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《英国》イーストライディングオブヨークシャー市が調査エリアの特定に向けてワーキンググループを設置

英国の地層処分事業の実施主体であるニュークリアウェイストサービス(NWS)は、2024年1月25日付けのプレスリリースで、英国イングランド北東部のイーストライディングオブヨークシャー市1(East Riding of Yorkshire)において、地層処分施設(GDF)のサイト選定プロセスにおける「調査エリア(Search Area)」の特定に向けたワーキンググループが設置されたことを公表した。英国のサイト選定プロセスでは、地層処分施設の設置に関心を示す者、または、設置候補エリアを提案したい者であればNWSと初期対話(initial discussion)を開始できることになっており、今回はイーストライディングオブヨークシャー市で企業支援等を行っているインベストイーストヨークシャー社が地層処分施設の設置に関心を示している。同社は、特に、ホルダーネスと呼ばれる同市沿岸地域の南部を対象として、同市の経済戦略で設定している「経済的優先事項2(economic priorities for the region)」との連携可能性に関心を有している。このような背景から、ワーキンググループは地質学的情報と経済的優先事項の観点で、ホルダーネス地域の南部を対象に調査エリアの特定を進めていく方針であり、「サウスホルダーネスGDFワーキンググループ」(South Holderness GDF Working Group)と名付けられている。

図 サウスホルダーネスGDFワーキンググループの検討対象エリア

NWSは、インベストイーストヨークシャー社との初期対話の一環として作成した初期評価レポートにおいて、イーストライディングオブヨークシャー市とその沖合について既存の情報に基づいて評価した結果、GDFを設置できる可能性があると結論付けている。なお、初期評価レポートでは当初、陸地部分については同市全域を検討対象エリアとしていたが、その後、容易に入手可能な地質学的情報と経済的優先事項を考慮した結果、サウスホルダーネスGDFワーキンググループは検討対象エリアとして、ホルダーネス地域の南部に絞った形で調査エリアを設定している。

■サウスホルダーネスGDFワーキンググループの構成と今後の活動予定

英国で2018年12月から開始した地層処分施設(GDF)のサイト選定プロセスにおいて、ワーキンググループの設置に至ったのは、2020年11月の旧コープランド市 、2021年1月の旧アラデール市3  、2021年10月のイーストリンジー市   に続いて今回が4例目である。

サウスホルダーネスGDFワーキンググループの設立時点では、NWSとインベストイーストヨークシャー社のほか、関係する地域自治組織としてイーストライディングオブヨークシャー議会が参加している。また、ワーキンググループの議長には、英国ハル大学で洋上風力発電などの事業開発に従事したデビッド・リチャーズ博士が就任している。その他、ファシリテーター1名、地域住民2名がワーキンググループのメンバーとして参加している。今後、同ワーキンググループは、市民が情報にアクセスして意見を表明できるように、2024年2月以降にコミュニティ参加型イベントを開催する予定である。また、さらなる検討対象となる「調査エリア」の特定や、NWSとともにプロセスを前進させていく「コミュニティパートナーシップ」の初期メンバーの特定も行う予定である。

【出典】

【2024年2月22日追記】

イーストライディングオブヨークシャー市議会は、2024年2月21日に行われた本会議において、地層処分施設のサイト選定プロセスから撤退することを議決した。イーストライディングオブヨークシャー市では、2024年1月25日にサウスホルダーネスGDFワーキンググループが立ち上げられたばかりであり、地層処分施設が地域にもたらす可能性について広く議論して、理解を深めようとしていたところであった。

イーストライディングオブヨークシャー市議会の2024年2月21日付けプレスリリースによると、サウスホルダーネス担当の市議会議員に対し、地元住民からサイト選定プロセスへの参加に対する圧倒的な数の反対意見が寄せられており、同議員がサイト選定プロセスからの撤退に関する動議を提出した。この動議は53対1で可決された。

英国の地層処分事業の実施主体であるニュークリアウェイストサービス(NWS)は、イーストライディングオブヨークシャー市議会でのサイト選定プロセスからの撤退の決定を全面的に尊重するとし、今後はサウスホルダーネスGDFワーキンググループの活動を段階的に縮小して、対応できていない情報提供の要請に取り組んでいく考えを表明している。

【出典】

【2024年4月17日追記】

2024年1月25日に設置されたサウスホルダーネスGDFワーキンググループは、2024年2月21日のイーストライディングオブヨークシャー市議会でのサイト選定プロセスからの撤退に関する動議を受け、ワーキンググループの活動を縮小していた。今回、2024年4月10日に、自身のウェブサイトにおいて、ワーキンググループの活動を終了したことを公表した。

サウスホルダーネスGDFワーキンググループの活動終了にともなって、現在、英国では2つの自治体において各ワーキンググループが特定した3つの調査エリア(カンバーランド市:ミッドコープランド及びサウスコープランド、リンカンシャー州:テッドルソープ)が存在していることとなる。各調査エリアでは、生息する保護種についての理解を深めるため、沖合に生息する鳥類や海洋生物に関する情報を得るための航空調査が実施されている

【出典】

  1. イーストライディングオブヨークシャー市は、面積が約2,407km2、人口が約34万人、農業と観光業を産業の中心とした自治体である。26の選挙区で構成されており、南東には「テッドルソープGDFコミュニティパートナーシップ」を抱えるリンカンシャー州が位置している。 []
  2. 英国政府の地域再生政策に基づき作成される、各地域の経済戦略において挙げられている優先事項のこと []
  3. 旧アラデール市のワーキンググループは調査エリアを特定し、次のステップであるコミュニティパートナーシップへ移行したものの、地層処分施設の建設に適した岩盤が限られていたことから2023年9月にサイト選定プロセスから除外された。 []

(post by f-yamada , last modified: 2024-04-18 )