト選定プロセスに沿って、以下のように評価を進めていくとしている。

  • 今後、複数の地域社会(コミュニティ)がサイト選定プロセスに参加するタイミングは異なると予想しており、RWM社は、それぞれの地域社会の希望にあわせて参加できるように協力して作業を進めていく。
  •  初期対話(initial discussion)の期間:GDFの設置に関心を示す人々などとの初期対話の段階では、地質学的スクリーニング等の既存情報をもとに「安全性」に焦点をあてた評価を実施することになる見通しである。この段階では、容易に入手できる情報のみを評価に使用する。
  • ワーキンググループとの活動期間: RWM社、関心を示す人々の他、独立したグループ長とファシリテータを加えた準備組織「ワーキンググループ」が「調査エリア」(Search Area)を特定する段階では、調査エリアについて、当該地域の特性や特徴、また、地域の課題を理解するための情報を収集し、GDF設置の潜在的な適合性を評価する。この段階では、容易に入手できる情報のみを評価に使用する。
  • パートナーシップの活動期間:当該コミュニティにおける情報共有、地層処分・サイト選定プロセス・地域の便益に関する対話と理解を促進するためにコミュニティパートナーシップが設置された段階で、初めて調査エリアに関する新たな情報を収集するための調査が開始される。当初の「サイト調査」では、空中物理探査のような地上からの調査のみが行われる。
  • サイト調査からサイト特性調査への移行期間:現在のサイト選定プロセスでは、サイト調査終了後、ボーリング調査などを行う「サイト特性調査」が行われる。英国では、ボーリング調査を行う前に、2008年計画法に基づく開発同意令(DCO)と環境許可が必要となる。RWM社は、開発同意申請を行うため、サイト調査などで得られた情報を用いて評価を行う。この評価では、サイト評価方法書で提示された立地項目と評価項目に基づいた評価を行う予定である。また、この段階で複数のコミュニティがサイト選定プロセスに参加している場合、客観的な比較評価(comparative evaluation)が実施される可能性がある。

【出典】


  1. サイト評価方法書において地方自治制度や土地利用計画制度などの地方自治政府に権限が委譲されている事項に関しては、イングランドでの英国政府とウェールズ政府の制度が反映されたものとなっている。 []
  2. 支払い(Money)に対して最も価値の高いサービス(Value)を供給するという考え方 []

英国政府のビジネス・エネルギー・産業戦略省(BEIS)と原子力廃止措置機関(NDA)とは、2020年1月10日に、放射性廃棄物インベントリ報告書の最新版である2019年版を公表した。放射性廃棄物インベントリは、英国政府とNDAが実施している共同研究プログラムの一部であり、放射性廃棄物の管理計画を立案する上での重要なデータとして、今後対策が必要となる1放射性廃棄物の廃棄物量、放射能量等を3年毎に評価したものである。

今回の2019年版の放射性廃棄物インベントリ報告書に示されている下表の廃棄物量(単位:m3)は、2019年4月1日時点において処理されて貯蔵されている廃棄物量と、今後発生が見込まれる廃棄物量を合計したものである。この廃棄物量には、既に操業しているドリッグ村近郊にある低レベル放射性廃棄物処分場(LLWR)及びドーンレイ低レベル放射性廃棄物処分場で処分された低レベル放射性廃棄物、並びに民間の産業廃棄物処分場で処分された極低レベル放射性廃棄物の量は含まれていない。

2019年版の放射性廃棄物インベントリ報告書では、下表のように、前回の2016年版の放射性廃棄物インベントリ  報告書 に比べて、極低レベル放射性廃棄物及び中レベル放射性廃棄物が減少する一方で、低レベル放射性廃棄物及び高レベル放射性廃棄物がそれぞれ増加している。これらの放射性廃棄物の増減理由に関してNDAは、相当前に発生した廃棄物に関する知見の向上(廃棄物ストリームの改善)や廃棄物の減衰・除染による廃棄物分類の見直し、国家戦略の更新などによる廃棄物パッケージや処理処分オプションなどの変更、今後発生が見込まれる廃棄物の基本発生シナリオの見直しなどによるものであると説明している。

英国の分類別の放射性廃棄物インベントリ

廃棄物分類 2016年版報告書 2019年版報告書
極低レベル放射性廃棄物 2,860,000m3 2,830,000m3
低レベル放射性廃棄物 1,350,000m3 1,480,000m3
中レベル放射性廃棄物 290,000m3 247,000m3
高レベル放射性廃棄物 1,150m3 1,390m3
合計 4,501,150m3 4,558,390m3

【出典】


  1. 原子力施設の運転・廃止措置に伴って発生する放射性廃棄物の推定量を含む。 []

英国政府は2019年7月4日、イングランド1 における地層処分社会基盤(Geological Disposal Infrastructure)に関する国家政策声明書(National Policy Statement, NPS2 )を英国議会に提出した。NPSは、2014年の白書『地層処分の実施-高レベル放射性廃棄物等の長期管理に向けた枠組み』(以下「2014年白書」という)において、地層処分施設(GDF)のサイト選定プロセスの初期活動の主要目標の一つとして、英国政府が策定を進めていたものである。イングランドにおいては、地層処分施設(GDF)の候補サイトを評価するために行われるボーリング調査、その後のGDFの建設に先がけ、計画審査庁からの勧告を受けた担当大臣による開発同意令(Development Consent Order ,DCO)が必要である。国家政策声明書(NPS)は、開発同意令(DCO)の発給審査の基礎文書となるものであり、2018年12月から新たに始まったサイト選定プロセスにおいて、地域における地層処分社会基盤に関する開発合意の認可に関する法的な枠組みを提供するものとなる

英国政府は、2018年1月にNPS案を公表し、約3か月にわたる公衆協議を実施するとともに、英国議会下院のエネルギー・産業戦略委員会にNPS案に関する審議を付託していた。今回、英国政府は、公衆協議で得られた見解やエネルギー・産業戦略委員会の審議結果を踏まえてNPSを最終化し、英国議会の承認を求めている3

地域社会との協働プロセス
(出典:BEIS, 政策文書「地層処分の実施-地域社会との協働:放射性廃棄物の長期管理」(2018)の図を一部修正)

英国では2018年12月より、地層処分事業の実施主体である放射性廃棄物管理会社(RWM社)4 による地層処分施設(GDF)の新たなサイト選定プロセスが開始されている。RWM社は、今後約5年間でGDF設置の潜在的な適合性を確認する「調査エリア」を特定し、その後、調査エリア内から候補サイトを特定するために、地上からのボーリング調査を実施する予定である。

国家政策声明書(NPS)の内容

英国における国家政策声明書(NPS)とは、「2008年計画法」(2015年3月改正)により設定された、エネルギー、運輸、水資源及び廃棄物に関する「国家的に重要な社会基盤プロジェクト」(NSIP)について、当該施設の開発や建設に関する国の政策文書であると同時に、事業者が作成する開発同意申請書のガイダンス的な役割を持つものであり、事業の方針や背景情報、当該施設の必要性や当該施設に関する評価原則などを示す必要がある。地層処分社会基盤に関するNPSでは、英国政府の地層処分方針、地層処分施設(GDF)等の開発や建設の必要性、NPSの策定に当たって行う必要がある持続可能性評価(AoS)及び生息環境規制評価(HRA)に関する原則などを示している。

今回提出されたNPSは、以下の5つの章で構成されている。

第1章「イントロダクション」

ボーリング調査と地層処分施設(GDF)の定義、対象地域がイングランドのみであること、ボーリング調査とGDF開発の計画申請の審査において検討すべき事項、持続可能性評価(AoS)及び生息環境規制評価(HRA)の概要5 に加え、NPSの目的を述べている。

  • 英国政府の地層処分方針を実行すること
  • GDF等の社会基盤の必要性を示すこと
  • 明確かつ透明性のある計画及び開発におけるサイト固有ではない包括的な影響や一般的なサイト選定での検討事項を示すことにより、長期的にセキュリティ及び安全性があり、持続可能なボーリング調査とGDFの開発を可能とするとともに、開発申請者のためのガイドにもなること
  • 開発同意令(DCO)の発給審査の基礎文書となること
  • 地域計画当局による影響評価報告書の作成を支援すること

第2章「英国政府の高レベル放射性廃棄物等の管理方針」

英国政府の管理方針、地層処分、処分対象廃棄物の概要に加えて、処分実施戦略におけるポイントを述べている。

  • 2014年白書 に代わる政策文書である『地層処分の実施-地域社会との協働:放射性廃棄物の長期管理』(以下「2018年政策文書」という)では、実施主体である放射性廃棄物管理会社(RWM社)のみに、地域社会との協働プロセスを適用するとしているが、本NPSはボーリング調査とGDFの開発を希望する全ての者に適用される。
  • ボーリング調査とGDFの開発の際には、担当大臣による開発同意令(DCO)、イングランドの環境規制機関(EA)による環境許可、原子力規制局(ONR)による原子力サイト許可が必要となる。各規制当局は段階的な規制アプローチに基づき、GDFの開発計画・建設・操業・閉鎖の各段階において、相互に適切に関与するものの、規制が重複しないような体制を構築する。

第3章「地層処分施設の必要性」

技術・倫理・法律等の各観点から、高レベル放射性廃棄物等の管理方針として、他の管理方法を説明するとともに、地層処分が適切である理由が説明され、英国政府が公衆協議等を経て地層処分方針の採用を決定し、NPSの策定に至ったことを示している。

第4章「評価原則」

GDF等による環境・経済・地域への影響を評価するための主な原則として、設計・環境・健康・安全・セキュリティについての評価原則を述べている。

第5章「影響」

大気・騒音・生態系と自然保護・気候変動・文化遺産・社会経済・人口・洪水・湾岸侵食・健康・景観・土地利用・交通・水質等の主要な影響についての評価方法、マイナス影響を回避・緩和・補償するための措置等について述べている。

【出典】

 

【2019年10月18日追記】

英国政府は、2019年10月17日に、イングランドにおける地層処分社会基盤(Geological Disposal Infrastructure)に関する国家政策声明書(National Policy Statement, NPS)が制定されたことを公表した。これは、NPSの承認を求めて、最終案を2019年7月4日に英国議会に提出していたことを受けたものである。また、英国政府は、NPSの制定の要件として実施していた、生息環境規制評価(HRA)及び持続可能性評価(AoS)の報告書も公表した。

国家政策声明書(NPS)について英国政府は、英国において高レベル放射性廃棄物等の安全管理に地層処分施設が必要であることを示すとともに、計画審査庁やビジネス・エネルギー・産業戦略省(BEIS)の大臣がイングランドにおける地層処分社会基盤の開発同意令(DCO)の発給審査及び発給決定を行うための基礎文書になるとしている。

 

【出典】


  1. 英国では、地方自治政府(イングランド、ウェールズ、スコットランド、北アイルランド)のうち、イングランド以外は地方自治政府に放射性廃棄物管理の権限が委譲されており、イングランド以外で地層処分施設を計画する場合は各地方自治政府が定める許可制度が適用される。 []
  2. このNPSは、イングランドにおける特定サイトではなく一般的なサイトを対象として作成されている。 []
  3. 2008年計画法(2015年3月改正)では、21会期日以内にNPSが可決または、「NPSを進めるべきではない」との決議をしていない状態で会期が終了した場合、NPSが制定されるとしている。 []
  4. 原子力廃止措置機関(NDA)の完全子会社。 []
  5. 英国政府は、国家政策声明書(NPS)の制定後、持続可能性評価(AoS)及び生息環境規制評価(HRA)の最終版を発行するとしている。 []