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《英国》ニュークリアウェイストサービス(NWS)がアラデール調査エリアにおけるサイト選定プロセスの終了を決定

図1 英国イングランドにおけるサイト選定プロセスに関心のある地域

図1 英国イングランドにおけるサイト選定プロセスに関心のある地域

英国の放射性廃棄物処分の実施主体であるニュークリアウェイストサービス(NWS)は、2023年9月28日付けのプレスリリースにおいて、地層処分施設(GDF)の立地可能性を検討している4つの調査エリアのうち、アラデール調査エリアでのサイト選定プロセスを終了することを公表した。NWSは、2023年6月から4つの調査エリアに対してサイト評価を実施していた。その結果、沿岸部を含むアラデール調査エリアは、地層処分施設の建設に適した岩盤が限られた量しか確認できず、処分場閉鎖後の安全性を担保できる可能性が低いと結論付けられたため、サイト選定プロセスから除外することとしたと説明している。NWSは、これまでサイト選定プロセスに参加協力したアラデールGDFコミュニティパートナーシップの関係者に対して、感謝の意を表している。なお、現時点ではアラデールGDFコミュニティパートナーシップからのコメントは公表されていない。

カンバーランド市1 のアラデール調査エリアは、原子力施設が数多く立地するカンバーランド市の中央部に位置しており、原子力産業に従事している住民が多く居住している地域である。この地域では、官民再生パートナーシップによる地域再生事業などを手掛けるGenR8 North社などの発意により、地層処分施設に向けた調査エリアの特定と「GDFコミュニティパートナーシップ」の設置を目指して、コミュニティ全体での協議に発展させていく準備組織となるワーキンググループが2021年1月発足し、初期対話が始まった。その後、当時の自治体であったアラデール市議会とNWSは2022年1月にコミュニティパートナーシップを設立し、調査エリアにおける地層処分施設の設置可能性について、より詳細な検討を行っていた。なお、アラデールGDFコミュニティパートナーシップは、NWS、カンバーランド市議会、カンブリア地方議会連合(CALC)等のメンバーで構成されている。

また、コミュニティパートナーシップには、英国政府から年間最大100万ポンド(1億6,600万円、1ポンド=166円)のコミュニティ投資資金(CIF)が提供されている。このコミュニティ投資資金は、調査エリア内のモノやサービスを改善してコミュニティの生活の質を高めようとする民間企業、公共団体及び第三セクターに対して給付されるものであり、コミュニティパートナーシップ内のコミュニティ投資チームが投資資金の運営管理の役割を担っている。

アラデールGDFコミュニティパートナーシップは、これまでに200万ポンド(3億3,200万円)のコミュニティ投資資金を受けており、地元の福利厚生や生活環境の改善、環境整備などに関する50以上の地元に密着したプロジェクトが実施されている。なお、サイト選定プロセスが終了したアラデール調査エリアについてNWSは、現在実施中のプロジェクトは引き続き、支援を行う意向を示している。

今回のサイト評価の背景

サイト選定の概略図

図2 サイト選定の概略図
(出典:RWM, 協議文書「サイト評価方法案」(2018)の図を一部修正)

英国政府は、2018年のサイト選定プロセス開始時に公表したサイト選定スケジュール2 において、当初、サイト評価期間を5年間と想定しており、NWSはサイト選定プロセスの進捗に応じて、潜在的なエリアやサイトに対して一貫した評価項目3 に基づいたサイト評価を行う計画を示していた

アラデールGDFコミュニティパートナーシップでの検討は、その前身となるワーキンググループでの初期対話を含めると2年半にわたって継続している。2023年7月に開催されたアラデールGDFコミュニティパートナーシップ第19回会合では、一般の参加者から「4つのGDFコミュニティパートナーシップがいつまで存続するのか、今後その数が増えるのか」との質問が出された。この質問に対してNWSは、その疑問への答えを明らかにするためにサイト評価の作業を実施している旨の回答を行っていた。

NWSは、今回のサイト評価を行うために現地での調査は行っていないが、地震データを購入している。このデータを用いて評価した結果、アラデール調査エリアを除く3つの調査エリアについて、潜在的に地層処分施設に適した岩盤の存在が確認されたため、調査エリアのコミュニティとともにサイト選定プロセスを継続する意向である。また、新たなコミュニティにもサイト選定プロセスへの門戸を開いていることを表明している。

NWSは2023年9月15日付けのプレスリリースにおいて、ミッドコープランド、サウスコープランド、テッドルソープの各調査エリアの沖合に生息する鳥類や海洋生物に関する情報を取得するため、2023年10月から2024年3月まで月一回の航空調査を行う予定を明らかにしている。これら3つの調査エリアで取得した情報は、調査エリアに生息する保護種について理解を深めるために使用される。なお、3つの調査エリアのGDFコミュニティパートナーシップは、地層処分施設の地下部分を沖合に設置する可能性を検討している。

【出典】

  1. カンバーランド市は2023年4月の自治体再編によって誕生した新しい自治体であり、以前のカンブリア州を構成していた6自治体のうち、旧コープランド市、旧アラデール市を含む3つの自治体が合併したものである。カンブリア州を構成していた他の3自治体も合併して新たな自治体となっており、上層自治体であったカンブリア州は消滅している。 []
  2. 英国政府の政策文書「地層処分の実施-地域社会との協働:放射性廃棄物の長期管理」(2018)やRWM社(現NWS)の協議文書「サイト評価方法案」(2018) []
  3. サイト評価での立地要因として①安全とセキュリティ、②コミュニティ、③環境、④工学的成立性、⑤輸送、⑥支払いに見合った価値(Value for Money)の6つの指標がある。 []

(post by f-yamada , last modified: 2023-12-14 )