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このWebサイトでは、諸外国における高レベル放射性廃棄物の最終処分や地層処分の計画の動きに注目し、 "海外情報ニュースフラッシュ"として 最新の正確な情報を迅速に提供しています。 ニュースフラッシュを発行した後も、記事トピックをフォローしています。必要に応じて、情報の"追記"を行っています。


英国政府は2018年1月25日に、地層処分施設(GDF)に関する地域との協働プロセス案(イングランドと北アイルランドが対象)の協議文書を公開し、同日より2018年4月19日まで意見募集を行うことを公表した。また、ウェールズ政府も同日、ウェールズにおけるGDF設置に関する地域との協働プロセス案についての協議文書を公開し、同日より2018年4月20日まで意見募集を行うことを公表した。今回の協議文書において英国政府は、地層処分事業の実施主体である放射性廃棄物管理会社(RWM社)、GDFの受入れに関心を持つ地域と、その地域を内部に含む自治体議会等の複数の地方自治体との三者が係わり合う協働プロセスに関する提案を示している。

英国政府は現在、2014年7月の白書『地層処分の実施-高レベル放射性廃棄物等の長期管理に向けた枠組み』(以下「2014年白書」という)に沿って、地層処分施設のサイト選定プロセスの初期活動を進めている。英国政府は、サイト選定プロセスを進める上で「地域(コミュニティ)」に係わる問題を最も難しいものと位置づけており、地域との協働プロセスの策定に向けて、2015年から「地域の代表のための作業グループ」(Community Representation Working Group、CRWG)を設置して検討を進めてきた。また、2015年12月から2016年3月にかけて、科学コミュニケーションの促進を目的とした英国政府のプログラム「サイエンスワイズ」(Sciencewise Expert Resource Centre)を活用して、地層処分と地域との協働に関する公衆対話を実施していた。今回の協議文書は、これらの成果を踏まえて作成されたものである。

■新たなサイト選定プロセスにおける「地域」の捉え方

今回の協議文書では、サイト選定プロセスとは、地層処分施設の立地の可能性がある「地域(エリア)」を領域内に含む「地域(コミュニティ)」の特定を目指したアプローチであり、その開始から約20年にわたる時間経過と共に、「エリア」と「コミュニティ」の両方が、それらの数と大きさの面で狭められていく変化の過程として捉えられている。こうした認識のもと英国政府は、サイト選定プロセス初期の「調査エリア」を、「エリア」と「コミュニティ」の範囲が一致するように、選挙区を最小単位とし、地層処分施設の開発によって影響を受ける選挙区を含む全ての自治体を包括する形で定義するという考え方を提示している1 。また、サイト選定プロセスの途中段階では、調査エリアを包括する立地コミュニティを構成する自治体メンバーも変化することになる。そうした立地コミュニティは、サイト選定プロセスの開始当初から必ずしも存在しているとは限らないため、サイト選定プロセスを通じて発見あるいは新たに創設されることになる。地層処分施設の立地に関して意思決定する資格をもつ1つの<潜在的立地コミュニティ>が明らかになるまでは、当該エリアでの立地プロセスの継続に関する支持を調査・確認(test)する対象住民の範囲を明らかにできない。このような理由から、英国政府は、潜在的立地コミュニティが明確になるまでは、サイト選定プロセスに関係する個々の自治体が地層処分施設の受け入れ可否に関する意思決定を行う必要性に迫られることはないとしている。このことは、サイト選定プロセスへの参加にあたって、自治体が関心表明を行う必要はないことを意味している。

■新たなサイト選定プロセスにおけるパートナーシップ

今回の協議文書では、今後のサイト選定プロセスの開始にあたり、最初に地層処分の実施主体である放射性廃棄物管理会社(RWM社)が、RWM社と協働する「コミュニティパートナーシップ」の構築を目的として、事前に公衆や様々なステークホルダーと対話を行う「関与形成チーム」(formative engagement team)を組織することとしている。このチームの構成員として、RWM社の職員のほか、独立したチーム長、ファシリテーター、別途提案される「調査エリア」に含まれる自治体組織(市議会、州議会など)、地元企業パートナーシップの代表2 が挙げられている。英国政府は、関与形成チームに地元企業パートナーシップが参画することによって、当該コミュニティにおける社会経済や産業基盤に関する影響に関する情報が入手できることを期待している。

 RWM社と協働するコミュニティパートナーシップの構築は、その活動方法、参加者の役割、意思決定方法などを定めた合意書に対する署名をもって有効になるものとしている。また、英国政府は、この時点から当該コミュニティに対し、経済振興、環境・福祉向上を目的とするプロジェクトに限定した形で、年間最大100万ポンド(1ポンド=149円として、1億4,900万円)、また、地下深部ボーリング調査の実施に至った際には年間最大250ポンド(約3億7,300万円)の資金提供を行うとしている。さらに、この資金提供は、RWM社を通じて行うとの考えを提示している。なお、この資金提供の給付申請を行う資格は、当該コミュニティに属する個人も可能としており、コミュニティパートナーシップとRWM社で構成される投資パネルの審査を受けることを条件としている。

■今後の予定

今後、英国政府は、公衆協議で得られた意見を検討した上で、協議の回答と最終的な政策を公表するとしている。また、RWM社は、英国政府が示す地域との協働プロセスに関する政策を、実際の地層処分施設のサイト選定プロセスの中で、どのように連携させるかについて、より詳細なガイダンスを作成するとしている。

 

【出典】

 

【2018年5月14日追記】

英国政府の諮問機関である放射性廃棄物管理委員会(CoRWM)は、2018427日に、地層処分施設に関する地域との協働プロセス案への意見書を公表した。意見書においてCoRWMは、英国政府が公衆協議文書で意見を求めていた事項に関して、次のような意見を述べている。

■関与形成チーム(formative engagement team)の活用

本協働プロセス案では、サイト選定プロセスにおいて、地層処分の実施主体である放射性廃棄物管理会社(RWM社)が、RWM社と協働する「コミュニティパートナーシップ」の構築を目的として、事前に公衆や様々なステークホルダーと対話を行う「関与形成チーム」を組織することになっている。しかし、CoRWMは、本協働プロセス案に示された説明だけでは、この関与形成の意味を公衆が正確に理解することは困難であると考えている。本協働プロセス案において、関与形成に関するガイダンス文書は、今後用意されると説明されているものの、その文書をRWM社が作成し、RWM社が関与形成チームに参加する場合には、関与形成が偏ったものになると見られる可能性があるとCoRWMは指摘している。

■協働するコミュニティパートナーシップの構築方法

CoRWMは、RWM社と協働するコミュニティパートナーシップの構築はできるだけ柔軟であるべきと考えているが、本協働プロセス案では選挙区を有する自治体組織(市議会、州議会など)の役割が強調され過ぎているとの認識を示している。また、コミュニティパートナーシップを形成するという目的において、選挙で選ばれた代表で構成される行政機構は重要であるが、そうした行政機構がコミュニティパートナーシップの構築を主導する役割を担う必要があるとは必ずしも言えないとしている。さらに、関与形成の段階においては、潜在的なホストコミュニティのメンバーと開発者としてのRWM社の間に、知識の不均衡が存在するのは避けられないため、政治的な意欲が強すぎると、問題を招く可能性があると指摘している。このためCoRWMは、パートナーシップのメンバー間の交流や情報伝達のペースが、弱者と見なされるコミュニティメンバーの意思で進むような配慮がされるべきであるとの意見を示している。

【出典】

• 英国政府ウェブサイト、CoRWM Consultation Response to BEIS and DAERA on ‘Working With Communities: Implementing Geological Disposal’、2018年4月27日、https://www.gov.uk/government/publications/corwm-consultation-response-to-beis-and-daera-on-working-with-communities-implementing-geological-disposal


  1. 「調査エリア」の定義は、イングランドと北アイルランド、ウェールズのそれぞれの地方自治制度に依存することとなる。 []
  2. 地元企業パートナーシップ(Local enterprise partnerships)とは、イングランドの地方行政組織と地元企業間が自発的に参加するパートナーシップであり、地元経済の発展や雇用創出に関する政策決定をサポートする役割を担っている。この制度は2011年当時のビジネス・イノベーション・技能省(Department for Business, Innovation and Skills)の政策によって導入された。 []

英国政府は2018年1月25日に、イングランド1 における地層処分施設(GDF)等に関する国家政策声明書(National Policy Statement, NPS)案及びその公衆協議文書を公開し、同日より2018年4月19日まで意見募集を行うことを公表した。英国政府は、現在、2014年7月の白書『地層処分の実施-高レベル放射性廃棄物等の長期管理に向けた枠組み』(以下「2014年白書」という)に沿って、地層処分施設のサイト選定プロセスの初期活動を進めており、国家政策声明書(NPS)の策定をその主要目標の一つと位置づけている。

英国政府は、2014年白書において、2008年計画法を改正し、地層処分施設及びその候補サイトを評価するために必要な地上からのボーリング調査を「国家的に重要な社会基盤プロジェクト」(NSIP)として定義する意向を表明していた。この法改正は2015年3月に完了しており、地上からのボーリング調査の実施前、及び地層処分施設(GDF)の建設前において、計画審査庁からの勧告を受けた担当大臣による開発同意令(Development Consent Order ,DCO)が必要となっている。国家政策声明書(NPS)は、それらの開発同意令(DCO)の発給審査の基礎文書となるものであり、今後実施されるサイト選定プロセスにおいて、地域における地層処分事業基盤(インフラ)に関する開発合意の認可に関する法的な枠組みを提供するものとなる。

英国政府は、国家政策声明書(NPS)の策定に向けた準備として、2015年8月に、地層処分事業に関する持続可能性評価(AoS)と生息環境規制評価(HRA)の実施内容案を公表して、意見募集を行っていた。今回公表された国家政策声明書(NPS)案には、2008年計画法(2015年3月改正)に基づいて実施された持続可能性評価(AoS)と生息環境規制評価(HRA)の評価結果が含まれている。

今後の予定

2008年計画法(2015年3月改正)に基づいて、国家政策声明書(NPS)案は英国議会による審議・承認を受けることになっている。今回の地層処分施設等に関するNPS案は、2018年1月25日から約30週間にわたって、英国議会で審議(2018年8月下旬まで)される予定とされている。また、今回の2018年4月19日を期限とする意見募集で寄せられた意見に対する英国政府の回答文書も英国議会に提出されることになっている。

 

【出典】

 

【2018年5月11日追記】

英国政府の諮問機関である放射性廃棄物管理委員会(CoRWM)は、2018年4月27日に、地層処分施設(GDF)に関する国家政策声明書(NPS)案への意見書を公表した。意見書においてCoRWMは、英国政府がNPS案及びその公衆協議文書で意見を求めた点に対して、概ね肯定的な意見を示す一方で、次のような意見を述べている。

  • CoRWMは、これまでに科学的な観点から、高レベル放射性廃棄物等の管理方針として、地層処分以外の合理的な代替案は存在しないという判断をしている。しかし、高レベル放射性廃棄物等の管理方針については、現状では少なくとも、①スコットランドが採用している地表近くに設置した施設での長期管理と、②最終処分するのではなく廃棄物の回収可能性を考慮した地層処分との「2つの管理方針」についての検討が他所で行われているため、国家政策声明書(NPS)においても、これら2つの管理方針の代替案についても評価対象とする必要がある。
  • CoRWMは、持続可能性評価(AoS)において、これら2つの管理方針の代替案について、実施した場合に生じる可能性のある重大な影響の評価結果を示すこと、また、NPSが正式に承認された後のプロセスにおいて、2つの管理方針の代替案と比較した結果として、地層処分施設(GDF)への最終処分を選択する理由が文書の形で示されることが正当なやり方であると考える。CoRWMは、GDFへの最終処分を選択する理由を明確に示す文書の存在は、今後の地域開発計画方針や開発同意の形成プロセスを進めていく上でも役立つと考える。

【出典】

 

【2018年8月7日追記】

英国議会下院のエネルギー・産業戦略委員会は、2018年7月31日に、地層処分施設(GDF)及び評価のためのボーリング調査を「国家的に重要な社会基盤プロジェクト」(NSIP)にするための基礎となる国家政策声明書(NPS)案について、審議を行った結果をまとめた報告書を公表した。本委員会は、2008年計画法に基づいて、NPS案に関する審議を付託され、NPS案の内容と範囲とを中心に2018年5月から審議を行っていた。

同報告書において本委員会は、英国政府が今後策定する国家政策声明書(NPS)の最終化に向けて、以下のような意見・勧告を示している。

  • 国立公園及び特別自然美観地域(AMOB)が備える社会経済的な利益を保持しつつ、保護区域にある地上の施設への侵入を防止するように地層処分施設(GDF)を設計することは可能である、という英国政府の見解を支持する。国家政策声明書(NPS)において、そうした保護区域を除外区域として予め設定しなくても、既存の法律やNPSの枠内において、十分な環境保護措置が取られることになると認識している。
  • 新規原子炉から発生する高レベル放射性廃棄物等を含め、地層処分する放射性廃棄物のインベントリ予測について、どの程度不確かなものであるかを明示すべきである。
  • 将来のボーリング調査に先だって実施主体が提出する開発同意令(DCO)のための申請は、潜在的な立地コミュニティ内で実施される立地プロセスの継続に関する支持の調査・確認(test)までは行わないことについて、一般の人が理解しやすいように明示すべきである。
  • 地層処分施設(GDF)設置によって見込まれる地元の経済効果・人材雇用・スキル向上等の社会経済的な便益について具体的な内容を明示すべきである。

なお、本委員会は、2008年の英国政府白書に基づいて実施された地層処分施設(GDF)のサイト選定プロセスの教訓が国家政策声明書(NPS)案に十分反映されており、NPS案で示されたコミュニティが自発的にサイト選定プロセスに参加する方法を支持するとしている。

 

【出典】


  1. 英国では、地方自治政府(イングランド、ウェールズ、スコットランド、北アイルランド)のうち、イングランド以外は地方自治政府に放射性廃棄物管理の権限が委譲されており、イングランド以外で地層処分施設を計画する場合は各地方自治政府が定める許可制度が適用される。 []

英国の原子力廃止措置機関(NDA)は、2017年12月11日に、2018年4月1日から3年間を対象としたビジネスプラン(事業計画書)のドラフト版を公表するとともに、意見募集期限を2018年2月4日までとする公開協議を開始した。NDAは、英国における17の原子力サイトの廃止措置・クリーンアップ、放射性廃棄物の安全な管理、使用済燃料の再処理等に責任を有する政府外公共機関(NDPB)1 である。NDAは、2004年エネルギー法に基づいて、ビジネスプランを毎年作成し、英国政府の承認を受けている。NDAは、今回のビジネスプランのドラフト版において、放射性廃棄物処分に関連した活動計画を以下のように示している。

・再処理事業

NDAは、セラフィールドの酸化物燃料再処理工場(THORP)を従来通りに2018年に閉鎖する計画としている。また、英国で初期に導入されたガス冷却炉(GCR、マグノックス炉)からの使用済燃料の取り出しとマグノックス再処理工場への搬出を2019年までに完了させ、それらの再処理を2020年に完了させる計画としている。

・浅地中処分事業

イングランド北西部のドリッグ村近郊に位置する低レベル放射性廃棄物処分場は、1959年から操業しており、2080年に処分場の最終的な閉鎖が予定されている。処分場の操業者である低レベル放射性廃棄物処分場会社(LLW Repository Ltd、LLWR社)は、すでに満杯となっている既存の1~7号トレンチ処分施設及び8号コンクリートボールト施設の最終的な覆土(cap)の施工の準備を継続する計画としている。

・地層処分事業

英国政府は、2014年8月に公表した白書『地層処分の実施-高レベル放射性廃棄物等の長期管理に向けた枠組み』において、サイト選定プロセスの開始前の初期活動として、英国全土(スコットランドを除く)を対象とした「地質学的スクリーニング」、「2008年計画法」の改正、地域との協働プロセスの策定活動の3つを行うこととしている。ビジネスプランのドラフト版では、これらの初期活動が完了間近であり、2018年6月にはサイト選定プロセスが開始される見込みであるとしている。

なお、地層処分事業に関しては、2017年12月7日付けの英国政府のプレスリリースにおいて、地層処分施設に関する開発同意令(DCO)の発給審査の基礎となる国家政策声明書(NPS)の作成2 、地域との協働プロセスの策定に関して、それぞれ公開協議による意見募集を2018年早々に開始する意向を公表している。

 

【出典】


  1. 「政府外公共機関」(NDPB)は、所管省の行政機能を実現する実務組織として省の外部に設置されている組織の総称である。執行型、諮問型、法廷型に類型され、NDAは執行型に相当する。 []
  2. このNPSは、特定のサイトではなく一般的なサイトを対象とした地層処分施設等について作成される。 []

英国の高レベル放射性廃棄物等の地層処分の実施主体である放射性廃棄物管理会社(RWM社)1 は、2017年8月3日に一般的な条件における処分システム・セーフティケース(gDSSC2 )の2016年版(以下「2016年版gDSSC」という。)の報告書を公表した。RWM社は、想定しうる英国内の地質環境において、安全に地層処分を実施できると結論付けている。今回のgDSSC報告書は、英国政府が2014年8月に公表した白書『地層処分の実施-高レベル放射性廃棄物等の長期管理に向けた枠組み』(以下「2014年白書」という。)に基づき、RWM社が実施している地質学的スクリーニングと並行かつ連動した形で取りまとめたものであり、2014年白書に基づく初期活動終了後に開始予定である地層処分施設の受入れに関心のある地域(コミュニティ)との協議において、提供される情報の一つとなる。

2016年版gDSSCは、地層処分施設への放射性廃棄物の輸送、地層処分施設の建設・操業、地層処分施設の閉鎖後という3つの段階に分けて、放射性廃棄物を安全に処分できることを立証する目的で作成された一連の文書であり(下記コラムを参照)、2010年12月に最初のgDSSCが取りまとめられた(以下「2010年版gDSSC」という。)。RWM社は今回の更新の主な理由として、2010年版gDSSCの策定のための基礎情報であった2007年版インベントリ及び地層処分対象となる放射性廃棄物を抽出した報告書「地層処分:2007年版抽出インベントリ」がそれぞれ2013年版に更新されたこと 、また、2014年白書において新規原子力発電所から発生する放射性廃棄物の追加等、地層処分される放射性廃棄物インベントリが更新されたことを挙げている。

2016年版gDSSCの主要成果

  • 想定しうる英国内の地質環境において、安全な地層処分が可能
  • 法律で規定された線量限度及び放射線防護基準を遵守してRWM社の地層処分施設を設計・建設・操業が可能
  • 通常作業における作業員への被ばく線量を法定限度以下に抑えた状況で、放射性廃棄物を地層処分施設に安全に輸送が可能
  • 地層処分施設の操業時のみならず閉鎖後も含め、長期間にわたる環境安全を確保する方法の立証が可能

また、RWM社は、今回公表した2016年版gDSSCが、前回2010年版と比較して、以下のような点において改善・進捗があったことから、地層処分施設の安全性が向上したと説明している。

  • 地層処分施設が設置される深度にある、母岩となりうる3種類の岩種(硬岩、粘土、岩塩)の定量評価
  • 放射性廃棄物インベントリに関する代替シナリオの検討
  • 原子力規制局(ONR)や国際原子力機関(IAEA)のガイダンスに沿った、将来的にRWM社が作成する地層処分施設の予備的安全報告書(PSR)の要件と、一般的な条件における操業セーフティケースの主要報告書(OSC)との整合
  • 廃棄体の劣化によって放出される放射性物質の挙動についての理解、地層処分施設の閉鎖後における臨界評価の改善、ガス評価におけるアプローチの策定などに関する知識ベースの改善

RWM社は、処分実施可能性の検討のために必要とされる限り、また、一般的な条件における地層処分施設の開発研究を進めるため、一般的な条件でのセーフティケース(gDSSC)を更新し続けるとしている。さらに、今後、地層処分施設の候補サイトが明らかになった際には、そのサイト固有のセーフティケースを作成するとしている。

2016年版gDSSC の目的と構成

一般的な条件でのセーフティケース(gDSSC)は、①gDSSCを構成する文書全体の構成、目的、主要成果を示した概要報告書(Overview)、②地層処分施設への放射性廃棄物の輸送、地層処分施設の建設・操業、地層処分施設の閉鎖後という3つの段階におけるセーフティケース報告書(Safety Cases)、③3つのセーフティケースの根拠となる評価報告書(Assessments)、④評価のために利用された基礎情報文書(System Information)で構成されている(下図参照)。

2016年gDSSCの文書校正

図:2016年gDSSCの文書構成

<2016年版gDSSCの目的>

  • 放射性廃棄物を安全に処分できることを立証する
  • 規制機関及び廃棄物発生者や原子力廃止措置機関(NDA)のようなステークホルダーとの協議に利用できる
  • 放射性廃棄物管理会社(RWM社)が廃棄物発生者に対して、廃棄物パッケージに関するアドバイスの根拠となること、及び廃棄物パッケージの処分可能性評価のための基礎情報となること
  • 地層処分施設の受け入れに関心のある自治体(コミュニティ)に情報提供を行うことで、サイト選定プロセスを支援する
  • 研究開発が必要な分野を特定し、RWM社の科学技術プラン3  の策定に資する
  • 地層処分施設の開発における明確な処分概念と設計に関する情報を提供し、サイト選定プロセスの早期段階において、潜在的な候補サイトの適合性を評価するための基礎情報となること
  • サイト固有の設計及びセーフティケースの開発を支援する情報となること

【出典】


  1. 原子力廃止措置機関(NDA)の完全子会社 []
  2. 英国における地質環境を想定し、サイトを特定しないで一般的な条件で作成した処分システム・セーフティケースであり、英語では generic Disposal System Safety Case と呼ばれている。 []
  3. 『科学技術プラン』はRWMによる地層処分のための研究開発の詳細内容が示されている。 []

英国政府は2017年4月13日に、地層処分と地域との協働に関する公衆対話(以下「公衆対話」という)の実施結果をまとめた報告書、対話の実施プロセス等についての分析報告書を公表した。公衆対話は、科学コミュニケーションの促進を目的とした英国政府のプログラム「サイエンスワイズ」(Sciencewise Expert Resource Centre)1 を活用して実施されたプロジェクトである。英国政府は、地域との協働プロセスの策定に向けて「地域の代表のための作業グループ」(CRWG)を2015年に設置して検討を進めており、今回の公衆対話プロジェクトの成果をCRWGの作業に役立てるとしている。

サイエンスワイズによる公衆対話プロジェクトでは、科学技術に関する政策立案に資するため、少人数の一般市民との対話を通じて、理解を深めてから参加者自身の見解を評価してもらうという手法が用いられている。今回の公衆対話は、世論調査や市場調査の専門機関を活用して実施されており、対話の設計と実施を3KQ社、対話の実施プロセスの独立した立場での分析をURSUSコンサルティング社が担当している。

■地層処分と地域の協働に関する公衆対話

今回の公衆対話は、2015年12月から2016年3月にかけて、マンチェスターとスウィンドンの2都市で、それぞれ2日間(いずれも土曜日)で実施された。参加者は各都市とも27名(2都市で合計54名)である。開催地は、以下の点を考慮して選定されている。

  • イングランド北部と南部にある中心地域
  • 原子力施設が立地していない地域、また比較的原子力問題への関心が低い地域であって、これまで地層処分に関連する議論に関与してこなかった地域
  • 都市・郊外・農村の各エリアに居住している住民の参加が可能な地域

公衆対話の参加者は、以下の4項目についての情報提供を受け、少人数のグループに分かれて相互に議論しながら、自身の意見を評価する作業を行う。公衆対話では、このような参加者の議論を通じた対話を分析することにより、幅広い公衆の見解を深く探求することが意図されている。

  • サイト選定プロセスにおいて実施主体とコンタクトする地域の代表
  • サイト選定プロセスへの参加可否についての住民の支持を調査・確認(test)する方法
  • サイト選定プロセスから撤退する権利(撤退権)
  • サイト選定プロセスに参加した地域への投資

参加者から示された主な意見を以下に示す。

○地域の代表(Community representation)

  • 地域にある組織、または地域のための活動を行うことに信頼や正当性を有する者が、地域の代表及び将来を決定する者として必要な資質を有している
  • 地域の代表の存在意義は住民・地域の利益にある
  • 地域の代表には信頼性、独立性、地域への関心・配慮があることが望まれる
  • 地域への関心・配慮のために自治体の関与を求める意見も多かったが、信頼性や代表性の欠如から、自治体の排除を強く求める意見もあった
  • 独立性や公平性の点から、規制機関や専門家が関与することが望ましい
  • 地域の代表は、情報提供・継続的なコミュニケーション・住民意見の認知・信頼と信用を維持することが重要である
  • 地域の代表への信頼はプロセス全体への信頼につながる

○住民の支持を調査・確認(test)する方法(Test of public support)

  • 参加者に例示された3つの方法(統計的手法に基づいた世論調査、住民投票、公開協議による意見募集)に対して、地域住民全員が意見を示せること、サイト選定プロセスについて学習し、意見が固まるまでの時間を確保することが重要である
  • 公開協議による意見募集の実施後に、最終的に住民投票(住民の意見調査などを含む)を実施する複合的なアプローチが好まれる

○撤退権(Right of withdrawal)

  • 撤退に関する意向は、信頼の欠如と不確実性の存在(例えば、証拠が矛盾するなど)から生じる可能性が高い
  • 地域の代表、または地域と密接に協議をした地域の代表が撤退について最終決定することを支持する傾向にあった。住民の支持を調査・確認(test)する方法と比較して、撤退権のタイミングについて不明瞭であることから、サイト選定プロセスの撤退権の部分を説明する際に、明確に伝えることが必要である

○地域への投資(Community investment)

  • 地元のプロジェクト、地域に長期的な利益を与えるプロジェクト、地域のより広範な人々の利益になるプロジェクトに投資する
  • 地域独自の優先順位や選定基準に基づいて投資する

■公衆対話で示された意見の分析

今回の公衆対話を設計・実施した3KQ社は、参加者による議論の状況に関する全般的な所見として、参加者の議論を通じて意見が集約され、広く合意が得られた事項として、以下の二つを挙げている。

  • 住民の支持を調査・確認(test)する方法として、公開協議による意見募集の実施後に最終的に住民投票を実施すること
  • 全てのプロセスにおいて、透明性があること、また全ての関係者間で定期的にコミュニケーションが取れていること

3KQ社は、参加者の意見集約が進まなかった事項として、以下を挙げている。

  • 自治体がどの程度までその地域を代表しているといえるか
  • 住民投票及びその他の住民の支持を調査・確認(test)する方法において、どこまでの住民を対象とするのか(人数、居住地域、年齢等)

また、3KQ社は、今後、同様な公衆対話を実施する場合には、以下の点を考慮することが望ましいと指摘している。

  • 今回の公衆対話で広く合意が得られた意見について、別の公衆対話においても広く合意されるか否かを確認する
  • 住民投票の実施対象範囲や住民の支持を調査・確認(test)する方法など、意見が集約しなかった事項について、より確固たる結論が導き出せるか否かを確認する
  • 規制機関や専門家をオブザーバーやアドバイザーとして地域代表グループに入れるべきか等、いくつかの事項については、より詳細な調査対象とする

■公衆対話の実施プロセス等についての分析報告書

公衆対話の実施プロセスの独立的な分析を行ったURSUSコンサルティング社は、英国政府が最も難しいと位置付けている地域に係わる問題について、問題を解決するために役に立つものとして、公衆の意見、その背景・理由及び多くの新たな考え方を得ることができたとしている。また、このような公衆との対話プロセスを注意深く設計して実施することは、政策の策定においてプラスとなる良好事例であると評価している。

 

【出典】


  1. サイエンスワイズは、科学技術に関する政策立案に関して、早い段階から市民との対話を促進することを目的として2004年から始まった英国政府のプログラムである。英国政府が資金支援をしたプログラムの実施主体であり、政策策定プロセスにおいて利用される公衆との対話の効果を増加させ、政策を改善するためのプログラムを実施することが目的とされている。なお、2011年に政策評価を受けて、サイエンスワイズの活動期間は2012年4月1日から2016年3月31日までとなっている。 []

英国政府のビジネス・エネルギー・産業戦略省(BEIS)と原子力廃止措置機関(NDA)は、2017年4月3日に、放射性廃棄物インベントリ報告書の最新版である2016年版を公表した。放射性廃棄物インベントリは、英国政府とNDAが実施している共同研究プログラムの一部であり、放射性廃棄物の管理計画を立案する上での重要なデータとして、今後対策が必要となる1 放射性廃棄物の廃棄物量、放射能量等を3年毎に評価したものである。

今回の2016年版の放射性廃棄物インベントリ報告書に示されている下表の廃棄物量(単位:m3)は、2016年4月1日時点において処理されて貯蔵されている廃棄物量と、今後発生が見込まれる廃棄物量を合計したものである。この廃棄物量には、既に操業しているドリッグ村近郊にある低レベル放射性廃棄物処分場(LLWR)及びドーンレイ低レベル放射性廃棄物処分場で処分された低レベル放射性廃棄物、並びに民間の産業廃棄物処分場で処分された極低レベル放射性廃棄物の量は含まれていない。

2016年版の放射性廃棄物インベントリ報告書では、下表のように、前回の2013年版の放射性廃棄物インベントリ  報告書に比べて、低レベル放射性廃棄物が減少する一方で、極低レベル放射性廃棄物、中レベル放射性廃棄物及び高レベル放射性廃棄物がそれぞれ増加している。これらの放射性廃棄物の増減に関してNDAは、放射性廃棄物の再評価、国家戦略などによる廃棄物パッケージや処理処分オプションなどの変更によるものであると説明している。

英国の分類別の放射性廃棄物インベントリ

廃棄物分類 2013年版報告書 2016年版報告書
極低レベル放射性廃棄物 2,840,000m3 2,860,000m3
低レベル放射性廃棄物 1,370,000m3 1,350,000m3
中レベル放射性廃棄物 286,000m3 290,000m3
高レベル放射性廃棄物 1,080m3 1,150m3
合計 4,497,080m3 4,501,150m3

【出典】


  1. 原子力施設の運転・廃止措置に伴って発生する放射性廃棄物の推定量を含む。 []

英国のスコットランド政府は、2011年1月に公表した「スコットランドの放射能レベルの高い放射性廃棄物の管理方針」(以下「2011年管理方針」という)について、スケジュール及び実施内容等を示した実施戦略を取りまとめた。今後、原子力発電所の廃止措置で発生する「放射能レベルの高い放射性廃棄物」(Higher Activity Radioactive Waste、HAW)については、地表近くに設置する長期管理施設において管理を継続することとしている。なお、スコットランドでは、2カ所の原子力発電所において4基の改良型ガス冷却炉(AGR)が運転中であるものの、発生した使用済燃料は原子力廃止措置機関(NDA)のセラフィールド再処理施設へ貯蔵のために輸送されており、再処理した後に高レベル放射性廃棄物(ガラス固化体)としてNDAが地層処分するか、もしくは直接処分される予定である。

スコットランド政府は、長期管理施設のサイト選定プログラムの策定プロセスを2030年以降に開始し、施設の建設開始を2070年以降とする予定であり、今後、下表のような3つの段階に分けて作業を進めるとしている。

表:スコットランドにおける放射能レベルの高い放射性廃棄物(HAW)の長期管理スケジュール
段階 期間 実施内容

第1段階

2016~2030年

  • 今後発生する廃棄物についての見直し
  • 現時点で利用可能な技術による廃棄物管理オプションの見直しと更なる研究開発

第2段階

2030~2070年

  • コミュニティ及びステークホルダーの関与プログラムやサイト選定プログラムの策定
  • 原子力廃止措置機関(NDA)、廃棄物発生者、規制機関と協働して、長期管理概念を策定
  • 長期管理施設の設計(モニタリングの実施方法や廃棄物の回収方法を含む)、立地、建設に関するプログラム策定
  • 長期管理施設のサイト選定プログラムの策定
  • 長期管理施設のサイト選定作業
  • 立地地域への便益供与プロセス・内容の決定

第3段階

2070年以降

  • 長期管理施設の建設

スコットランド政府は、長期管理を行う放射能レベルの高い放射性廃棄物(HAW)の量を約41,400m3と推定しており、これらは4カ所の原子力発電所、1カ所の軍事サイト、1カ所の研究サイトから発生するとしている。その多くは、原子力発電所の廃止措置が開始される数十年後に発生する見込みである。また、スコットランドで発生した低レベル放射性廃棄物は、ドーンレイ処分場(スコットランド)やドリッグ村近郊の低レベル放射性廃棄物処分場(イングランド)で処分されている。

スコットランド政府は、今回取りまとめた実施戦略において、今後、コミュニティやステークホルダーの関与プログラムの策定、革新技術の開発や知見の共有などに向けた研究開発等を行うとしている。また、2011年に策定したスコットランドの放射能レベルの高い放射性廃棄物の管理方針と今回取りまとめた長期管理の実施戦略との双方について、今後10年以内に見直しを行うとしている。

《参考》英国における高レベル放射性廃棄物等の管理方針

英国では、2001年より英国政府(当時の中央省庁である環境・食糧・農村地域省(Defra))は、高レベル放射性廃棄物等の解決策を見出すため、地方自治政府(ウェールズ、スコットランド、北アイルランド)とともに「放射性廃棄物の安全な管理(MRWS)」プログラムを進めた。これら3つの地方自治政府の管轄領域においては、英国政府ではなく、当該自治政府が放射性廃棄物管理に係わる権限を有している。

2006年10月に英国政府(主にイングランドを所管)とウェールズ政府は、高レベル放射性廃棄物等を地層処分する方針を決定している。一方、スコットランド政府は、2007年6月に廃棄物の輸送距離が必要最小限となるように、地表近くに設置する施設で長期管理を行う方針を採用する意向を表明し、公衆協議を経て2011年1月に「スコットランドの放射能レベルの高い放射性廃棄物の管理方針」を決定した。また、北アイルランド政府は地層処分方針を支持しているが、北アイルランドでは地層処分対象となる高レベル放射性廃棄物等が発生していない。

こうしたことから、英国において現在進められている、高レベル放射性廃棄物等の地層処分施設の設置に向けたサイト選定では、イングランド、ウェールズ、北アイルランドを対象として、地質学的スクリーニングの作業が行われている。高レベル放射性廃棄物等の地層処分の実施主体である原子力廃止措置機関(NDA)の放射性廃棄物管理会社(RWM)は、2017年までにスクリーニング結果を公表した上で、自治体を含む地域との正式な協議を開始する予定としている。

【出典】

英国政府の諮問機関である放射性廃棄物管理委員会(CoRWM)は、2016年7月19日に、2015年度1 の年次報告書を公表した。CoRWMは、高レベル放射性廃棄物等の地層処分の実施主体である放射性廃棄物管理会社(RWM)2 のプログラム及び計画、英国政府が主導するサイト選定の手続及び基準、政府及びRWMが行う公衆・ステークホルダーの関与に関するアプローチ等の活動をレビューしており、それらのレビュー活動に関する年次報告書を英国政府に提出することになっている

CoRWMは2015年度の年次報告書において、英国政府及びRWMに対して、次の3つの勧告を行っている。

  • 勧告1:放射性廃棄物管理会社(RWM)は、一般的な条件における地層処分システム・セーフティケース(gDSSC)の更新版を2016年に取りまとめる予定である。このセーフティケースには、地層処分場の設置が考えられている3種類の岩種(硬岩、粘土、岩塩)について、岩種による施設設計の違いが分かるような概念図を示すとともに、安全特性に関する説明を含めるべきである。
  • 勧告2:放射性廃棄物管理会社(RWM)の組織体制が地層処分施設を実現するという目的に合致しているかを評価するため、英国政府は、RWMのビジネスモデルに対する外部による独立したレビューを実施すべきである。
  • 勧告3:過去の文書へのアクセスは、地層処分を成功裡に終わらせるための重要な鍵となるため、英国政府は、公衆が放射性廃棄物管理委員会(CoRWM)及び放射性廃棄物管理会社(RWM)の過去の文書に容易にアクセスできる方法を検討すべきである。

地層処分の実施主体であるRWMは、NDAの内部組織であった放射性廃棄物管理局(RWMD:Radioactive Waste Management Directorate)を分離し、2014年4月に政府外公共機関(NDPB)であるNDA所有の100%子会社として設立された。その後、2014年8月の白書『地層処分の実施-高レベル放射性廃棄物等の長期管理に向けた枠組み』において、RWMが地層処分の実施主体と位置付けられた。このためCoRWMは、地層処分施設を設計、建設、操業するエンジニアリング・プロジェクト組織としての中核機能をRWMが備えるべきと考えている。一方、2015年11月に開催されたCoRWMとRWMとの会合において、RWMは当面の組織開発において、①サイト選定、②ステークホルダーの関与、③放射性廃棄物管理の3つの主要作業項目を軸とする考えを表明していた。これを受けてCoRWMは、公衆及び主要ステークホルダーがRWMの本来の役割を認識するのが難しくなることを懸念し、英国政府に対して勧告2として、RWMのビジネスモデルに対する外部による独立したレビューの実施を勧告すると説明している。

【出典】


  1. 英国の年度は日本と同じ4月開始 []
  2. 原子力廃止措置機関(NDA)の完全子会社 []

高レベル放射性廃棄物等の地層処分の実施主体である原子力廃止措置機関(NDA)の放射性廃棄物管理会社(RWM)は、地層処分に関する研究開発の概要を示した『科学技術プログラム』を公表した。科学技術プログラムは、RWMの地層処分に係る科学・技術研究における構造と範囲、地層処分事業を実施する上で重要なアウトプットをステークホルダーに提示することを念頭に置いて取りまとめたものであり、RWMは、科学・技術研究の進捗を管理するツールとして使用していくとしている。

図: 科学・技術研究の4分野と実施プロセスの関係

図: 科学・技術研究の4分野と実施プロセスの関係

RWMは、科学・技術研究を4つの分野(図の中央部分にある緑色のボックス)に分け、各分野において目標とする主要な研究成果(合計62)をマップしている。RWMは、科学・技術研究を構成する一連の研究プロジェクトを設けており、各プロジェクトの成果の中で重要なもの、または複数のプロジェクトの成果を基に達成されるものを「主要成果」と位置づけている。なお、研究プロジェクトの詳細内容は、『科学技術プログラム』と同時に公表された『科学技術プラン』1 において示されている。

主要成果は、必ずしも単独の成果文書である必要はなく、RWMが発行する廃棄物パッケージの仕様遵守確認書(LoC)や廃棄物受入基準(WAC)、地球科学データ管理システムのようなデータベースやモデルも含まれている(図の下側のアウトプット部分を参照)。

科学技術プログラムにおける研究開発内容の策定・実施プロセスは、繰り返し行われることになっており、この反復プロセスの中で主要成果が提示される。

4つの科学・技術研究分野と各分野での主要成果の例

■科学・技術研究分野1:処分システム仕様(主要成果として6件を設定)

  • 処分システム機能に関する仕様
  • 処分システム技術に関する仕様
  • 処分対象となる放射性廃棄物インベントリ
  • 処分概念
  • 地層処分の代替管理方法

■科学・技術研究分野2:処分システム設計(主要成果として14件を設定)

  • 処分システム設計に関する仕様
  • 地層処分施設の一般設計
  • 処分システムのコスト評価

■科学・技術研究分野3:評価(主要成果として20件を設定)

  • 一般的な条件における処分システム・セーフティケース(gDSSC)
  • 一般的な条件における、環境、社会・経済、健康に関する評価
  • 処分可能性評価
  • 地質学的スクリーニング

■科学・技術研究分野4:知見の拡充(主要成果として22件を設定)

  • 高レベル放射性廃棄物等に関するプログラム
  • 科学技術プラン
  • サイト特性調査

 

RWMは、地層処分施設に関する活動期間を、①予備調査、②地上からのサイト調査、③処分施設の建設及び地下におけるサイト調査、④処分施設の操業、⑤処分施設の閉鎖の5つのフェーズに分割しており、今回の科学技術プログラムで設定した主要成果は、①~③のフェーズ(処分施設の操業開始前までの期間)に焦点をあてたものであると説明している。なお、RWMは、地層処分施設の開発の進捗状況に応じて、科学技術プログラム自体も定期的にレビューし、更新するとしている。RWMは、④と⑤(処分施設の操業開始以降の期間)の主要成果は、今後の活動フェーズが進むにつれて変わる可能性があるため、今回の科学技術プログラムでは基本的に含めていないが、今後提示する科学技術プログラムにおいて設定するとしている。

 

【出典】


  1. RWMは、これまでに科学技術プログラムの初版(2013年9月)、第2版(2014年3月)を策定しており、いずれもNDAの文書として発行されている(当時の文書名は技術プログラム)。今回RWMが公表した『科学技術プラン』は、科学技術プログラム(第2版)に含まれていた研究開発計画の詳細部分の記述を独立させたものである。 []

高レベル放射性廃棄物等の地層処分の実施主体である原子力廃止措置機関(NDA)の放射性廃棄物管理会社(RWM)は、2016年4月21日、英国全土(スコットランドを除く)を対象とした地質学的スクリーニングのガイダンスを公表した。RWMは、本ガイダンスに基づいて地質学的スクリーニングを実施し、2017年までにスクリーニング結果を公表した上で、自治体を含む地域との正式な協議を開始する予定としている。

RWMは、地質学的スクリーニングにより、地層処分施設の長期安全性との関連性の高い地質学的な情報を取りまとめ、アクセスしやすい形で利用可能にすることを目標としている。地質学的スクリーニングの成果は、地層処分施設の立地に係わる地質学的可能性に関して、地域との初期の検討を行うために使用することになる。

RWMは、地層処分施設に係わる長期安全要件に関して考慮すべき5つの地質特性として、①岩種、②岩盤の構造、③地下水、④自然プロセス、⑤資源の賦存に着目し、過去に英国で実施された採鉱活動に関する情報を収集した資料などに基づいて、スクリーニング作業を進める。スクリーニング作業から得られた成果情報は、当該地域の地質環境の重要な特性と安全性とがどのような関連性を持っているかについて、一連の簡略な説明文書として提示するとしている。地質学的スクリーニングの成果情報の概要を下表に示す。

英国地質学的スクリーニング置ける地域区分

図:BGSが「地域別指針」(Regional Guide publication series)を発行するために採用している地質学的地域(スコットランドを除く)

RWMは、英国の地質学的状況に関して信頼すべき情報の多くを有する「英国地質調査所」(BGS)と協力して地質学的スクリーニング作業を行い、BGSが「地域別指針」(Regional Guide publication series)を発行するために採用している地質学的地域ごとに、「成果情報パッケージ」を作成する。なお、地質特性の一部については、13の地質学的地域のいずれに対しても当該情報がきわめてまばらであるか、あるいは、ほとんどばらつきが存在しないため、全国レベルの情報のみを示す場合があるとしている。

また、BGSは13の地質学的地域に関して一連の「技術情報レポート」及び「マップ」を作成することになっている。これらの技術資料の作成手順及び実施要綱(プロトコル)についてRWMは、BGSと協力して技術文書に取りまとめており、今回公表した地質学的スクリーニングのガイダンスとともに公表している。

 

表:地質学的スクリーニングにおいて着目する地質特性と成果情報の提示方法

地質特性

地質学的スクリーニング成果情報の提示方法
内容 地図(62万5千分の1)

岩種

  • 地層処分施設が設置される深度にある、母岩となりうる岩種(比較的高強度の岩石、低強度の堆積岩、蒸発岩)の分布
  • 母岩の周囲にある岩石層の特性

候補対象となりうる母岩、その深度、及び特性・場所に関する不確実性についての記述

候補対象となりうる母岩周辺の岩層と安全性に寄与しうる特性についての記述

当該地域に存在する岩盤全体を示す地質柱状図による岩種の表示

地下200~1,000mの深度にある、候補対象となりうる母岩の分布を示した地域図(一般的な3種類の岩種(比較的高強度の岩石、低強度の堆積岩、蒸発岩)の分布図)

少なくとも候補対象となりうる母岩が1つ存在する地域の概要地域図

岩盤の構造
(断層・破砕帯、褶曲の位置等)

  • 多数の褶曲が発達した地域
  • 大規模な断層が存在する地域

地域内にある、安全性に関連する岩盤の構造の性質(大規模な断層、断層帯、複雑な特性を持つ褶曲した岩石のある地域など)についての説明

岩盤構造の分布を示した地域図

地下水

  • 帯水層の存在
  • 浅部地下水と深部地下水の分離を示唆する地質特性と岩種の存在
  • ニアフィールド環境に地下水が急速に流れ込む可能性がある地域
  • 地下水の年代と化学組成

既知の浅部・深部の地下水流動、地下水化学、塩分濃度、年代についての説明

当該地域における地下水流動及び浅部地下水と深部地下水との相互作用に影響を及ぼしうる岩種及びその他の地質特性についての考察

深部ボーリング孔、鉱物、温泉の所在を示す地域図

自然プロセス
(地震・断層活動、氷河作用等)

  • 地震活動の分布とパターン
  • 過去の氷河作用の範囲

英国全土の地震活動、隆起速度、侵食速度、過去の氷河作用中の氷冠に関する情報を当該地域へ適用した解釈

最近の地震活動分布に関する英国全土の地図

過去の氷河作用の程度を示す英国全土の地図

資源の賦存

  • 深部鉱物の存在地域
  • 集中的に深部掘削が実施された地域
  • 将来における開発または資源探査の可能性

当該地域における将来の資源開発の可能性を考慮した、深部の資源探査と開発の歴史についての記述

深度100m以深における、過去及び現代の金属鉱石、工業用鉱物、石炭及び炭化水素の開発状況を示した地域図

■地質学的スクリーニングのガイダンス公表までの経緯

RWMは、2014年7月にエネルギー・気候変動省(Department of Energy and Climate Change, DECC)が公表した白書『地層処分の実施-高レベル放射性廃棄物等の長期管理に向けた枠組み』に基づき、地層処分施設のサイト選定プロセスの初期段階において、英国全土(スコットランドを除く)を対象とした地質学的スクリーニングを実施することになっている。地質学的スクリーニングは、自治体を含む地域が地層処分施設の設置について検討を行う際、安全面において重要な地質に関する情報を利用できるようにするため、既存の地質情報を活用し、地質学的スクリーニングのガイダンスを適用して実施するものである。なお、地質学的スクリーニングの結果は、地層処分施設の設置に「適格」または「不適格」なエリアの判定やサイトの絞り込みに使用されるものではないと位置づけられている。

RWMは、2015年9月8日に地質学的スクリーニングのガイダンス案を公表し、意見提出期限を2015年12月4日まで公開協議を実施していた。RWMは、公開協議で得られた意見を踏まえ、ガイダンス案を更新し、独立評価パネル(IRP)  の評価を受けた後、最終化したガイダンスを2016年4月に公表した。

放射性廃棄物管理会社(RWM)は公開協議において、地質学的スクリーニングのガイダンス案について4つの質問事項を示し、一般からの意見を募集した。この公開協議では、学会、学術界、地域自治体、地球科学の専門家、NGO、関心を有する個人などから合計78の意見が寄せられた。ガイダンスにおける不明確さを無くすよう改善を図るべきとの意見が多数あったものの、その多くがガイダンスの内容に肯定的なものであったため、ガイダンス案を大きく変更する必要はないと判断したとしている。

独立評価パネル(IRP)は、地質学的スクリーニングのガイダンス案において、RWMが作成したガイダンスは技術的に健全であり、RWMが既存の適切な地質情報を利用して実施する地質学的スクリーニングに適用できると評価している。また、IRPは、RWMがガイダンスに示している、より詳細な調査を実施する地域を特定するための基本情報となる地質学的スクリーニング結果の提示方法(上図参照)を支持するとしている。その一方で、IRPは、RWMによって作成される各地域の報告書の品質と利用可能性の向上、コミュニケーションの改善を今後の課題と指摘している1

【出典】


  1. IRPは、RWMが作成する地質学的スクリーニングのガイダンス案の評価だけでなく、今後RWMが実施する地質学的スクリーニング作業におけるガイダンスの適用状況についても評価も行うことになっている。 []